第三話 「救済者」
ちなみに、コアっていうのはかなりお洒落です。
普通の武器よりデコられてるんです。
だんだんと砂ぼこりが晴れていく。
そこには一人の影があった。
地に倒れた大柄な男、立っていたのは、勇者だった。
二つに割れた大斧、対してコアには傷一つ付いていなかった。
完全に砂ぼこりが晴れ、残った騎士達は惨劇の終幕を目撃した。
彼らの顔には怯えが見え始めていた。
いつしか騎士達の群れは無くなっていた。
深紅に染まった町、澄んだ青い空
たくさんの思いが交差した小さな事件は、たった一人の人間によって幕を閉じた。
「お見事だ。旅人君。」
背後から声が聞こえた。久々に聞く、冷静な声だった。
「…見てたのか?」
「力試しだと言っただろう?面接官のいない面接なんてあるかい?」
「じゃあ、結果を聞かせてくれよ。診断結果を。」
急かす心をなだめるように少し間を置いて王は言葉を放った。
「君は、戦争を止めるために来た。しかも、このブランシュに。
つまるところ、このブランシュの味方に入るという決意があるんだね?」
「当たり前さ。」
「ならば…」
また少し間をあいた。そして、その固い表情がほぐれ、彼は笑いかけた。
「歓迎しよう。新しい仲間としてね。」
挑戦者もまた、笑って見せた。
すると、王はふと思い出したかのように話し始める。
「…ああ、そうだ、まだ名を名乗っていなかったな。
私はラスター・ブランシュ。君の名前を聞かせてくれ。」
何もためらうことは無かった。だが、なぜかどんな言葉を放つか迷った。
だが、恥じらいながらも、彼は名乗った。
「…スター・L・ノート。まあ、ノートとでも呼んでくれればいい。」
後日…
―意思の波長が合う時、人間は新たな舞台へと進む。―
とある本のそんな文章を見つめていた昼下がり、
ノートはまどろみかけているところだった。
心地よい小鳥の歌声、不意に吹き抜ける爽やかな風
…まあ、建物の建築音だけが不快だったが。
と、もう一つまどろみを邪魔する不快音が遮った。
電話が鳴っていた。
「…もしもし?」
眠気を最大限に抑え、どうにか電話を取った。
「ノート君かい?王宮に来てほしいんだが。」
「…ふぁ~い。」
「…ゆっくりでいいから来てくれ。じゃあな。」
不意に出たあくびまでは抑えられなかった。
なんとなく、ラスターが苦笑い気がした。
数分後、ノートは王宮に到着した。
だいぶ歩いたはずだが、いまだ眠気は消えなかった。
王宮会議室にて
「来たかノート君。眠気は覚めたかい?」
「いや、眠い。」
「とりあえず、席に座ってくれ。君に話したい事がある。」
茶番のような会話はすぐにかき消され、話題が移った。
ざっと数えて部屋の中にはラスターの他に数名。
彼は以前と同じような固い表情をしていた。
とりあえず、ノートは最も近い席に座り話を始めた。
「で、要件っていうのは?」
単刀直入のその質問に、彼は軽く深呼吸した後、悪戯な笑顔を見せながら言った。
「とある作戦に乗ってほしいんだ。ノワール軍との全面対決さ。」




