第六十五話 「禁忌の血縁」
部屋を満たす夕暮れ色の弾幕。
数えるなどという野暮な事はやっていられない。
「追尾弾……?…ならば余計話は早い。」
両手に持った剣を腰に戻し、そして放つ。
「反射!!」
瞬時に弾の軌道が反転する。
「少し鈍いんじゃないかァ…?ノート!!」
反転した弾は彼の体の僅か外を行く。
「…!」
すかさず斬撃を一発。
しかし止められてしまう。
ノートは大地を蹴り上げ宙に舞い上がり、もう一方の剣を叩き下ろした。
しかし奴の姿は消え、それさえ当たらない。
「クッソ…どうしたらいい…!?」
…
彼の動きは完全に止まっていた。
必死に頭を回す。
どこかに不審な点は無かったか。
……
…
そこでふと思い出した。
彼の目は、見逃してはいなかった。
「…そういえば…確かに見えた……
…何者かが、ヤツの後ろに…!」
彼の目に映っていたのは、言うなれば背後霊のようなモノだった。
確かに、それが弾を弾いたのだ。
「守護霊…?だが可視化は…」
ノートの顔は青ざめた。
これに気付いた時点で、もうポーカーフェイスでいるのは不可能だった。
…
「……なるほど…。気づいたのか?その顔。」
「!!」
やっと捉えた姿は遥か後方にあった。
「…不思議だろう……?守護霊が実体化するなんて、な?」
「……まさか…守護霊は…!!」
「これ以上は話せないな。」
瞬間的に彼は視界から消えた。
「聖柱」
突如突き出す水色の光。
微かにノートの顔を掠めて、天井まで貫いた。
「ッ…!」
それでは終わらない。
続けて何本もの柱が上がった。
どうにか剣で防ぐ。
されどもその力に圧倒されて体勢を崩す。
ノートは打ち上げられた。
「仕方ない……反射!!」
突き出た柱が90°曲がり天井を刺した。
「まず解くべき謎は二つ…奴の瞬間移動の方法と、守護霊について……
これが分からなければ勝ち目はないッ…!」
次から次へと柱を折り曲げ、床にも天井にも穴を開けていく。
「数打ちゃ当たるなんて訳は無いぞ?ノート。」
彼はいつの間にか、隣にまで接近している。
瞬間、拳を叩きつけられた感覚に陥った。
彼は1秒も無く地に落ちた。
この一連の流れを整理する猶予もない。
「ッが…!」
吐き出す花弁は、ノートの限界を表していた。
「さぞ苦しかろう?」
「まさか…さっきの一撃で詠唱曲の能力を…!?」
「当たり。もっとも、身体能力を取ることは出来ないけどね。」
ノート自身は分かっていた。
かつての龍と戦った時に見せた、自己再生能力。
あの能力は、詠唱曲のものであることを。
しかしそれが捕られた今、回復能力は常人と同じである。
「消滅の名の如く…って感じか…!」
能力さえ消滅させる事が出来る。
それが禁忌と呼ばれる由縁なのだ。
「あぁ…おかげで政府は俺らを毛嫌いした。」
「…?」
「分かるか?この痛みが。」
彼は歩み寄ってくる。
人差し指の先はノートの頭だ。
指先が怪しく燃え上がる。
次に起こり得ることは言うまでもないようだ。




