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いでよ!悪魔召喚!

「にしてもこの本偉い古い書物みたいだな……パソコンで調べても全くヒットしない」


それだけ希少価値が高いのかそれとも無名のガラクタを掴んでしまったのか。しかし今更後には引けない。


「とりあえず今後はこいつを使って召還士の単位をもらえるように交渉してみるか。ってなんだこれ」


パラパラとめくっていると一ページだけ色の違うページが挟み込まれておりそこには大きく魔法陣とその下に何やらつらつらと書いてある。どうやらこのページだけ違う書物から持ってきたようだった。


「脅すにしてもこれぐらいなら試してもバチは当たらないだろう」


新都は魔法陣を作成することにした。


「えっと、なになに……高級魔族の血かそれに応じた契約者の血。人間に概算すると10エーカーの湖を真っ赤に染める程のもの。これ本気で言ってるのか……」


たまたまオカルトマニアのHPで趣味で作ったであろう魔道書の翻訳ソフトを見つけそれを使いながら検索エンジンで10エーカーの広さを調べる。


「10エーカーと言えばサッカーグラウンド10個分くらいなのか。そんな量の血どうやって用意するっていうんだよ。あ、そういえば……」


茶色く褪せた冷蔵庫をギイッと開けるとそこにはいつ頃入れたのか不明のパンと水の入ったペットボトル。そして大量のケチャップが無造作に積まれていた。


「俺のケチャラーがこんなとこで功をなすとはな」


新都は冷蔵庫の中からケチャップを取り出すと本に書いてあるように不器用なりにその魔法陣を描いてみる。


「うおわっ」


魔法陣は紫に光り、部屋中に只ならぬ妖気のようなものが充満し始める。どれだけ召還士どころかモンスターでさえない新都でもこれからおぞましい何かを呼び覚まそうとしていることだけは直感で分かってしまう。


「んっ……久々に目を覚ました。私はとてもお腹がすいている。召還者よ、供物はもちろん用意できておるな?」


地面をうならせるような低い声が新都の身体を震わせる。その落ち着いていながらも威厳を感じるその声からはいくつもの歴戦を潜り抜けてきたのであろう覇者の貫禄を感じることが出来る。


「(さすがは古い書物に書かれてるだけあるな……もしかしたら召還した途端食べられたりするんじゃ……。いや、ここで屈したらダメだ、俺はあいつに復讐してやる男なんだ。ここは舐められないように最大限威厳を見せ付けて俺が主であることを教え込んでやらないと)」

「ああ……だが、モンスターの血は残念ながらないんだ。ケチャップでいいか?」

「ケチャップ? それは何だ? 何か別の生物の血か?」

「ああ。まあトマトっていう生物の体液みたいなもんだからあながち間違っては無いな。というか供物なのだから別にそれに見合ってれば何でもいいんじゃないのか? もしかしてモンスターの血が食べたいだけとかじゃないだろうな?」


新都は魔法陣越しで自分の姿が見えないこともあっていつもとは違い思った以上に強気な姿勢で相手を牽制してみせる。


「い、いいやそれは違う。一度封印されてしまった私をそちらの空間に現界させるにはそれに応じた供物が必要なのだ。決して私がそれを欲しているのではない」

「そうか、じゃあケチャップでも見合っていればいいんだな?」

「ああもちろんだ。供物として見合っていればだがな」

「(現界するっていうのはそんな自分主体の価値観でどうこうなるものなのか)」

そう思いながらも新都はさっそく次々とケチャップを搾り出していく。

ブリュリュリュッビチャッ。ブリュリュリュッビチャッ。

その魔法陣の中心にケチャップを流し込んでいくとみるみる吸い込まれていく。

底の見えない果てしない空間に消えていくケチャップはどことなく恐怖感を覚えさせる。

「はあっ……はあっ……」


いくらケチャップを搾り出すだけの簡単な作業といえど、もう何十本絞ったか分からない。あんなにあった真っ赤なボトル達はすっかり萎んで床に四散し冷蔵庫の中はすっかりパンと水だけになっていた。


「ええい、もうこいつらも喰らっとけ!」


全てのケチャップを使い切り自暴自棄になった新都はついでに入っていた腐って緑に変色したパンと水のペットボトルをそのまま魔法陣の中へ投げ込んだ。


「ううむ、ケチャップ。思った以上に良かったぞ。癖になりそうだ。最後の酸味のあるパンと少しの水分もおまけとしては悪くない」


魔法陣の主は思った以上に上機嫌なようだ。人間界では下手しなくても生ゴミでしかないこんなものでもどこかの次元の覇者にとっては希少価値の高い供物となったようだ。


「じゃあ……」

「ああ、待たせたな。我が最強の姿。その目に焼き付けると良いぞ」


紫の魔法陣がさらに強くなった地鳴りと共に光りを強くする。新都は余りの恐怖とこのアパートの耐震における脆弱さにおびえながら布団の中に逃げ込む。

カッと刹那。

そこには……幼女が立っていた。


「え……?」


新都はあまりの意味不明さに目を丸くする。先ほどまで抱いていた恐怖心はどこへやら。今はむしろ少しだけ下半身が熱い。

それもそのはず。その幼女は肌色が良く目立つ面積の少ない黒いブラとパンツでしかも屈んでいる状態の新都から見て食い込み部分が丁度見えているのだから。


「あら? あまりの私のこの見た目に声も出ないってとこかしら?」


幼女はピンク色の長いツインテールを手で一回梳くと新都の顔を覗き込んでニイッと妖艶に口角を上げる。召還前の声とは打って変わり幼さ全開の容姿に合った高くてそれでいて少し吐息交じりのエロスを感じる声だ。


「ああ……なんで、そんな……最近確かに大人系のサキュバスには若干飽きてきたなとは思っていたけど」

「何をブツブツ言ってるの? それよりそんなにお腹辺りを押さえ込んで丸まっちゃってよっぽど私のことが怖いのね。まあ無理もないか、あなたなかなか見ない種族みたいだけどエルフに似ているわね」

「……」

「……まあいいわ、私のマナはメア・ソニオ・モエウニ。フルネームで呼ぶと長いだろうから特別にメア様と呼ぶことを許可してあげるわ」

「しかもSキャラ……やっぱりそういうことか」

「何? 何か文句でもあるわけ?」

「いいえ! 滅相もございません!」


新都はいつも行っている風俗でのプレイのシチュエーションにあまりに似ているからかつい反射的にそう返事をしてしまった。その姿勢に悪くない様子のメア。最初に教え込んでやろうとしていた主従関係など一瞬で崩壊してしまうのだった。


「だよね。なんだったらあんたみたいなのが私を呼んだってことがどれだけ私の顔に泥を塗った行為か分かる?」

「はい、申し訳ありませんでした!」


頭を全力で地面に叩きつけ全力の土下座を披露する新都。これもプレイの一環で訓練されたからこそ成せる技である。


「ふん、なかなかあんた使い勝手良さそうね。特別に私がこの世界で果たすべき野望を果たすまではあんたを下僕として使ってあげてもいいわ」


メアは新都の頭にヒールのカカトを刺し、最高に侮辱した態度を見せ付ける。


「ありがとうございます!」


ここに召還士見習いと最強?悪魔の奇妙なつながりが出来たのだった。

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