異世界ニート、家出少女を匿う。
「う~ん、確かにここのお家でいいはずなんですけど……」
ボロアパートの中に一人の少女が立っている。その少女は見た目15歳程度であり、金髪の髪のストレートに花柄のカチューシャがワンポイント。オシャレなその水色の服からは何ともいい育ちの家の子であることが見て取れる。
しかしこの少女は今まさに非行に走ろうとしている。そう、家出である。
というのもこの少女、ある事情があって親とケンカをしそのまま家を飛び出したはいいがすぐ帰るのもなんだとSNSで『親とケンカをしちゃいました。誰か匿ってください』と打ったところある人物が快く受け入れてくれるということでのこのこと返信に書かれた住所にやってきたのである。
「そういえば私どうやってここに入ってきたのでしょう」
辺りは暗く、足場にはたくさんのゴミ。唯一認識できるものはチカチカと画面を光らせているノートパソコンのみ。
「なんだか良く分かりませんけど、とりあえず汚いことは確かです! ここは掃除するです!」
少女は知らない空間でとりあえず掃除を始めるのだった。
「ふう、こんなものですかね!」
数時間の集大成がそこにはあった。足元はきちんと地面が見えるようになり、テーブルや棚もすっかり整頓されている。キッチンが存在していたことも確認することが出来た。
「これは……なんでしょう」
しかし一個だけ不可解なもの。いや、詳しくは一人だろうか。
埃の被ったそれが掃除の最中地面から現れてきたのである。未だにハエがたかっているが死んでいるのか分からないためとりあえず少女は様子見をすることにした。
「死んでたらとりあえずケーサツですかね……」
ドンドンッガチャ
「ふう~やっぱりここの世界は色んなモンスターがいて住みづらいわねー、いっそのこと半分くらいなぎ払っちゃおうかな」
「(やばいです! 誰か来たです!)」
少女はとりあえず咄嗟に隅に片付けてまとめてあったゴミの山に身体ごとダイブする。こここでもし住人に見つかってしまっては警察を逆に呼ばれる立場になってしまう。
「全く、私にケチャップ買いに行かせるなんて何様のつもりよ。ねえ、あんたいつまでそうやって伸びてるのよ! おい!」
家の住人であろうその人物は黒く腐っているその生き物(?)に鞭を入れ始める。
「やばいです! 明らかにオーバーキルって奴です!」
「はい何でしょうメア様!」
しかしそんなことはなかったようだ。男は先ほどの腐った身体のまま起き上がりピンピンした様子でメアという人物の靴に頬ずりをする。その様はまさに飼いならされた犬が主人の帰りを喜んで出迎えているようである。
「はあ、全く。あんたが今後のバトルのために忍耐力付けたいっていうから簡単な火炎魔法で鍛えてあげようとしたってのにそんなことでへばってちゃ話になんないわ」
「はい! すみませんメア様」
「まあいいわ。そんなことより今日の日課よ」
そういうとメアはヒールをその場で脱ぎ、至極当たり前のように足を差し出す。
「さあ、歩き疲れた私の足をしっかりとほぐしなさい」
「はい、喜んで!」
するとその男は喜んだ様子でその小さな足に手をかけ顔を近づける。恍惚な表情でメアはそれをうっとりと見つめる。
「(こ、これは……不健全です! 良くないです!)」
少女はそう思い顔を覆った。こんなもの見たくないと心から願った。
ピシャアアアアアアアアッ
すると辺りは白く包まれ、気が付くと外にいた。
少女は辺りを見渡す。自分がさっきまでいた部屋、はたまたその部屋に辿りつくまでにいた場所とはえらくかけ離れた場所のようだった。
周りに雑居ビルはなく、藁で作ったような古典的作りの家。そして周りには人間のような見た目はしているものの基本的にきわどい服の人達が多く、見ているこっちが恥ずかしくなってしまいそうな服の者ばかりだ。
「場所は変わったみたいですけど結局また不健全です! ここはどこなんですか!」
少女は顔を手で覆い、指の隙間からきょろきょろと辺りを見渡す。
ふと横を見ると一人の男が倒れている。この男は見覚えがある。さっきまでいた家で幼女に不健全なことをしようとしていた人間だ。そう認識する。
「んん……」
「はわわ! 起きちゃいました!」
自分も変なことをされるのではないかと自然と距離をとってしまう。男は目を醒ますと急いで距離を取りだしお互いに見つめあう状態になる。
「「あ、あの……」」
お互いに声を発し、再び沈黙。しばらくしこれでは埒が明かないと少女から再び口を開いた。
「あの……あなたは?」
「え? お、俺でございますか……あの、その」
「ん?」
なんだかところどころどもっているしなんだか話しづらそうな様子に疑問を抱く少女。外国の方なのだろうか。とりあえず言語が通じるのかは分からないが自己紹介をすることにする。
「私実はいわゆる家出少女ってやつでして! 牧野菜々瀬って言います!さっきまで匿ってくれるって方の家にいたと思うんですけどあなたがもしかしてその方ですか!?」
「ああ、き、君が!?」
男は何かを察したのか目をイキイキとさせ、急に話が流暢になる。どうやら言語の壁ははなからなかったようだ。
「お、俺、俺がその、ライデン……だよ。SNSで君を匿うって約束した」
「やっぱりそうだったですか!?」
菜々瀬はやっと助かると思わずライデンと名乗るその男に抱きついてしまう。ライデンはそれにうおっと変な声を出し急いで身体から離して遠ざかる。
「あっ、私ったらつい! 失礼しましたです! で、ライデンさんはここがどこなのかご存知なのですか?」
その質問にライデンは困った表情を見せながらも立ち上がると、
「と、とりあえず村を探索しよう」
そう言って村人の方へ歩いていった。その背中をとりあえず追うことにするのだった。
ちょうど家から出てきて何やらキョロキョロしている女性にライデンは声をかけようとする。
「あ、ああ……」
「?」
女性はこちらには気付いたもののライデンのよく分からないアプローチに困惑した顔を見せる。それをみかねた菜々瀬は横から代わりに話しかけることにした。
「あの、何かお困りです? 何かを探しているように見えたですが」
「ああ、良く分かりましたね」
「はい、顔色を窺うのは慣れているですから!」
「はぁ、そうなんですか。あなた達見た感じ変わった見た目してるけど旅のお方?」
そう聞くその女性は見るからにきわどい格好であり、成熟しきったその身体、特に胸は身に付けている布生地の部分がはち切れんばかりである。
「は、はいです! そちらさんはすごく……気になる格好です……」
「そう? この村ではわりと普通だと思いますが」
「(これが文化の違いって奴ですか! とりあえず茶化しておくです)」
「で、ですよね! あはは」
「ふふ、面白い方ですね。あなた達年も若そうですしちょっと頼んでみようかしら。実はうちの娘がちょっと遊びに行くって言ったっきり帰ってこなくて……いつもならそろそろ帰ってきても良い頃だとは思うのですけど」
「そういうことなら任せて欲しいです! じゃあその子、呼んで来てあげるです!」
「本当ですか。 多分そんな遠くまでは行ってないと思うのですが、ピンクの髪の私の腰ぐらいの子です。ではよろしくお願いします」
「はい! 必ず連れてくるです!」
そう言ってキビキビと手を動かしながら村のさらに奥の方に探しに行く菜々瀬。それを後ろから金魚の糞が如く付いていくライデンであった。




