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 と、思ったけどさ。



「うちの息子を泣かせんじゃないわよおおおおお!!!!」


 まさかの人型のままグーパン炸裂です。涙は零れずに声もなく泣いたのは果たしてこの黒いドラゴンのせいなのか、それともその巨体をかろやかにグーパンしたかーちゃんなのか。

 ……ちょっと俺にもわからない。


【みゅあ、みゅ、みゅあああ】


 押し寄せてくる恐怖は親父の腕に抱かれて崩壊。ビービー泣き出す俺をあやすように親父は腕を揺らし、その肩から覗いた兄貴が黒ドラゴンに威嚇の声をあげている。


「おーよしよし、クラリス怖かったなあ。一人にしてごめんな、もう大丈夫だからな。……怖いドラゴンはママがやっつけてくれたから」

『むぎゃ!むぎゃぎゃ!!』


 零れる涙を親父が舐めてくれるとなんだか落ち着く、不思議だ……しかしあれはいったいなんだったんだろうか。かーちゃんのグーパンで死んだかな、と思った矢先。


「エレナ、父親に向かって何するんじゃ!!」


  ん?今、このドラゴン……え?

 赤くなった顔を押さえて黒い巨体を揺らしながらかーちゃんに叫んだ。


「あらごめんなさいねえ。――息子を泣かす不届き者は実の父親でも容赦はしないわ」


 眼が笑ってない。笑ってないよ、かーちゃん。

 ブルブルブルと震えた俺に親父が気付いて声をかける。


「お義父さん、いい加減にしていただかないと……クラリスが恐怖のあまり震えていますよ」

「そうじゃった!そうじゃった!!可愛い孫息子がもう一人産まれたんじゃった~!!!」


 さっきの巨体がしゅぱんっと消えて、2m越えしてそうな屈強な身体のおっさんが俺たちに駆け寄ってきた。

 ねえ、やっぱ空耳じゃなかったの!?この人、今、孫息子って……親父もおとーさんって……かーちゃんも、実の父親ってやっぱ!?


ゴウッ


 突如、俺の上空――親父のすぐ真横から、真っ赤な火炎放射器みたいなのが出た。まっすぐ駆け寄るおっさんを火達磨にしようとしたよね、兄貴?


「ふ、惜しいなレディウス。しかし儂にはそんなもの屁でもないわっはっはっはっ!」

『むぎゃ~む!ぎゃ!ぎゃ!!』


 その言葉通り、おっさん……もといじーちゃんは手で払う素振りだ。

 兄貴は怒って尻尾をブンブン振り回しているが、どうやら分が悪い。親父もかーちゃんも諦めた様子でじーちゃんが近づくのを許し、あまつさえ俺を渡した。


「お~う、よちよち。ガラシャじーちゃんが会いに来たぞ~おお!クラリスは金眼の保持者か。儂の系譜がしっかりと受け継いでおるわい。ちいこくてかわええのお」


 ――不安しかない。

 不安しかないけど、やはりかーちゃんのとーちゃんだけあって赤ん坊の扱いには長けていた。


【みゅ、みゅあああ……】


 あ。

 やばい。

 唐突に襲ってきた、謎の空腹感。

 まあ、あんだけメンタルに恐怖心と涙を植え付けたんだから、もうこの身体にエネルギーは残っちゃいねえ。なんで、存分に声を張り上げていかせてもらおう!せえのっ!


【みゅあああああああああああ!!!!!!!】


 かーちゃーん!!腹減ったよおおお!!おっぱいをおっぱいをください!!

 響き渡る今日一番の大声。


 聴き慣れない超音波級の声を間近で聞いたじーちゃんは俺を抱いたままぶっ倒れたが、俺はすちゃっと親父に掬われ事なきを得た。俺の声、家族には効かないみたいだ。よかった。


「お父様はほっといて大丈夫よ。さ、クラリスはご飯の時間ね。レディウスもいらっしゃい」


 親父から俺を引き取り、兄貴もかーちゃんの腕の中に抱かれて移動。


「あ、天井なおしとこーっと」


 何事もなかったように親父がなにかをして一瞬のうちに直していたが、俺はそれどころではなかった。



 早くおっぱいください。もう腹が減ってたまらないいいいい。


ブクマ感謝です!!

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