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イデア  作者: 天汰唯寿
第4部 「終止符」
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最終話 「新たな時代を」

静かに滴る雫。

視線の先の命さえ音も無しに消えていく。



「さて、レドが先に来たということは、クロブはもう来れないって事だな。」



「!!」






消えていく体。


動かない足。



脳裏に浮かぶクロブの姿が感情を奮い立てる。




「まさかクロブも……!?」


「まあ何でもいい。残ったのがお前なのは変わらない。」




男の顔は逆光で見えなかった。


ただハッキリと見えたのは、レドの体が消えていく光景だけだった。





「……全て、失ったのか。俺は。」



「あぁそうだ。大人しく現実界に引きこもっていれば良かったものを。


何も余計な感情など起こさずに済んだのに。」





「いや……違う…!」

「何が違う?お前は第三者だ。

この戦争に頭を突っ込む必要も無かった。


お前はいずれくる自分の世界の終焉を見るだけで良かったんだ。」




「………おまえは」


「?」



「さっき…痛みが分かるかとかどうとか言ってたな。」



「ああ。それが?」







「俺はよ。前々から独りきりだったんだ。



誰にも認識されなかった。

誰にも必要とはされなかった。



ただ




……居場所が欲しかったんだ。





それこそが、俺の痛みだ。








これがお前と同じ痛みだとは言わない。

だがその点、お前の短所が見えるんだ。








お前は…ただ他者を傷付ける事でしか自分の居場所を見出せないッ!!!!



そんなヤツが、人を指摘出来ると思うなッッ!!!!」











……

















「……所詮死体が偉そうに。




貴様の命は、仲間を死なせた時に既に死んでいただろう?」


「死んでいたかもしれないな。



だが、まだ俺はここにいる。」




「ならやってみるがいいさ。何が出来る?

剣を振るうか?手品を披露するか?


お前はもう何も出来やしないだろう……!?」




瞬間、男は指鳴らしの構えに入る。


ノートの動体視力はまだ動けている。

彼は自分の指から指輪を抜き、それを投げつけた。




パチンと音が鳴る。





指輪が砕け散る。


するとノートは、ロクに動けもしない足で地面を蹴り上げた。




「無駄だと言っても分からないかノート!!!」






もう一度指が鳴る。



今度は片手のコアを差し出した。








瞬時に彼のコアは砕け散った。




「もう戻れないなら……残す物もあるまい…!」






高く舞い上がるノートは、力無い腕でもう一方のコアを叩き下ろす。







しかし軽々と止められる。


更に続けて指が鳴る。






止められたコアも砕け散り、その力でノートは遥か後方へと飛ばされた。










詰み(チェック)だ。」


最後の一発が城に鳴り響いた。



























異音が鼓膜を突き刺す。



真っ赤に染まる視界。








ぼやける目線の先。

















彼の体は二、三転げ、壁に打ち付けられた。















「…………ッ…か………」



「終わったな。ノート?」











彼は呼ばれたことすら感じてなかった。



ただここにあるのは、マッチにも満たない、小さな灯火だ。






「………はは…………ょく…きか……」












「しかし、まだ息があるとは。恐れ入った。





トドメの一発をもう一度刺しておこう。」





彼は歩いていた足をノートの数歩前で止め、もう一度手を構えた。











「…今度こそ終わりだ。ノート!!」



指に力が入る。




























……






「…!?」


瞬時、彼は振り返った。




風が真横を過ぎていったようだった。







正確には風だけでない。



気配だった。








「……クロブ!!!貴様まさかいるのか!!?」
























返事は来ない。


















だが替わりにまた別の異音が聞こえた。








鎖……何か鉄の音だ。











「……!!!?」









彼はまた振り返る。



















音の正体はそこに居た。





















そこに居たのは、鎧の男だ。






「……誰だお前は…!!?」












鎧は剣を片手に、そこにいた。







次の瞬間、鎧は目にも止まらぬ速さで剣を振るった。


「ッッ!!?これはッ!?」






風圧に吹き飛ばされる男の右足には大きな傷。


先程の一撃でついた傷だ。




「ッ…コイツまさか……








ノートの守護霊(ガーディアン)!?」




吹き飛ばされながらも頭は動く。





気付けば壁はすぐそこで、ビルから飛び降りたような衝撃が全身を走った。














「………ルカス…」


「!?」



痛みを抑える男の前、鎧は既に構えている。



「な、なぜ名を…!?」


「スベテシッテイル……キサマガ、ワタシヲコロシタノダカラ……!!」




「…!」



この時男は気付く。


鎧が、剣を持っていない事に。






「な、剣が……なッ!?」



続けて視界に入ってきた光景。











遠くに見えるノートが起き上がっている。








剣を突き立て、そして立っている。












「カレハ……モウ、トオクナイ。」


「一体何を…!!?」





「…モウ……ジブんでは戦争を止められない。」

「!」





「だから、せめての事を残すのさ。





貴様を、この城に封印する。


この自分ごと…!!」




「なにィ…ッ!!?」



「お前を野放しにするよりマシさ。

そうだろ…?……ルカス…!!」








遠くの彼は剣を振りかざす。













彼の体から分離されたのは七つの光。


今にも消えそうな、弱々しい光。





「旋律……!?」


「これが旋律の…残された力だ。

これが終われば、旋律は光を失って世界に散らばる。」











振りかざした剣をもう一度突き立て、彼は言ったのだ。






「……封印(イラ)。」



七つの光は最後の輝きを見せ、辺り一面を光で包んだ。










……





































ルカスがもう一度目を開けた時、鎧は目の前から消えていた。





見えるのは遠くのノート。









いや、もうノートとは認識できない。
























何の変哲も無い鎧の騎士が、そこに眠っていた。

「何処かのページに文字が刻まれたようだ。」

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