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イデア  作者: 天汰唯寿
第2部 「守護の旋律」
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第二十話 「回旋」

記録Ⅰ

Star Lost Note

科学者 31歳


妻と息子を家族に持ち、彼の地にて剣を置いた。

一行は、苦労の末戦闘に勝利した後、

洞窟を突き進んでいるところだった。



「レド、これどこまで続いてるか分かんないのか?」


「もし僕の推測が正しいなら、もうすぐ終わると思いますよ?」




響く話し声、水滴が滴り落ちる。

いつぞやの森と同じように

光など差し込まない。


先を見ればただただ深い闇があるだけだ。

だからと戻る事も出来ない。


うずめく恐怖には、前に進む気力だけが頼りらしい。












一筋の光が見えた。

光に音は無い。だが、聞こえた気がする。




深淵に閉ざされたその光は、か細く届いた。






一行は台座の前まで辿り着いた。




楽譜へゆっくりと手を差し出す。

二度目と言う事もあり、今回は迷いを見せない。




瞬間、楽譜は光となった。


淡い青色に光る光


光はノートを包み、そして消えていった。






期待を抱き、そして儚く期待を捨てる。

そんな悲哀の感情を感じる。


それはある種、人間の生き方を示していたのかもしれない。


輪廻。

それに対する悲しみだろうか。

だが心のどこかで、そのたごまった感情が解けていくのを感じていた。






「第五楽章、『回旋曲 ロンド』…。」


「知ってたのか?」


「いや、知っている訳は無い。だが、ふと思い浮かんだんだ。」


「だがロンドって言ったら、普通は最終楽章じゃ無いのか?」


「…そういえば、古い時代、世界の旋律は五種類だったのだとか国王が言っていたような……。」





「…新たに二種類の楽章が生まれたんで、この中途半端な楽章にロンドが入ってるって事か。」















「…さて、あとは五つか。」


「それじゃ、さっさと地上に戻りますか。」








終わり無き海


一行は、また海を向いて立っていた。



「んで、次の旋律は何処だ?」

「えっと、たしか海中です。」





「海中?」

「そうです。」

「そんなん、どうやって行けと?」


「海割って、凍らせた上で通ればいいじゃねえか。」


「毎回毎回強引なんだよなぁ…」





「だが、それだと当てずっぽうに海を割ることになるぞ。もしかしたら、旋律ごと叩き斬るんじゃないか?」



「じゃあ、僕が風で海を巻き上げて…」

「お前万能すぎるだろ。」





さて、海は非科学的な光景となっていた。


海からは水が消え、

空中には渦を巻く氷の礫が止まっている。

極寒の台風が通り過ぎたかのようだった。



そして、正面には海底神殿がぽつんと立っている。

もはや海底では無いが。



「じゃ、行きますか。」

「お前が敵じゃ無くて本当に良かった。」












海底神殿


奥の方からは微かに光が届いていた。

恐らく、旋律の光だろう。



「あれだな。」


「早めにお願いしますよ。いつまで氷が持つか分かりませんし。」



「ああ。分かってる。」




そう、

この世界が平和な世界なら、このまま旋律を手に入れられただろう。



だが今はもう、平和ではない。




突然、奇妙な音が大地を震わせた。

かなり激しい揺れだ。

「地震か?」



揺れの正体は、地中から現れた。


獲物を確実に仕留めるであろう爪

冷やかに此方を見つめる青い眼

瑠璃色に煌めく肉体は、その強さを物語っている。




威嚇代わりの一声は、

もはや恐怖を感じる暇すら無い事を悟らせた。

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