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魔法店主の災難  作者: 与一
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第二章

先週は多忙だったので投稿することができませんでした

といっても今回もまとめただけなので内容はかわってません


初めて知ったことなんだが、どうやら学校というのは何年かは通わないといけないみたいで俺たちが向かう先の学校というのは18歳まで通うみたいなんだが・・・。

実は俺って、18歳なんだよな・・・。

まぁ、円卓の騎士になっているやつらは訳ありだらけだから気にしてはいないけど。

姫さんが言っていた、知っているという学園長に会ってみないとな。

実際のところは姫さんがいる城からは少し遠いが同じ街にあるので、まぁ大丈夫だろう。

ナナミとは城の前で待ち合わせをしていた・・・だというのに、約束の時間はすでに過ぎている。


「あいつ・・・。また遅れやがったな。このまま帰ってやろうか・・・。」


そんなことを考えていると、やっとやってきた。


「おっまたせー。少しだけ時間がかかっちゃったよ~。」

「少しじゃないだろが、早めに来いと毎か・・・い。・・・なんだその格好は・・・。」


ナナミがあまり見ない服装をしていたので単純に唖然としていた。


「えっへへ~。どう?似合う?」


うれしそうにその場をくるくる回りながら俺に見せ付けてくる。

だが、あえてこういうことわざを使ってみよう。


「馬子にも衣装だな。」

「・・・なんでそんなことをいうのさ。」


実際のところは似合っていたがあえて言わなかっただけだ。

遅刻してきた意趣返しというやつだな。


「それにしても何だその格好は。」

「え~っとね。今から向かうところの学校の制服。」

「俺はないのかよ。」

「いけばあるよ。それじゃ、さっそく向かいますか。」


城から歩いて一時間程度、なかなかの距離だったがなるほどと思ったこともあった。

・・・それは。


「なんだこれは・・・。」

「いや、なんだって言われてもねぇ・・・。」

「話には聞いていたが、でかすぎだろ!門にしろ、壁にしろ!牢獄か!?

しかも敷地が広すぎね?!」


確かにここに来るまでにこの学校『エレメントマキナ魔法学園』とかいうおかしな学校の情報は調べていたんだが・・・。


「まぁまぁ、学園長が待っているから、早く行くよ。」

「あ、おい・・・。」


とにかく俺たちは警備員にここに来た理由を告げると、すんなりと場所を教えてくれた。

今は授業中らしく、外には人がいないので自力で学園長室を見つけないといけないのだが・・・。

おれは何もかもが珍しかったのでいろいろと見て回っていたら、いつの間にかナナミとはぐれてしまったようだ。


「しまったな・・・。ナナミとはぐれてしまったか~。まぁ一階にあるって言ってたからあとで合流出来ると思うけど・・・。」


俺はとりあえずうろうろと学校の廊下を歩いていた。

時折、教室の中を覗いたりしていたが、皆真剣に教師の話を聞いていた。

俺には合わないかもしれないな・・・。・・・ん?この気配は・・・魔力?どこで・・・。

魔力を感じたほうに向かってみると、一人の女が中庭で呪文を唱えていたようだ。

俺は少し気になったので木の影に隠れて様子を見ることにした。


「汝、我に応え、我が前に姿を現わせ、名もなき者よ!」


近くによりよく見ると赤い髪のした女は何も起こらなかったことに苛立っていた。


「・・・なんでよ。何でいつも何も反応しないのよ・・・!」


おせっかいをしにその女に教えてやろうと姿を現わそうとしたら、その手に持っていた紙が怪しく光ると

中庭を覆うほどの煙が出てきた。


「きゃぁ!一体なんなのよ!?」


女は驚いていたが、俺は神経を研ぎ澄ましていた。

何かある。感でしかないが、ある危機を感じていた。

俺はとっさに緑色のビンを自分に振りかけていつでも魔法を使えるように構えていた。


煙がだんだん流されていくと魔物が姿を現わした。


「グゥォォオォォォォ!」


オーク種だと!?そんな召還魔法がなぜこんなところにあるんだ?・・・あの紙のせいか?

とりあえず早く助けにいかないと。


「おい!そこのお前早く逃げろ!襲われるぞ!」

「え、え!?だって私が召還したから私の言うことを聞くんじゃ・・・?」

「その魔物は知能がない、誰もいうことを聞かないんだ!」


やばい!声に反応しやがった、このままじゃ襲われる・・・!

ッち、めんどくせぇ!


「グォォオオォォ!」


オークは腕を振り上げ叩き潰そうとしていた。

すこし派手にしてしまうが・・・!


「吹き飛べ!そして押し潰れろ!」


オークの足元に竜巻を発生させて、空中にいるオークを上から風の圧力で叩き落した。

まだ消えていないってことはいきている証拠なんだが・・・。時間は稼げるか。


「おい、早くここから逃げろ。」

「嫌よ、あいつを私が倒すんだから、召還した責任よ!」


こんなことを言い出したやつらはだいたい頑固なやつだ。

だけど、目の前で危険にさらされていておめおめと立ち去るわけにはいかないしなぁ。


「・・・ひとつだけヒントをやる。どうせここの生徒は魔物の倒し方なんぞ知っているやつなんて少ないだろう。あいつの弱点は口だ。馬鹿みたいに口をあけてるからそこにめがけて魔法を打て。」

「・・・わかったわ。私があいつを燃やし尽くしてあげるわ!」


元気があってよろしい。そろそろ騒ぎを聞きつけた教師連中がくる頃だろう。

・・・ん?今度は妙な気配だな・・・。上か・・・。

様子を見ている感じからしてここのやつらじゃない・・・。ということは。

俺は女がオークに対して戦っているのを見つつ、屋上に向かっていた。

まだ気配のする屋上にたどり着き(教室は慌しかったが)、おれはわざとらしくドアを開けた。


「よう、アンタが首謀者か?」

「・・・おやおや、ばれていましたか。ということは騎士クラスの方ですかね。」


ローブを被っている男(?)はまるであなたなんて倒すのは余裕ですよ、見たいな態度で接してきた。


「最近は帝国軍とか名乗りだす輩が増えているんだが、知ってるか?」

「ほぉ、あなたはどこまで知っているんですかね。でもそんな感じだとあまり知っているって感じじゃ、ありませんね。」


まったく質問に応えてくれない。なんだこいつは。


「ばれてしまったのでこれで帰りますか、よかったですね~。

聖騎士クラスだと太刀打ちできませんが、騎士クラスなんて相手にはならないですからね。」


余計なことをしゃべるやつって言うのは大体雑魚って相場は決まっていることだが

俺はそいつを相手にしないことにした。


「なにもしてこないなんてつまらないですね。ではさようなら。」


ローブの野郎は霧になり、どこかに消えた。


「やれやれ、学校にスパイってやつも定番ってやつじゃないのかね。」


俺はつまらなさそに一人、愚痴を漏らした。

さてと、中庭の様子でも見てみようかね。


「ほぅ、あいつあれを倒せたのか。ふむ、この学校も期待できるかもしれないな。」


俺は学園長室探しを再開した。


私、ミヤリーは授業を抜け出して、中庭で召還魔法の練習をしていた。

召還っていっても、呪文だけでは呼び出せないので、いつものように昨日のうちに購買で買っておいた初級の召還巻物といかにも怪しいローブを着ていた男から巻物を買った。

切羽詰っていたため怪しいというのはわかっていたのに・・・。

でもこれが原因であの男に助けられた。



「もう!!これで何度目なのよ・・・。皆はできているのに、どうして私だけできないのよぉ・・・。」


泣きたくなってくる。

最初は誰もが失敗したりはした。だけど練習などをしていくとほかの皆はどんどん成功していく。

今ではこの学年で私だけができていない。

皆が知らないところで何度もやってきた。けれどいずれも失敗で終わる。

呪われているんじゃないかって思ってくる。


「はぁ・・・。私って才能がないのかなぁ・・・。」


残っている巻物も残り一枚。

ローブの男から買ったけど、見たこともないような巻物だった。


「どうせ失敗するかもしれないけどやってみよう。」


私は精神を集中させて乱れないようコントロールする。


「汝、我に応え、我が前に姿を現わせ、名もなき者よ!」


・・・。

いくら待っても何も反応してくれなかった。

・・・なんで、なんで!

心の中での自問自答でいっぱいだった。『なぜ』それしか浮かばなくて同じ答えばかりが頭のなかでぐるぐる回ってる。


「・・・なんでよ。何でいつも何も反応しないのよ・・・!」


すると、突然持っていた巻物が光りだすと、煙が自分の周りを覆いつくしていた。


「きゃぁ!一体なんなのよ!?」


ほんとに突然のことだったので私はただ驚くだけで、動けなかった。

成功した!あまりにもうれしかったので思考が停止していたのかもしれない。

だけど、煙が収まり、姿を現わしたのがこの辺りでは見たことのない魔物だった。


「グゥォォオォォォォ!」


思わず耳を塞ぎたくなるほどの大声。

でもこれで馬鹿にされなくなる。私はうれしさにその魔物に近づこうとした・・・。けれど



「おい!そこのお前早く逃げろ!襲われるぞ!」


急に声をかけられ、怒られるかと思いそちらを振り向くと、私服姿の歳の近そうな青年が魔物を見据えたまま危険を知らせていた。

だけど私が召還したんだから言うことを聞くはず・・・。


「え、え!?だって私が召還したから私の言うことを聞くんじゃ・・・?」

「その魔物は知能がない、誰もいうことを聞かないんだ!」


そんな話は聞いたことがない。

召還者の言うことを聞かないなんて見たことがなかったからだ。

だけど、次に起こる行動ではっきりとわかった。


「グォォオオォォ!」


オークは腕を振り上げ叩き潰そうとしていた。

思わず、目を塞ぎこんだ・・・。

だけどいくら待っても衝撃がなかったのでうっすらと目を開けると

魔物は倒れこんでいた。

・・・な、なにがあったの?こんな大きいやつを倒すなんて。

でも、まだ息はあるおそらく時間稼ぎなんだろう。


「おい、早くここから逃げろ。」


きっと私の変わりに倒してくれると思う。だけどこれは私が召還したんだから私がきっちり終わらせるんだ。


「嫌よ、あいつを私が倒すんだから、召還した責任よ!」


そう言い放つと目の前の青年は苦笑いとも取れる顔でこちらに近づき。


「・・・ひとつだけヒントをやる。どうせここの生徒は魔物の倒し方なんぞ知っているやつなんて少ないだろう。あいつの弱点は口だ。馬鹿みたいに口をあけてるからそこにめがけて魔法を打て。」

「・・・わかったわ。私があいつを燃やし尽くしてあげるわ!」


ヒントって言うより答えだけど、私は攻撃魔法なら誰にも負けないわ!

口が弱点ね、確かにだらしなく口をあけてるわね。


「私の実力見せてあげるわ!」


魔物に向け言い放つ。



動きは早いけど知能がないぶんあっちこっちに腕を振り回してるわね。

一撃で決めないと、危ないかも。

火炎弾を囮として魔物の顔の辺りでぐるぐると動かしている間に

全力で倒すために詠唱に入った。

だけど、気づかなかった。

知能はなくとも狩りの本能の恐ろしさのことを・・・。


「グゥゥゥォォ・・・。」


うっとうしく顔の周りに動いている火の玉を両手でつぶした。

これを好機と見て詠唱していた魔法を放とうとしたけど、私には魔物の顔がにやりと笑ったようにみえた。

だけど、すでに発動してしまった魔法はキャンセルすることが出来ない。

知っていたのかわからなかったが魔物は、魔法を放ったタイミングでちょうど避けた。


「え!?」


高く飛んだ魔物はこちらに踏み潰そうと急降下で落ちてくる。

死ぬ・・・。そう思っていたが。


「あぶない!ストームバインド!」


急に現れた女の人に魔物の動きを止めた。


「今よ!」

「わ、わかってる・・・!」


今度こそ確実に・・・!


「一点集中・・・!ファイヤー!」


見事に口の中に命中。


「グ・・・ガ・・・ァ。」


ズドーン・・・。土煙を上げながら魔物は倒れ、そのまま灰になり消えた。


「ふぅ・・・。やった。やったぁ!」


助けられたとはいえ、何とか倒すことが出来た。

そうだ、あの二人にお礼を言わなきゃ・・・って


「・・・あれ?二人ともいない・・・。なんだったんだろう・・・。」


私はただ呆然と中庭に立ち尽くしていた。


私は自分で呼び出してしまった魔物を倒し、周りに人の気配が増えてきたのに気づいた。

どうこうしようにも魔力が底を尽きかけていたので座る。


「はぁ、疲れたなぁ~・・・。」


途方にくれていた私のところに、この学校が始まって以来初の聖騎士の称号を持つ、生徒会長シャマル先輩がこちらに歩いてきた。


「君が、さっきの魔物を倒したのかね?」

「そ、そうですけど・・・。」


厳密に言えば、私一人では倒すことが出来なかった。


「そうか!そうかそうか・・・。」


会長は一人でうんうんうなずき、何かに気づいたのかはっとしたような顔をすると痛いくらいに肩をつかんで興奮気味に話してくる。


「君!生徒会に興味はないか!?それに今の君なら騎士の称号も取れるかもしれん!

どうだ?興味はないか!?」


騎士の称号・・・。今の私にとってはこんな機会がくるなんて・・・。

私は私の家の名誉を取り戻すために騎士にならなくちゃいけないんだ。

だから・・・。


「あります。騎士の試練を受けさせてください。」

「わかった。あと・・・生徒会は?」

「・・・いいですよ。」


顔をぱっとはれやかにしていた。まるで子供みたい・・・、こんな人が会長だなんて思わないだろうね。

私はもう一度、あの青年のことを思い出し、顔を横に振った。




「ったく、一体学園長室ってどこだってここか・・・。」


厄介なローブ野郎と会って、学園長室を探していたところ、意外と階段の近くにあったので呆気にとられていた・・・。そんなわけないけど。

俺はドアをノックし返事が返ってくる前に、勝手に部屋の中に入った。


「まったく、君は何年たっても変わらないな、シンキ君。」

「ふん、こんな変な感じがしたからあなただと思いましたよ、元円卓の騎士エリーシャさん。」


何年か振りに懐かしい人物と再会することができたがまさかこの人とか冷やかしかと思うよ・・・。


エリーシャ、元円卓の騎士の教師的な人物。

魔法のことならエリーシャに聞けって言うのが俺たちの中ではあった。

まぁ、でも先生ってなるとちょっと抵抗あるんだよなぁ・・・。


「それにしてもどうしたんだ?魔力がなくなっているじゃないか。」


エリーシャは俺が気にしていることを笑いながら聞いてくる。


「あんたも知ってるだろうに・・・。」

「いやぁ、本人から聞くのと聞いた話から語るやつとは全然違うからな。

いずれはシンキに会おうとしていたんだよ?」


まったく、ほんとに懐かしい性格しているよ。

そういえば聞いてみたいことがあったんだった。


「なぁ、エミリーって知っているか?

あんたと似たような魔法をしているんだが・・・。」

「あれ?会ったことがあるのかい?

あいつは私の弟子だよ。なかなか出来た弟子でうれしいんだが性格が難点でな~。

まったく誰があんな性格にしたんだろね。」


絶対あんただろ。

そんなことを言うと魔法が飛んできそうだから言わないが、


「やっぱりアンタ関係だったか・・・。

俺の家の近くに来ては爆発系の魔法を使っていたから、あんたしか思いつかなくてな。」

「まぁねぇ、でもまだまだだよ。もう少しがんばって欲しいんだけどね。」


そんな他愛のない話で盛り上がっているとドアをノックする音が聞こえた。


「学園長、お呼びでしょうか?」


女の声が聞こえてきたが・・・。

・・・ん?今の声ってまさか・・・。


「いいぞ、入りたまえ。」

「失礼します・・・。」


あ、チェルシー先生だ。

そういえば、学校の先生だったな。今更ながら思い出したよ。


「どうも、チェルシーさん。」

「え?わわ!シ、シンキさん!?どうしてこんなところに・・・!」

「落ち着きたまえ。チェルシー先生。」

「す、すみません・・・。」


エリーシャに窘められ、落ち着きを取り戻した。


「なんでこうも女の子の知り合いが多いのかなぁ・・・。職業がらかぁ・・・?」


隣でナナミがぶつくさとつぶやいている。


「なんか言ったか?」

「べっつに~。」


少しだけ機嫌が悪そうにしてそっぽをむきだした・・・。

わけのわからんやつ。


「そんなことよりだ。実はな、エリーシャに言っておきたいことがあるんだ。」


俺はそういうとここに来るまでに起こったことを話した。


「中庭であったことは知ってるよ。赤い髪の子が魔物と戦っていたけど、ぺちゃんこにされそうだったから、少しだけ手を貸したよ。」

「そうだったのか・・・。俺もそいつには会ったが手助けいらないって怒られたよ。

そしたら、屋上に変なやつがいたから行ってみたら、案の定、スパイっぽかったからなぁ。」


エリーシャは少し考えるようにあごに手を当てていた。


「ふむ、さっそく現れた、というわけだな。

応援を呼んで置いて正解だったな。」


どういうことなのだろうか

応援とは一体・・・。


「姫さんから聞いているとは思うが、この学校自体と生徒を守って欲しいんだ。

教師陣ならば皆、実力者だどうにかなる。

だが、これからのことを考えると魔法を使えるやつは貴重だ。

今は帝国軍と名乗る連中におびえているはずだ、だから実力のある円卓の騎士面子を応援に呼んだんだ。」


まぁ、確かに護衛はいるかもしれないな。でもさ、でもさ。

ナナミはいいいとしてさ、俺だよ。魔法使えないんだよ?


「言いたいことはわかる、だからまた使えるようにと君も呼んだんだよ。

そこで、君たちには一年生からやって欲しいんだよ。」

「はい?」


教師とかで入るのではないのかよ。


「入るクラスは一年E組み、チェルシー先生が担任のクラスだ。

しかも生徒は癖のあるやつらだからお前たちにはちょうどいいのかもしれないな。」


俺たちはこうして

チェルシーさんのクラスに転入することとなった。

あと、余計なことまで頼まれてしまった、なぜこんなところでやらないといけないのか。

それは・・・。


「あの、学園長!」

「なんだい、チェルシー先生。」


なんかいいことを思いついたかのような顔で、興奮気味に俺にとってはなんでやねんと言いたくなるようなことをエリーシャに頼んだ。


「シンキさんは商人ですし、ここに魔法店をおくのはどうでしょうか!?」

「ふむ、確かに面白そうだね、魔道具とかのことなら教師より詳しそうだし、何より面白そうだし・・・。」


結局面白そうだからじゃねぇかよぉおぉぉぉ!

何でここまで来てそんなことをやらなくちゃいけないんだよ。

意味わからん、絶対にやらんぞ!


「週に一度だけでいい、魔法店を開いてくれ、生徒たちも自主連はしたいだろうしな。」

「ったく。週一だからな。ほかは気まぐれでしかやらん。それが条件だ。あと好きにさせてもらうからな。」


まぁ、俺は優しいからな。それにエリーシャに恩を売っておくのも悪くないのかもしれん。


「それで構わない、助かるよ。」

「よせよ、ただ、気まぐれでやるだけだから。」

「うむ、では早速・・・。」


エリーシャは目をつぶり、指を鳴らすと上のほうから魔力が感知できた。

ということは、


「屋上に小屋をだしておいた。さっそくだが、それを使ってくれ。寝泊り構わないからな。」


それはいいことを聞いたぞ。ここからなら遅刻しなくてすみそうだし。


「助かる、いつ見てもあなたの魔法は面白い。」

「そうか?私はいまの君に興味があるんだが・・・。」


うわ~、いやな目をしてる・・・。早く出て行きてぇ。


「では早速、クラスのところに案内してもらうといい。

これからの君たちに期待をしとくよ。」

「あいよ。」

「は~い、わかりました~。」


学園長室を後にした。


まだ、エリーシャと話したいことがあったんだが忙しいのだろう、俺たちが部屋から出る寸前に書類に目を通していた。まぁ、また時間が取れるはずだし、あとで行ってみることにしよう。


「それにしても、学園長と知り合いだったなんて、お二人ともすごいですね。

それに・・・。」


ちらっと俺のほうを見たあと、目を輝かせて


「まさか、シンキさんが魔法を使っていたなんて知りませんでした。何で言ってくれないんですか~。」


事情が事情なだけにあまり知られたくはないだけであって、まったりと過ごしたいのだが・・・。

周りがそうさせてくれないんだろうな。


「エリーシャも言っていたように前に魔法が使えていただけで今は使えないんですよ。」

「魔法が使えなくなるなんて今まで聞いたことがないんで、わからないですけど、シンキさんがよければ私になんでも聞いてくださいね。」

「ありがとうございます。そのときはお願いしますね。」


俺は心やさしいチェルシー先生に感謝していて気づかなかったが、珍しくナナミが考え事をしていた。


「どうした、お前が考え事なんて珍しいな。」

「ひどい言われよう・・・。まぁ、いいけど。」


ナナミがひとつため息をつき、


「エリーシャに任せておけばだいたいはいいけど、今日、シンキが言っていたローブ男(?)がスパイだとしたらこの学校の教師なのか生徒に成りすましているはずでしょ?」


ナナミが珍しく的を得た答えに心の中で賞賛をし、俺もその答えには行き着いてはいたが・・・。


「まぁ、その可能性もあるな。一応、この学校の情報は頭に入れておけよ。

俺は違う線で探ってみる。ちょっと聞きそびれたこともあるし、何かあったら連絡してくれ。」

「何のお話ですか?」

「仕事の話ですよ。ここに呼んだエリーシャからの依頼で。」


知らない仲でもないのでチェルシー先生にはここに来たわけを話しても大丈夫な範囲で話した。

あ、仕事で思い出した。チェルシー先生から依頼を受けてたんだった・・・。

少し遅くなる事を言っておかないと、この仕事がいつ終わるかもわからないからな。


「チェルシー先生、ちょっといいですか?」

「あ、はい。なんでしょう?」

「この前の依頼の件なんですけれど、今がこの状態なので遅くなるかもしれませんが・・・。」

「えぇ、そうですね。確かに今の状態では探しに行くのは大変ですね。」


チェルシー先生は苦笑にお疲れ様ですというような顔をしている。

うん、本当に申し訳ない・・・。


「もうそろそろ、これからお二人が通う教室に着きますので準備しといてくださいね。」


・・・準備?心構えのことだろうか。まぁそれくらいなら・・・。

一年E組み・・・ここか。

さて、ここらで一発ばしって決めてやるか。

先に先生が入り、俺たちがこのクラスに入ることの説明をし、


「では、皆さんに編入生を紹介しますね。二人いますよ!入ってきてくださ~い。」


まぁ、あとのことはわかるよな。

最初にあったとおりのことをしたんだ。

逃げた。

ただそれだけのことだ、何もしていない。

で、結局は捕まっちゃったわけだがな。


「あの~。いきなり走るのはやめてくださいね?次は怒りますよ。」


担任に注意されたわけで・・・。

あ~ほら。クラスメイトもすごい顔してる。


「「すみませんでした。」」


こほんと場を仕切りなおすように咳をし、クラスメイトたちに向き直る。


「では、改めて自己紹介をお願いします。」

「「はい。」」


ここまでがある意味の序章

だが、ここから始まる物語はまだ誰も知りはしない。

たとえ、魔王の力を持っていたとしてもだ。


「なぁ、エクレこれからどうなるんだろうな。

帝国軍やら魔法の国のこととか、どうも昔のようにはっきりしていればよかったんだが・・・。

生徒のお守りまでしないといけないし。」

「ふむ、今目の前のことに集中しておればよかろう。

いずれ答えがでるじゃろうて。」


・・・だな。

俺は気分を改めなおして、まず目の前の自己紹介を済ませることにしよう。


「シンキ・マーグナーだ。こんな学校に来るのは初めてなのであまりよくは知らない。

今は商人をやっている。何かあったら俺に注文するなりやって来い。以上だ。」


ふむ、最初のイメージが大事って言っていたからな。これでなめられることはないだろう。

俺は再度クラスメイトたちの顔を見渡して、ある一点の場所で目を留めた。

何でかというと、赤い髪をしているやつ(見たことがあったような)が俺に指を差してわなわなと震えている。しかもなんでここにいるのよ見たいな顔まで。

まったく人に向けて指を差しちゃいけないことだとママに教わらなかったのか。

次にナナミが入って来ると、俺とは扱いが天と地ほどの差が出てくるほどの黄色い声がまわりからうるさく聞こえる。


「きゃー!円卓の騎士ナナミ様よ!」

「な、何でこんなところにいるのよ!?わけわかんなくない!?」

「こんな学校に転入なんて私、もう死んでもいい・・・!」


うわぁ・・・、すごい人気だ。

円卓の騎士だから人気なのもわかるんだが、俺も・・・。

って言っても仕方ないか・・・。


「はいはい、落ち着いてください。まだ自己紹介もしていないでしょ。」


ナナミは今にも飛び込んできそうな生徒たちを警戒しつつ、自己紹介を始めていく。

ちなみに男子はというと、女子の圧力に押されてか、端っこのほうで固まっている。


「みんな、元気だね。

知っての通り、円卓の騎士、ナナミ・ナンシーです。よろしくー。」


一通り挨拶が済み、空いている席へと誘導され、休み時間が入った。

定番の転入生への質問攻めっというのを聞いたことがあったので待ち構えていたんだが・・・。


「あ、あの!ナナミ様!」

「同じクラスメイトなんだから、様なんてつけなくてもいいのに。」

「で、でしたら、ナナミさん!魔法の手ほどきをお願いします!」

「あ、ずるい。私も!」


私も!私も!っというようにナナミの周りに皆が集まっていた。

・・・な、泣いてなんていないんだからね!

俺の周りに誰も来なくてもさびしくなんてないんだから!

改めてナナミの人気ぶりに思い知らされ、不貞寝でも決め込もうとしたとき。


「シ、シンキ。・・・ちょっといいかしら。」

「んぁ?・・・あんたは?」


先ほど俺に向けて指を差していた子が俺の前に現れた。俺にも質問されるのかなぁ・・・。ふっふっふ。


「私はミリヤー・アルコット。」

「アルコット・・・。どこかで聞いたことのある名だな。」

「・・・珍しいわね。アルコットの名を知っているなんて。

もう没落した家の名よ。」


アルコット、アルコット。・・・あ、あれか?

確かアルコット家は炎の一族だったかな。没落した原因は魔王軍による攻撃だったはず・・・。

そうか、生き残りか・・・。


「すまない・・・。守れなかった・・・。」

「え?なんであなたが謝っているのよ、終わったことよ。

それに私にはアルコット家を取り戻すんだから。

・・・じゃなくて、あなたにはお礼がしたくて・・・。」

「お礼?」


俺、こいつになんかしたっけな?

そんな記憶がないんだが~・・・。ん?赤い髪?もしかして中庭にいたっていう・・・。


「中庭で危ないところを助けてくれてありがとう。それじゃ!」


顔を赤くして感謝を述べた後にすぐにどこかにいきやがった。

だがまぁ、ミリヤー・アルコット・・・か。なかなかいい子じゃないか。

再度、ナナミのほうを見るとこっちを向いて、あとで説明してよね?みたいな感じの顔をしてきたので気づかないふりをして机に突っ伏した。


この学校の授業内容が朝から4時間ほどが座学で2時間くらいが実技、まぁ魔法の勉強というわけだな。

なかなか興味深い授業内容ではあったが、円卓の騎士がいるせいで教える側の教師陣がびくびくしながらの授業だったのでミスすることがごくたまに・・・。

授業終わりの休み時間になれば、早速うわさを聞きつけた生徒たちが廊下のほうにずらぁっと並んでいたりも・・・。

なんてことがあり、座学が終われば昼休み、すでに学食の位置は把握していたので一人でまったりと食事でもしようと思っていたんだが、ナナミも同じように向かおうとしていたんだろう。


「ねえ、シン・・・。ってうぇ!?」


俺と一緒に食堂に行こうって言いたかったんだろうが、クラスメイトたちがナナミのほうに大量に集まり、我先にと食事に誘っていた。

俺はというと、男子連中に『ドンマイ』というような哀れみっぽい視線を送ってくる・・・。

ったく・・・、なんだこいつらは。


「ねぇ・・・。シンキ、ちょっといいかな?」


俺がクラスにため息をしていたら、ミリヤー・アルコットが・・・、めんどくさいのでミリヤーと呼ぼう。

ミリヤーが声をかえてきた。


「・・・ん?おぉ、ミリヤーだったな。どうした。」

「一緒に食事でもいい?」

「あぁ、構わんぞ。・・・ふむ、なにか話したいことがあるようだな。」


なんでわかったのというような驚いた顔をしているミリヤー、おもしろいやつだな。


「どうしてわかったの?ってそんなことはどうでもいいわ。

その通り、ちょっと聞きたいことがあって・・・。」


ふむ、訳ありそうな感じがぷんぷんしてくるな。

とりあえずナナミに先にいってくると手で合図を送り、うなずいてきたのできっと合流するだろう。

俺たちは先に食堂に向かった。



ほんの数分だけしか時間がたってなかったのにもかかわらず、すでに学食のなかは生徒でごった返しになっていた。

端っこのほうにひとつだけ空いていたので俺たちはそこに席に座ることにした。


「とりあえず、飯でも買ってくるけど、お前は何にするんだ?」

「え?い、いいわよ、別に・・・。自分で買うから。」

「・・・は?何勘違いしてんだ?あとで金は返してもらうつもりだけど。」

「・・・・・・Aセット・・・。」


まったく何を勘違いしたのか、俺もピンチだったのに・・・。

そんなことはどうでもいいか・・・、ふむ、おぉ!

こんなところにうどんとそばがある・・・だと・・・!?

もう何年も食べてない・・・。ここは久々に食べるか!


「おう、待たせたな。ほらよ。」

「ありがと。」

「いや~、ここの学校は楽しみだなぁ、こんなに食事の種類があるなんてコンプリートしないとな。」

「それで、あんたは何を食べてるの?」

「ん?俺が食っているのは・・・・・・うな重だ!」


脂がのっているところに甘辛いこのタレ!ご飯とも合う!

うますぎる・・・!やはり飯を食っているときが一番好きだ・・・。

だが、ミリヤーは少しだけ引いているようだ、なんでだ。


「どうした?うまいぞ。」

「魚を食べるなんてあなたくらいよ・・・。周りなんてそんなの食べる人見たことないわ・・・。」


うまいのに、残念だなぁ・・・。

黙々と食事をしているとようやくナナミが現れた。


「いや~、ごめんごめん。あまりにも人が多すぎて鬱陶しかったよ・・・。」

「おう、待ってた。」

「え?あの・・・、なんで?」


ナナミが俺と話していることがおかしかったのか、ミリヤーがあわあわとしている。

俺はさりげなく周りを見回していると、学食にいる面子がみんなナナミのほうを興奮気味に見ていた。

だが、俺たちと席を一緒にした瞬間には、主に俺が嫉妬やら色んな視線がびしびし突き刺さってくる。

・・・畜生、俺関係ないじゃん。


「えっと、君は?」

「あ、ミリヤー・アルコットです・・・。」

「ミリヤーね、うん。それで・・・。

 どうして、シンキと一緒にいるのかなぁ・・・?」


うわ~、ものすごく威圧しているよあいつ、そんなに俺と飯でも食いたかったのか。

ってかなり泣きそうな顔をしてるじゃねぇか、止めないと。


「まぁまぁ、いいじゃねぇか。

 なんか話たいことがあるって言ってたし、聞いてみようじゃんか。」

「へぇ、そうなんだ・・・。ってアルコットといえば・・・。」


ナナミも申し訳なさそうな顔をしていたが、すぐに笑顔になり話を進ませてきた。


「うん、手伝えることがあったら協力するよ。」

「うぇ?あ、ありがとう。」


さっきまでの態度と一変したから妙な反応になったんだろう、やはりこいつは面白い・・・。

(・・・お主もおかしくなったのう。)

呆れたような声も聞こえたようだが、知らぬ!


「話っていうのは、昼からの実技のことなんだけど。」


俯きながらしゃべっていたら、急にまっすぐ見据えると、


「私とペアになって欲しいの!」

「・・・・・・ぺ・・・・・・ア・・・・・・?」


壊れたロボットのようになっていただろう。それくらい意味がわからなかったからだ。

まじめな感じになっていたから普通に勘違いをしてしまっちゃったじゃないか。

ていうか・・・


「そんなことのために呼んだのか?」

「そうだけど・・・。」


ナナミはやれやれといった感じに頭を振っていたが、そんなことはどうでもいい。

俺は、ただ震えて叫んだ!


「そんなもの・・・授業のときにでも言えただろうがぁぁぁぁあぁ!!」


視線が痛い・・・。きっと大声を出したせいだろう。

騒がしかったのが一気に静かになったら目立つわけで・・・。


「ったく、次の授業になんか関係あるのか?」

「いや、ただ。友達がいない・・・だけだから・・・。

 それに必ずペアにならないといけないみたいだし・・・。」

「はぁ~、まったくなんで俺となんだ?

 知り合ったばかりだろに・・・、それに自己紹介にも言ったが俺は商人だ。

 知識があるだけだ。」

「え?あれってほんとだったんだ・・・。

 まぁ、あんたも知り合いいなさそうだったしいいかなぁって。」

「だが、断る!」


失礼なやつだなほんとに・・・。

俺は気分が悪くなったと伝え、保健室に行くわけでもなく学長室に行くことにした。




「まぁ、そんなに気にしなくてもいいよ。

 シンキはああいうやつだから。」

「なんで、あんたにはわかるの?」

「あいつとは幼馴染だからね。」


それであんなに仲がよかったんだ・・・、うらやましい・・・ってなんで私はこんなことを思っているの!?

ただ、あいつには助けてもらっただけなのに。


「ふ~ん・・・。」

「な、なによ。」


な、なんで私の顔を目を細めて見ているの・・・!?


「・・・クス。」

「今度は何よ・・・。」


そろそろ私もいらいらしてきた。

まったく変なやつらと知り合ったものだわ!


「円卓の騎士であるあたしといても動じない・・・か。

 あなた面白い人ね。」

「・・・目標だから。」

「目標・・・ね。」


いずれわたしは頂点を目指す。だからこんなところでくすぶってるわけには行かない・・・。


「見てなさいよ。私もあなたのいるところまでたどり着いて見せるわ!」

「はは!いいねぇ、好きだよ。そういう考えの人はね。」


うっ、すごい威圧感・・・、これが現役なのね・・・。

押されていちゃ・・・だめ!


「これからよろしくね。ミリヤー・アルコット。」

「えぇ、こちらこそ、ナナミ・ナンシー。」


二人の間に何か電流が流れているような錯覚に陥るほどのにらみ合いをしていたのであった。


気分が悪いといって学食から出てきてしまったが、別に体調が悪いわけでもなく、これといってミヤリーに対して怒っている訳でもない。

では、なぜなのかってなるけどそこまでの理由はない。

ただ、二人きりにさせるとどうなるのか?っという興味でしかないのだが・・・。

思い出したことがあったのでこのまま学園長のところに行こうかなっていうくらいで・・・。

ただの思い付きである。


「まったく、あいつの発言は意味がわからん・・・。」


癖になりつつあるため息をもう何度か零し、学長室の扉の前に立っていた。

ノックをするという最低限の礼儀をするわけでもなく、自分の部屋でもあるかのような振る舞いで堂々と入った。


「お~い、エリーシャ~、いるか~?」

「・・・・・・まったく、君というやつはどうして礼儀を知らんのか・・・。」


どうしてって言われてもな、これでずっと過ごしていたからそんなに気にしていないんだが・・・、おかしいものなのか。

まぁ、ここにいるならある意味都合がいい。


「今は忙しいか?」

「そうだな、多忙すぎて誰かさんに手伝って欲しいところなんだがな。」

「そうか。それでな、聞きたいことがあるんだが。」

「たまには私の話も聞いてくれ・・・。」


エリーシャがため息をつき、諦めたように後ろの椅子にもたれかかった。


「・・・・・・それで、聞きたいことって言うのは?」


さすが元円卓の騎士の称号を持っていた人だ・・・。

威圧をしているようでしていない緊張感のある空気だ。

ここの生徒だと何人のやつが耐えれるのか・・・。

ピリピリとした肌触りの中、俺はにやりと不敵に笑う。


「そうだな、俺がスパイがどうたらこうたらって言っていたのを覚えているか?」

「あぁ、君が最初に来たときに言っていたね。屋上にそれらしき人物がいるって・・・。」

「そんとき、エリーシャが『さっそく現れたな。応援を呼んでおいて正解だった』と言っていたのを思い出してな。・・・なんでそんなに早くに知っていたんだろうって。」


やれやれといったようにエリーシャは顔を横に振る。

実際はもっと早めに聞いておきたかったことなんだが、まぁ、なんだ・・・。

流れってあるじゃん?そんな感じに流れた・・・みたいな?


「そんなことまで覚えているなんて・・・。

 地獄耳に無駄な記憶力・・・、めんどくさ。」


聞こえてる聞こえてる・・・。そんなはっきり聞こえるように言われると傷つくんだが・・・。

さっき言ってた地獄耳関係なく聞こえてるから。


「・・・君たちが来る前に、それらしいことが少々起こってね。

 私一人では調査することが出来ないから、君たちを呼んだっというわけだ。」

「ふ~ん、そうだったのか。あとは時間が教えてくれるってわけだな。」

「まぁ、後手に回るのはあまり好きではないが、そうなるな。」


ほんの少しとはいえ情報は大事だからな。もう聞くこともないし一旦戻るとするか。

俺はまだ説明しているエリーシャを無視して、静かに部屋から退室した。


「・・・・・・というわけなんだよ。それでだ、私も聞きたいことが、って・・・。

 なんでいつも、いつも、いつも! 私の話を聞けぇ!」




うわ、やっべ!エリーシャがかなり怒っていらっしゃるようだ・・・。

あそこにはあまり近づかないようにしよう。

そう胸に誓い、もう時期に午後の授業が始まるので教室に戻ることにした。


俺が教室に戻ってきたときにはすでにナナミとミヤリーが教室に戻っていた。

二人で仲良く話しているところを見ると、二人にしてよかったなんて思う。

俺が言うのも何だけど・・・、あいつには友達と呼べるような存在がこの学校にはいない気がしたからだ。

一日そこらでわかるはずもないので勘・・・といえばいいのか。

とにかく、二人には気づかれないように気配を薄くして自分の机で寝ることにした。

数分後には鐘がなり、担任のチェルシー先生が教室に入ってきた。


「では、皆さんにお昼からの魔法技の勉強をしていきたいと思います。

 なので一旦、グラウンドに集まってくださいね。」


クラスの各々が気のない返事をしながら、グラウンドに向かおうとしているが、何人かはオーラのようなものを漂わせて、今か今かと待ちわびているやつもいる。

かくいう俺はというと、ここの実力とやらを定めなければならない。

仕事とはいえ、めんどくさい・・・。男子は主に俺が、女子は主にナナミなんだが・・・、あえて言おう!

主に男子っていうだけで女子を見てはいけないなんてことはない。ばれない程度に見ることはできる!っとだけ言っておこう。もしばれてしまってはやばいので・・・。


「皆さん、そろいましたか?点呼をお願いしますね。」

「クラス全員集まってます。」


さっそくナナミが委員長みたいな仕事をしていた。

ていうか数えるの早すぎだろ・・・。何人か来たばかりだぞ、俺含めて・・・。


「では、さっそくですが二人ペアになっていただいて、それぞれで模擬戦をやっていただきます。

 これは魔物や、敵が現れた際の対処法の勉強です。ですので、手加減はなしで構いませんが死に至らしめるような技は禁止です。発覚した場合退学させて頂きます。

 ・・・あ・と・は、勝ったペアには評価を+1ポイント上げますね。」


そんなお茶目に言われても・・・。何のポイントなのかさっぱりだし。

それにだ。

思わず感心してしまったところはある、流石は教師・・・。いつもはおどおどしているところばかり見ているが、こうも変わるものだとは。

今更だが、ミリヤーが言っていたのはこれのことだったのか・・・。

模擬戦はいいことなんだが・・・。まぁ何事もないようにするか。まだ薬の効力はあるけど出来るだけ使わずに戦ってみるのも面白そうだ。


「あ、あの~。シンキ、昼のことなんだけどいいかな?」


ミリヤーが上目使い気味に聞いてきた。

さては、俺が昼にあんな態度を取ったからこんな妙におどおどした感じになっているのか。

気にはしてないので俺は笑顔で、


「だが断る!」

「昼のときと一緒じゃないぉ!」


うわっちゃ、怒らしてしまった・・・、そんなつもりではないんだけどなぁ・・・。


「冗談だ、いいぞ。よくわからんが。」

「ほ、ほんと!?」

「ほんとだ、ほんと。しつこいとやめるぞ。」

「う、うん!」


ったくなんでそんなほんわかとした顔をするんだよ。これから模擬なのに。

よくわからんやつだな。


「おい、聴いたか?」

「聴いた聴いた、ミヤリーが誰かと組む見たいだけど、あれは誰だっけ?」

「ほら、自己紹介のときに商人とか言ってたやつだよ。」

「まじか!だったらあのペアと戦うときは楽に評価があがるな。」

「ほんとだな。あのミリヤーと商人だろ?簡単すぎるだろ。」


・・・言いたい事ばかり言っていやがる、昔も今もこういうやつは減らないな。

まぁ、俺がどうこう言われるのはいいんだが・・・。

横のやつは顔を俯けて、黙ったまま。・・・言いたいことは実力で示してくれればな。

さてと、とりあえずペアになったから先生に報告っと。

後はただただ、対戦相手が誰になるのか、俺たちは静かに待っていた。



「皆さんペアになれましたか?

 ではこれから模擬戦を始めたいと思います。ナナミさんは申し訳ないですが見学ということで・・・。」

「あはは、まぁそうなりますよね。わかりました、危険なことがあったときは止めに入りますね。」

「お願いします。」


ふむ、ナナミが見ていてくれるなら危険なことはまずないと言ってもいいだろう。

安心してできるっていうものだ。

俺もたまに見ておくか・・・。

それにしてもだ・・・。何組かのペアで模擬戦を行われているが、命の取り合いではないので危機感というものが欠けている。学校なのでそんなことは出来ないが、実戦になると動けなくなるはずだ。

そのことを気づいているだろうナナミは俺と目線をふと合わせるとなんとも言えないような顔をしていた。


「ミリヤーとシンキペア、前に来てください。」


おっと、呼ばれたか・・・。

俺はまだ効力が続いているのか皆に見られないように確かめ、拳を握り気合をいれる。

先に相手ペアがいたのだが、俺たちの顔を見るとにやにやと鬱陶しい笑みを浮かべていた。

余裕だな。っといったような感じがしたので少し、いたずらをしてやることにした。


「おいおい、俺たちの相手はこいつらかよ。余裕過ぎてあくびが・・・どぁ!」

「はははは!お前何もないところで何転んで・・・ぬぅわ!」


簡単な魔法を足元に纏わりつかせただけなのにこれに気づかないとは・・・考え直さないといけないな・・・。


「ったく、情けないやつらだな。何もないところでこけるとか笑えるな。な、ミリヤー。」

「あ、あんた、な、何したの!?」


慌てた様に俺を引っ張るので近くによってみる。するとミリヤーが小声で捲くし立ててきた。


(あ、あいつらは問題が多いやつらよ!)

(だからどうしたんだ?あんな態度をとるほうが失礼だろ。)

(そ、そうかもしれないけど・・・!)


「てめぇ、っざけんなよ・・・!」

「何言ってんだ?俺は何もしてないが?」

「気づかないと思ってんのか?似非商人さんよぉ!てめぇをぼこぼこにいたぶってやるよ。」


いつの時代のヤンキーだよ。思わず、そう突っ込みを入れたくなった。

だが、相手のペアは無駄に闘志を燃やしているのでミリヤーの実力も図れるかもしれない。


「静かに!これから試合を行います。

 ・・・では、始めてください。」


魔法を使用するのに大事なことがある、それは媒体となる杖だ。杖といっても木でできたイメージ通りのものではない。

昔はその木でできたイメージ通りの杖だったらしい。だが、今ではいろんな種類が出来ていた。

昔なじみの杖や箒、近接に特化した魔法剣、拳、靴。遠距離では銃や弓といったように多くある。

よく魔法を使うのは貴族に順ずる人たちしかできないって言うイメージだが、そんなことはない。平民でも魔法を使うことが出来るが、よく手に入る杖や箒で魔法を使用するため近接や遠距離に特化した魔法具には歯が立たない。単純に魔法力がっていうのもある。

そして大体の貴族は特化した魔法具を所持しているため、魔法使いは貴族だろ?みたいなイメージになる。

そして今まさに模擬戦が始まろうとしているが、自慢じゃないが俺は媒体となる杖は持っていない!

なので逃げまわっている。

相手は魔法拳と杖で近距離と援護という定石のペアが出来ている。

だが俺たちはというと・・・。


「ちょ、ちょっと!シンキも魔法を使いなさいよ!」

「すまん、無理だ。」


何もうまくペアなんてできていなかった。

俺は前に出てきている拳使いの攻撃をかわすので精一杯。学生だからって侮っていたかもしれない。

意識を変えなくてはならないな・・・・・・。


「っち!ちょこまかちょこまかと避けやがって!」

「おい!はやく終わらして、ミリヤーを倒すぞ。」

「わーってるよ!くそが!」


(なんでだ!何で俺の攻撃が当たらない!強化魔法に拳の風圧による斬撃も付与しているはずだぞ!?)


「ただの商人風情がぁ!」


拳使いが痺れを切らして大振りの攻撃を放とうとしていた。

だが、それがいけなかった。


「まだまだ甘いな、お前。」


俺は相手の攻撃をかわしながらどう反撃をしようか迷っていた。

強化魔法に拳になにかしらの付与がされていたのはわかっていたが、当たれば致命傷なので慎重になるしかない。

なのでずっと攻撃を避けいたら痺れを切らすだろうと思って待っていたんだが、思ったよりも早く切らした。

俺は肩と二の腕を押さえ、相手の勢いをうまく利用して、地面に押さえ込んだ。


「ぐぁ!!」

「少し評価を改めないといけないかもな・・・。」

「な!?てめぇ!」


仲間が押さえられたのを見てこちらに魔法を放ってきた。


「空気を震わし、敵を切り裂け!ソニックウインド!」


・・・相方を助けたいのはいいことだが、こちらはその相方を抑えている。

つまり、こういう風に・・・!


「・・・!?解除だ!」


魔法を放ったやつは焦ったように魔法の解除を唱えた。

なぜかというと・・・。


「てめぇ・・・!人質だと・・・?卑怯な。」


相手は悔しそうに歯噛みをしている。


「あほか、戦いに卑怯があるか。それに、相方を助けたかったら、もっと違うことを考えな。」

「っくっそ!」


あとは、俺の相方なんだが・・・。


「おい、ミリヤー!何やってやがる!」

「ペアで模擬戦やったの初めてで・・・!」


ここにも問題のやつがいたよ・・・!

どうも一人で戦うことに慣れてしまっているかもしれない。

中庭で見たときがそういうことか・・・。


「俺はこっちのやつを抑えておくから、お前は目の前のやつに集中しろ。」

「う、うん!」

「っち!ふざけやがって、すぐに終わらしてやる・・・!」


少しだけ予定と違うが、まぁなんとかなるだろう。

とりあえず、抑えたままにしていたら下のやつがうるさいので少し黙らせてっと、ゆっくり観戦でもしていようかな。




・・・すごい。魔法を使わずにあっさりと倒しちゃうなんて。

あまりにも普通にこなしていたシンキに改めて感心していた。

自分では商人だと言い張っているが実力があまりにもかけ離れている。

もしかしたらこの学校では一番かも知れないほどに・・・。

まぁ、円卓の騎士のナナミが一番だけど・・・、そういえば幼馴染なんだっけ。魔法、教わったのかな・・・。

って、だめだめ!まずは目の前の相手を倒さないと、きっとシンキは私の実力を測っているはず・・・。見てなさいよ!


「今のところ一人だから何も問題ない、いっけぇ!グランドファイヤー!」

「相変わらずの火力ばかめ・・・!」


ペアでの実力はないが、一人のときでの火力はおそらく学院の10の指には入るほどの実力者。

だが、学院側は一人にさせることはなく助け合いが出来るようにペアでの行動になっているため、ミリヤーが評価されることがない。

そのため相手はその火力ばかを一人で倒さないといけないためにかなりの苦戦を・・・いや、勝負はついているようなものだった。

魔法を放ったミリヤーの技を飛んで避けたので、次点を準備しているミリヤーからしては的を狙うだけ。

なので勝負はついていた。


「かかったわね!終わりよ、ファイヤー!」

「な、しまっ!?・・・・・・ぐはっ・・・。」


クラス中はミリヤーが勝つとは勝つとは思わなかったので皆が驚きで口を開いていた。

ただ一人、厳しい顔でシンキのことを見ていたナナミ以外は・・・。


俺たちの試合が終わったあとは学生同士の戦いになるので、なぁなぁな感じに消化していった。

俺も学生だけどな・・・。

だが、気になることがあった。

学生の中でも本気で騎士クラスを目指そうとしているやつや、卒業できたらいいやって言う考えのやつらもいたからだ。

今の時代はそういうものなのかとしか言えないが、なんというか守ってみせるという覇気が欲しいものだな。


「皆さん、お疲れ様でした。中にはいい試合のものもありましたね。

 では最後にナナミさん、お願いします。」

「えぇ。」


なんだ?一体何が始まるんだろなー。

・・・嫌な予感しかない、俺のこと見てるもん・・・・・・・。


「えぇ~、おほん。なかなかいい物を見せて頂きました。

 中にはいい魔法をお持ちの方もいましたね。これからも精進してくださいね。

 それでですね、実は私が気になったペアとこれから模擬戦でもしようと思いまして・・・。」


へぇ~・・・、気になったペアか~。どんなやつらなんだろうー。

めんどくさいからやだなー。


「ミリヤー、シンキペア、私と一戦やりましょう!」

「え、えぇぇぇぇ!」


ミリヤーがクラス全員の分くらいの驚きの声を出してくれた。


「そ、そんな、私たちがなんて・・・。」

「ま、仕方ないな。皆が見てるし、さっさと帰りたい・・・。」


終わらせたいという意味で・・・。

あいつはあいつでこんなところでしか俺と戦えないからか?

なんであんなにいきいきしているんだよ。


「さてと、準備はいいかな?手は抜かないからね全力でかかって来てよ!」

「は、はい!」


(こんなチャンスめったにない・・・!私は円卓の騎士を目指すんだ、そのために覚えてもらうために!)


・・・ふむ、あいつなんであんなに力いれてるんだ?

このままじゃまずいかもな・・・。


「よし、じゃ、先生。合図お願いします。」

「わかりました、では・・・。はじめてください!」


ナナミの魔法は近接をメインとした魔法・・・、そう考えると俺はもちろんのこと高火力であるミリヤーも素早い攻撃は苦手なはず・・・。

魔法が使えたらなぁ・・・、なんていう考えは捨てて、出来るだけのことをやるしかない。


「シンキと久々に戦えるなんて・・・!」

「何が久々だ!徒手空拳で魔法も使わずに俺にかかってくるんじゃねぇ。」

「まぁ、理由は二つあるけどね。この近距離だとミリヤーは魔法を撃ってこれない。

 それとシンキは魔法が使えないし、どこまで出来るのか確認したかったからかな?」


っち!よく見ているな!

確かにあいつの弱点はペアで行動することだろな。味方に当ててしまうかもっていう恐怖があるはずだ・・・。

だが・・・!


「だが、近接で俺に勝てたことあるかな?」

「そう、だから。」


ナナミは一度俺から距離をとった。

距離をとるということは・・・。


「戦々恐々!恐れをなくした武士もののふよ!我に力を与えたもうなり!」


魔術を使うこと・・・。それも上位版の身体強化・・・、耐えれるか、俺・・・!

気づかれるのを覚悟で魔法を使うか・・・?

いや、だめだ。まだ・・・!


「ミリヤー援護は任せたぞ。」

「えぇ!?む、無理だよ~・・・、人がいると撃てないし・・・、ケガ、させちゃうかも・・・。」

「そんなことで魔法使いになれると思っているのか?少し見直していたんだがな。」

「っ!そ、それは・・・。」

「自分の魔法を信じてみろ、きっと応えてくれる。

 それに、なんていったって俺だぜ?当ててやるっていう覚悟がないと、俺に当てることなんて一生無理だな。」



・・・私のことを信頼してくれている、なのに私は・・・。

当ててしまうかもっていう恐怖でなにもできなかった。

でも、負けてしまうかもしれないけど、何もしないよりまし!

深呼吸を数度行い、気持ちを落ち着かせた。

よし!私にできる最大の援護を!



「それじゃ、いくよ!シンキ!」

「やってみやがれ!」


また二人で徒手空拳を始めたが、さっきとは違い、シンキが押されていた。


「どうしたの?押されているよ~、ふふふ。」

「っるせぇ、あえて押されてやってるんだよ。」


なんて強がっているけど、やべぇな・・・おい、腕が痺れてきてやがる。

だが、もう少しの辛抱だ!


「どうも近接になると撃ってこないね、やっぱり学生じゃまだまだだね。」

「ふっ、ほんとにそう思っているのか?」

「ん?どういう・・・。」

「お前も考えが甘いぜ。油断はすんなよ?・・・やれ、ミヤリー!」

「えっ!?」


シンキの背後から火の玉が八つほど飛んできていた。

しまった!撃ってこないと思っていた私の誤算。

回避しようにも格闘戦に持ち込みすぎた!

だが・・・、


「おいおい、マジに俺に撃ってきたのかよ!」


狙いはシンキが今まで立っていた場所。

だけど、そこからの修正で今度は私のほうに飛んできていた。


「やるねぇ、だけど・・・!」


私は拳に魔力を流し、飛んできた火の玉を殴り飛ばしていく。

避けるだろうと予想をしていたミリヤーは、自分の魔法を殴り飛ばされたことに驚き、その一瞬の隙を見逃さなかったナナミにより空気圧でできた打撃で吹き飛ばされた。


「ふぅ、少しは見直したかな・・・。でも、これでシンキと・・・!」

「降参。」


シンキは思いっきり両手を上げて、まいった、としていたので腹が立って、ミリヤーに使った空気圧の打撃を数倍威力を上げてシンキに放った。


「ぐふっ!!・・・・・・・お、おま、え・・・。」


俺、何かやらかしたか・・・、そう言葉に出来ないまま気を失っていった。


「うっく、かなり効いたなぁ・・・。」


俺は未だにナナミから受けていた攻撃の痛みが長引いていた。

窓の外を見てみればもう夕方になっていたがここは保健室か・・・、ていうか、


「なんでこんなところにいるんですかねぇ・・・、姫さん。」

「いえいえ、連れてきてもらったんですよ~。」


この国のお姫様が学校に来ていた。

ったく、何が連れてきてもらったんですよ~、だよ。

こんなところに来ても大丈夫なんかよ・・・。


「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ、皆さんが守ってくれますし・・・」


俺と顔を合わせて信頼をしている顔で、


「シンキなら私を守ってくれるでしょ?」


昔と変わらない、優しい笑顔。

どんだけこの笑顔に救われた事か・・・。


「・・・今の俺がどういう状態なのかを言ったはずなんだがなぁ。」

「えぇ、知っていますよ。ナナミにぼこぼこにされたと聞いていますけど。」


やっぱりあいつだったか・・・。しかもぼこぼこにしたって言ってるけど、ナナミのやつが不意打ちしただけだし・・・。


「とりあえず、ちょうど起きていただいてありがたかったです。

 少しお話をしたいのですが・・・、人がこなさそうな場所ってありますか?」


話とは一体なんなのかわからないが、人がこなさそうといえば・・・、屋上にあるあれか。


「それじゃ、屋上にある小屋にいくか。」


この学校は四階建てのため一階から屋上まで行くのはなかなかに骨が折れるが・・・。

ドアノブをまわして外に出た。


「まぁ、きれいですね。」

「・・・いや、これは汚いだろ・・・。」

「え?」

「え?」


俺は小屋を見ていて、姫さんは夕日を見ていた。

そりゃ、話はかみ合わない・・・。


「とりあえず入ってくれ、俺も初めて入ってみたが・・・。」

「え?何か言いましたか?」

「・・・いえ、何も。」


中に入ってみてわかったが、家具などはある程度あるようだが、見たことある家具まであるのは何でだろな・・・。


「それで、話というのは・・・。」

「えぇ、それなんですが・・・。」


がちゃ、ばん!!


「シンキ!起きたなら連絡してよ、姫様が来ているんだから!・・・あ。」

「あ、じゃねぇよ!またドアを壊しやがってふざけんじゃねぇよ!」


いつも通りの行動だったため俺は、泣きながらドアの修理に励んでいた。


「ナナミも来たことですし丁度よかったです。二人に依頼というかお願いがあるのですが・・・。」


俺たちは顔を合わせて首をかしげ、姫さんの次の言葉を待った。


「騎士の称号を得るために修練する場所、グライス遺跡があるのはご存知ですよね?」

「まぁ、一度は通る道ですからね。」

「実は一番奥にある石碑から隠し通路が見つかったんですよ。

 それでなんですが、騎士称号をとるために一人、その遺跡に来るみたいで、その人にばれないように調査をして欲しいんです。」

「・・・それではいいんですが、その称号を取りに行くやつは?」

「確か・・・、ミリヤー・アルコットさんですね。」


俺たちはその名前を聞くと、顔を合わせてナナミは顔を横に振り、俺はため息をついた。




私ことミリヤー・アルコットは今、生徒会室にきていた。

とはいっても、実は生徒会長に呼ばれただけなんだけどね・・・。

もうすでに外は赤く染まっていたのでシンキの様子でも見に行こうとしたところに捕まってしまった。


「君に来てもらったのはほかでもない、騎士の称号を掴む為の試練の日程が来た。」


ついに来た・・・!失敗するわけには行かない。

私は拳を強く握り、緊張をごまかそうとしていた。でも、やっぱり緊張する・・・。


「生徒会メンバーの監修の元、二日後のグライス遺跡で行う。」

「・・・わかりました。」


二日後・・・、体調管理とか魔法の調整しないとね・・・。


「・・・まぁ、あまり気負っちゃだめだよ。失敗することのほうが多いから・・・。

 だけど怪我をしてまで無理をしないこと、死んでしまう恐れがあるからね。

 たとえ失敗したとしても、卒業すれば騎士にはなれる。そこからでも上がっていけばいいから。」


凛とした顔をして、会長は話してくれた。

きっとそうしておいたほうがいいのだろう・・・。死ぬ恐れがある、そんな場所に行かなければならないから。


「気をつけておきます。それでは、失礼します。」


私は生徒会室を後にして、寮へと帰宅した。・・・・・・何か、忘れていたような。まぁ、いいや。


「ミリヤー・アルコットか・・・、失敗しなければいいんだがな。」


ミリヤーが出て行った後のドアを見ながら、少し心配そうな顔をして腕組をした。



騎士の試練当日、俺たちは学校を休みこれからの準備をしていた。


「それにしても、ミリヤーが試練なんて大丈夫なのかな?」

「どうだろうな、まぁとりあえず終わらしてから見るのもいいかもしれないが・・・。」


実力で言えば合格ラインだが、基準がなにも魔力だけには限らない、状況判断などいろんなことも出来ていないと取れないこともある。

性格的になんだか怪しいところがあるから心配だったりする・・・。


「さてさて、とりあえず向かうとしますかグライス遺跡へ!」

「はいよ。」


無駄にテンションが上がっているナナミの返事を適当に返しつつ、気づかれないように魔法薬を懐に忍ばせておいた。

今いる場所が学校の屋上の露店(仮)にいて、そこからグライス遺跡まではそこまで遠い距離ではないが徒歩だとかなり時間がかかってしまうため、ナナミの魔法で飛んでいくことにした。


「さてっと、ささっと終わらして見学でもしよう!」

「あ、おい!ちょっ!」


あのときのじゅうたんを広げて荷物を載せているにも関わらず、ナナミが魔法を発動させて飛んでしまったため、俺はじゅうたんの端のところを必死に掴みながら落ちないようにバランスをとっていた。


「てめぇ・・・!危うく落ちかけたじゃねぇか!」

「なはは、ごめんごめん。」


落ちたら大怪我だというのに悪びれることもなく笑っていやがる。

心の中で文句はあるが、こいつがいなければできなかったこともあるので許すとしよう。

ものの数分でグライス遺跡に到着した。

昔からある遺跡なんだが、どういう理由で建てられたのかは知らないが、危険がないため試練の場として利用されている。

その昔は俺やナナミが体験した場でもあるため、なんとも懐かしい気持ちがこみ上げてくる。


「着いたわけだが、どうするか・・・。」

「ん~、まずは例の石碑を見てから考えてみよう。」

「それが無難か・・・、行くとするか。」


荷物はとりあえず岩陰に隠し、盗まれるといけないので盗ると迎撃してくれる魔法と魔道具を置いて遺跡の中に入った。


今日、騎士の試練を受ける日。

私は忘れ物がないか、再度、荷物の確認を行っていた。


「・・・よし、忘れ物はないわね。では行ってきます。」


荷物を確認し終え、机の上に立ててある写真に写っている両親に挨拶をし、寮を出、生徒会室に向かった。



コンコンとノックをして、中から『入りたまえ』という声が聞こえたので少し、緊張気味にドアを開けた。


「ただいま参りました。ミリヤー・アルコットです。」

「ふふふ、そんなに畏まらなくてもいいよ、肩の力を抜きたまえ。」

「は、はい・・・。」


硬くなっているミリヤーを見て、笑っていた会長のほかに二名ほど生徒会室にいたものがいた。

ミリヤーの視線に気づいた会長は二人のことを説明し始めた。


「まだ、君は会ったことはなかったな。私の右にいるのが書紀のシャー・マクラス君。」

「始めまして、書紀のマクラスです。今回の試練に動向させてもらいますね。」

「そして左にいるのが・・・。」

「・・・始めまして。・・・会計、シャー・マファリー。・・・よろしく。」

「え?え?」


両方ともシャー?きょ、兄妹なのかな・・・。


「ははは、驚いただろう。二人は姉弟なんだよ。マファリーが姉、マクラスが弟なんだ。」

「えぇ~!!」


ぜ、全然見えない・・・。だって姉にしては幼いような気が・・・、じゃなくて覚えないと!

眼鏡をかけているのが弟のマクラス先輩で、マファリー先輩が姉・・・。


「さてと、君も来た事だしそろそろ向かおうと思うのだが、いけるね。」


まだ少しだけ混乱をしているのにどんどんと進んでいく会長・・・。ちょっと待ってください・・・。


「ここから少しだけ飛んで進むことになるのだが、危険が伴ってくる・・・。

 その覚悟はミリヤー、君にはあるかな?」


後ろを振り向かず、ただ前を見て歩きながらたずねてきた。

・・・答えは最初っから決まっている。


「あります。」


ただ一言、その言葉を聞いた会長は私にペンダントを渡した。


「これは?」

「通信機器だ、本当に危険になったりしたら迷わずに使ってくれ。誰もがすぐに騎士になれるわけではないから、そのことを十分に理解してくれ。・・・さて、では行こうか。」

「はい!」


真剣な会長、何も言わないけどサポートは必ずしてくれる二人の先輩。

この学校は本当にいいところなんだなと実感した日だった。


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