第八話 「党首」
「皆!構えろ!」
その言葉が響き渡ったとき、既にノートはコアを構えていた。もちろんレドもだ。
もはや自分の目の前しか見えていなかった。それほど集中していたのだ。
「ようこそ。私の国へ。」
聞いたことのない声が聞こえた。次第に心臓の音が速くなるのを感じた。
ラスターと対面した時と同じような空気を感じた。
気付くと、その男は自軍の前方に立っていた。
「それほど緊張しないでくれ。私たちは、少しばかり歓迎の挨拶をしようとしただけさ。」
私「たち」という言葉が引っかかり、辺りを見回した。
どうやらもう手遅れらしい。
既に大量の軍人たちが辺りを取り囲んでいた。
「さて、我が兄上。駄目元で君に問いかけよう。私の軍に入る気は無いかね?」
嘲るように男は尋ねる。
「前々からしつこいな。入る気など無いさ。」
真っ向から反対する彼。
「そうか。残念だ。」
次に瞬きした時、彼らは既に戦闘態勢に入っていた。
「これが最後の忠告だったのに。」
一瞬、時が止まったような錯覚に陥った。
だが
その感覚に浸っている間もなく
軍人たちは一斉に剣を交え始めた。
と、その一方で前方の男は立ち去ろうとしている。
「ノート!レド!奴を追うぞ!」
その言葉を聞く前に、彼らは走り出していた。
「来るか?ならばまずは彼らを倒すといい!」
目の前に大量の軍人が流れ込んでくる。
「やったろうじゃん…!」
ノートはその重たい斧のような剣を軽々しく振り回す。その腕力は、やはり現実界の人間とは思えない。
十秒経たないうちに、およそ半数の軍人が倒れていった。
宙を舞う紅い雫さえ、もはや華々しい。
だが倒せど倒せどその数は一向に減らない。
「ラスター王!これではきりがない!先に貴方だけでも行ってください!」
そう叫んだのはレドだ。
「大丈夫なのか?」
「この程度、容易いもんです。」
「ノート君は?」
「この程度で倒れるほど、弱くないですよ。」
その自信気な返答に安心したのか、彼はネスの行った方向へ駆けていく。
「そういや、お前ってコア扱えるんだな。」
ふと、ノートが口を開く。
「何をいまさら。この程度の力はあって当然です。」
「ま、そうだよな。」
駄弁りながらも、二人は目の前にいた敵を一掃してしまった。
後方を振り返ると、自軍の兵士がまだ戦っている。が、恐らく優勢だ。
その光景を後目に、二人は一息つく。
だが休んでいる暇はない。
「さて、と。そんじゃ、王様追いかけますか。」
「待ってください。」
「?」
「なんか、おかしいと思いませんか?
相手はこの国に残っている全兵力を集結した軍団。
これほど簡単に一掃できるはずがないんです。」
「まぁ、確かにな。」
「んじゃなんだ。あいつらは下っ端だってか?」
「恐らく、そうだと。」
「とにかく、今は先を急ぎましょう。王でも一人だけでは心配です。」
「あぁ、そうだな。」
城を目指し、二人は駆け出した。
「お前は、まだ『先』に行ける。」
途端に、ノートは足を止めた。
それはレドの声ではなかった。
聞き覚えのある声だった。
幻聴かと思ったが、確かに背後から聞こえた。
「…気のせいか。」
ノートは、また駆け出した。




