第十話 「宿命」
ノワール城前
なんとか…いや、とてもあっさりとここまで到着した二人。
前を向くとそこには、まだ大勢の軍人が待ち構えている。
「なんだ、どんだけいるんだ。ここの軍は。」
ふとノートから愚痴が漏れる。
「だが苦戦はしてないだろう?」
「まあ、そうなんだが。」
しかし妙である。
本当にここまですんなりと来てしまった。
相手は全兵力を集結した軍隊。
こんな軍人ばかりが集まる訳がない。
「…なあレド。」
「わかってる。だが、今は王に追いつくことだけ考えよう。」
ふと前を向きなおすと、既に兵士たちが向かってきていた。
ノワール城 最深部
「そろそろ、降参しないか?ネス。」
深紅のカーペットはいたるところが黒焦げになっている。
そこら中に立っているおびただしい数の柱は、大半が崩壊している。
もはや、見る影もない。
「嫌なこった。いつまでも兄に従うのが弟じゃないのさ。」
「終わりにしよう。兄弟喧嘩は飽きた。」
彼が剣を突き刺すと、周辺から闇が吹き上がりだした。
それは、なんとも深く、憎悪を、正義を感じた。
じっとしていると、吸い込まれそうな色だ。
「そういう乱れ打ちは、命中率下がるからやめとけって言ったろ?」
兄の剣は、さながら太陽の輝きを見せた。
それは、全てを弾き返さんと言わんばかりの、慈愛を、正義を感じた。
見る者全てを、優しく包み込むような色だ。
ラスターは、残った力を全て出し切るような思いで
剣を振るった。
その剣から放たれた光は、闇の柱をもろともせず、飛んでいく。
だがネスは、やはりその程度では倒れない。
軽く手を振るい、闇で打ち消す。
「それで倒れるとでも?」
「思ってないさ。だが、光は、闇を潰すぐらいの力はあるとも言ったろ?」
「闇にだって光を討つぐらいの力はあると言ったぞ。」
「それだから素人なんだ。」
剣を振りかざす。輝きが一層増した。
「太陽の剣!」
思わずネスの目が眩む。
「ただ、目を眩ませるだけか?そんな技、意味ないだろう!」
いない。
さっきまでそこにいたラスターがいない。
「『眩ませる』だけでいいんだ。それだけで。」
ラスターはネスの背後まで移動していた。
ネスが気付いた時には、既に背中に傷がつけられていた。




