村民会議
村民会議に出席しているベントス村長の元を訪ねた主人公の「上杉 奈月」
自分のジョブを確認するために、無理くり理由をつけてステータスチェックをしてもらう事に。
果たしてこの賭けは「吉と出るか凶と出るか?」
『ツクヨミの、光りに来ませ、奈の国へ!身分照会!・・・・・・・・・・
こっ、これはっ!本当に勇者さまだったのですね!!』
ベントス村長が俺の身分を確認すると目を見開いて、大きな声を絞り出した。
どうやら俺のジョブは勇者だったようだ。良かった。これで死ななくて済みそうだ。キット大丈夫。いや、絶対死なないよw
村長の周りには村民会議に参加すべく集まった人々によって、自然と輪ができ始めていた。
『これで私たちの村は救われるのですね。』
『あぁ、良かった。死ななくてすみそうだ。』
『勇者さま、どうか私たちをお守りください。』
もちろん、死なないよ。
みんなで魔物を追い払おうね。
だってオレ、勇者レベル1だから。
『勇者さま、あなたのジョブを村民に見せても宜しいでしょうか?』
『もちろん!みんなに見せて、安心させてあげて。』
どうせ大した情報が載っているわけではないしね。俺は鷹揚に答える。勇者アピールは大切なんだよ。村民の協力なしには、魔物の討伐は出来ないしw
俺は村民たちと一緒になって自分の身分照会画面をそっと覗いてみる事にした。
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名前:上杉 奈月
種族:海人
性別:♂
年齢:15歳
職種:勇者
賞罰:なし
所属:なし
階級:なし
称号:なし
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『おお、これは凄い。本物の勇者さまだ!』
うん。うん。俺に任せておけば大丈夫。
『伝説の勇者さまが、私達の村を救いに来て下さったんだ。』
たまたま死んで、飛ばされたんだけどねw
『記念に握手して下さい!』
握手は一人一回ね。手短にお願いします。
しかし・・・・・海人って何だろ?もしかして、人間辞めちゃっていたとはね。
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海人って、あれだよな。
クジラとかイルカの仲間だよな。
いわゆる海洋哺乳類ってやつ。
あいつらは、海のかなにずっといるから眠らなくても、生きていけるんだっけ?
あっ。もうあいつら呼ばわりするのやめよっと。これからは海人の♀としか、交尾できないしw
この異世界では人間以外にも、多種多様な人種が存在している。俺の知っている限りであげると
#人族
#海人
#鳥人
#猫人
#犬人
#侏儒
#小妖精
#巨人
だったよな。俺はこれから海人として生きていくわけか。
眠らなくても生きていける種族ってのは結構便利だったりするかな?
寝ているときが一番、無防備なわけだし。生き残れる確率はあがるのかな?
こんど海人に会ったら、生態とか聞いてみよう。
そんなどうでもいい事をグダグダ考えているうちに、村長は村民たちをまとめて、一致団結して魔物に当る体制をとっていくのだった。
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『みんなちょっと聞いてくれ!』
俺は目の前の初期イベントに集中することにした。
『俺のジョブは勇者だけど一人では何もできない。(だってレベル1だものw)
だから村で最も屈強な5人を選抜してもらって、俺とパーティーを組んでほしいんだ。』
村民たちはお互いの顔を見回している。
『みんなは知らないだろうけど勇者とパーティーを組むと、力が倍になる。素早さも倍になるから魔物相手でも後れを取ることはないだろう。』
これは本当の話だ。
勇者とパーティーを組むとメンバーを含めて全員、すべてのステータスが2倍になる。
この世界の#身分照会スキルでは細かなステータスを見る事が出来ないので、力が強いとか、足が速いとか、そんな象徴的な言葉でしか能力を表現しない。
しかし俺は神様からもらった#万物鑑定と言うスキルで、個々の細部にわたるステータスを確認することが出来る。(今は出来ないけどね)
『ベントス村長、ちょっと俺とパーティーを組んでくれないか?』
俺は村長を凝視して、パーティー編成の変てこりんな呪文を唱える。
『タラチネは、いかにあはれと、ヒルコ生む!パーティー編成!』
『ハイ。入りますね』
村長が俺のパーティーメンバーになった。
『じゃあ、力試しに、その足元にある大きな石を持ち上げてみてくれ。』
俺は村長のそばにあった重さ30キロはあろうかという岩を指さしてみる。
『こっ、これをですか・・・・』
村長は恐る恐る岩に手をかけて持ち上げようと試みるが、勢いあまって後ろに放り投げてしまった。
『『『うわっ』』』
そりゃびっくりするよねw
何しろ筋力が倍になったんだから。
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村長の派手なパフォーマンスが功を奏したのか、屈強な5人の村民が勇者のパーティーメンバーになるべく名乗りを上げてくれた。5人とも、明らかに俺より強そうだ。
『村長、あと一つお願いがあるんだが、
村にある一番良い装備品を集めてくれないか?力が強いだけでは魔物に相対するには心もとない。できるだけ準備万端で事に当たるべきだと思う。』
『そうですね。わたしも同じ意見です。早速村民みんなで勇者パーティーに装備して頂く武具を調達しましょう。』
村長はリーダーシップを発揮してテキパキと事務処理を担当してくれる。正式に勇者パーティーに招待したいくらい、とても有能だ。
俺は名前だけ貸している無能な勇者だw無能な勇者なりに俺は俺の仕事をしようかな。
パーティー編成の呪文を唱えたのち、勇者のメンバーになった者に声をかけた。
『みんな集まってくれ。魔物との戦い方をレクチャーするからよく聞いて実行してくれるとありがたい。』
早速パーティーメンバーの洗脳に取り掛かった。モトイ、訓練に取り掛かった。
臨時の勇者パーティーのメンツは
#村民×3
#農民×1
#狩人×1
何とも心もとないジョブばかりだが、贅沢は言っていられない。それに多分全員、勇者本人より強いだろうしw
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『みんな勇者と一緒のパーティーになるのは初めてだと思う』
『『『・・・』』』
『勇者と一緒のパーティーメンバーはすべてのステータス、・・・えっと、力とか素早さがすごく向上するんだ。村長が大きな石を軽々と投げれたのは勇者の力なんだ。』
『『『おおおー』』』
勇者アピール完了w
『今君たちは普段の倍の力があるはずだ。
いつもの倍、早く動けるし
いつもの倍、力があるから
普段通り動くことは難しい。
だから、かさ上げされた自分の力に慣れるところから始めようか。』
『『『『はい!』』』』
オッケーオッケー。洗脳完了!
モトイ。精神教育完了!
詳細なステータスの説明をしても何言ってるのか理解できないだろうし、オレも何言っていいのか分からないし、こんな大雑把な説明でとりあえずいいだろう。
実はステータスは6つの要素で出来ている。
#筋力
#瞬発力
#耐久力
がフィジカルで
#知力
#即応力
#精神力
がメンタルな能力値だ。
基本的な値はすべて10で種族や職種レベルで、それぞれの能力値が変化していく。死ぬ前は、はっきり見えていたから間違いない。
パーティーメンバーの精神教育が終わったので、村民たちが装備品を持ってきてくれた。
『丁度いい所に武器を持ってきてもらったので、みんなにふさわしい装備を渡そうと思う。
名前で呼ぶと連係が遅れるのでこれからはみんなの事を番号で呼ぶことにする。
一番は狩人くん
二番は農民さん
三から五番は
村民さんだ。』
俺は一人一人を指さしながら番号を割り振った。
人の名前を覚える事が出来ないのは内緒だw
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『一番、前へ』
番号で呼掛けると滞りなく狩人が一歩前に進んだ。
オッケーオッケー。いい子だね。
良く分かってらっしゃる。
もしかして、狩人くんは、軍隊経験あるんかな?
『一番にはこの弓矢を授ける。』
俺は一度アイテムボックスに入れて名前を鑑定した、#ロングボウを狩人に手渡した。矢は#ウッドアローだ。
俺のアイテムボックスには一個ずつしか装備品が入らない。レベル1なんだから仕方ないやん。
鑑定なしで自分のレベルが分かったのは、アイテムボックスの容量が一つしかなかったからだ。アイテムボックスの容量はレベルが上がる度に一個ずつ増えていく。今はアイテム一個しか入らないから勇者レベル1というわけだ。
いやー。冷や汗ものの、初期イベントだね。
ホント大丈夫なんだろうか・・・
一発殴られたら死んだりして・・・
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みんなに装備品を配り終わると、狩人くんの力を試してみることにした。
君だけが頼りなんだからね。
よろしく頼むよ。魔物を寄せ付けないでねw
『じゃぁ、一番の狩人くん!
村長が放り投げたあの石を#ロングボウで射ってくれたまえ。』
PTLらしく命令してみる。
距離は7メートルくらいか。普通の腕前なら外しようのない距離だ。後は、威力がどれくらいあるかだな。
『はっ。では狩人のスキルをつかいます。
アハシシマ、流され居つく、海の神!スタンショット!』
狩人が放ったスタンショットは、村長がぶん投げた石のど真ん中に命中して巨石を粉々に爆散させてしまった。
『『『うはっ!!』』』
勝ったな。
『一番の狩人くん!スキルは俺が命令したときだけ使ってくれたまえ。
むやみに使うと魔力が枯渇して、いざというとき撃てないからね。』
『了解です!』
うむ。やっぱ狩人くんは軍隊経験者で間違いない。初期イベントが終わったら正式にパーティーメンバーに勧誘しようかな?一文無しだから、やっぱダメだw
軍隊を維持するには、金がかかるんだよー。
『では戦術を伝える。
防御を固めつつ敵に接近し一番がまず弓矢でショットを放つ。撃ちもらした魔物は、盾役の二番が抑えて残りの者は周りから袋叩きだ。(俺は後ろで待機な)
その間狩人くんは魔物から距離を取りつつ周囲の警戒+援護な。オッケー?』
『『『はい!』』』
うむ。このパーティーは中々いけるかも。
初期イベント達成のために奮闘する主人公の「上杉 奈月」
やるだけの事はやった。
後は命を張って?もとい。命を張ってもらって、魔物を討伐するだけだ。