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 さて、そろそろじっくりと考える時間がきたようだ。



 なにせかーちゃんのおっぱいを飲んでから腹いっぱいになった俺は、その後すぐに熟睡。起きた時、すでにみんなが寝静まっていた。ぺカーンと眼をランランにさせて起きたのは俺一人。そう、この時間は決して暇だったから!という理由じゃない。



 決して。




 我が家はドラゴン一家のようだ。


 かーちゃんは赤髪金眼のグラマラス美女。親父は銀髪青眼、ムカツクほど爽やかなイケメン。

 兄貴は灰色の髪だと思ってたんだけど、人型になった時に髪は赤かった。かーちゃん寄りの色だけど、きゅるんとした眼は親父そっくりの青。で、俺は。髪はまだ何色かわかんねーけど、眼はじーちゃんが金眼つってたからそうなんだろう。ますますファンタジーじみた設定だ。


 しかしあのガラシャじーちゃんは異常にでかかった。黒い巨体、なに食ったらあんなでかくなんだろ。

 俺も将来はあのぐらいでかくなるのだろうか、悪目立ちはしたくないんだけど……。



【みゅあ~】


 ため息を吐いたつもりがなんとも気の抜けた声だ。



 ”クスクス””笑っちゃだめよ””だってあんなに可愛いんですもの”


 やばい。なんかいる。喋ってる。まさか、――幽霊!?

 そ、それは、ちょっと……お帰り頂きたいんだけど。


【……みゅ、あ……】


 ”ねえ、なんだか怖がらせちゃったみたい””あ、ほんと!大丈夫、怖くないわ”


 やべえ1人や2人じゃねえ、……思ったより多いぞこいつら。霊を封じる術なんてないし、どうしよ!?

 思わずぐっと思わず拳を握る。それで震えが止まるわけじゃないけど……。

 え、どうする?……ここはいっそ叫ぶか?叫んじゃう?叫んじゃおう!?夜中だけど関係ないよな!!



【み、むぐ】


 叫ぼうとした矢先に口を覆われた。視線を持ち上げれば不法侵入者!!

 誰、あんた誰?おいおい不法侵入はじーちゃんだけで十分なんだけど!?そんでまたくそ美形かこの野郎。金髪碧眼ってどこの英国紳士だよ。


「――散れ精霊共、貴様ら我が孫を手中に入れるつもりだな……そんなことは我がさせぬわ」


 ふんっと言って軽く片手を振ると、先ほどまで聞こえていた声が一瞬の内に散った。

 話し方はアレだ、前世では有名だった中二病みたいな。ん?あれ、今……なんか聞き捨てならないこと言ってなかった?我がMAG……。


「我が孫、大事はないか?鬱陶しい精霊は我が払ってやったから安心せい。ふむ、我が息子に似て美しい銀糸ではないか、……」


 孫?孫っつったよな今!?ってことは次は親父の親父か!父方のじーちゃん!!


【みゅあ!!】

「そうだ。我は魔界ラフゼンパルクを治める孤高にして最凶を統べる王、ヴァララディアン・リベル・ドザイアーク・ラフゼンパルク!」


 名前、長くない?今なんつった?ヴァララ?え?全然覚えられない。

 しかも今の紹介一つ一つに動作が混じっててさ、俺のベビーベッドがゆらゆら揺れて安定しない。

 やめてくれ、ちょ、よ、酔う……うえっぷ。


「ふむ、我が孫クラリスよ。我のことは”ヴァンお祖父様”と呼ぶがいい」


 んん、えーはいはい、ヴァンじーちゃんね。りょーかい……。

 いやいやなに落ち着いてんの俺!!忘れるとこだった、じゅーだいなこと言ってたよなこの人!!名前が長すぎてそっちに気を取られちゃったけど。

 魔界のなんちゃらって国を治めるなんちゃら王って、キング!?キング オブ マカイ!?

 ってことはー、うちの親父、ドラゴンじゃないのか?


「父上、夜中に起きたクラリスの相手をしてくれるのはいいですけど、ちゃんと正門から入って頂かないと困ります。今はお義父さんもいらっしゃっていますし、礼儀を弁えてください」

「なんとガラシャもきているのか……、チッ、後れをとったな」


 俺が一人でパニクッてるというのに大人たちはなんも反応を見せない。兄貴とかーちゃんは今の一連の様子に危機感を感じなかったせいか、起きないという選択肢をとった。おい、マジか。


【みゅあーみゅあー】


 抱っこ抱っこと短い両の手を伸ばして声をかければ、親父が「クラリス眠くなんないのかな?」と苦笑い浮かべながら抱き上げた。

 眠くなるわけねーじゃん!新事実が発覚したんだぞ!!寝てる場合じゃねえええええ。

 ん?視線を感じて上を見れば、両手を広げるヴァンじーちゃん。鋭く妖しく輝く碧眼の中に()が映る。柔らかなふわふわとして銀糸の短い髪、くりっとした金色のアーモンドアイ。これが俺?え?うっそ!?その眼に近づきたくて手を伸ばせば、ふわりと抱き上げられた。親父より細い腕、でもしっかりとした安定感がある。身長が高く、一気に視界があがったその先に【んみゅ!】ガラシャじーちゃんがいた。


「これはラフゼンパルク王、夜深の訪問ですかな」

「我が力も使いやすいしな。クラリスも、好きかこの夜深が」

【みゅ】


 ビー玉のような独特な虹彩に眼が奪われる。

 女だったら孕んじまう勢いじゃね?さっきの仏頂面とは全く正反対の甘いマスクだ。これが孫の威力か、――恐るべし。




 この日、俺は2人の祖父ちゃんに出会ったのだった。



 一から孫に説明してくれたヴァンじーちゃんが言うには。


 母方の祖父、ガラシャ・アザザグゥア。

 至峰島(シホウトウ)と呼ばれる彼方の大地。東西南北、それぞれの方角を治める四頭のドラゴンがおり、ガラシャは西を守護する西龍王(グゥア)だという。たぶん、すごく偉い人。


 んで、もっと偉い人がこっち。


 父方の祖父、ヴァララディアン・リベル・ドザイアーク・ラフゼンパルク。

 無駄に長いのは名前ばかりではなく、その歴史や寿命も想像を遥かに越えてくそ長い。さすが魔王、恐るべし。あんな様子で、魔界ラフゼンパルクで多くの貴族を取り纏めているそうだ。ほんとか?


 そして、ここにきてうちの家族はがとんでもない家系なのだということがわかった。



 ドラゴンのかーちゃんと、魔人のとーちゃん。

 2人のじーちゃんはそれぞれの王。そして俺と兄貴はその血筋の、子供で……。これが……いわゆる……、チート……、みたいな?



ああ、俺は穏やかに、平和に、地味に暮らしたいんだけどどうなの、これ。


のんびり更新ですいません^^

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