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おクルマの営業  作者: たんぴん
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就職は出来たけれど

超初心者です。

思い付いたまま、現実の仕事の合間に書いています。

そのため支離滅裂な部分があるかもしれません。

ここがおかしいなど教えていただけると助かります。

更新は夕方が多くなると思います。

 ※この小説は完全なフィクションにつき、特定の団体及び個人とは一切関係がありません。また舞台は大阪となりますが特定メーカーを題材にしたり参考にしている訳ではございません。



 2015年4月某日

  北大阪豊川自動車株式会社では、入社式が執り行われていた。


  豊川自動車は、世界一位の販売台数を売上げ、日本市場においては自動車販売シェアの50%を誇り、更なる拡販に向けて力を入れていた。


  その豊川自動車の取り扱い車種の販社である、北大阪豊川自動車株式会社の本社は大阪府大阪市北区に構え、社員数は3000人を超える。

  自動車ディーラーとは何かというと、自動車(新車及び中古車)の販売を主たる業務とし、またそれに付随する割賦や自動車保険商品の販売だ。

  当然ながら、車検や点検などのアフターフォローも取り扱う。

 ちなみに、全国のほとんどのディーラーは豊川自動車とは資本上は何の関係もない。所謂フランチャイズと呼ばれる営業形態である。直営店は存在しているが、一目ではわからない。


  失礼な言い方ではあるが、非知的な女性との合コンなどでは、勘違いしてくれる為にウケが良かったりするものだ。

  それだけ豊川自動車の雷鳴は世間に轟いている。


  さて、北大阪豊川自動車では新入社員として、営業スタッフが40名入社し、整備士が50名入社した。


  俺は榊原勇気さかぎばらゆうき。2015年に北大阪豊川自動車へ営業スタッフとして入社した。

  大学生の頃は、麻雀やパチスロに明け暮れて就職活動もろくにやらなかった。だが偶然に内定が出たため、考えなしに入社を決めたのだ。

  俺は割と自動車は好きであるし、父親の車には頻繁に乗っていた。


  入社式は本社である大阪市北区の建家において、営業スタッフ及びエンジニアスタッフがまとめて集められた。

  大阪市北区は、梅田や北新地があり、大型商業施設が建ち並んでいる。また、ビジネス街でもあるため人の往来が絶えない。

  北大阪豊川自動車の本社はきらびやかな場所からは少し外れ、天満駅近辺に位置している。

  それでも、日本一長い商店街である、天神橋筋商店街があり、活気には満ちあふれた場所だ。


  入社式では社長や常務取締役などが列席し、なにやら下らない話をしている。内心ではまともに聞いている人間などいないだろう。

  どんなにきれいごとを並べ立てようとも、自動車販社の離職率は群を抜いて高い。ネットの掲示板でも名前を漢字で書ければ入社可能と言われているほどである。

  10年勤めると同期の人間は2、3人程度まで減ることも多いらしい。


  嫌になったら辞めてフリーターでもいいやなどと宣う俺は、控えめに言ってもクズだろう。


  式次第は進行していくが、寝そうになっており、何も聞いていなかった。知らぬ間に入社式は終了し、翌日以降のことを総務部が話している。

  どうやら一ヶ月の本社研修の上で、配属店舗が決定するようだ。


  死ぬほどつまらない式もやっと終わり、出て行こうとすると、肩を叩かれた気がして振り返った。


「お前寝てたろ」


  1人の男が俺を見つめていた。咎めるような眼差しではなく、茶化したような表情だ。

  俺もつられて笑いながら答えた。


「ああ、クソつまらんから寝そうやったわ。俺は榊原勇気や。宜しく」


  男は即座に応える。


「俺は米田孝や。宜しく。LINE交換しよや。」


  俺は頷いて携帯を取り出した。すぐさまIDを教えその場で連絡先を交換した。


  米田は身長170cm程度で筋肉質の肉体に短髪の色黒だ。

 スポーツをやっていたのだろうか、脳味噌まで筋肉なのは第一印象でわかった。


  米田とは最寄りの天満駅まで一緒に歩いた。パチスロが好きだとか、飛田新地に行った話などで意気投合した。

  飛田新地の話はあえて語らないでおく。


  米田は家が守口の大日だそうだ。


「お前大日やのにJRで帰るんか?」


  俺がそう聞くと


「そんな訳ないやろ。谷町線や。じゃあまた明日な」


 と、言って天神橋筋商店街を天神橋筋六丁目駅方面へ歩いていった。わざわざ律儀な奴だと感心したものだ。

  俺はそそくさと、JR天満駅へ入り、自宅の最寄りの森ノ宮まで環状線に乗り込んだ。

  環状線は数分に一本電車が来るし、天満駅へのアクセスも良い。森ノ宮から天満なら下手をすると自転車でも問題なく通える距離である。


「ただいまー」


  家に帰ると母親が興味津々といった顔で飛び出してきた。


「どやった?やってけそう?」


  過保護というかなんというか…俺は面倒くさそうに応える。


「ああ、まあまあや。じゃあ俺一眠りしてパチンコ行くから4時に起こしてや」


  母親はぷくっとふくれて、やれやれといった表情で首を振りながらリビングへ帰っていった。

  ああ、明日から毎日仕事か、だるいな。


  明日からの研修では、しっかり起きていられる自信はない。



 - 翌日 -


  研修は朝9時半から始まり、営業スタッフとエンジニアが別のカリキュラムを組まれていた。

  営業が学ぶ内容としては、基本的な自動車の知識を始めとしてコンプライアンスや新車販売時に必要な書類などである。

  敢えて言及するなら「FR車とは何か」や「A車のJC08モードの燃費値は30kmだ」など基本的な知識を学習する。

  特にコンプライアンスに関しては煩く注意される。


  だがほとんど人間はコンプライアンスの意味などわからないだろうなと思った。

  みなみに、米田は横の席になるが俺より先にうつらうつらとしていたのは内心で笑うほかなかった。

  こうして研修の日々は過ぎていった。


  研修の終盤、米田のほかに仲良くなった相沢と三人で飲みにいくことになった。


  天神橋筋商店街には様々な店が並ぶ。飲食店のほか、怪しげな雰囲気の古本屋や豹柄の服をおいたいかにも大阪のおばちゃんといった服屋など様々だ。


  我々三人はとある中華料理店へ入った。

  米田の乾杯の音頭で宴は始まった。さすが体育会系だけあって、こういうときの進行は上手い。


「そういや、知り合いに聞いたけど配属店舗によって全然ちゃうらしいで」


  珍しく真剣な表情で米田は話す。俺と相沢はどういうことか聞いた。


「車売るにも客いないと無理やろ?一元客に当たれるかどうかと客を先輩から引き継がないとマジで厳しいらしいで」


  確かに一理はある。


「でもまあ、なるようになるやろ」


  はっきりとした見通しはないが、楽観視しているのは事実だ。

  明日には正式な辞令が交付され、配属店舗が決定するが、正直に申し上げれば、今日までの研修は温かった。

  高校いや、中学校の授業のような程度の低さであった。


  宴もたけなわであるが、ラストオーダーの時間が来た。米田はまだまだ呑み足りぬ様子だが、仕方がない。


  明日からの真の社会人生活に、不安は隠せない。サッと煙草に火を着けた。つられるように、米田も煙草を吸い始める。

  燻る煙草の煙が、自分の心情を表しているようだ。


  会計を済ませ、退店したが外はまだ肌寒い。


「じゃあまた明日」


  俺の発言に二人は相槌をうって、軽く手を振り帰っていった。

  帰りの電車にはサラリーマンが多く乗車している。今までは気にも留めない存在ではあったが、妙に気にかかってしまった。

  疲れて寝ている人、ノートパソコンで資料を作っている人。十人十色様々な人が居る。

  俺の学生気分は抜けていないが、実質的にはこの人達と同じ立場であるという認識が、心の靄を助長した。


  明日からは、この電車内の狭い景色も違ったものになるのだろうか。

  そう考えているうちに、森ノ宮駅に到着した。

 短い区間のため、考え事をしていると乗り過ごしそうだ。


  そして酔いも程々に、暗く、まだ寒さの残る夜道を歩いて帰宅した。


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