騎士団
思いもよらない御褒美に歓喜する主人公「上杉 奈月」
ミカは魔物に強いだけでなく夜の方も達者だった。
海人になって大ハッスルしたナッツだが、その体にはまだまだ知られていない秘密が眠っているのだった・・・
ミカエルを思う存分味わったあと、俺はしばらく眠ることにした。直ぐに夜が明けるだろうが3時間くらいは眠れるかな?
と思ったのだが、熟睡しかけると息が苦しくなり眠れない・・・
これってやっぱり海人だからだろうか?
クジラとかの海洋哺乳類は海の中で暮らしているので、溺れないようにするために寝ないと聞いたことがある。
『これから一生眠られぬ夜が続くのか。』
俺は暗黒の中で一人呟く
確かに眠れぬほどの沢山の悩みを抱えているが、一日一回は熟睡したいな。
かなり辛い。慣れれば何とかなるだろうか?
そんなことを考えていると、いつの間にかまどろんでいた。
『うとうと寝るって結構気持ちいいな・・・ぁ、もしかしてこういう事か?』
俺は左半身を下にして、右目を閉じる。
『ぉっ。
左脳が微睡んでるのが分かる。』
しばらく左脳を休めたあと今度は逆に右脳側を下にして、左目を閉じる。
今度は右脳が入眠していく。
『大体わかったぞ。』
むかし脳の本を読んだとき、右脳は左目と繋がっていて、左脳は右目と情報のやり取りをしていると書いてたんだ。だから左脳を休ませるときは右目を閉じるんだ。逆に右脳で寝る時は右を下にして、左目を閉じればいい。
『多分これで間違いないだろう。』
海洋哺乳類は海で溺れないために、右脳か左脳、どちらかが常に起きているんだろう。
海人で寝るコツは大体わかった
気持ち良いまどろみのなか、半分意識を保ったまま暗闇を楽しんだのだった。
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夜が明けたので「ミカエル」をやさしくおこす。
『ミカ、明るくなってきた。
みんなじきに来るだろうから、自分の部屋へいってくれないか?』
熱い口づけを交わしながら、声をかける。
『あっ。ナッツ・・・
膝に力が入らない。どうしたのかしら・・・』
ミカは立ち上がろうとするが、腰が抜けて上手く歩けない。
かなり激しく突いたからな・・・
眠った後まで突いていたし・・・
ナッツってかなり鬼畜だな・・・
仕方がないのでミカに肩をかし、内股になってしまった彼女を隣の部屋まで送っていく。途中使用人に見つかってお小言をいただいてしまった。
『昨晩はとても楽しまれたようですね。
歓喜の叫び声が一晩中途切れなく聞こえてました。
ミカエルも精力抜群のご主人様に仕えることが出来てよかったですね。
おかげで私たちはほとんど眠れませんでしたが。』
はいごめんなさい。ぜんぶわたしのせきにんです。
これだから木造建築の集合住宅は嫌なんだよ。性活の音が丸聞こえじゃない。あんなことやこんなことしてると、全部わかっちゃうしね。
それに・・・
英雄色を好むっていうじゃない?
えっ?
英雄じゃなくて、勇者だって?
まあそうですが、似たようなものでしょ?
『ごっゴメンナサイ』
顔を真っ赤にしたミカは、自分の部屋に逃げ込んでしまった。
せめてもの償いにと、汚れものをまとめて引き取りに来た人へ、ミカエルからかりた、チップを渡したので、問題ないと思う。たぶん。
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身支度を整えていると、ベントス村長が報奨金の金貨と朝食を携えて部屋をおとずれた。
『勇者さま、こちらの金貨はこの度お世話になったお礼です。どうか収めて下さい。』
『あぁ。すまないな。遠慮なくもらっておく。』
今は無一文なので非常にありがたい。
これでミカに金を借りる必要もなくなる。
ざっと金貨10枚か。俺の取り分は5枚ってとこだな。
この世界の金貨一枚の価値は、日本円で10万くらいだ。10枚あるから、100万円相当だ。かなり弾んでくれたな。
『ゴブリン溜まりの排除はとても危険な仕事です。
放っておくと村が全滅したかもしれないので、セリーヌ領主さまから特別に「上杉奈月」さまへと手渡されたのです。』
なるほど。この土地の領主は迷宮最初の探索者が「上杉奈月」だと分るんだった。
『セリーヌ領主は随分と金払いも良いようだな。』
俺は率直な意見を述べた。
『それで勇者さま、この後セリーヌ領主の館へ来てくれるように申し使っております。もうすぐ騎士団が到着すると思いますので、宜しければそのあと村の者に案内させます。』
『あい分かった。俺もセリーヌ領主に興味があってな。頼まれなくてもこちらから伺おうと思っていたところだ。』
俺は心に引っかかるある事を確かめるために、どうしてもセリーヌ領主に合わなければならないと思っていたところだった。
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ベントス村長との会談も終わり、ミカエルとイチャイチャしている所へ昨日一緒にゴブリン溜まりを討伐したメンバーが訪れた。
『勇者さま、おはようございます。
昨日は素晴らしいご活躍、感服いたしました。
また機会がありましたらご一緒させてください。』
いやいや、活躍したのは狩人のミカだけですw
『こちらこそ世話になった。
ミカエルは俺と一緒に来ることになったが、騎士団がもうすぐ着くそうだからこれからはセリーヌ殿が村を守ってくれるだろう。』
俺はゴブリンどもが落としたアイテムを床に並べながら受け答えする。
『ゴブリンが落としたアイテムはこれで全部だ。間違いがないか確かめてくれ。』
『『大丈夫だと思います。』』
『魔石が30個あるから、一人5個ずつ配る受け取ってくれ。』
俺は一人一人に手渡しながら、ねぎらいの言葉をかける。
『あと、先ほどセリーヌ殿から金貨を10枚頂いた。
お前たちメンバーには一人一枚配ろうと思う。それでよいかな?』
『滅相もございません。
全部勇者さまの手柄ですので我々は魔石だけでじゅうぶんです。』
そうなんだろうが、実際は違うので、ここは無理にでも渡すことにしよう。
『いや、そういうわけにはいかない。
命を懸けたのは全員だから、お前たちも金貨を受け取る権利がある。さあ手を出しなさい。』
俺は無理やり一人一枚金貨を握らせる。
『あとゴブリンが落とした装備品はすべて村に寄付する。ベントス村長に手渡すのでベリエル村の防衛に役立ててくれ。』
『『勇者さま、この度は本当にありがとうございました。』』
パーティーメンバー全員とハグして、お互いの健闘を称えあい、すべての作戦終了を宣言した。
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これで初期イベントは終了したかな?
思いもよらない褒美もいただいたし。俺はそんなことを考えながら騎士団が来るまでのあいだ、ミカとパーティーを組んで村の周辺を散策していた。
強力な護衛がいるので魔物が出ても大丈夫!
何故わざわざパーティーを組むのかというと、魔物から得られる経験値を共有するためだ。魔物討伐によって取得できる経験値は、パーティーメンバーに均等に分配される。奴隷やギルドメンバーは主の能力が与えられるが、経験値は配分されないのだ。
この世界の組織の事を少し説明すると、小さいものから順に以下の通りになる。
1、パーティー
2、ギルド
3、領主
4、王
5、皇帝
皇帝以上の位もあるかもしれないが、いまのところ確認されていない。皇帝は現在3名在席しており、それぞれ10名の王を擁している。
経験値が分配されるのはパーティーを組んだときだけで、他の組織はトップの能力が賦与される。またエンチャントは重ね掛けされず、強いエンチャントだけが適用される。例えば、ここの領民はセリーヌ領主の能力をエンチャントされているのだが、俺のパーティーに入ったら#勇者のステータス2倍が優先される。
ステータス2倍のエンチャントは規格外の能力賦与で、これ以上のものは今まで見たことが無い。
『ミカ、これから領主に会うがお前はどうする?』
『領主様の地下都市に行くのですね。でしたらわたしは元居た「狩人ギルド」に行って脱退の報告をしてきます。』
まあ、事後承諾だがしかたないな。。。余り波風を立ててほしくないが、ミカエルなら大丈夫だろう。
そんな話をしていると丁度セリーヌ領主の騎士団らしき人達がベリエル村へやってきた。
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『とまれー』
ひときわ立派な馬に乗った騎士が、大きな声を上げて行軍を停止させる。
多分この騎士団のトップだろう。
俺はベントス村長に連れられて、騎士団長らしき人と面談した。
『ふむ。お前が勇者の上杉奈月か。』
『そのようだな。』
俺は気圧されない様にしながら慎重に答える。
『勇者のわりにはあまり強そうでないな。』
ほっとけw
どうせレベル1だ。
『私はセリーヌ様の参謀を務めるメルカッツという者だ。レベル80の騎士だ。』
はぁ?レベル80って何の事だろう・・・
『レベル80ですか・・・』
『そうだ。まだあまり知られていないが
セリーヌ殿下がそうおっしゃるので間違いない』
ふむ。セリーヌ殿下は人のレベルが分かるらしい・・・
ますます会わなければならなくなった
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『セリーヌ殿下は人のレベルが分かるのですか?』
俺は少し探りを入れてみる。
『そうだ。セリーヌ殿下はレベルが分かる以外にも、常人ばなれした特殊な能力を持っている。』
俺はこの世に一人だけいる勇者だがな!
『例えば?』
『ここでは言えないゆえ、直接会って訊ねてみるがよい。お前が本当に勇者ならば殿下もお答えしてくれるかもしれない。』
セリーヌも俺に興味があるらしい。
『そうだな。そうさせてもらおう。』
『殿下の前では一切の隠し事は出来ない。
覚悟していかれよ、エセ勇者よ。』
ハイ一発で見破られましたよ。流石レベル80騎士様です。
『キサマ、わが主を愚弄するか!』
いや、ミカちゃん別にいいんだって。
『お前に決闘を申込む!』
いや、ダメだって言ってるやんw
『ミカよすんだ!決闘は許さない。メルカッツ殿、わたしの奴隷が失礼した。今の言葉は忘れてくれ。』
俺は素直に謝罪する。
『いや、ダメだなこの決闘、受けて進ぜる。』
このオッサン何言ってるんだろ?
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『ナッツ、私なら大丈夫。
こんな愚鈍なナイト、一蹴してやるわ!』
ミカはレベル差がどんなものか理解できない。
『いや、ダメだ。
こいつは強すぎる。
いくら君でも絶対に勝てない。』
俺はレベル80ナイトがどれくらいの化け物なのか分かる。しかも弓職の狩人では相性が悪すぎるのだ。
『ミカ、分かってないようだが、きみの弓はナイトには届かない。スキルで全部はじかれてしまうんだ。』
『大丈夫。私は速いわ。きのう一緒に戦って分かったの。あなたと共にいれば私は無敵よ。魔王にだって負けないわ。』
うーむ。どうやらステータスが上がりすぎて、自分の力に溺れているようだ。
このままでは殺されてしまう。
『もう話はついたか?』
メルカッツが近づいてくる。
『セリーヌ殿下からは多少痛めつけてもよいから、お前たちの力を見定めて来いと
言われていてな。その様子では殿下の手を煩わせる必要もあるまい。この場で二人とも成敗してくれる。』
ハイそうですか。逃げてもいいですか?
『面倒なので二人同時に掛かってこい。』
戦いは避けられそうもない。
領主の騎士団が到着して任務を解かれた主人公「上杉 奈月」
ミカと新婚気分でお散歩していると突然ハイレベルナイトのメルカッツに力試しを挑まれてしまう。
絶体絶命の窮地から逃れるすべはあるのか!?