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異次元への転生・祐紀

 ()の国の隣の(いん)の国では、神社のご神体である鏡の前に突如として男の赤子が現れた。

ご神体は神社の奥、本殿で一般人は入れない場所に、突然赤子が現れるという前代未聞の出来事であった。


 神主達は、本殿から聞こえてきた赤子の泣き声に大騒ぎとなり右往左往した。

神聖なる本殿から、突然赤子の声が聞こえれば当然といえば当然である。


 本殿の中には宮司(ぐうじ)以外は入れない、そのため本殿から聞こえてくる赤子の声に状況を確かめたくても権禰宜(ごんねぎ)という立場の神主達では本殿を確かめようがない。

そのため血相を変えて神社の最高権力者である宮司へ報告に上がった。


 宮司は神主達からの報告を聞き、何か動物が本殿裏などで鳴いたのを赤子と勘違いしたのであろうと思った。

しかし、泣き声が連続して本殿から聞こえているという神職達の青ざめた顔を見て、訝りながらも社務所から本殿に向った。


 すると確かに赤子の声が本殿の方から聞こえた。

宮司は思わず早足となり、拝殿に上がり神様に奏上をし本殿に向う。

本殿の扉を開け、神様に失礼がないよう最新の注意を払いながら中を見ると、外陣と呼ばれる本殿の場所には何もなく、内陣の方から泣き声がする。


 「あり得ない・・」


 そう宮司は思わず呟いた。

そして神様に再び本殿内に入ることを奏上し、失礼がないよう慎重に内陣へと歩んだ。

ご神体である鏡を直接見ないようにしながら内陣の中を見て固まった。

神主達が騒いだとおり赤子がいた。

それもご神体の鏡の前に。


 しばらく宮司は動けなかった。

何をどう考えたら、このような神聖な場所に赤子が入れるのだろうか・・。

しかも本殿の入り口となる拝殿や、神社の周りで神主が奉仕している最中に忽然として現れたのだ。

それも本殿の、さらに内陣のご神体の前にである。

神がかりとしか言いようが無い。


 宮司はやがて我に返り、赤子に近づいて抱き上げた。

赤子は抱かれると泣き止み、キョトンとした。

そして宮司の顔をじっと見た後、ダァ~っと言って笑う。

宮司は純真無垢な笑顔を向ける赤子を抱いて、神様への失礼を詫び本殿を後にした。


========================


 赤子は、神様の使い、または神様の現世への降臨とも思えた。

もし、そうなら御神託があるはずである。

ただし、この時代、御神託を受けられる者は存在しない。

御神託をうけられる能力者など、神話に出てくる巫女ぐらいである。

そのため有力者に神から使わされた者、または神の生まれ変わりなどと奏上できない。

宮司は、赤子を自分の養子として育てることにした。


 この宮司は人格者で住民からも尊敬されていた。

神に真摯に仕え、誰であろうが公平に接し、権力やお金には(へつら)わなかった。

そして、浮浪者に対し国にお救い小屋の建設、および財源の確保など積極的に働きかけたり、孤児院の建設や維持に尽力していた。

そんな宮司のもとで祐紀は厳格に、且つ英才教育を受けて育つこととなる。


=======================


 祐紀が、やっと立って歩けるようになった一歳の時だった。

拝殿にヨチヨチ歩きで入ってきた。

神主たちは神社の跡取りでもあり、周りに割れたりするものもなく、子供が危なくなるようなものもないので、特に止めたり抱き上げたりすることもなく様子を見ていた。


 祐紀はヨチヨチと倒れそうになりながらも、本殿を目指すように歩いていく。

やがて、本殿へ向う入り口の前に、ストンと腰を落とした。

そして、なにやら手をたたいていたが、幼子がよくやる遊びみたいなものだろうと最初は見ていた。

そして両手をバァ~という言葉を出して開くと、幼子の体が白く光り始めた。

神主達は、何が起こったか理解できず、目を見開くのみであった。

やがて光りが眩しくて、幼子を見ていられなくなる。

光の中で、幼子がまるで誰かと話しているような、バ~とか、キャッキャという声が静まりかえった神殿に響き渡っていた。


 やがて光が収まりかけたとき、一瞬ではあるが巫女装束の妖艶な女性が半透明に見えた。しかし直ぐに、すっと、消えてしまった。

神主全てが妖艶な巫女を見たわけではなく、見た者も目の錯覚かと思い、巫女については人に話すことも、宮司に告げることもなかった。

ただ、宮司には祐紀が光ったことだけを伝えた。


 こんな事があった後、同じように拝殿に偶に姿を見せては、前と同じ場所に座る。

同じ場所になぜ座るのか、どうやって位置を決めているのか、神主たちにはわからなかった。

ただ、光ったのは前回1回だけで、それ以降は光ることはなく、巫女装束の妖艶な女性も見ることはなかった。


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