初めての戦い
「なんでこんな事に…」
俺は勇者として送り出された。そもそもなんで俺が勇者なんだよ。可笑しいだろどう考えても。魔物と戦ったこともないのにいきなり魔王討伐お願いしますって意味わからんだろ。こっちは素人ですよ?わかってます?そもそも馬車も重いし荷物も多い。一人用じゃない。疲れたー。本当に疲れたー。
炎神や雷神使いはなんで扱いが難しいからって稽古するんだよ可笑しいよー。折角の勇者だよこっちは?普通は勇者こそ強くしない?死んだらどうするの?本当に世界終わるよ?
ペチャンペチャン
「これがスライムか。確か下位魔物の最弱で素手でも勝てると言われているんだっけ?」
ドン!!
「痛てぇーーー」
何?スライムって弱いんじゃないの?痛いよ?しかもこういうのって普通こっちから斬るんじゃないの?なんで不意打ち?理不尽だよー。
「こっちだって!」
スルっ
攻撃が外れた。知ってた。普通に考えて避けるよね。誰も死にに行かないよ。せめて剣じゃなくて桑だったら当たるよ。
………
「何とか倒せた。」
「今は夜になる前に街に行かねぇーと危険だな。夜は中位魔物が現れることがあると聞いたしなその前に故郷を見に行くか」
そこには何も無かった。
そこは噛じられたように巨大な穴が空いていた。
「なんだこれ…何もないじゃないか!」
「ここまでやる必要あったのかよ…家も畑も何もかもない…死体1つないじゃないか…魔物はここまでやるのかよ。」
俺は怒っていた。ここに来てやっと失くしたものを気づけたのだ。
「これをやったのが魔物なら俺は魔物を倒さなきゃならねぇ。これが勇者の使命なんだろ。俺は神から魔物に復讐できるチャンスを与えられたんだ。だが今の俺では弱すぎる。修行の必要があるな。能力勇者もいまいちどういう能力か分かってねぇーし。後仲間も欲しい。初代魔王を倒した勇者は6人の仲間がいたと伝承に残っていた。でもやっぱりまずは修行だな。レベルスに剣の振り方でも習っとくべきだった」
魔物は東へ行く程中位、上位の魔物や魔人との出くわす可能性が高まる。ここ西の端では下位魔物ぐらいしか出現しない。だが雑魚の俺には高都合だった。下位魔物に殺されることは滅多にない。良い修行になる。俺の修行が始まった。
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「勇者が旅立って行くのを確認致しました。しかし本当に稽古もさせず良かったのですか?」
「構わん。我々凡人が教えたところで何も変わらん。勇者は特別なのだ。すぐにでも剣の使い方を学び、魔法も使えるようになるだろう。それに能力が勇者のことは分かったが具体的にどういう能力なのかは伝承にも残ってなかった。下手に教えて勇者を無くす訳にもいかん。ならば本人に任せるのが最適なのだ」
「ファックス王が仰るのなら。しかしあんな辺境な村の住人を判定機に掛けて他の国の王は黙ってませんよ?」
「結果として勇者が出現したのだから問題ないだろう。他にも炎神や雷神も現れたしな。」
「しかし良くあんな村にこれ程の能力を持ったものがいましたね」
「時に絶望は人を強くする。神から預かった種を突然変異させて、別の能力に変換するぐらいな。絶望が強ければ恨みが強ければその種は本人に適したものになる。あの村の住人は開花前の者が多かった。」
ファックスと大臣が話している。そこに研究所がやってくる
「王よ。今回確認されたのは最上位魔物アクシスだと判明致しました。確認された能力は暴食者。世界八代能力の1つです。魔物は能力を普通持ちません。あの村のものが持っていたのでしょう。魔人へと進化したと思われます。アクシスは初代魔王の側近。普通ならあのような村は襲わない。目覚めたばかりだと推測出来るので間違いないでしょう。」
「王よ!!あの村に暴食者がいたのだとしたらアクシスが暴食者を得たのは我らの原因。責任で国滅亡も有り得ますぞ!」
「何を言っている。例えそうなってもなんの為に炎神と雷神を国に閉じ込めて守護者の能力を持ったものだけを剣士にしたと思っている。向こうから攻めてくるなら高都合。私はこんな西の国だけでは満足してなかった。強者が勇者出現と伴い魔王討伐に向かう中この国は領域を拡大する」
「まさか兵士を辺境の洞窟に向かわせたのはそこにアクシスが封印されていると最初から知っていてその封印を解くためだったのでは?」
「いつでも戦える準備をしろ。勇者が成果を上げてすぐにでも行けるようにな。戦争を起こすぞ。」
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「めんどくせぇー」
俺は少しは東に行ったペクトルという街にいた。
そこで宿をとり修行の疲れとっていた。
「修行めんどくせぇー。全然強くなってる気がしねぇーしスライム強いし、勇者の能力何にもわかんねぇーしこちとら勇者なのに宿金取るし、荷物が多いからその分の追加料金取りやがるしふざけてるよなーあーあー疲れたよ!」
「お客様、お客様に御要件がおありの人がお見えになってます。いかが致しましょうか?」
は?俺に客?人脈なくて村から1歩も出たことなくて勇者だと言っても判定機ないから信じてもらえなかった俺に客?客って事は俺に用事だよな。俺を頼ってるってことだよな。しかないなー少し会ってあげるか!
「良かろう、通せ」
「畏まりました」
ガチャ。ドアが開かれた。
「あんたが自称勇者ね。」
そこには女の子が立っていた。なんだガキか。さてと大人の振る舞いをしてあげますか。確かレベルスが小さい子には優しくしろよとか言ってたっけ。遺言として守ってあげるか。
「どうしたお嬢さん?俺に何か御要件がお有りですか?因みに俺は自称じゃなくて本物の勇者ですよ?」
「あんたみたいなもやしが勇者なわけないわ」
「誰がもやしだと?俺はな生まれてからずっと畑を耕し結構筋肉あるんだぞ!見ろ!このカカシ君だって結構重いのに担げるからな!」
「カカシ君って君付け?笑えるわね。まっ勇者だと名乗った時点で笑けたんだけど」
「おいガキいい加減にしろよ俺に用事あるだと言っといて俺を馬鹿にするだけしといて結局用事ってなんだ!因みに俺は本当のゆーうーしゃーだ!!」
俺はいつの間にかレベルスの遺言を破っていた。人を選ぶなとは言ってなかったしな。
「あんたに用事?そんなのあるわけないでしょ?自称勇者を馬鹿にしに来ただけよ?それとも勇者だと証明できるの?本当の勇者なら私が言うお題ぐらい達成出来るわよね?勇者なら民衆が困ってたら助けるわよね?」
「なんだとーー!!良いだろうやってヤローじゃねーか!!」
「言ったわね。なら明日街の中央に来て。逃げんじゃないなよ」
「分かったよ!!」
めんどくさい依頼を受けてしまった。そもそも依頼が討伐なら俺は無理だぞ?スライムしか無理だぞ。
「よく来たわね!」
「勇者たるものたとえ挑戦状みたいなものでも受けるものだ」
「はいはーい。それじゃーついてきてねー」
「ちゃんと達成したら勇者だと認めて住民に俺は勇者だと言えよ」
「分かった分かったよ。」
「実際俺は何すれば良いんだ?」
「この村を夜困らせている北にある屋敷のゴースト退治よ。」
「ゴーストって中位魔物じゃねぇーか!」
ゴースト、一応中位魔物と部類されているがゴーストの中にも上下があり親玉等は上位魔物となる場合もある。しかもゴーストは人に憑依する場合があり中には魔人となるがごく稀である。
最上位魔物等に部類されることはない。
「村の作物などを盗むから迷惑しているのよね。城に退治願いを出したけど放棄されてるみたいなのよね。」
「下手に今更断れねぇー死にたくねー」
「なに?アンタもしかして勇者のくせに中位魔物も倒せないの?やっぱ偽物じゃない。」
「勇者が皆強いと思うなよ?俺はもと農家だとぞ。まだまだ修行の最中なんだ」
「どっちにしろ丁度良いじゃない。強くもなれるし、村も救われる一石二鳥じゃない!」
「やるだけやってみるかー」
そして俺達は夜まで待って北の屋敷に向かった。
まぁ、回復ポーションとかは王が大量に用意してくれたのがあるし、どうにかなるだろう。それにゴーストだし、スライムみたいにぷにぷにしてないし、ストレスも堪らんだろ。
「着いたわよ。」
「結構豪華な屋敷だな」
「確か前の村長のお爺さんの屋敷だそうよ。今じゃ誰も住まなくなってモンスターハウスになってるけど」
「その言い方だと他のモンスターもいるみたいだな」
「なんの為に夜を選んだと思ったのよ。ゴーストだけでいいの。さっさと入るわよ」
「はいはーい」
中は何も見えないくらい暗かった。モンスターが襲ってきてもこれは気づかないぞ。
「太陽光!」
「おぉ!!」
まるで昼間のように明るくなった。これなら見えるな。
「てかそれお前の能力か?」
「お前じゃないわよ。私にはラミルって名前があるの。これは能力じゃないわ。鍛えれば誰でも使える弱魔法の一種よ。」
「へぇー俺でも使えるのか。便利だな」
「あんたが本当の勇者ならこれより凄いのが出来るんじゃない?」
「うっせぇーな因みに俺の名前はレイだ。それよりどいつをたおせば良いんだよ」
「親玉は寝室にいるみたいよ。急ぐはよ。奇襲をかけないと仲間呼ばれてめんどくさいことになるわ。」
「既に何匹か俺達の存在に気づいているがな」
「なんで?」
「そりゃこの光だしな。気づかない方が無理がある。」
「なら戦うわよ。たかだか中位魔物。相手じゃないわ」
ざっと分かる限り6、7匹はいるな。倒せるかな?中位魔物と戦ったこともないのに一対一でまず戦わせてくれよ。
「来るわよ!」
キーン!剣の弾ける音が響く。
「剣士のゴーストよ!他には魔法ゴーストもいるわ。背中を取られないような戦いなさい。ゴーストは物理攻撃の通りが悪いからできるだけ弱魔法で戦いなさい」
いや、俺弱魔法使えないんですけど?その場合どうすれば?あとこのガキ俺より強くね?もう2匹片付けてるけど?え?俺みっともないんですけど。
「てりゃー!!」
カキン!!カン!!俺の攻撃はゴーストに受け流され通らない。
「背中危ないわよ!」
背中に熱さを感じた。
「なんだ?」
「背中に炎弾を撃ち込まれたのよ。魔法も使うゴーストがいるってわかるでしょ?もっと周りに気をつけて戦いなさい。魔法ゴーストは物理攻撃が効いて魔法攻撃の通りが悪いからあんたは魔法ゴーストと戦いなさい」
「先に言えよー!!」
ザク!確かに魔法ゴーストには効いた感覚がある。だが。
「熱!!こいつまた」
「何やってんのよ。ただ剣を振るだけじゃなく剣に何となく魔力を込めなさい。」
「魔力?どうやって込めるんだよ。」
「そんなの何となくに決まってるじゃない!!分かるでしょ普通。」
分からねぇーよ。
結局ゴーストは全部ラミルが倒した。
俺は何にも出来なかった。
「あんた。勇者どころかその辺の兵士より弱いんじゃない。まるで剣渡されただけの素人じゃない」
「だから俺は勇者と言われた途端準備だけさせられてすぐに旅出されたんだ!修行中って言ったろ!」
「まさか基礎の基礎も分かってないなんて思ってもみなかったわ。」
「悪かったな!!」
「どうするのよあんたがここまで弱いなんて思ってもみなかったわ。もう親玉まで後ちょっとなのよ。もう逃げれないじゃない。死んじゃうじゃない」
「そんときは俺を置いて逃げろ」
「あたりまえよ。ゴミを置いてダイヤを持って逃げるのは当たり前じゃない。」
「おい。言い過ぎだぞ。俺だってなさっきの戦いで強くなったからな。」
「ただ剣を降るだけの人形が何言ってんのよ」
「おいおい、間違ってねぇから何も言えねぇじゃねぇか」
「この先に親玉がいるわよ。」
「大きな扉だな」
そこにあったのは巨大は扉
この先から異様な雰囲気を感じる。レベルの差を感じるってやつか?
まぁ、ラミルが結構強かったし俺はまた修行させてもらいますか。
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レイ――能力勇者
ラミル―能力不明
スライム、下位魔物
ゴースト、中位魔物