対峙 3
馬頭は重い口を開き、帝釈天に語りかける。
「そうか・・。
何を言っても無駄みたいだな。
だが、俺等は犯罪をまだ犯しておらん。
それに犯罪を犯すかもしれないという噂さえ無い。
そんな俺達の組織を潰したければ好きにすればいい。
今日の歓迎は挨拶程度だと思い知ることになるだろう。
お帰り願おう。」
馬頭から帰れと言われ、帝釈天は頭を右手で軽く掻く。
「帰れと言われてもな~・・。」
そう帝釈天が言うと、今度は牛頭が帝釈天に話しかける。
顔に笑みを浮かべて。
「帝釈天様といえども、言いがかりで来たなら・・。」
「ほう、言いがかりときたか。」
「そうだ、力ずくで追い返す。」
「おい、おい、それは穏やかではないな?」
「良く言う。
部下から歓迎を受け、逆に部下を可愛がってくれただろうが。」
そう言うと馬頭はソファから立ち上がり帝釈天を睨めつける。
それを見た帝釈天は、目を少し細めた。
「ほう・・、馬頭も神力を使うか。」
「神力? なんだそれは?」
「?・・・、知らんのか?」
「聞いたこともない。」
この言葉に帝釈天はポカンとした。
その様子に牛頭馬頭は訳がわからず二人して顔を見合わせる。
「本当に神力というのを知らんのか?」
「ああ、聞いたこともない。」
「牛頭、お前もか?」
「ああ・・知らない。」
帝釈天は二人を交互に見る。
嘘を言っているようには見えない。
帝釈天は馬頭に言う。
「お前がソファから立ったとき、俺に神力を向けたのだが。」
「神力? いや、違う。」
「?」
「俺は殺気を放っただけだ。」
「殺気だと?」
「ああ、そうだ。」
「あのな、殺気と神力は違うぞ?」
「いや、俺は殺気を放ったのだ。
帝釈天様、貴方を叩きのめすと決め、殺意を向けたのだ。」
その言葉に帝釈天は目をしばたたかせた。
そして馬頭の言葉に独り言のように呟く。
「ふむ・・無意識に神力を出したか。」
この独り言に馬頭が反応する。
「何を分からん事を言っている。」
だが、帝釈天はこの言葉を無視し、質問をした。
「聞きたいことがある。
お前が今まで殺気を放つと、殆どの相手は怖じ気づいたのではないか?」
「ああ、そうだ。 俺は強いからな。」
この質問で帝釈天に分かったことがある。
帝釈天は最初、牛頭馬頭が神力を意識して隠しているのかと思っていた。
だが、この様子だとそうではないようだ。
おそらく威圧する時、危険を察知したとき、そして戦闘時に無意識に神力を発揮するのだろう。
それも誰に教わることも無く、神力を無意識で使用しているようだ。
天賦の武道家と言えるのかもしれない。
そう思う帝釈天も、その一人ではあるのだが。
帝釈天は、唐突な質問を馬頭に始める。
「お前の両親はどうした?」
「両親だと?」
「ああ、そうだ。」
「両親などおらん。 おれは孤児だ。」
「孤児?」
「そうだ。
物心ついたときは牛頭といた。
それ以前については記憶がない。
おそらく捨てられたのだろう。」
「何歳からの記憶だ?」
「三歳くらいからの記憶だ。」
「三歳でどうやって食い物とか得ていたんだ?」
「知らない大人から施しを受け、喰いつないできた。
それが何だって言うんだ!」
馬頭は帝釈天からわけの分からない質問をされ苛立った。
「まあ、落ち着け。
地獄という場所で三歳くらいの幼児が無事に育ったんだ。
それも偶然に施しをしてくれた大人が居てな。」
「それがどうした?」
「施した大人達を覚えているか?」
「え? ああ、おぼろげにな。」
「その大人はどうした。」
「突然にいなくなった。」
「ほう・・・何時?」
「俺達が自分達で食い物を得られるようになった頃だ。」
「ふむ・・。」
そこで帝釈天は押し黙る。
何かを考え始めたようだ。
そして、また馬頭に質問を始める。
「お前の周りで同じ歳の子はいたのか?」
「え?」
「だから同じ歳の子がいたのか?」
「・・・いない。」
「いなかったのだな?」
「ああ、周りには子供などいなかった。」
「やはりな・・・。」
「?」
牛頭馬頭の二人は、帝釈天が何を言わんとするかわからなかった。
帝釈天は一人納得していた。
そんな帝釈天が話しは終わりとばかりに牛頭馬頭の二人に言う。
「俺の質問の意味がわからなければ気にするな。」
「いったい何だっていうんだ! わけの分からん質問をしやがって!」
帝釈天はそれには答えなかった。
そして不適な笑みを浮かべたのだった。




