第二十三話 「夜想」
記録 Ⅱ
Ledo High-notes
科学者 28歳
ブランシュ国家臣。四大元素を操り、思想界でも一二を争う戦闘力を持つ。
ラスター城
「無事だったか。三人共。」
「なんとかな。危機一髪だったが。」
「さぞかし大変だったろうな。
さて、こちらも何かと進展があってね。
まずは、この手紙だ。」
右手から差し出されたのは、古びた紙切れだった。
「…あの男からですか?」
「その通りだ。」
早速、中身を見る事にした。
御機嫌よう、ラスター。
そして、ノート。
君達が戦力を増強しているのは知っている。
まあ頑張ってくれ。
さて、私のプレゼントには満足しているだろうか?
あれは、恐らく知っているだろうが
負の感情から出来た代物だ。
「ネガモルト」、とでも名付けようか。
君達が強い思想を抱く限り、彼らは幾らでも牙を剥くだろう。
これは忠告であり、最後の会話だ。
次に会う時は、まともに闘える事を願っているよ。
何故だかこの手紙からは悪意を感じられない。
むしろ、親しみさえ湧いてくる。
カリスマ性というものなのだろう。
「ここまで来たら、後戻りは出来ないな。」
「ノート。」
「?」
「君は、本当にこの戦争を止めるつもりなのか?」
「何を今更。」
「これ以上進めば、本当に命を落とすかも知れない。
それでも君は進むと言うのか?」
「別に俺はどうなろうと構わない。
ただ、仲間を傷付けられるのが嫌なだけだ。」
「…そうか。」
「取り敢えず、今日はもう遅い。早く帰って休むと良い。」
中央通りのとある宿
食事を済ませ、ノートはくつろいでいた。
うたた寝しそうになりながら
椅子に揺られていた。
その眠気を払ったのは、電話のベルだった。
「…もしもし?」
「ごめんよ。まだ帰れないんだ。」
「あぁ、ちゃんと帰るよ。」
「…早く寝るんだぞ。ハイド。」
たった数十秒の会話だった。
だが、何故だか涙が出そうになる。
「……」
0時を告げる鐘の音は確かに響いていた。
しかし最早、彼には静寂に聞こえていた。
翌朝 ラスター城
「では、一旦話を整理するとしよう。」
ノートやレド、そのほか関係者全員は会議室に集められていた。
「まず今回、主犯は『影』と名乗る謎の男。その下には何人か幹部がいると見られる。
そして一番の問題は、その男は消滅の能力を持っているという事だ。
こちらの戦力を全て束ねど、敵うものではない。
一刻も早く、七つの旋律を集めなければならない。」
永遠流れる彗星の草原
「残りは四つか。」
「頑張り時だな。」
そう話している時にも一つ、また一つと夜空が輝く。
そう。夜空だ。
この地帯は、理屈こそ無いものの
永遠に夜なのだ。
風一つない。
あたりを遮る物もない。
そこには、ただ一面の草原があるだけだった。
「ここの何処に旋律があるんだ?」
「地中なんじゃないか?」
「また手作業で掘り起こすのか。」
「いえ、地中ではないようです。」
「じゃあどこに?」
「この先をずっと行って、その終点にあるそうです。」
「そこまで歩くって言うのか?」
「えぇ。」
かくして、もう一時間は経つだろうか。
一体いくつ星が散るのを見たか分からない。
ただ無心に前へ進んでいた。
と、奥に方にぽつんと置物が現れた。
「…!あれか?」
そこにあったのは、確かに台座だった。
台座が目の前まで来た。
「早く回収しよう。ノート。」
「言われなくとも。」
手を差し出した。
譜面は一瞬にして光に変わる。
怪し気に光る紫の光。
ノートを取り込んだ光は、感情を見せた。
猜疑心か。はたまた探究心か。
なんとも言い表せないその心こそ
この旋律の核心なのだろうか。
「第七楽章、『夜想曲 ノクターン』。」
「…なんか、あっさり過ぎたな。」
「いや、どうやら簡単には帰らせてくれなそうです。」
レドは遠くから何十もの足音を聞き取っていた。
すぐにその正体は目視された。
大量のネガモルトだ。




