祐紀
祐紀 24歳は、大卒の新入社員。
大卒の新入社員で24歳というのは言うまでも無く、大学を浪人していたからだ。
本人はさほど気にしていないが、周りの同期は多少やりづらいようだ。
そんな祐紀は幼いころから空想が好きだった。
新聞の記事や図書館で得た知識に、拙い知識を総動員して空想をするのが好きだった。
その空想を友人と飲みに行った時に話し論議をする。
そのため友人からは変わった奴で理屈っぽいとよく言われていた。
友人に言わせると信州人(長野県)である祐紀は、頑固で融通が利かず理屈っぽいとのことだ。
実際に長野の人間がそうかは分からないが・・・。
そのような彼であったが、周りからは概ね好感が持たれ受け入れられていた。
あるとき祐紀は寝る前に、ちょっとしたことを考えていた。
チベットの仏教を題材にした死後の世界の本のことを。
かなり昔に読んだ本なので、記憶が曖昧になっている。
そんな昔の本をなぜか思い出して、物思いにふけっていた。
死後、肉体から解放された魂は、自由に世界を飛び回る。
しかし、自由を謳歌していると冷たい光がみえ始める。
その光は仏の光で、悟りを開いた者は躊躇無く飛び込むが、多くは恐怖にかられて近づかない。
暫くすると憤怒の形相の仏が現れ、光に行くように無言で促す。
しかし、多くの人は恐怖心からか、光や仏から目をそらし光に近づかない。
やがて時とともに輪廻転生が始まる。
それに気がつかない死者は、自由に飛び回っていたため休みたくなる。
地上をみると岩場の洞穴がみえ、そこで休みたい気持ちが生じる。
しかしそこで休むと畜生に生まれ変わるという。
動物などが住みそうな洞穴などを避け休むと、人間に転生して次の人生を歩むこととなる。
これは、苦に満ちた現世に産まれかわるということだ。
確かそんな内容だと思った。
でも・・自分の中で不思議と、この内容が違うという確信があった。
何故だろう・・。
まさか前世のことを覚えているのだろうか?
などと、うつらうつら考えているうちに、何時の間にか眠っていた。