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はじまり2
もしかしたら、人間たちなら、言葉を話せる自分を受け入れてくれるかもしれない。
オオカミは、深い森から人間の街へ出ていき、人間たちに話しかけた。
「こんにちは!ぼく、人間の言葉が話せるんだ!ぼくとお話してよ!」
オオカミを見た人間たちは、恐怖で走り去っていった。
「おい、狼が人間の言葉を話してるぞ!」
「気味が悪い!」
「早く逃げろ、襲われるぞ!」
オオカミは、本当の本当に、ひとりぼっちになった。
「どうせ、どこに行ったってぼくは受け入れてもらえない」
オオカミは、狼の群れからも、人間の街からも離れた森で暮らし始めた。
ここなら、誰にもひどい言葉で罵られることなく、平和に暮らしていける。
人も来ない、動物も住んでいない静かな森だったが、木の実や薬草などの食料や、泉から
豊富に湧き出る水のおかげで、不自由なく生活することができた。
最初のうちは森の外に小動物の肉を狩りに出たりしていたが、何度か前に所属していた群れに遭遇してしまい、それが嫌で次第に森の中だけで生活していくようになった。