第十一話 「策士」
光の輝きを一時的に強め、その場のいる者の視覚情報をシャットアウトした時にのみ、光速で移動できる。それこそが「太陽の剣」の真骨頂である。
「まあ、今の君に言っても何にもならないだろうけどね。」
「貴様…!」
「国王!」
一足遅れて駆けてきたのは、レドだった。
「この様子だと、もう後の祭りか。」
それに続き、ノートもやってきた。
「さて、まだやる気かい?」
「…なぜだ。」
「なぜ、奴らが来なかった?」
「?誰だ、奴らって。」
「僕らが、そんな従順な犬に見えたの?」
その見知らぬ声は玉座から聞こえた。
「…な…!」
「もう用済みだ。アンタは。」
それは一瞬だった。
ネスの心臓らしき部分は、
何やら針のようなもので貫かれた。
「誰だお前は!」
「まったく、ひどい茶番劇だよな。この世界軸は。こんなB級物語みたいな終わりだなんて。」
「質問に答えろ!」
「質問できる程の立場なのかい?君。」
完全にラスターを舐めきっている。
その男は、皆が気付いたときには
既に玉座の前に立っていた。
仮にそこらの物陰に隠れていたとして
何の物音も立てずにそこまで行けるだろうか?
「残念だよ。ネス国王。
君なら使い物になると思ってたのに。
まあ、結局は僕が先導者になるつもりだったけど。」
「お前、一体何者だ。」
「しつこいなあ。まあ、君らが『光』とか『闇』って言うんなら、俺らは影かな。」
嘲るような笑みで応える。
彼に恐怖はないらしい。
「さて、確か、ノートって言ったよね。そっちの君」
ノートを指差す。その強気で舐めているような態度を前にしても、彼は全く怯む様子を見せなかった。
「なんだ?」
「聞いたよ。中々強いんだって?」
軽く間が空き、彼は語りかけた。
「単刀直入に言う。」
「もし、こちら側に来てくれるのであれば、
この国に居る仲間達全員を見逃そう。」
「君達は既に殺されたも同然の場に居るんだ。
この国から君らを出さないなんて、簡単な事なのさ。」
確実に殺す手段を持っているかのように言う。
止まったようにも思える時間
凍りついた空間
心の弱みにつけ込む言葉
その溢れ出るような自信は、確実に他者を怯えさせる事ができるだろう。
しかし彼は答えた。
「それ、俺に聞くような事なのか?」
「と言うと?」
ノートの思いは揺るがなかった。
「俺はこの戦争を止めるために来てるんだ。なのに
わざわざ戦争を再燃させてどうする。」
「……
そこまで正義感に溢れてるとはね。
君は判断を見誤った。
ここで、消えてくれ。」
もうそこには、不適な笑みさえ無かった。
無数の弾丸が飛んでいく。
闇より暗い、更なる闇。
数秒の間に、何発もの弾が飛んできた。
身体を掠めて飛ぶ無数の弾。
レドでさえ避けきれなかった。
腕にほんの少し掠っただけなのに、腕は大きく腫れた。
異常な破壊力
そこにラスターは一瞬で悟った。
「ヤツは、
禁忌の能力者だ。」




