第三章
遅くなりましたが次回から4章の続きを書いていきたいと思います
一応三章までまとめましたが、内容は変わってないので確認程度で読んでください
ミリヤーが学校から出発をし始めた頃、シンキたちはすでに遺跡に入り、辺りの調査を行っていた。
これといって何事もなく、例の石碑にたどり着いた。
「ここが例の石碑か・・・。あのときからまったく変わってないな。」
「そうだねぇ、懐かしくもあるよ。」
「とりあえずは周りを調べてから隠し通路っていうのを探してみるか・・・。」
人工的に作られているはずなのに石碑以外のこの広間は自然に出来ていたかのような造り。
いろいろと弄っていたが、特にそれといった仕掛けもなく・・・、あったとしたらすでに探索済みだと思うが・・・。
やはりといっていいほど何にも成果がなかった。
反対側を調べていたナナミからも特にこれといったものがなかったわけで、とりあえず石碑の前に集合。
「なにもなかったね。」
「まぁ、何かあったら調べられているだろうし、ついでだよ、ついで。」
姫さんから事前に教えてもらった情報だと、この辺りに・・・っと、あった。
がちゃこ、っと何か起動させたかのような音がすると。
ゴゴゴゴゴゴと音のほうに振り向くと、これは気づきにくいなっていうような位置に人が一人分くらいの穴が出来ていた。
「ふむ、ナナミ。魔法で先の確認は出来るか?」
「まっかせて~、そ~れファイアー。」
なんとも気の抜けた唱え方でそれなりの規模が出来るからなんとも言えないが・・・。
通路の奥を見てみても先がまったく見えない。
「よし、行くか。こっからは何があるかわからないが慎重に進むぞ・・・。ん?」
「おっと、こんなところまで来たのにもう着いちゃったのか、どうする?」
「しかたねぇ、一旦閉じて、あそこに隠れるか・・・。」
複数の人の気配を感じたのでスイッチを元に戻し、岩陰に気配を殺して隠れた。
「ここで大丈夫なの?」
「大丈夫だろ、誰かが転ばない限りこの位置はぜってぇばれないから。」
時は同じにしてグライス遺跡の前・・・。
ミリヤー、生徒会面子が到着。
「さてと、着いて早々悪いのだが、早速試験のほうを始めたいと思う。」
「はい。」
「これからこの遺跡に私たちが考えた仕掛けなどを配置していくので、ミリヤーは少しの間待ってくれたまえ。」
シャマル生徒会長はそう言うと、少し私たちが離れたところで魔法を唱えていた。
きっと唱え終えるとこの遺跡はダンジョンみたいな感じなんだろうなぁ・・・。
最後にはボスがいたりして・・・。
「さて、完成したのでさっそく行ってもらいたい。いざというときのために私たちは後ろのほうでついていくから安心したまえ。」
「わかりました、行ってきます!」
いざ行かん、冒険の旅へ!・・・なんて。
遺跡の中に入ると、外の世界とは遮断されたかのような錯覚を覚えるような場所だった。
神聖な場所、というのかわからないけど、今まで感じたことのないような気配。
私は拳を握ったり開いたりして、深呼吸をして心を落ち着かせる。
会長が仕掛けた罠。それは集中していれば避けれるものがたくさんあった。
中には魔法を使わないと対処できないものも中には何度かあったのだが、それほど難しくはなく、すんなりと進めてはいた。きっと、騎士ランクだからだろうと油断をしていた。
遺跡の中はそれほど広くはなかったようで、すでに広間に到着していた。
きっとここが最後・・・。行き止まりだということはボスが現れるのかな・・・?
辺りを注意深く、慎重に探索をしていると足元にあった石っころに躓いてしまい、
「あっわっわわわ!」
どって~んと情けなく顔からダイブを決めていた。
「痛ったた・・・・・・あ。」
「「あ、しまった。」」
ミリヤーは転んでしまった拍子にここにいてはならない人物を見つけてしまっていた。
「な、な、な、なにしてるのよあんたたちはぁ!ここは立ち入り禁止区域よ!」
「い、いやぁ~これにはわけがあってだな・・・。」
何とか言い訳を考えて応えようとしたのだが新たな人物が増えてしまったため応えることが出来なくなっていった。
「ミリヤー!一体、、どうしたのだ・・・・・・ん?」
「あれ?シャマルじゃないの、久しぶりだね!」
「ほんとだな、久々にお前の顔を見た気がするよ。」
「え?・・・あれ?お知り合い?」
ただ、ミリヤーだけわけがわからず、あたふたしているだけだった。
一度試練は中断し、遺跡の前に再度集合することとなった。
会長とシンキ、ナナミ三人はなんだか知り合いみたいだったのか話し合っているのを聞き耳を立てて聴いていた。
「お二人ともお久しぶりです。その制服をしているということはこちらの学校に来ていらしたのですね。
申し訳ありませんでした。知っていれば挨拶をしに行きましたけど・・・。」
「気にしなくていいよ、私たちは好きにやっているからね。」
「俺はまったく持って違うわけなんだが・・・・・・ぐぇ。」
ナナミにより腹にひじを入れられていた。
「それにしてもあのお前が、聖騎士とはなぁ・・・。
いずれは円卓の騎士の仲間入りか?楽しみだなぁ・・・。」
「ちょっと、シンキってば!生徒会長に対して失礼でしょ!」
話を聴いていたミリヤーはシンキの態度にひやひやして間に入ったわけなんだが・・・、
「何、この方たちは私の師匠とお知り合いでね、尊敬に値する人たちだよ。」
「ま、そういうこった。なんも心配ねぇよ。」
「それにしてもミリヤーちゃんが騎士の試練か~。がんばってね、私たちもそこを体験したから。」
なんとも複雑な顔をしていたミリヤーであった。
「さてと、再開しようか。
ナナミ殿とシンキ殿も見学していきますか?」
「そうしようかな。」
「俺は休みた・・・ぐはっ。・・・・・行きます・・・。」
再度、広間に戻ってきたのだが会長を含め、みんなの気配を感じれなくなっていた。
感じなくなったというわけではなく、本人たちが消しているだけなのだが・・・。
「ここで行き止まりだから何かあるはずなんだけど・・・。」
ミリヤーが石碑の近くまで寄ると、ががが、ごごごという岩が繋がるよな耳障りな音を鳴らしていて、そちらのほうを振り向けば、石の塊が出来上がっていた。
・・・教科書でみたことがある。これは自動岩人形ゴーレムというやつなのだろう。
これを倒せばきっと騎士の称号を手に入る。そう思うと興奮してくる。
「私の全力を見せてあげるわ!」
今、ミリヤーが戦おうとしているゴーレム。
あいつにはただ壊すだけでは意味がない、なぜかというと・・・。
「最初っから手加減なしで、行くわ!
我が手に集いし熱き風よ、仇名す者を吹き飛ばせ!エターナルブレイズ!」
ゴーレムを中心にごおぉ!という音がすると、岩の足を熱で溶かしていた。
足がなくなったゴーレムがかわいらしくじたばたと動いていた。
「よっし!これで動けないはず畳み掛けるわ!って・・・え!?」
ミリヤーは驚いていた、先ほど溶かしたはずの足が元に戻ろうとしていたからだ。
ものの数秒でゴーレムは足が出来上がり、ミリヤーに対して岩を放り投げた。
「きゃ!あっぶないわね。でもなんで復活したのよ!」
どうやらゴーレムの根本的な倒し方を知らなかったようだ。
ゴーレムの弱点、それは体のどこかにある文字を消さなければ永遠に復活するのがゴーレムの特徴だ。
なのでミリヤーみたいに馬鹿みたいな火力でも倒すことは出来ない、そのため騎士の試練のボスとしてゴーレムが活用されている。
動きは単調だしのろいし、倒し方さえわかっていればそれほど苦戦にはならない敵のわけなんだが、ミリヤーは苦戦をしていた。
「もう、何度やってもやっても復活してくるじゃないの、なんでよ・・・。」
「なぁ、お前ら。今の状況どう思うよ?」
「う~ん、このままだと失格だね。魔力もなくなってきてるし、焦ってもいるようだしね。」
「そうですね。少し試練に行かせたのが早すぎたのかもしれません・・・。」
確かにその通りだ。このままだとおそらく魔力は尽き体力も底を尽いてしまうだろう・・・。
勉強不足というのが答えなわけだが、シャマルの言ったとおり早すぎたのもあるかもしれない。
もう少し見てから判断するか・・・。
「・・・はぁ、はぁ、はぁ、・・・っく。」
もう何度目だろう、数えることも面倒になったくらい倒してきたなの何度も何度もゴーレムは復活していく。
自分でもわかりきっているほどに体力も魔力もなくなってきていた。
だけど、こんなチャンスはこのときにしかない!
「はぁ、っく、はぁはぁ・・・。はぁぁぁぁ!
灼熱の大地を今、呼び起こさん!グランドファイヤー!・・・っう。」
ふらっ・・・。・・・しまった、私が魔力切れを起こすまで気づかないなんて、これじゃ魔法使い失格。
・・・・・・あれは、シンキ。ゴーレムがいるのに危険なのに・・・。
だけど意識を失う前にミリヤーは見ていた、一瞬でゴーレムを倒し、倒れる前に抱きとめてくれたこと・・・。そこで、ミリヤーは意識を失った。
「おい、あれってまさか!」
「えっ?ちょ!シンキ!」
俺はミリヤーの様子がおかしいことに気づき、いてもたってもいられず、岩陰から飛び出した。
嫌な予感がする。
すると、魔法を唱えていたミリヤーが急に体をふらつかせた。
っち、やはりか!
シンキがこちらに来たことによりゴーレムがシンキを敵と認識し、拳を振り落としてきた。
遅すぎる攻撃はすでに見切っており、ゴーレムの弱点はどこなのか目を凝らし、見つけると胸ポケットに入れていたペンを取り出して、文字に向かって刺す。
すると、ゴーレムの動きが止まるとゴロゴロと岩が崩壊していき、復活することはなくなっていた。
「おい、しっかりしろ!ったく。ナナミ、シャマル、一旦外に出るぞ。
こいつをなんとかしないとな・・・。」
「はいはい。それにしても相変わらず無茶をするよねシンキも、ミリヤーも。」
「まぁまぁ、ナナミ殿。私がミリヤーさんを一旦学院に連れて行きますので・・・、
お二人とも何かこちらで用があったのでしょう?」
ありゃ・・・、やっぱり気づいていたか。
秘密ってわけでもないから教えても大丈夫なんだろうけど・・・。
「まぁ、俺はナナミの手伝いで来ているだけだが。」
ちらっとナナミのほうを確認すると任せてとでも言うようにこちらにウインクをよこしてきた。
「ちょっと頼まれごとをしてね。確認のためにここに来ただけなんだよ。」
「そうでしたか、ですがお二人とも『学生』なんですからそれだけは覚えてください。」
何かあるということは知っているだろうに、にこやかに去られても困るのだが・・・。
ミリヤーのことは心配だがこっちもやらないとな。
扉のスイッチを押して再び入り口の前に立つ。
「さてと、少し予定とは違うことがあったけど気を引き締めていくぞ。」
「あいさ~。」
俺たちは明かりを頼りに隠し通路を進んでいた。
少しひんやりとしていたせいか頭が無駄に冴えているような気がする。
いや・・・。むしろ懐かしい感じでもあった。
だが、俺にはこんなところに来た覚えは一度もない。
「なぁ、ナナミ・・・・・・・。こんなところに来た覚えってあるか?」
「何言ってるのさ、初めて来たに決まってるでしょ。」
おかしな人とでも言ってそうな顔でこちらを見ていた。
とりあえずこの件は置いといてまずは目の前のことに集中しないとな。
今のところは一本道で進んではいるが、何しろ奥行きがありすぎて明かりが届かなく何が起こるのかまったくといっていいほどわからない。
罠とかそんなものもない感じだから逆に恐ろしい・・・。
会話もなく歩いていくと広場らしき場所に着いた。
「ここは・・・・・・・?」
「すごく広いね。明かりをこの広場全体にしてみるよ。」
そういってナナミは炎を壁際に拡散させた。
そして見えたものとは・・・・・・。
「まじか・・・、ナナミここはやばそうだ。気を引き締めろよ・・・。」
「・・・そうだね。これはすごいね。」
「まさか、この剣全てが墓標じゃないのか?」
それは無数に刀剣類が突き刺さっていた。
まるでこの地で亡くなった戦士たちのお墓のように。
(だが、まだ何かあるはずだ・・・。なぜ俺は懐かしい気持ちになったんだ・・・?)
「特にこれくらいしかないようだね・・・シンキ?」
「ん?あぁ、いや、考え事をしていただけだ。」
「とりあえず、このことを報告して後日、どうするのか決めてもらおうかな。」
「それがいいな。・・・いや、少し残って調べたいことがある。先に姫さんところに行ってくれ。」
「大丈夫なの?」
「何、心配ないさ。やばくなったらすぐに逃げるって。」
「ほんとなんだよね?」
まったく信用されてないな・・・。
思わず、苦笑いしてしまう。
ナナミにしては魔法が使えない俺のことが心配なんだろうけど・・・、考えすぎかな。
「とにかく、危険ことがあったら逃げてよ。絶対だからね。」
そういってナナミは来た道を戻っていった。
さてと、ナナミがいなくなったことだし・・・。
「ったく、お前の仕業なんだろ?勝手に変な気持ちを呼び出すな、エクレ。」
「ぬっふっふっふっふ~、良くぞ見破ったな!我が弟子よ!」
「・・・誰が弟子だ、誰が。」
「我はパイセンじゃぞ?」
「先輩な!へんなこといってんじゃねぇよ。」
久々に話すと毎度って言うほど調子が狂う。
さすが歳がいっているだけの・・・・・・、
「歳がなんじゃ?」
「・・・なんでもありません。」
まだ何にも言ってないし、思っていただけのことなのになぜわかったんだ・・・。
しかも、にこやかに笑っているけど・・・、目が笑ってねぇ!
「やはり、外の空気はいいものじゃのう。・・・洞窟の中にいるんじゃがな。」
一人でなんか突っ込んでいやがった。
そんなことよりも、だ。
「ここは一体どういうとこなんだ?なぜ、懐かしい気持ちになるんだ・・・。」
「それはじゃな・・・。ここは先代の墓じゃ。」
「は?先代って魔王のか?」
「そうじゃ。・・・ほれ、あそこに我の名があるじゃろ。」
「え?あ、ほんとだ・・・。エクレって書いてある・・・。なんでだ?死体なんてないだろ?」
意味がわからない、確かに倒しはしたが死体はないはずだが・・・。
「うむ、そこには記憶があるだけじゃからな。」
「記憶・・・?」
「そうじゃ、そこの剣でも引っこ抜けば、その者の記憶が見れるってわけじゃな。」
・・・へぇ。そんなことを言い出すとつい、いたずらしたくなっちゃうよね!
エクレの墓標になっている剣を試しに引っこ抜いてみた。
すると、魔王になってしまった原因から、なぜ国を滅ぼそうとしたのか、俺と戦っていた時のことまでもが頭の中にすぅ~と入り込んできたので反射的に剣を戻した。
・・・まじだったよ。
「どうじゃ?我の記憶は。ふっふっふっふ~。」
っち、笑ってくれるなよ、悪かったとは思っているけどさ。
「でもさ、もう場所がばれちまったんだぞ?どうするんだよ。」
こんな場所に重要なところがあったのには驚いたが、ばれたのはもっとやばい・・・、そのはずなのにエクレは慌てたりもせず胸を張って誇らしげにしている。・・・そこまで自慢できるほどないのにな。
「なんか言ったかの?」
「ナンニモイッテマセン。」
刺し貫かれそうな目線をどうにか耐え、がんばって言い返せた。・・・片言気味だが。
「まぁ、よい。それには心配せんでよい。おぬしが来たから反応しただけじゃ、おぬしがどこかに行けばこの場所は消えるじゃろ。」
「それはなんでなんだ?」
「我らが持っている無属性の魔法で知覚しておるからな、この建物自体。」
「・・・そうなんだ。」
まったくわけがわからなかったが本人がそういっているのでそうなんだろう・・・。というかそうとしか思えないとまずい・・・。
あとは俺たちは一通り調べ周り、エクレに関しては「歩きつかれた、帰る。」とか言い出したので今は指輪のなかに収まっている。
特にこれといったものがなかったので学院に帰る事にした。
その後日、姫さんがこのことを知り、円卓の騎士ザイを筆頭に部隊を編成させて向かったみたいだったが、何一つそれらしいものは見つかっていなかったようだ・・・。
遺跡から帰って来た俺はというと、まだ授業がある時間だったので屋上にある職場兼自宅に来ていた。
といってもこれといってすることがなく、暇を持て余していたので、品物の整理をしていく。
きっと試験には落ちているだろうミリヤーに会いに行ってもよかったのかもしれないが、一人になりたいかもしれない。今たずねるのはまずいだろう・・・。
コンコン、と丁寧なノックの仕方に俺は首をかしげた。
今は授業中のため先生や生徒がくるわけがない。それにナナミの場合だとドアを蹴破るはずだ、困るけど。
少し警戒しつつ、ドアをゆっくりと開けた。
「は~い。どちら様で・・・。」
「あ~!ほんとにシンキがここにいた~!姫様~!いましたよ~!」
「お帰りなさい、待っていましたよ。」
どうやら俺に用があったみたいで姫さんと円卓の騎士であるケイ・ローランがたずねてきた。
カウンターの奥にある部屋に二人を案内し、事の詳細を話した。
もちろん、最後に見たあのことについては秘密にしておくしかない。
「そうでしたか、では後でその遺跡の調査に向かわせますのでシンキたちはこのまま待機でお願いしますね。」
「・・・一体、いつになったら終わることやら。」
内心、ため息を何度もついていた。
最初は帝国軍と名乗るスパイを見つけたんだが、それ以上の出会いは一度もない。
むしろ、なにもしてこないとなると逆に恐ろしくもある。
すでに準備が整っていて、いつでも進軍するかもしれない。
それを守るために来たのが俺たちのわけなんだが・・・。
「それでですね。実はケイをこの学校に転入させようかと思いまして。」
「え?なぜですか?」
「それは、少し嫌なうわさを耳にしまして・・・。」
その話を聴いて、予想通りに動いていたので、こちらもそろそろ動き出さなければならない。
一番の懸念は森の中で出会ったあの剣士のことだ。
戦闘狂だとは思うが、あいつは強い。出てこられたら厄介な相手だが生徒まで守るとなると確かに人手不足だ。
だからだろう円卓の騎士であるケイを引っ張ってきたはずだ。
「それで姫さんのほうは大丈夫なのか?」
「心配は要りませんよ、あとでわかることになりますから。」
俺は首をかしげたが、姫さんはというと怖いくらいにこにことしていた。
次の日、目を覚ましたらしいミリヤーのところに向かう途中にチェルシー先生に廊下で出会ったわけなんだが、どうも気分が落ち込んでいるようにも見えた。
「先生、一体どうしたんですか?」
「あ・・・。シンキさん、実はですね・・・、この前依頼したマンドレイクの件なんですけども・・・。」
あぁ・・・、そういえばそうだった・・・。いろいろありすぎて頭から吹っ飛んでいた。
早く見つけたいのも山々なんだが、いかんせん情報がない。
「すみません、まだ何も手がかりがない状態でして・・・。」
「そうでしたか・・・。実は急いで見つけてくれって言われまして・・・。
こちらのほうで出席扱いにしますので探してきてはもらえませんか?」
「えぇ、いいですよ。出席扱いにされるなら願ったりかなったりです。」
すると、チェルシー先生はぱぁっとしたように笑顔になってくれた。
「ほんとですか!?ありがとございます!」
何度もぺこぺこと頭を下げていたのでほんとに急いでいたんだなぁ・・・って!
「せ、先生、そんなに頭を下げないでください!皆が見てますから・・・。」
俺はチャイムが鳴るまで周りの生徒から痛い視線をずっと浴びていた。
「さて、予定とは少し違う感じになっているが、とりあえず・・・。」
保健室にたどり着き、ガラガラとドアを開け中に入る。
「失礼する・・・・・・ぞ・・・。」
「・・・え?・・・シ・・・・・ンキ?」
俺は目の前に動く芸術品があるのかと一瞬思ってしまった。
だってそれは白く透き通るような肌、きゅっと締まっている腰、なにより、小さくもそれでいて大きすぎずの胸。
どうやら着替えていたようだが、目が離せなかった。
「きゃ、きゃぁぁぁぁぁ!」
「は!ぶるぅぁ!」
気づいたときには廊下の壁にたたきつけられていた。
「ノックぐらいしなさいよ!」
いきよいよくドアを閉めた。かくいう俺はというと、ナナミとシャマルが白い目で見ていた。
・・・いたんなら助けてくれるか、一言声をかけてくれよ。
「・・・どうぞ~。」
着替えが終わったのだろう、ミリヤーがぶっきらぼうな声を出して、招いてくれた。
ナナミ、シャマル、俺は保健室の中に入る。
俺はただミリヤーの容態を見に来ただけなのですぐにでも終わる予定だったのだが、シャマルが来たということは結果発表なんだろう。
ミリヤーはというと沈んだ顔で結果を待っていた。
「では、今回の試験の結果は・・・不合格だ。」
「・・・そうですか。」
「なぜなのかは君にはわかるかな?」
「たぶん、なんですけど知識とか経験ですかね?」
ほぉ、自分の事をよくわかっているじゃないか。これだったら成長すればいけるかもしれないな。
「その通りだ、そこまでわかっているのならチャンスを上げよう。」
「チャンス・・・、ですか?」
「そう、いつかわからないが再度試験を行う。だからそれまでの間に経験と知識を紡いでおくように。」
「・・・!は、はい!」
もう一度チャンスが巡ってきたことに安堵の声を上げて返事をした。
正直なところ一安心だ、これを機に成長するだろう。
俺はただ静かに立ち去ろうとしたのだが、ナナミが目ざとく見つけてきやがった。
「そういえば、シンキってさ。どうしてここに来たのかな~?」
何か面白いものでも見つけたようににやにやと近づいてくる。
だけど、ひとつだけいい話があったのでやるかどうかは本人しだいなのでナナミを無視して先ほどあったことをミリヤーに話した。
「そうだミリヤー、会長が言っていたように経験と知識が積みたいのなら俺の店で働いてみるか?」
「え?いいの?それは願ったりかなったりだけど・・・。」
「ちょ、ちょっとシンキ!そんなことしちゃっても大丈夫なの?」
「まぁ、いいんじゃねぇの?今のところ俺が一人でまわすのは大変だったし。」
「それだったら、私を呼べばよかったのに・・・・・・。」
辛うじてでぼそぼそしゃべっていたのだが聞こえなかったので放っておくことにした。
「どうだ?」
「うん、私やる!やらせてください!」
「そうかでは早速だが・・・。マンドレイクを狩りに行くぞ、あとで先生にはわけを話しておくから。」
「・・・へ?」
ただただ情けない声を上げることしか出来ずにシンキについていくことしか出来なかった。
「う~ん、俺の勘ではこの辺りのどこかにあると思うんだけどな~。」
「とかいいながらいつも外れてるじゃない。」
「・・・暑い、暑すぎるよ。」
あのあとすぐに学院から出発したんだが、なぜかナナミも一緒についてくることになった。
というのもナナミが、
「二人だけだと心配になるから私もついていく!」
とか言い出したからだ。
俺としては人手が多いことに越したことがないのだが、さっきから妙にミリヤーの機嫌が悪いのだ。
女という生き物はまったくわからん・・・。
で、今いる場所はというと、森の中にいるわけだが、ムシムシしているせいで汗が止まらない・・・。
木陰が多いのに蒸し暑い、風が流れてきても無駄にぬるいという天候。
そのせいでミリヤーがうるさい。魔法を使えばどうって事はないだろうが炎が得意なミリヤーに身体能力効果が得意なナナミ、魔法の使えない俺がそろったことにより、涼しくもなれずただひたすらに歩き探しているだだった。
「なぁ、お前らも真剣にって・・・・・・うぉ。」
やべぇ、汗が服にしみこんでいるせいかナナミとかミリヤーの胸がはっきりと浮きだっているので大きさが丸わかりだ・・・。
しっかりと凝視してしまったから怒られるかも・・・!
「私たちだってしっかりと探してるよ・・・。」
「わたしはどんなものなのかまったく知らないんだけどね・・・。」
おぉぅ、ばれてなかった・・・。よかった~、ばれてたらきっとぼこぼこにされていたはずだ。
これからは気をつけて行動しよう。
「あぁ~、どういうものなのかしらないのか。」
「名前くらいは聞いたことがあるでしょ?」
「マンドレイクのこと?どういうものなのかわからないけど・・・。」
「別名は?」
「別名なんてあるの?」
「まぁ、むしろそっちのほうが有名かな?」
「へぇ、なんていう名前なの?」
俺たちは顔を見合わせてうなずき、
「「別名・・・・・マンドラゴラ。」」
その名前を聞いたら面白いほどに目を見開いていた。
人間ってほんとに驚いたらものすごい顔になるんだな、とこのとき初めて知った。
「・・・・・・・・え?」
「「だからマンドラゴラ。」」
「違う、聞こえなかったわけじゃなくてただ驚いていただけだから・・・。」
というか、マンドラゴラの名前くらい覚えれるだろ・・・とか思ってはいたがこんな驚きをするということはどういうものなのかは理解はしているんだろうな。
「じゃぁ、ただ探すだけじゃ面白くないから勝負でもするか?」
「ふ~ん、いいねぇ、それ。負けたら学食おごりね!」
「え、でも私、見たことないからわからないけど・・・。」
「う~ん、とりあえずそれらしいものを見つけたら呼んでくれ。
近くには俺たちのどちらかが行くから。見た目は根野菜の葉っぱみたいな感じだ。
この辺りにはそういう似たものがないから見つけれるはずだ。だが!」
最後にこれだけは言っておかないといけないことがある。
命に関わることだから。
「これだけ言っておく、絶対にこれかな?とかおもって引っこ抜いたりするなよ、死ぬからな。」
・・・おぉ、やっぱり人が死ぬかもしれない仕事に就くと顔が変わるな。緊張気味という意味でだけど・・・。
「そんな顔しなくても引っこ抜かなきゃいいだけだからな。
あ、でもなもうひとつあった。」
「え、そ、それは?」
「なぜかマンドラゴラの近くにいる魔物。」
「ま、魔物!?」
「割とめんどくさいが、見つかったときは呼ぶなり対処するなりしてくれ。
じゃ、スタート!」
「え、ちょ!待っ・・・!」
ミリヤーがなにやらいろいろと文句を言っていたようだが今の俺にはナナミに勝つということにしか頭には入っていなかった。
負けてたまるか~!絶対におごらしてやる!絶対にだ!
まったくもう!
マンドラゴラなんて名前だけしか知らないのに探せなんていわれてもわかるわけないじゃないの。
一体どうやって見つければいいのかもわからないし、せめて一緒に探してくれたっていいじゃない。
ミリヤーはシンキに対しての不満を漏らしつつ、それらしいものがないか辺りを探し回っていた。
「あ~もう!どこにあるって言うのよ、わかんないわよ!」
ごぉぉぉぉっ!
ミリヤーの叫びに反応したかのように強風が森の中を駆け巡る。
「きゃ!・・・何、さっきの風は?」
わけのわからない風が起こったため、ミリヤーは恐る恐る周りを見てみるが何もない。
すると、雲が太陽をかくしたかのように自分の周りに大きな影が出来ていた。
バサバサと羽音が聞こえ、まさかと思い上を見てみると・・・。
「何で、こんなところに飛竜がいるのよ!ちょっ!誰か来てぇ!!」
予想外なやつが現れ、ミリヤーはじたばたと暴れまわるように慌てていた。
そこまで大きな飛竜なのにだ・・・。きっと冷静さがないためだろう。
これも課題に入れておくか・・・。
そう思い、シンキは木の上から飛び降り、未だに影の下で慌てているミリヤーをそっと回収する。
実はミリヤーと別れていたのだが、こっそりと後をつけていたことは秘密だ。
「え!?ちょ、シンキ!?」
「おう、やっと気がついたか。お前はもう少し落ち着いて行動しろよ。」
「うぐっ・・・。」
痛いところでも突かれたかのような顔をするミリヤー。
まったく・・・。
「よく見ろ、そんなに大きくないだろ。」
「・・・でかいわよ!家一戸建てくらいあるじゃないの!」
「・・・そうかぁ?ちっさいほうなんだけどなぁ・・・。」
上空から現れた飛竜はズシンッと音を立てながら降りてきた。
ふむ、そろそろ来る頃かな。
「なんかこっちのほうで音が・・・ってドラゴン!」
ほら来た。
しかもメッチャ喜んでるよ。
「う~ん、飛竜なのはうれしいんだけど、もう少し大きいほうが戦い甲斐があったのになぁ・・・。」
あげくには大きさに対して不満も出してるよ、どんなに戦いたいんだよ。
「え?あれで小さいほうなの?私がおかしいの?」
こっちはこっちで混乱してるし・・・。
「まぁ、とりあえずミリヤーとナナミで戦ってくれ、この辺りにあるはずだから探しておく。
今回の勝負はミリヤーの勝ちだな。」
「え?そうなの?」
「あいつが来たならその辺りにあるはずだからな、倒し終えたらこっちに来てくれ。」
ぐぅぅぁあぁああ!
シンキが探しにどこかに消えたとたん、竜の咆哮が轟く。
怖いけど、ナナミもいるしなんとかなる!
「私がなんとか足止めするから、ミリヤーは特大の魔法をぶっ放して!」
「うん!」
・・・竜ってどこが弱点だろう。
冷や汗がだらだらと沸いてくる。
えぇぃ!羽に撃つ、なるようになれ!
「燃え滾る業火よ、我が手に収束し、敵のこと如くを穿て!プロミネンススピア!
いっけぇ!」
「よし、それに合わせる。」
飛竜は自分の危機を察知したのだろう、ミリヤーが放った魔法が脅威と思い飛び上がろうとしていた。
だが、
「飛ばさないよ、跪け、グラビティ・ハンマー!」
先に飛竜の上に到達し、頭に拳を振り下ろし、地面にめり込ませる。
そこに先ほどのプロミネンススピアが見事に羽に命中した。
ぎゃぁぁぁあぉぉ!
痛みの咆哮をあげ、気を失った。
「よく、殺さないように羽を狙えたね。」
「え、いや~、はははは。」
適当に撃ってたまたまいいところに狙えたのは秘密にしておこう・・・。
「さて、あのドラゴンもちょっとやそっとじゃ起きないだろうし、シンキのところにいこうか。」
「はい!」
「もう、あなたの手伝いがこんなに厄介だなんて知らなかったわ・・・。」
「だよねぇ、私もたまに手伝っているんだけどいつもこんななの。」
「まぁまぁ、目当てのものが見つかったし、これでいいじゃないか。」
先ほどの飛竜を倒していたナナミとミリヤーに合流し、すでにマンドラゴラを見つけていたシンキは二人のことを待っていた。
「んじゃま、今から引っこ抜くんだが、ここからは教科書にも書かれていないところだから覚えろよ?」
「え、ちょ。」
ミリヤーが戸惑っている間にゆっくりと説明してやる。
「まず、なんでマンドラゴラが有名なのかわかるか?」
「えっと、秘薬にもなったり錬金術用の素材にもなっているから?」
「まぁ、そうだな。あとは幻覚とか死に至らしめることもあるから扱いには十分に気をつけろよ。」
シンキは地面に座り込み、マンドラゴラの周りに線を引いていく。
「んで、これがそうなんだが、そんなに見ためは変わらないだろ。野菜の葉っぱに。」
「はぁ・・・、これがそうなのね。」
初めて見たであろうマンドラゴラに執心になっているミリヤー、見て覚えることも勉強の一部だ。
次の行程は、と
「こいつを引っこ抜く。
・・・が、注意しなければならないことがある。それはわかるか?」
「勢いよく引っこ抜くと死ぬ恐れがあるから。」
「その通りだ。正確に言えば、勢いよく引っこ抜くとよくわからない音によって死ぬことがある。」
「じゃあ、どうやって採るの?」
そう、そこが問題。だが、ここには魔法が使えるやつがいるし、注意しながら抜けば問題ないわけで・・・。
でも、万が一ということもあるので早速ナナミにシャットしてもらおう。
「今から大体の魔法使いがやるやり方を見ておけよ。
俺のはまったく持って参考にならないし、危険があるからな・・・。ナナミ、頼む。」
「あいさ~。ほいほいほい。」
ナナミは三回ほど拍手して、最後に音が消えたかの確認で地面を思いっきり殴った。
・・・なんで?
俺に聞くな。
「それじゃ、行くぞ。」
音が消えたから声は聞こえないわけで・・・、まぁ意思疎通はできているはずだからひょいと抜いた。
当然無理に採ったから、音が出る。その振動が手にも伝わってきた。
程なくしてから振動もなくなったので終わったのだろう。ナナミにジェスチャーして魔法を解くように促した。
「ありがとな。」
「いいよいいよ、あとでなんかおごってもらうから。」
「何でだよ!」
「だって見つけたのは実質ミリヤーでしょ?」
「うぐっ。いや・・・そうなんだが・・・。」
ちらっとミリヤーのほうを見てみると。
目をきらきらとしながら口元に指を持ってきていて、何かを想像しているかのような感じだった。
思わずため息が漏れそうになるが、約束は約束なので諦めておごることにした。
お金が消えていく・・・。
シンキは誰にもばれないように静かに泣いていた。
一度、マンドラゴラを回収し終えた一同は学院に帰った後、それぞれ解散していた。
勝手にミリヤーを連れ出していたシンキはその説明をするためにチェルシー先生にわけを話していた。
ついでにマンドラゴラの受け渡しのことは忘れていないぞ?
「すみません、お騒がせしてしまって、ありがとうございます!」
「いえいえ、それはいいんですけど、そんなにぺこぺこされると、俺への視線がかなり痛いのでそろそろ・・・。」
「・・・は!す、すみません・・・。でもほんとに助かりました。なんとお礼をすればいいことか。」
俺は再度なんどもぺこぺこされていたので周りからもまた、変な目で見られていた・・・。
「それで、なんですけど。先生は一体、マンドラゴラをどういう用途に使うんでしたっけ?」
「以前にも言ったとおり授業に使うんですよ。なにか上級生の授業には必須みたいでして・・・。」
そういうことだったら心配は要らないか・・・。
個人のことの使用だったら何が起こるかわかったものではない。
「そういえば、チェルシー先生。
今日のことなんですがミリヤーにも出席扱いにしてもらってもいいですか?
勝手に連れて行ったので・・・。」
「そうだったのですね。どこへ行ったのか心配しましたよ。」
「すみません、でもミリヤーのおかげで見つかったものですし、怒らないであげてください。」
「そういうことでしたら、お礼をしないといけませんね。」
チェルシー先生はにこやかに笑い、ではと別れた。
さてと、一通りのことを終えたし、戻るとするか・・・。
「・・・それで?なんでこんなところでお茶してるんですかね?」
用がないので、自分の小屋に帰ってみたらこの有様。
俺のプライベートとやらはどこに行ってしまったのか。
「いえ、私が誘ったのでこのお二人は怒らないであげて下さい。」
「別に姫さんに対して怒ってるわけじゃないですよ、あの二人にもそう。」
「みたいですよ。よかったですね。ナナミさん、ケイさん!」
家の主人が帰ってきたというのにまだきゃいきゃい騒いでいる。
女が三人集まると姦しいとはよく言ったものだと思いたい・・・。
誰だよ、姦しいとか言い出したのは・・・。
「まったく、あまり騒がないでくださいね。
姫さんがこんな場所にいたら皆が騒ぎ出しますから。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。変装してますから。」
「・・・・・・。」
「どうですか、似合いますか?」
いや、いやいや、待って。
変装ってまさかそれなの!?
今、頭にリボンがついていたのは珍しいなぁ~とか思ってたけどそれが変装だったの!?
なんで周りのやつは教えてあげなかったんだよ!
ちらっと二人に目を向けるとサッと顔を背けやがった。
つまり、お前らは知っていて無視していたということか・・・。
「似合いますか?」
「え!?いや、まぁ確かによく似合ってますよ。」
「かわいいですか?」
「かわいいですよ・・・。」
「本当ですか?うれしいです~。」
えへへ~って笑うものだから、こんな姫さんに変装じゃないですよ?とか言えないじゃないか!
「それじゃ、シンキさんも帰ってきたことだし、私たちはお暇するとしますか。」
「帰り道は気をつけてくださいね。」
「大丈夫ですよ、ケイさんがいますので、それと・・・明日を楽しみにしてくださいね。」
意味深なことを言って三人は部屋から出て行った。
明日になればわかるとはいったい何のことなんだろうな。
何かよからぬことでも企んでいなければいいのだけど・・・。