虹色の灯〈2〉
守る16名の〈宝〉は何処へ向かうのだろう。タクト=ハインの提言が隊長代行のアルマの心を打ち響かせるーー。
「我々の任務は明後日の現地時刻15時を以て終了をする。それに伴い最終的な会議を開きたい。意義ある者は挙手をして示せ」
通信室に呼び集められた護衛隊隊員が座る席の中央でアルマは直立不動の姿勢で言う。
室内が機材の音だけを残して静まり返る。
「誰もいないな? では、始めることにしよう。本題の前に我々が遭遇した状況を確認する。タクト、おまえが述べよ」
アルマの声で隊員達は一斉にタクトへと注目をする。
タクトは何をどうすれば良いのだろうと、アルマに縋るように眼差しを向ける。
「野次を飛ばす者が在れば私が容赦なく手を出す」
アルマは指の関節を鳴らすとニケメズロを睨みつける。そして、朱色の左足に履くロングブーツを脱ぎ対面に座るバンドの顔面に狙いを定めて命中をさせていく。
「頼むぞ、タクト。これ以上犠牲者を出さない為にだ」
タッカが軍服に貼り付く埃を右手で払い落として言うと、タクトは「はい」と、苦笑いをしながら頷く。
「16名の子供の護衛をして現地に送るが僕達の任務。残念ながら途中で隊長とタイマンさんが塞ぐ罠を停止させる為に列車を降りたという出来事がありました。しかし、お二人の勇気ある行動のおかげで子供たちを守る事が出来ました。課題は在るものの、残りの任務期間を僕も護衛隊の一員として気を引き締めて任務を遂行致します」
タクトは額に掻く汗を手の甲で拭うと息を吐いて椅子に腰を下ろす。
「タクトが述べたバースとタイマンが列車を降りた原因となった『イレギュラー』におまえたちはかなりくすぶっていただろう。思いっきり言ってスッキリとするのだ。そして、タクト。おまえの発言に波紋が広がったなんて思うな。子供達を守っていたのは我々護衛隊だ。議論をする権利はある」
アルマが言うことに賛同を示すように隊員達が頷いていく。
「子供そのもの、あるいはバース。どちらかが狙いだっただろう」
そう言ったのは、タッカだった。
「“力”を持つ子供達を軍に護衛を依頼する程の大がかりな何かがある。隊員の最年少のタクトにも危険が迫ってしまった。我々だって人だ。守るものは何かと、立ち上がって欲しい。マシュ、たまに顔見せてるいるのだから何か言えっ!」
「ええっ! 僕なんかに喋らせても大して役に立つことなんてありません」
アルマから指名をされるマシュが首を横に振る。
「なんばいいよっとね? あたがおるけん、列車が走りよっとよ。こぎゃんして列車に乗っつるあたたちば、だんなは頼りにしとっとばい」
ハケンラットが右の肩を回して関節を鳴らす。
――ある、団体の主催で集められた。
『あの日』を振り返り、小型通信機でのバースとの会話をタクトは思い出す。
バースさんは知っていたみたいだけど、隊員のみんなはまるで手探り状態の様子だ。
ーー極秘で任務を遂行させている。
夕食の時にロウスが言うことにも気になる。
ーー力”を植え付けられていた。
出来るならば思い出したくない。アルマと口論となったのはシーサの異変が原因だった。だが、シーサには罪はない。言えることは『大人』の身勝手な仕打ちをシーサが味わってしまったーー。
どうなるんだろう、どうすればいいのだろう。どうやって【守る】をすればいいのかと、タクトは考える。
「列車を走り終わらせたくありません。子供たちが行き着く先を見たいと思います」
隊員達が一斉にタクトへと振り向く。
「此処であれこれと躊躇うより、先に何があるかと自分たちの目で視て確かめる。動けと言われる前に動いてもいいはずです。バースさんとも必ず会えます。絶対に会いましょう!」
背をまっすぐと正してタクトは言う。
「バースがおまえを護衛隊に率いれた意味が今なら理解が出来る。タクト、おまえは私達の《灯》だ。行くぞ、私達が目指す先に!」
アルマは椅子から腰を上げると左隣に座るタクトの右肩に左手を乗せる。
「はい」と、タクトは返事をする。
アルマは目蓋を一度綴じて開くと隊員達を見る。
「任務を独断で続行しつつ、バースとタイマンの消息を追っていく!」
「了解!」
隊員達は椅子から腰を上げてアルマに敬礼をすると肩を組み合うそして高らかに、朗らかにと唄で室内を木霊さていく。
しかし、唄が止む。
通信機からの外線の着信を知らせる音に耳を澄ませながら、ランプが緑の光で点滅をするのに誰もが注目をするーー。




