第三十三話 「魂」
「三人だからって、何が出来る?」
「そうですね…
…貴方の能力を見破るとかか?」
「!…お前らにバレる訳あるまい!」
普段の余裕そうな顔が、ふいに崩れた。
「そうだな、『俺ら』には分からないかも知れない。
けど、『俺』にはもう分かった。」
「!?」
「なぁに、難しい話じゃないさ。」
一番最初に、お前はダガーを振り撒いた。
俺だって、一度は何の意味もない行動だと思った。
なんせ、俺の目の前に落ちたんだからな。
でも、確かに意味はあったんだ。
「…お前、途中ダガーを投げてなかったよな?」
「!?」
「お前はダガーを何処からか出現させて、それをどうやってかこちらに攻撃させたんだ。」
「…他に判断材料は?」
「あぁ、俺が反射でダガーを弾いた時さ、
何故か何本かが空中に静止してたんだよ。
おかしいなぁと思ってよーく観察してたら、
次のやつも、次のやつも
軌道が全く変わらないんだよ、
それまでのダガーと。」
「…軌道なんぞそう簡単に判別できまい。いつ確信に変わった?」
「そうだな。絶対に一本しか放ってないはずなのに、死角からもう一本来た時か。
あれだけはどう見ても物理的な説明のしようがない。」
ベリックの顔からは、もう余裕など見えなかった。
「…いや、大丈夫だ……落ち着け…
能力がバレたからといって支障が出る訳ではない…!」
「ま、この話に夢中になってる方がヤバいんじゃないか?」
「…!」
ベリックの目には、二人しか写っていない。
ノートとレド、その二人しか。
「ありがとよ、最後決めさせてくれて。」
「!」
クロブはベリックの背中をとっていた。
「まずい!」
振り向きざまに鋼の雨を降らした。
しかし手遅れだ。
「距離も分かってないのに、俺に当たるのか?」
適切な判断も出来ない相手に、もう躊躇う事は無かった。
乾いた銃声が遠く鳴り響く。
儚くも綺麗なその花は、
見事な一輪を咲かせ堕ちていった。
ベリックの体が闇に溶けて消えていく。
死んだかは分からない。
だが少なくとも重傷以上である事は確かだ。
「…そうだ!旋律は?」
「……それが…無かったんだよ。」
「無いってどういう?」
「私が…説明しよう…」
言葉を刺したのはラスターだった。
全身が既に紅く染まり、足取りが重い。
いつ倒れてもおかしくなさそうだ。
「…!国王!」
「…いや、私の事はいいんだ。それより、旋律だ。
ノート。その様子じゃ、旋律について少し話されたようだな?」
「あぁ。レドから聞いた。」
「……グリが壊滅した時代より更に昔、この世界には数多くの国が乱立し、戦争が相次いで起こっていた。
理由は相変わらず、領土侵略だ。
日に日に増す屍。
一進一退の攻防
その惨劇の中で、
ある男がその戦争を止めたんだ。
丁度、君がやろうとしているようにね。
それは…私の祖父だ。
祖父はただ一つ、どんな感情にも染まらないという思いを込めて「グリ」という国を作り上げた。
そして当時の先導者達は、それまで誤ちを命で償った。
この時に死んでいった先導者達の魂こそが、旋律だ。
少しでも何かを後世に継ぎたいという要望があってそれを作ったのだとか。」
「…じゃあ、一つだけ台座が余ってるのは何でだ?」
「……元は、祖父も自害して、旋律の一部になるはずだった。
だが、これほどまでの急な革命を起こした事を面白く感じない輩もいた。
祖父は、彼らに暗殺された。
そうして魂は漂い、台座に向かう事は無かった。」
「じゃあ、どうするんだ?
魂なんざ見えるものじゃないし、ましてや虫捕り網じゃ捕まえられないだろ?」
「…ノート。」
「なんだ?」
「家族同士の魂は、結構似るらしいな。」
「…!……まさか!」
「ああ、そうだ。
私が、最後の台座を埋めよう。」
ベリック戦については、後に解説しますので、今しばらくお待ちを。




