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イデア  作者: 天汰唯寿
第4部 「終止符」
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第五十一話 「逆境の嵐」

ノートはコアを構え直し、

目の前に落ちた悪魔を力の限り弾き飛ばした。


「うッグ…!!」

数百メートル後ろへ飛んで転がった。






次にダガーを飛ばされたら、いよいよ対処できるか怪しい。


となれば、森を抜けるしかない。


このまま森を抜けるには、背後の方向へ走り抜けなければならない。


「だが…そう簡単に行かせてはくれないだろうな。

クロブ、出口までの距離は?」


「走って2分ぐらいだ。」

「ネガモルトは?」

「まだまだ来るぞ。見えてるだけで10体はいる。」


「どうにかここでカタを付けるしかないな。」




どうにか体を起こしたベリックは、ノートを睨みつけた。


「このまま生かしてはおけないな…!」

「やれるならやってみな。ここから俺は、ただの一本も攻撃は食らわない。」


「言ってくれるな。」


砲台のごとく放たれるダガーが弧を描いて飛ぶ。



(エンプティ)!」


ここに来てノートは初めて能力を使った。


覇気がベリックごと突き抜ける。

一瞬にしてダガーが動きを止め、真下へと落ちていく。


鈍い金属音が篭って響く。



「多種多様な能力(アビリティ)……これで現実界の人間と言うのか…」


「さあ、次はどうする?」



高らかに声をあげて牽制する。

狙いは、隙を作らせる事にあった。



「……行動が極端かつ単純なものとなれば、それだけ隙が生まれる。


そこを突くしかない。」




よたよたとフラつきながら、ベリックは体勢を立て直した。


そして叫ぶ。


鉄泉(スチールフロウ)!!」


聞いたことのない術だ。



注意深く辺りを観察していると、遠くから耳をつんざく金属音が聞こえた。



それは、またベリックの背後からだ。



「なんだ、ありゃあ!?」




渦巻く灰色の影。


この一本道を丸ごと飲み込めそうな横向きの竜巻。



その正体は、数えきれないぐらいのダガーだ。


不吉な音を奏でて、此方に向かってくる。



「横だ!避けろ!!」




咄嗟の緊急回避で、転がるように横へ免れた。


竜巻の尾はまだ見えない。



「どうなってるんだこれは…!」


左右へ避けた所為で、クロブの安否が確認出来ない。



「くっそ…どうする?」


必死に考えている、その時だ。




急に暗くなった。


「…まさか!?」



上を見上げると、鋼色の渦がノートの頭上にいた。

完全に此方を向いている。



「あの渦、自由に動かせるのか!?」


ここで反射(リフレクト)を使えば、あの渦を跳ね返せるだろうか?



「…いや無理だ!反射(リフレクト)は剣に当たった物しか跳ね返せない!


仮に使ったところで、先端の数本しか効果が及ばない!」



あと数十メートルでダガーの嵐が吹き荒れる。


ノートは後ろの方へ跳ねるように避けた。



しかしそれで終わる訳がない。



ノートの位置が分かっているのか、

竜巻は地に着いたと同時にノートへと向きを変えた。



輪廻(ループ)か?…いやあの技は、ある時間軸の自分を犠牲に別の時間軸の自分を呼ぶ技…。


有効なのは、不意打ちのような『分かっていれば避けられたのに』という技だ…


この状況から輪廻(ループ)しても、成功確率は半分以下。意味を成さない…!」



この間、たったの1秒。

だがそれさえ致命傷への一歩だった。


体の前に両手で大剣を構える。


竜巻は直撃だ。




呆気なくガードは解かれる。


続いてダガーの刺さる痛みが全身を突き抜け、取り巻く嵐に大きく吹き飛ばされた。




全身に咲く紅い花。



そして軌道に舞う紅い花弁。




次に襲い掛かったのは更なる痛みだった。


ノートは森にあった大木に打ち付けられていた。




「ウッが…!!」


頭もノーガードで当たった。

意識が朦朧としている。




そんな中でまだ微かに聞こえる音があった。


さっきのダガーの渦の音だ。



「……ハァ…ハァ…」


口から滴る花弁。



「…駄目だ……もう動けない…!」



徐々にノートの意識は消えつつある。


最悪の状況が積み重なっていった。

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