生き返る
神さまから、チートスキルをもらった主人公「上杉奈月」だが、無理な迷宮討伐が災いし、旅なかばにして、死んでしまう。。。
このまま消え去るのか?と思いきやゲームの仕様かリセットか?
神さまが、哀れと思ったのかは分からないが、リトライの機会を与えてもらう。
さてさて、二度目の異世界探求では、成功者になれるか!?
『げっ!』
思わず声が出てしまう。
これって、いわゆる死に戻りってやつか?
たしか、俺たちは迷宮最後の主に挑戦している最中だったよな。。。
それで、後衛職のオレは、魔王の即死魔法であえなく討ち死にしたような、気がしたんだけど・・・
やっぱ無理な討伐は、強行したらダメよね。
挑ませたのはPTLの俺なんだけど。
しかしこのゲーム?まさかやり直しのシステムがあるとは思わなかったよ。
他のパーティーメンバーはどうしたんだろ。ここには、俺しかいないような気がするんだけど。
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『しかし、ここは、どこなんだ?・・・
一番最初にここに来た、スタート地点の初期村かな?
ちょっと、前と、雰囲気が違うような気がするが。』
俺は自分を落ち着かせる為に、独り言をつぶやく。
うん。言葉を発せられる。
自分の声が聞こえるということは、ここはとりあえず、リアルではあるよね。
今回のリスタートでは、神さま(ゲーム管理者?)は出てこないようだな。
問答無用で強制的にゲームが始まったって事かな?
『しかし、あれだなパーティーメンバーもいないし、これからどうしよう。
まあ、とりあえず状況確認からしてみるか。』
俺はゲーム内で使ってきたコマンドの幾つかを唱えてみることにした。
『八ツ目さす、出雲立ち出る、アマテラス!ポイント分配!・・・・何もおこらない!?』
ステータス画面が出てこない!・・・ウゲッゲッ!
慌てて、自分の手を見つめ、別のコマンドを唱える
『ツクヨミの、光りに来ませ、奈の国へ!万物鑑定!・・・・・・。この呪文も使えないのか。』
俺は我を忘れて手あたり次第、思いつく限りの魔法やスキル呪文を唱えてみる。
『テレポート!』
『メテオシャワー!』
『ファイシャーショット!』
すべての呪文が、使えないじゃないか!?
ひょっとして、死んで生き返って、まったく別の世界に来ちゃったとか?
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俺は途方に暮れながら、ふらふらと半ば無意識に立ち上がった。
現在地は、どうやら草原の真っただ中にいるようだ。
前回のスタート地点は、馬小屋だったよな。
厩戸皇子みたいでワクワクしたけど。
RPGゲームにのめりこんでいた俺はあるとき神さまに誘われて魔法と剣の異世界に転生させてもらった。
そのとき100ものボーナスポイントをもらって、いろいろなチートスキルを、ゲットしたのだが今はそのすべてを失ってしまったようだ。
もしくはゲームの世界をリセットして、元の現代社会に戻ってしまったとか?
まあ、それはそれでいいか。
日本に帰ってきたとしても自分の居場所くらいはあるしな。。。
家族に会うのも久しぶりだなー
って、そもそも此処はどこなんだーw
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『あっ。村民だ』
思わず声がでてしまう。
みすぼらしい衣服を身まとった見慣れた人たちが、一本道をこちらに向かって歩いてくる。妙に懐かしい。なんでだろ?
慌てて身だしなみを整える。と言っても、何も持っていないが・・・
『もしかして、魔術師さまでいらっしゃいますか?』
集団の中のリーダーらしき年配者が声をかけてきた。
良かった、言葉が通じる。
『いや、まあ、そんなものかな。』
『高価なローブを纏われているので、てっきり高名な魔術師さまかと思いました。』
俺は自分の姿を肉眼でみてみると、確かに迷宮討伐で身に着けていた#アバドンローブを纏っていた。残念ながら#アバドンロッドは失ってしまったようだが。
しかし鑑定が使えないのは痛いな。ほとんどの情報がシャットアウトしている訳だし。たとえるなら、ネット環境が無い21世紀の現代社会に放り出されたようなものだ。
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とりあえず情報収集が先だな。気を取り直して村民に話しかけてみる事にする。
『ちょっと変な事を尋ねるが、ここはどこなんだ?』
照れ隠しに少し尊大な態度で質問してみる。何しろ偉大な魔術師さまだからなw
『えっと、ここはべリエル村の近くの草原ですね。わたしは、べリエル村の村長をさせてもらっている、ベントスという者です。』
『うむ。』
ここは元居たゲームの異世界で間違いない。べリエル村にはいったことは無いが、聞いたことくらいはあるからな。
時系列はどうなんだろう?迷宮討伐していたのは、真昼間のはずだったが・・・
旅の恥は搔き捨てとばかりにトンデモ質問を繰り返すことにした。
『今の季節や時間はわかるか?』
『・・・えっと、秋の始まりですね。
太陽は真上にあるので、正午くらいでしょうか。』
『うむ。』
迷宮討伐に失敗してから時間は余りたってない様だ。
秋という季節も同じだしタイムトリップはしていないかな?しかし妙に違和感がある。
俺が村長から得た情報を咀嚼していると、今度はべリエル村のベントス村長が問いかけてきた。
『あの、魔術師さま、お願いがありまして・・・
ベリエル村の近くに突然迷宮が出現して魔物が襲って来るようになりました。騎士さま達が来られるまで、村を魔物から守ってくれないでしょうか?』
ありゃ。初期イベントか?
初めてこの世界に転生したときも、初期イベントあったよな。
しかし、チートボーナスポイントもなしで、果たして俺に勝ち目があるのだろうか?
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『わかった。魔物を撃退するのに協力しよう。
べリエル村に案内してもらえるか?』
俺は一抹の不安を抱きながらも、頼まれごとは断れないという損な性格が災いして、から手形を発行してしまう。
言ってから後悔したが、もう遅い。綸言汗の如しだ。俺は皇帝じゃないけどねw
まあ、いざとなったら、また、死に戻りするだけか。痛いのは、やだけどね。
今よりも最悪の状況に、落ちる事はないだろうし。いや、今度はアバドンローブも失ったりして・・・
ベリエル村の村長はそんな俺の危惧を知ってか知らずか、怪訝な表情を浮かべながら村まで案内してくれた。
まあ初期イベントだから絶対に攻略方法があるはず!
あるはずだよね、神さま~~w
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ベリエル村に到着したら直ぐに村長宅の一室をあてがわれたので、自分が持っている武器を確認してみる事にする。
#万物鑑定のスキルがつかえないので、自分が着ている服がはたして#アバドンローブなのかどうかすら分からないのだが・・・
アイテムボックスは何故か使えたが、中身は空っぽだった。
期待が大きかっただけに、へこみ具合も凄まじいw
空っぽのアイテムボックスには、絶望しか入っていませんでした。
リターンマイアイテム
だから持ち物と言えば、体に装備している#アバドンローブ、#アバドンヘルム、#アバドングローブ、#アバドンシューズの4点だけだ。
多分アバドンローブセットで間違いないだろう。
あとは、このゲームをやりこんできた俺の脳みそに入っている、ノウハウの数々が手持ちの全武器だな。
ゲームの知識はこの世界でリスタートするのにかなり役立つはずだ。
NPCでは知りえない、幾多の貴重な情報を俺は持っているはずだよね。神さまw
だいたい、この世界の住人はNPCかどうかすら分からない。それぐらいリアルなので、賦与されたボーナスポイントを確認するまでは現実なのか、異世界なのか分からなかったくらいだ。
バーチャルリアリティーってやつ?
マトリックスの映画でも住んでいる人たちの大半は、機械が作った電脳世界をリアルと思ってた訳でしょ。
神さまに転生させてもらったこの魔法と剣の世界も、余りにリアルすぎるので現実なのか、電脳世界なのか考える事を途中からやめてしまった訳だしな。
まあ、どっちでもいいや。
とりあえず、いまは生き残ることが最優先だな。
この初期イベントをものにして、今度こそこの現実で成功者になってやる。
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しかしあれだな。俺って本当に魔術師なんだろうか?迷宮討伐に失敗して死に戻りするまでは、俺はチートポイントで6つのジョブを兼任していた。
普通この世界の住人は、一人に一つしか職業に就くことが出来ない。ジョブを兼任することが出来ても、せいぜい二つまでだ。
参謀役のセリーヌによると、複数のジョブをもっていたという英雄がいたそうだがあくまで伝説にすぎない。
セリーヌ生きてるかなw
思わずパーティーメンバーを思い出してうるっとしてしまったが、現実は切迫している。
パーティーメンバーの安否を確認するのは自分が生き残ってからで、いいだろう。
『えっと、アイテムボックスは使えるんだよな。』
俺は長ったらしい呪文を唱えてみる。
『八雲立つ、スサノオノミコト、国造り!アイテムボックス!』
以前は無詠唱で使えたスキルを唱えてみると、そこには異次元に通じる空間が広がって中身が入っていないアイテムボックスが展開される。
何度見ても萎えるよね。はやく何か入れたいw
『ふむ。アイテムボックスで間違いないな。アバドングローブが入るし。』
手に装備していた#アバドングローブと思われる物を、アイテムボックスに入れて名称を確かめる。装備品などをアイテムボックスに入れると種類が分かるようになる。アイテムボックスは、インターネットがないこの異世界の貴重な情報源になるわけだ。
アイテムボックスをつかえる職業は
#迷宮冒険者
#領域冒険者
#鍛冶職人
#武器職人
#防具職人
#装飾具職人
あと、#勇者か。
鍛冶職人はドワーフしか成れない職業だから、俺はそれ以外のジョブを持っている事になるな。
勇者のジョブを持っていたら魔物に勝てるかも?ジョブを確認出来る人に、確かめてもらうか。俺はベントス村長に身分照会してもらう事にした。
さて、なんと言ってジョブを確認してもらおうか。
ままよ、出たとこ勝負だw
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俺は自分の職業を村長のスキルで確かめてもらうため、あてがわれた部屋を出た。
『村長はどこにおられるでしょうか?』
すれ違った使用人に尋ねてみると、村民会議に出席しているという事で俺もチョット顔を出してみることにした。
コミュニケーションは大切だからね!
もしも・・・#身分照会してもらって農民とか村民だったら、どうしよう・・・
まあ、そのときはこっそり逃げ出そう。
ゲームの知識を使って、ひっそりと余生を送るのも一つの人生だしな。
もう死にたくないしw
いや、まてまて冷静に考えたらアイテムボックスが使える時点で農民ではないな。もしも、防具職人とかだったらアバドンローブセットを売っぱらってそれを元手に商売でも始めてみるかな。
そんなことを空想しながら、村民会議が催される村の広場に歩いて行くのだった。
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『えっと、・・・村長、チョットお願いしたいことがあって。』
『・・・ハイ?』
物覚えの悪い俺は特に人名を殆ど覚える事ができない。村長の名前もすっかり忘れていたので少し、どもってしまった。
ホント俺って失礼な奴だよねw
これも鑑定スキルが悪いんだ。
あんな便利なスキルなしでは、頭の悪い俺がこの世界で生きていくのは無理なんだってw
気を取り直して尊大にお願いしてみることにした。何事も気合が大切だよね。
『変なお願いなんだが、一度俺の身分を照会してもらえないだろうか?
もしかしたら、手違いで防具職人になっている可能性があるんだ。』
無理くりに無い知恵を絞って言葉をひねり出す。
『別に構いませんが。中央ギルドでランダムジョブでもされたのでしょうか?』
『実はそうなんだ。俺は元勇者なんだが上位職になれるかもと思って、中央ギルドで呪いをかけてもらったんだよ。』
とりあえず、元勇者という事にしてみる。
『伝説の勇者さまですか!まさか私が生きている間に、神話の世界の人と会い交えるとは思いもよりませんでした!?』
いや、まてw、元勇者って言っただろ。
『とりあえず、危機も迫っているし、村民会議が始まる前に俺のジョブを確認してくれないかな?』
恐れと疑惑の目を向けてくるベントス村長の眼差しを避けて、伏目がちにお願いする。あっ。思い出した。ベントスさんでしたねw
『分かりました。では、#身分照会いたしますね。
ツクヨミの、光りに来ませ、奈の国へ!身分照会!』
ベントス村長はよどみなく、身分鑑定の呪文を
俺の目を見据えながら唱えるのだった。。。
ご精読有難うございました。
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作品制作が、はかどります。
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