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物語の始まりはきっといつも突然に。
そこの道端に転がる石ころのように膨大な数あるのです。
見つけれるかはあなた次第。
偶然と必然が入り乱れた世界。
4人の少年少女は出会う。
それは偶然なのか、必然なのか。
神様も知らない、わからない。
ただ知っているのは今も部屋の中、宮殿の中を、世界中を遊びまわる主だけなのです。
「出会うべくして出会った4人、ね。ねぇねぇ!この物語まるで私たちみたいだね〜。不思議だね〜。どう思う?春ちゃん!」
「私はファンタジーよりも恋愛の話の方が好き。そういうのはとみーとして。」
「つれないね〜春ちゃんは!とみ吉は今日遅れるって!再テスト?英語のやつ!」
2人の少女が高級そうなソファーの両端に座りながらお喋りをしている。ガラス張りのテーブルには色とりどりのチョコレートの包み紙。ソファーの正面には大きなスクリーンのような液晶がある。部室、にしては広すぎる、贅沢な空間。扉の前には生徒会室と書かれたものが下げられている。
ソファーの右に座りながらファンタジーについて想像しているのが神宮みや。不思議ちゃんとして有名であるが本人的に自分は清楚系だと思っている。黙っていれば清楚。誰もが口を揃えてこう言う。
一方、ソファーの左に座っているのが神宮春。ショートボブの髪型に笑顔がキュートな青春に片思いの乙女である。
「りっきーは今日来ないのかなー?」
「特に何も聞いてないけど…。」
「まぁた女の子たちに追いかけられてるんじゃない?モテる男は違うねぇ〜い。」
「そうだね。」
目を細めてケラケラと笑うみやと本の世界に戻ってしまった春。とそこに、
「すまん遅れた。文句は先生に言ってくれ。」
「あっ、とみ吉だ!やっほ〜。」
「とみーおつかれ。」
「やほやほ。ありがと。」
英語の再テストで遅れてやって来たのは神宮さとみ。キューティクル全開な長い髪を雑に結んでいる。みやとさとみは混ぜるな危険。そんなキャッチフレーズがある。また、この学園の生徒会長でもある。
わいわいとさとみが来てから3人でガールズトークならぬ愚痴大会を開催していると、ソファーの前の液晶に映像が映し出された。そして最後の一人が画面越しにご挨拶。
「あっ!りっき〜。やほやほやほ〜!」
「んー。」
「とみー、口に物を入れて喋らないで。」
「お揃いなようで。」
神宮りつき。短く切りそろえられた髪から爽やかな笑顔で多くの女性を虜にしてきた強者である。
時を同じくして産まれ、そして同じ名字。そう、彼ら彼女らは4つ子である。世界を股にかける財閥。神宮財閥の愛し子たちである。
「最近家の書庫を調べたら面白そうなものが見つかったんだ。興味ある?」
後ろに控える執事が差し出した紅茶を堪能しながら彼は言った。白い陶器にシャンデリアが反射する。
「いいね。」
「あはっ、とみ吉指パッチン鳴ってないよ?こうするんだよ。」
「珍しいね。りっきーがそんな話題を振るなんて。」
「たまにはね、今から迎えに行くから校門で。」
歯車は回る回る、
「ねぇ、りっきー、今日の晩ご飯は?」
「カレー。」
「辛いのやだよ。」
「…甘口頼んどく。」




