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祐紀の成人の義

 祐紀は12歳になった。


男子は12歳で成人の義が行われる。

成人の義とは、大人として認められるための儀式だ。


 祐紀の《《成人の義》》は、神社の跡取りであるため盛大に行われた。

この儀式で、陽の国から姫御子である市も招待された。

同盟を結んでいる国でもあり、宗教的な諍いをさけるためにも友好関係があるとみせるためのセレモニーでもあった。


 成人の儀の当日、《《陰の国》》の重鎮、神社関係者、そして《《陽の国》》の重鎮、姫御子とその関係者が多数集まった。

成人の義では、成人する者に対し、参列者が成人に言祝(ことほ)ぐことから始まる。

そのため、祐紀は祭殿の所定の場所で来訪者を待っていた。

言祝ぎは、招待客が一人づつ部屋に入ってきて行う。

言祝ぎを行った者は祭殿を出て、宴会場に案内されて宴会を待つことになる。


 最初の挨拶に来たのは姫御子であった。

これは身分的にも、宗教的立場からも当然のことであった。

国内の宗教関係者は、国外の招待客の後にするのが礼儀であった。


 祐紀には、輪廻転生の前の市の記憶は残っていない。

そのため姫御子を見ても何も感じなかった。


 姫御子を含め招待客およそ200人に対し、一人一人から言祝がれる。

それが永遠と繰り替えされた。

最後の一人を終えたとき、祐紀はヘトヘトであった。


 とは言え、祐紀には宴会場に顔を出す前に、神様に皆から成人として認められ、言祝ぎを受けたことを報告しなければならない。

報告を行うため、急いで拝殿に向った。


 祐紀は拝殿横の(みそ)ぎの場で、白装束(しろしょうぞく)に着替え水垢離(みずごり)をする。

それが終わると、束帯に着替え拝殿に入った。


 拝殿では既に神様への奏上の準備が整えられており、休む間もなく神様への奏上を始めた。

決められた言葉の奏上であるので、間違えるわけにはいかない。

緊張しながら奏上を行い、やり終えた。


 その時だった。

祐紀は目眩に襲われ、気絶をした。

拝殿にいた宮司、および神職一同は大変な騒ぎとなった。

医者を急遽呼んだが、見立ては気絶だった。

渇をいれたり、頬を平手打ちしたり、気付け薬等、あの手この手で起こそうとしたが起き上がらなかった。

宴会場にいる来賓をあまり待たせるわけにはいかない。


 困り果てた宮司は、一計を案じた。

神前での成人の報告は無事に終わったが、その後、御神託を受けたことにし、御神託の対処まで暫し待って頂くということにした。

通常、御神託は内容により対処する時間が変わる。

そして御神託は部外者には内容など知らしめることはあってはならない。


 神様に対し、御神託を持ち出すのは躊躇(ちゅうちょ)されたが、祐紀の将来を考えると躊躇(ためら)ってなどいられなかった。

もし、御神託を受けたという嘘がバレると、祐紀の信頼性を損ねる可能性はあったが、賭けにでるよりしかたなかった。


 宮司は陽の国の姫御子である市の噂を聞いてはいたが、御神託を受けたことがあるか不明だった。

それは御神託の内容は関係者以外に知らせるものではない。

知らされた関係者も、よほどの災害ではないかぎり口を噤む。

それは御神託は神様から個人に降ろしたものなので、他言無用という不文律があった。

ただし、災害に関しては多数に衆知させる必要があるので例外だった。


 姫御子である市は、災害の御神託を幼き頃に1件だけ受けていた。

この災害の御神託は、ある神官の不手際があり恣意的に隠蔽された。

そのため、知る人は姫御子の周りに居るごく一部の神官のみであり、他国の宮司が知るよしもなかった。


 宮司は宴会に集まった来賓一同に、祐紀は今神託が降りて対応をしているので数刻待っていただくよう伝えた。

この御神託の話しを、宴会場にいた姫御子は無表情のまま聞いていた。


 御神託があれば、姫御子に下されたものでなくても姫御子には分かる。

何が御神託だ・・・とんだ茶番を打つ宮司だと、内心で軽蔑をしていた。

神に仕える宮司が、神様を持ち出し嘘を吐くとは何事ぞ、と憤慨していた。


 憤慨していたのだが、まさか自分がこの場で意識をなくすなどと考えてもいなかった。


 宮司が祐紀の御神託の報告をし宴会場を出た時、姫御子は突然の目眩に襲われた。

そして目の前の膳に倒れ込んだ。

お付きの神官は、突然のことにパニックとなり、宴会場は騒然とした。

それに気がつき、宴会場を一端出た宮司達はすぐに宴会場に戻り、神官に来客用の寝所に姫御子を運ぶように指示をするとともに医者を呼んだ。


 駆けつけた医師は姫御子の診察を行い、ため息を吐いた。

今日は、これで二人目だ・・・。

最近の若い者の間では、気絶でもはやっているのだろうか?

そんな馬鹿げたことを考えた後、首を振って苦笑いをするのだった。


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