第一章
どもども今回は続きを書いたというわけではなく、部数が多くなっていたので一章ずつまとめていきました。
内容的には変わっていないので、どういう感じなのかを教えていただけたらなぁ~と思います。
後々、続きを出していくのでしばしお待ちを。
第一章
街から少し離れたところに一軒の家が森の中に建っている。
家の屋根にはただ簡素に『魔法店』とだけ書かれていた。森の中にあるため客はあまり来ることがなく、いつももの静かな感じをしていたが、どうやら店の前に一人の女の人が立っていた。
ドアノブに『CLOSE』と札が立てかけられているというのにその女の人は立ち去ることなくどうどうと家の扉を蹴り開けた。
「おーい、シンキー。いる~?」
女の人は遠慮なく店の中に入り、奥の部屋へと入っていく。先ほど蹴り上げたドアを無視して。
「あれぇ?ここにも居ない・・・。帰ってくるまでここで待ってますか。」
そういって、女の人は店の品物を見て回っていたが、
「な、なんじゃこりゃ~!敵襲か!?俺の店に敵か!?」
どうやら帰ってきたようだ。
女の人は目的の人物が帰ってきたので店からで出来たのだけれど、姿を見たときに頭を抱えてこっちに来た。
「また、おまえか!何度目だよドアを壊したのは!開けるっていうことができないのか!しかもちゃんと札を立てかけていたはずなんですけど!?」
「まぁまぁ、いいじゃない。結構急ぎの用事だったからつい?みたいな?」
女の人は舌を出して、テヘッてしていたので俺は無視して店のドアを修理する。
くそっ、何回も修理しているおかげでなれちまったじゃねぇか。
「それにしても珍しいね、どこかにいっていたなんて。いつも暇しているのに。」
まったくこいつはとんでもなく失礼なことを言ってくる。
「それはお前にも言えることだろ。毎回毎回俺の店にきやがって、何回も言ってるだろ。もうあの場所には戻らないって。」
「そうだけど・・・。でも今回はそれで来たわけじゃないんだよ。これこれ。」
そういって、そいつは胸ポケットから一枚の紙を取り出し、俺に渡してきた。・・・何だこれ・・・って!?
「・・・おい。こいつは・・・。」
手紙の裏を見て俺は驚いた。こいつは確か王家の紋章だったはず。・・・・・・ただの商人なのにな。
シンキは苦笑しながら手紙の封を切っていく。書いてあることを読んでいったがどうやら魔法素材がいるみたいだな、しかも城まで持って来いってなかなかな客だなおい。
「読んだ?なんて書いてあったの?」
そいつは俺の後ろから手紙を見ようとしていたが、ちくしょう。なんかいいにおいがしやがる。
・・・いかん。集中しなければ。
「素材を城まで持って来いとさ。まったく集めるのがめんどくさい素材まで頼みやがって在庫あるか見てくるか。・・・ここにいるやつ書いてあるから探してそこのテーブルに置いてくれ。」
「え~、私めんどくさ~い。」
なんだこいつはまったく女とは思えないな。
・・・そうだ。俺は今、いたずらをひらめいた邪悪な顔をしているだろう。思い知れ。
「そういえ――――――」
「やらないよ?そんなこといったとしても。」
まだなにも言っていないんですけどね。なんでばれたんだろう・・・。
まぁ、子供っぽいいたずらだからばれたんだろうな。ちくってやるなんて・・・。嘘交えて。
俺はため息をつきながら素材をテーブルの上に置いていく。
ずっと探していたが最後の素材が在庫すらない。一番めんどくさいやつなんだがなぁ、倒しに行くか。
その最後の素材とは火竜の鱗となんだが、一体何に使うんだが・・・。・・・知ってるけど。
「おい、素材が足らないから少し集めに行く。討伐系なんだが護衛を頼みたい。」
「ん?討伐系?いくいく!・・・それはいいけど何倒すの?」
俺はにやっと笑い、
「そいつは火竜だ。大変だが金は払う、頼んだ。」
「ほんと?火竜なんてひさびさだな~。いいよ。」
よしこれでオッケーと、準備してすぐに行くか。
ここの魔法店から街まで中途半端な位置にあるため歩いていくしかなく、道は舗装されていないので普通の人はかなり大変な道である。そう普通の人は・・・だ。
俺たちは魔法が使える・・・おっとまだ言っていなかったな。
「俺はシンキ・マーグナー。まぁ知っての通り魔法店主だ魔法も使えるがな。そこらへんの事情はあまり聞いて欲しくはない。」
「だれに向かって話してるの?早く行くんでしょ?」
「なんていっているのが、ナナミ・ナンシー。彼女は先ほど王家から手紙を持ってきていた通り、なんと王家の騎士である。それも位が一番上の七人にしか与えられない称号を持っているほどの実力者。」
なんで俺みたいなやつと知り合いなのかは俺の事情によるため聞いて欲しくないものだ。
・・・いずれ説明するかもしれないが急いでいるのでまたあとにしよう。
「だから、何してるの、何もないところで。」
まぁ、こんなことをやりすぎるとそろそろ怒られそうなので現実に戻るとしよう。
「いや、すこし寝てた。」
「結構話してたよ!?」
「そんなことよりそろそろいくぞ。じゅうたんを用意したから浮かべてくれ。」
ナナミはやれやれといった感じでじゅうたんに向けて呪文を簡単に唱えた。
「風よ。かの物に与えたまえ。」
「スムーズにいくねぇ。」
「シンキだってできるじゃん・・・・・・あ。」
急にナナミが申し訳なさそうな顔をしていた。・・・やれやれ。
「そんな顔をするなこれは俺が自分で決めたことだ。気にしなくていい。」
まったくこんな空気の中で二人はきついぞ。いつものように元気でいて欲しいんだがな。
妙なところでやさしいからいいやつなんだが。
「さて荷物も載せたし、そろそろ行くぞ。」
「あ、うん。」
まだ気にしているんだろう。街に着くまでの間俺たちは何も話さずについた。
リーンガード街
ここは海がすぐ近くにある漁業が盛んな、まぁ中くらいな街だ。
当然貿易もできるがな、俺にとっては便利な街だといってもいい。
ここに来たのはギルドに置いてある依頼書だ。この国は珍しくギルドに登録しなくても誰でも依頼が受けれるってことなんだが、まぁ自己責任がついてくるわけでたまに死人がでることもあるそうだ。
とりあえず街についたので後ろにいるやつを見てみると、なんというかさっきのことが嘘みたいに目をきらきらしていやがった。
「気分は大丈夫なのか?」
「ん?なんのこと?いつもどおりだよ。」
「そうか。なんでもない。」
心配した俺が馬鹿じゃねぇか。まぁこいつが元気ならいいか・・・。
「とりあえずギルドに向かうぞ、もしかしたら依頼があるかもしれんからな。」
「あいよ~。」
ギルドに行くには市場を通るわけなんだが、よく来るので・・・。
「おやおや、シンキさんじゃないか。この前の薬、よく効いたよ。ありがとね、これお礼に。」
「お~。シンキさん。またお願いしますね~。」
「ほ~、シンキ殿が女の子と一緒だなんて珍しいねぇ。」
こんな感じで顔を覚えられている。うれしい限りなんだが・・・恥ずかしい。
なんか横のやつはにやにやしていやがるし。
「なんだよ。」
「人気者だねぇ。シンキ~。」
「商売のためと困っている人を助けるためだ。」
「出て行った後もこんなことをしていて私はうれしいよ。」
ったく、だからここは通りたくなかったんだよ。
じゃないとギルドにはたどり着けないのだが・・・。
そろそろギルドに着く訳なんだが、先ほども言ったがここは貿易が盛んなわけで当然、人がかなり集まるだから毎回ここのギルドは騒がしいわけなんだが、俺はあまりここは好かない。
「あそこにあるんだが・・・。」
「ごらぁ!てめぇ何しやがんだ。」
「このド畜生が!ふざけんじゃねぇぞ、このアマァ。」
どうやら賑わってる様子で・・・。
俺はため息をひとつしてギルドの中に入る。
「失礼するぞ。」
その一言で中にいたやつら全員こちらのほうへ振り向く。
騒いでいる女と男のペア以外だが。
視線を無視して俺はマスターのところへと向かった。
「ねぇねぇ。」
「なんだよ、早くしないと絡まれるぞ。」
「うん。そうなんだけど、あれ知り合いなんだけど・・・。」
そういって指した方向を見てみると、まさに絡まれている女のやつだった。
あまり見ない顔だなとか思っていたらここは初めての場所でしたか、そりゃ絡まれるな・・・。
なんて事を思っていた。
「お前の知り合いって事は・・・。」
「うん、その通りだよ。君がいなくなってからかな。でも私もお忍びできてるからばれるわけにはいかなくて・・・。」
だったら普通に勝てるじゃねぇかなんて思っていたのがばかでした。
そいつはいきなり無詠唱で魔法を放っていたからだ。
当然、威力が高いわけでして・・・、ドンッという音で壁が吹き飛ぶとかね。
うん、皆黙っちゃたよ。そして優雅に出て行ったよ。
「マスター大丈夫なのか?」
「あ、あ、あ。なんだシンキ君じゃないか。は、は、は。」
やべぇ、マスターが帰ってこない。どこか飛んで行ってるみたいだ。
「おい、どうするんだよあれ。」
「うわわわわ、ごめんなさい!こちらで弁償します。」
お、マスターの顔がよくなってる。
「ま、まぁ、店を直してくれるならなんでもいいんだけどね。
でも、いいの?あなたが壊したわけでもないのに。」
「えぇ。仕事仲間ですし、あとで言っておきますから。」
ふむ、なんとかなってよかった。面倒事は避けたいからな。
とりあえず用事、用事っと。
「なぁ、マスター。火竜の討伐かなんかの依頼書はきているか?」
「あぁ、それだったらさっきの彼女が持って行ったよ。」
「何・・・?ったくめんどくせぇ。同じやつ発行できるか?」
「できなくないけど、どうしたの。珍しい。」
「こっちにも材料集めがあるんだよ。」
「なるほどねぇ。それで女の子と一緒に。」
マスターはニヤニヤと二人を交互に見てつぶやいた。
なんでここにも冷やかし野郎がいるんだよ・・・。
「ちげぇよ。昔の馴染みだよ。」
「ま、そういうことにしておいてあげるか。」
なんだこいつ殴りたい・・・。
「じゃ、こちらから連絡はしておいてあげるから行ってきな。」
「おう。いつもすまんな。」
「俺たちの仲だろ。」
親指を突きたていい笑顔で見送っていた。
さて、これで準備は万全だな。行くとするか。
「それじゃ、あの火山の近くに確か村があったはずだからそこへいく。ってどうした?」
「う、ううん。一人になってもいろんなことが出来てるって思うとうらやましくて。」
うらやましい?なんでそう思うのか、まったくわからん。
名誉ある称号を持っているのにな、おかしいやつ。
「ったく。とりあえず行くぞ。あれを頼む。」
「絨毯だね?あいさ。」
いつもの詠唱をしてもらい村まで行くことにした。
風が気持ちいい。なんというか心地よい、ってそんなことを考えてる場合じゃなかった。
さっきの女の事だ。
「なぁ、さっきの女のやつ、無詠唱で魔法を唱えていたよな。」
「うん。よく気がついたね。彼女、エミリーって言うんだけど結構実力はあるよ。
闘ったことはないけど、どうも炎系でアレンジで爆発とか扱うみたい。」
「アレンジねぇ・・・。」
一人だけ爆発を好むやつを知っているんだが、そいつの弟子か・・・?
まぁ、同じ依頼を受けているし、いずれ出会うだろう。
そうこうしてるうちに村の近くまで来ていたようだ。
村にたどり着いたのはいいのだが・・・。これはひどすぎる。
なにがあったのか知らないが村が壊滅的にやられていた。
俺たちは唖然になりながらも村人がいないか探した。
「・・・シンキ!どうなってるの?」
「わからん・・・。人に襲われたって感じでもなさそうだしな。」
一体どうなったらこんな有様になるってんだ・・・。
「う、うぅ・・・。」
どこからかうめき声が聞こえてきた。
「ナナミ!聞こえたか?」
「うん!確かこの辺りから!」
俺たちは声のするほうに行くと、村人が瓦礫の穴の中にうずくまっていた。
村人を助けてみたがどうやら限界らしくすでに虫の息の状態。
「ナナミ・・・できるか?」
「うん!任せて。」
・・・今の俺には高度な魔法が使えない。俺一人ではこの村人を救うことが出来ない。
悔しい、そんな思いが俺の中にはあった。
ってそんなことを考えている場合じゃない。なにがあったのか聞かなければ。
ナナミの治癒魔法のおかげで村人の傷が癒えてきた。
「おっさんすまないがこれはどういう状態だ教えて欲しいんだが。」
「・・・き、昨日、村に卵を持ってきた旅人がいて、そ、それで・・・・・・ひぃ!」
どうやらそのときのことを思い出したんだろう、村人は気を失ってしまった。
卵ってことはおそらく火竜のやつが村をこんなことにしたんだろうな・・・。
・・・まずいなこのままだと近くの村や町が破壊されかねん。急がなければ。
「ナナミ、これは火竜の仕業だ。このままでは近隣が破壊されかねん。急いであの山まで向かう。
いつもの頼む。」
「うん、わかったよ!魔法のじゅうたんよ~♪」
楽しそうでなによりだが急いでいるんだぞ・・・。
そんなことをしながら火口付近へとたどり着いた。
辺りに気配はなしっと行くとするか。
「火竜は大体火山の中に巣を作る、今はいないようだから待ち伏せして迎え撃つ。」
「うん、わかったよ。っとその前に冷却魔法を体の周辺にっと。」
これでやけどの心配はなくなったわけだな。
俺たちは火山の中へと入った。
中は意外と広く道が入り組んでいないため楽に巣へとたどり着くことができた。
「ここが火竜の巣なんだね。はじめてきたよ。」
「そんなにのんびりしている場合じゃねぇぞ。いつでも戦闘ができるように気を張っとけ。」
「はぁいって何してんの?」
「鱗を集めているんだよ。」
俺は袋に落ちている鱗を回収していた。
在庫ようにも持っておかないといけないからな。
そうこうしているうちに遠くのほうからバサバサと羽音が聞こえてきた。
「おい、来たぞ、急いで隠れろ。」
俺たちは息を潜めて岩の物陰へと隠れた。
どうやら火竜は飯の調達に出ていたようで、餌を巣の中へと持ち込んでいたみたいだ
そのまま待機していると、眠くなったのか、眠り込んでしまった。
俺たちはチャンスと思い、ナナミが特大の魔法を放とうとしたとき。
ドカーンというものすごい音とともに無数の火炎弾が火竜の頭へと降り注いだ。
唖然としつつ様子を見るために隠れてると、ギルドにいた女のやつが現れた。
すでに火竜は絶命していたようで女が火竜の近くまで行きため息をつく。
「ふぅ、こんなに簡単だったなんてここまで来た意味がありませんわ。」
確かにこんなことが出来るのはお前だよとか思いつつ、隠れていると。
「そこの二人組み、いつまで隠れているつもりなのかしら。でてきなさい。」
・・・・・・めっさばれてるぅ!
俺たちは顔を見合わせため息をして女の前にたった。
「あら?こんなところで何をしているんですの?ナナミ。」
「いや~っはは。こいつの依頼を受けててねぇ。」
俺を指で指すな一応クライアントだぞっていったら目の前にいる女に殺されそう。
というわけで俺は火竜を剥ぎ取っていた。
お前の素材は無駄にはしない・・・安らかに眠ってくれ。
「あなたも円卓の騎士という名誉な称号を持っているんでしたらもう少しプライドを持って・・・。」
「私は自由に何をしてもいいはずなんだけど?」
ほんの一瞬だけ殺気を含ませて言葉を返した。
「す、好きにしなさい。」
そう言い放ち、エミリーは火竜の卵を抱えて火山から立ち去った。
まぁ、こんなところにずっといるわけにはいかないし。
「とりあえず、このことを報告しに行くぞ。」
「・・・うん。ごめんね。」
「なに、気にしてないさ。そんなことよりお前も大変なんだな。」
かの有名な円卓の騎士様方もお悩みがあるそうで。
俺たちは火山から出て急いでリーンガード街へと向かった。
火山から出て来た俺たちは、村をいち早く復興させるためにリーンガード街へ戻っているんだが・・・。
「どうした?またお悩みか?」
「いや~。そうじゃないんだけど、これから城に向かうんでしょ?」
「まぁ、頼まれた品物は全部集まったからなぁ。一旦家に戻るけど。」
「エミリーみたいな人がいると思うから大丈夫かな?って。」
「大丈夫だろう。俺はそんなに気にしないからな。」
村の商人みたいなやつがほいほい城なんかに入っているんだから、兵士のやつらなんて嫉妬とかしそうだな。
なんであんな格好しているやつがぁ~って、俺らはここの兵だぞみたいな・・・・・・まさかな。
とりあえず街に着いたから報告しに行かないとな。
シンキたちはギルドにたどり着き、村で起こったことの詳細をマスターに話した。
静かに聴いていたマスターは、話を聞き終えると急いで村に大工などの手配をしすぐに何とかしてみせるとか言って、飛び出していった。
ほんとに頼りになるやつだ・・・。いい知り合いを持ったものだ。
「これで大丈夫なんだよね?」
「あぁ、あいつは頼りになれるやつだよ。この街に必要なくらいにな。」
これで心配事がなくなったわけで、ここからは俺の仕事の出番ってわけだが・・・。
「お前はこれからどうするんだ?城に戻るのか?」
「う~ん、そうだね。さきに戻っているよ。着いたら連絡してね。」
俺はナナミと別れて家に戻ることにした。
魔法店に戻るころには空はオレンジ色に染まっていた。
・・・そういえば、あの時もこんなオレンジ色の空だったな・・・。
あいつはいつまで寝ていることなんだか・・・・・・っと?お客さんか?
魔法店の前にはおどおどした感じに中を覗いている人がいた。
あの人は確か・・・。
「チェルシー先生じゃないですか。どうしたんですかこんなところで。」
覗き込んでいた人、チェルシー先生は体をびくっとさせてあわてた感じの言い訳をしていた。
「シ、シシシシシンキさん!いや!あの!これはですね・・・!」
「はい、深呼吸、深呼吸。」
落ち着かせるために深呼吸をさせる。じゃないと話が進まないからな・・・。
落ち着いてきたのか、顔を赤くしてちらちらと見てきた。
「い、いえ。あの、買いたいものがありまして・・・。」
ここに着たからには魔法具を買いに来たの当たり前だと思うんですがね・・・。
優しい目で先生のことを見ていた。
「そしたらいなくて待っていたんですよ。・・・・・・覗き込みながら。」
いつ帰ってくるかもわからないのに待ってくれているなんて勘違いしそうじゃねぇか・・・。最後の一言がなければ。
「とりあえず中に入りますか?なにが要りようです?」
「あ、はい。そうですね。授業で使う薬草を探しているんですけど、あれってありますか?」
薬草か・・・、いろいろあるけど授業で使うって事となると・・・。
「マンドレイク。」
「ぶぅぅぅ!ゴホッ!ゴホッ!」
「だ、大丈夫ですか!?」
マ、マンドレイクだと!?別名マンドラゴラって言われる品物じゃねぇか!
確かに薬草だが・・・!薬草なんだが!かなり貴重な品物なんだけど!
引っこ抜けばこっちのものだが・・・、死人が出ることもある薬草だぞ。
「す、すみません。それは今持ってないですね・・・。依頼で出していただければ採りにいきますが。」
「本当ですか!?シンキさんお願いしてもよろしいですか!」
「まぁ、常連客の方だけですからね、こんなことをするの。マンドレイクを採るのに時間がかかるかも知れませんがそれでよろしいですか?」
「はい!ありがとうございます!」
まったくこんなにうれしそうな顔をされたら、がんばるしかないじゃないか。
確か、引っこ抜く際に発狂した声が出るはずだから出来るだけ防音効果のあるやつを作るか。
「では俺はこれから、出かけなければならないので。」
「はい。わかりました。」
「採れた際には学校まで持って行きますね。確かルーブブルクにありましたよね。」
「そうです。では失礼しますね。」
まさか連続で仕事の依頼が来るなんてな。珍しいこともあるもんだ。
先生が店から出て行き、俺は早速材料をまとめる。
ナナミがいなかったらスムーズに行かなかったんだろうな。たまには役に立つな。
「さてと、城までいきますか。」
俺が今から行く城の場所なんだがリーンガード街からさらに進まないとたどり着かないんだが、リーンガード街に着くころにはすでに日が暮れていた。
さっそく宿の手配をしたいところなんだが、マスターに会いに行くことにした。
ギルドにたどり着き、カウンターで暇そうにしていたので村の様子を聞いてみる。
「よう、どういう感じに進んでる?様子を聞きに来たんだが。」
「ん?おう、シンキか。とりあえずは何とかなってるよ。あの村で住んでいた人たちは宿屋のほうで一旦住んでもらうことにしてる。」
「そうかそうか・・・・・・・ん?てことは・・・。」
「今、全室満員だな。ここにも少しいる感じだからいっぱいいっぱい。こんな時間だからお前も宿探していたのか。残念だったな。はっはっは!」
まじか、なんてこった。また店に戻るのに時間がかかる・・・。ここから都市まで行くのにも時間がかかる。
一体どうすればいいんだぁ!
「なぁ、マスター。俺にもソファーでいいから泊め・・・。」
「無理だな。」
一蹴されてしまった。
俺は外へ出てこれからのことをどうするか考えていた。
「泊めてもらえないとすると進むしかないわけだが。」
俺は周りに人がないか確認したあと袋からひとつのビンを取り出す。
それは淡い緑色のものだった。
「今は非常用だ。もったいないが使うとするか。」
シンキはビンに入っていたものを自分に振りまけた。
「・・・ふむ、成功だな。こんなものが世界中にあったらやばいな・・・。俺だけにしておこう。」
自分の体に効果が現れたのを知ると、シンキは周りの風を自分に集めていた。
「よしよし。このまま・・・!」
よし!これは完成品としてメモっておくか。
・・・懐かしいなぁ。久々に空を飛んでみたけどいいものだ。
一般的に魔法は自分の体内にある魔力で使えるもの、何かしらの媒体がなければ空を飛ぶことが出来ないわけなんだが、シンキはできていた。
まぁ、ビンに入っていたもののおかげなんだがな。
魔法は色で分けられることもあり、例えば、炎は赤とか水は青とか風は緑とかだな。
ということは俺が使ったのは風の魔法を使えるようにするものだったのだ!
こんなことができるのは当然俺だけなんだが、こんなことを知られるとますます戦争に発展しかねないので誰にも見せれるものではなかった。たとえナナミにもだ。
ある約束、眠っている友とのな。
ったく何俺は一人で語っているんだか・・・。
このまま都市へと城へと向かうとするか。
俺は全身に風をありったけ纏わりつかせて流星のように飛んだ。
魔法都市国家ルーブブルク
ここが一番大きい場所だろう。この都市は周りを壁で覆われていて中に入るのに検問所を通っていかなければならないほど警護が厳しいところ。
それもそのはず城があるのがここだけで昔の土地にはいろいろな国があったのだが先の大戦でこの城以外全滅にされたほどだったのだ。
つまり最後の王家の血筋の生き残りとでも言うべきなのか。
俺は気づかれないように森の中に降りて、効力がまだあるので何かあったときのために風を集めていた。
検問所まで歩いて、商人であることを証明して、中に入ることに成功した。
・・・。懐かしいなぁ。ここに来たのは何年ぶりだろうか。
変わっていると思っていたが全然変わってないな。
っと懐かしんでいる場合じゃないな。早く寝て城に向かわないと。
適度に宿屋を探して俺は明日のために早く寝ることにした。
う~ん、よく眠れたな。たまにはこんな感じにすっきり起きれるっていうのはいいものだな。
流石にビンの効力は切れていたか、だいたい数時間ってところか。もう少し研究しないとな。
なんか言われていたこともあったような気もしたが、とりあえず城のほうに向かうとするか。
ほぉ、やっぱりすげぇな。近くで見ると立派なものだ遠くから見ても目立っていたからなぁ。
っとやべぇやべぇずっとこんなことをしてたら兵士のやつらに疑われる。
おぉ、睨んでる睨んでる。それじゃ行くとするか。
荷物の準備もオッケー、手紙もここにある。堂々と行くぜ!
「だめだ、だめだ!その手紙はどうせ偽者だろう。お前みたいなやつがじきじきに送られるわけがない。帰れ帰れ。」
門前払いをされてしまった・・・。意味がわからん。ここまで来て帰るわけには行かないので。
「お前こそ何言ってんだ。これの偽者があったら極刑だろうが、本物だから早く開けろ。」
「貴様、われわれに向かってお前だと?今すぐここで処刑してやる!」
うわぁ、沸点が低すぎるだろう。しかもこんなに兵士どもがくずやろうだなんてな。
その兵士は腰に差している剣を抜き、俺に向かって襲い掛かってきた。
「お前、剣を抜くってことは死ぬ覚悟は出来ているって事なんだな?」
俺は腰を低くしてカウンターを狙うように構えをとった。
「貴様が死ねぇぇぇ!」
「活ッ!!」
俺は振り下ろしてきた腕をつかんで流そうとしたのだが、その前に一人の騎士が兵士をおもいっきり殴り飛ばした。
俺は唖然としながらその光景をみていることしか出来なかった。
だって、音もなく兵士を殴り飛ばすし、そのあとも片手で兵士を持ち上げては説教をかなりしていたからだ。
説教を終えたのだろう、その兵士は魂の抜けたような顔をしてるし・・・。
「いや~すまぬな。こちらの教育不足で、先ほどの手紙を見せていただけぬか?・・・ぬ!?」
「あぁ~はい。わかりました。・・・あ!?」
俺たちはお互いの顔を見ると驚愕した。いや、だってさ。知ってる人なんだもん。
「くそじじい!」
「くそがき!」
少し間をあけたあとに同時に頬を殴り飛ばした。
「久々だな、くそじじい!」
「懐かしいのぉ、くそがき!」
何度か殴りあったが、飽きてきたのか二人とも握手をかわした。
「お主が商人になっているとはのぉ、時の流れは早いものじゃ。」
「まぁな、俺にもいろいろあったからな。じじいに出会えて安心したよ。」
「この手紙は確かに王家のものじゃな、ということは姫様が頼んだものなのか。」
「な、なにぃ!?姫様だと・・・・・・。・・・はぁ。客だから逃げるわけにも行かないか・・・。」
「わしが送ってやろう。ついて参れ。」
じじいに城の中を案内してもらったんだが、なんかじろじろと周りから見られているような気がするんだが・・・。居心地が悪い。
「なぁ、じじい。なんかじろじろと見られているんだが、どういうことだ?」
「ふむ。たぶんなんじゃが、おぬしみたいなやつが城の中を歩いているからじゃろうか、わしも一緒にいるっというのもあるやも知れぬが。」
「そういえばその格好って言えば・・・。」
「うむ。わしは聖騎士の称号をとれてのぉ。まぁお主がいなくなってからじゃがの。」
そうだったのか、聖騎士って言えば円卓の騎士の下の位だったはずだな。てことは2番目に偉い騎士か。
「シンキよそろそろ着く、無礼のないようにするんじゃぞ。」
「あぁ、任せろ。」
何もかもが久しぶりだ、この扉の先もそうなのだろう。
ナナミもいるはずだから心配はしなくてもいいと思うが・・・・・・あ・・・。
そういえばあいつに連絡しないといけないんだった。・・・まぁいいか。
俺は満面の笑みで扉を開ける。
「ただいま、ご依頼の品をお持ちしまし・・・た?・・・あれ?」
誰もいない・・・。
じいさんに案内してもらい、品物を渡そうとここまで来たわけなんだが、誰もいない。
辺りを見回してもあるのは、甲冑の置物らしきものと椅子ぐらいだ。
後ろを振り返ってもじいさんはどこかに行ってしまった様だし、どうするか・・・。
「う~む、待っておくしかないのかな~。」
俺は椅子の前で待っておくことにした。あれこれ見に回っていてはほんとに不審者として切られそう。
何もせずにここにいるのも怖いものだが。
「ふっふっふ、ようやく来ましたね。シンキさん。」
どこからか高音ボイスが響いてきた。・・・一体どこからしゃべっているんだー。
「私がどこにいるかわからないでしょうね。・・・え?・・・あれ?」
「な~に天井に引っ付いてんだ~、姫様~。」
「ば、ばれていたのですね・・・。」
流石に声を出したらわかるんだがな・・・。
姫さんは風の魔法を使って天井に張り付いていたんだろうな、優雅に下りてきた。
「こ、こほん。では、改めて。ようこそ、私のお城へ。お待ちしておりました。」
「いえ、わざわざありがとうございます。」
「・・・む~。そんな他人行儀はやめていただきたいものです。」
「そんなことを言われましても・・・。身分が違うわけですし・・・。」
「そういえば、ナナミはどうしました?一緒に来ると思っていましたのに。」
まるで聞いていない・・・。わが道を行く姫さんだが昔と変わってなくてよかった。
「いえ、俺がそのことを忘れてしまいまして、勝手ながらここまで来たわけですよ。」
「そうでしたか、それではその袋にあるのが・・・。」
「はい。ご注文の品です。どうぞ。」
俺は背にかけている袋を姫さんへ渡した。
これで、依頼は完了っと。さっさと帰るとするか。
ここはもう戻ってこれる場所ではないからな、姫さんたちや皆には悪いことだが・・・。
「シンキさん、私からもお願いです。円卓の騎士に戻ってはいただけませんか・・・?」
やはり、というかわかっていたこと「それは無理だ」それしか言えない。
それは姫様もわかっていることなのに
なんでそんな顔をするんだ・・・。そんな悲しい顔見たくないぜ。
「・・・すまないな、姫さん。そればっかりは無理だ。」
「そう・・・ですよね。わかっていたことですが、悲しくなります。」
二人は無言のまま時間が経過していたが、扉を開ける音により静寂が途切れる。
「姫様!こちらにいましたか、実は先ほど不審な輩がこの城に入ったという情報があったのですが・・・。
・・・貴様のことだな。」
どうやら俺が不審者扱いを受けているようだ。しかもこいつは確か火山であったことのあるエミリーだったか、あのときとは態度がずいぶん変わっているようだが・・・。
「いえ!こちらの方は・・・!」
「姫様、お下がりください。わたくしが退治します。」
おっと、やばいな。円卓の騎士様相手じゃ分が悪すぎる・・・。ただの兵士だったら切り抜けられたが。
話を聞いてくれなさそうだし、仕方ない・・・!
俺はポケットから煙玉を取り出し、床にたたきつけた。・・・まさか使うときが来るとは。
「なんですのこれは・・・!」
今がチャンス!俺は窓のほうへと走り、ガラスを突き破って外へと脱出した。
だが、一筋縄ではいかないようで、すぐに追いつかれてしまった。
「追いつきましたわよ。観念しなさいな。」
っち!あまり消費したくないんだが・・・!しょうがねぇ!
「不審者ならば容赦はしませんわ。破裂しなさい!」
(・・・甘い!)
俺はすぐに地面に手をつけ、土を自分の周りに展開した。
ドガーン!!地面に穴を開けるほどの大爆発魔法を使用してきたが、なんとか防ぐことができたようだ。
もし成功しなかったらって思うと・・・。やばかった。
「さてとこれでおしまいですわね。」
どうやら俺が爆発したと思っていたんだろうな、煙が消えたときには目の前でびっくりしてる顔をしているのが面白いくらいだ。
「な、なんでですの・・・?確かに手ごたえは・・・!」
「な、なんだこれは!」
「爆発がしたけど・・・ってなんだこれはぁ!?」
「おい、早く消化しろ!」
今の騒ぎで城の兵士やら騎士やらがぞろぞろと集まってきたようだ。
「てめぇら!うるせぇぞ!!落ち着かんかぁ!」
突然大きな声により、一瞬で静かになった・・・。
・・・この声どこかで聞いたことがあるな。
「一体何があった・・・って。おぉ!!シンキじゃねぇか!久しぶりだな!!」
「相変わらず声がでけぇな、ザイ。」
ザイが登場したことにより、再度、広間に集まることとなった。早く帰りたい・・・。
「それで、ザイさん。なんなんですのこの方は。」
今にも、殺されそうな勢いで睨みつけてくるこいつの視線をザイを壁にして避けるようにしていた。
姫さんもそんな困った顔をしてるんじゃなしに助けてくれよ・・・。
「あぁ実はこいつは・・・。」
ザイが話を進めようとしたときに廊下からドタドタと走ってくる音が~ってこんなことさっきもあったな。
「さっき外からすごい音がしてたけど・・・って!シンキ!連絡してって言ったのに!」
「え!?シンキいるの!?・・・あ、ほんとだ!シンキ~!」
さきほどの騒ぎを聞きつけてきたのだろう、ナナミ達も広間にやってきた。
「ナナミさんにケイさんまで・・・。なんであなたたちもこの方をご存知ですの?そういえば姫様も。」
俺を含めてこの場にいるのは6人、しかもエミリー以外とは顔を知っている連中どもだ。
円卓の騎士は合計7人くらいなんだが・・・、ここには4人もいるしな。
「まぁ、お前さんは知らないはずだ。なんせこいつは。」
「『元』円卓の騎士 でしたので。」
姫さんがびしっと決めてくれた・・・うん、まぁ。
そりゃ、驚くよな。円卓の騎士をやっていたのに今じゃ商人なんて。
「う、嘘ですわ・・・。こんな人が騎士だったなんて・・・。
それに、皆さんおっしゃっていたではありませんか、昔も今も6人までが円卓の騎士だって・・・!」
俺以外の皆は苦笑いをしていた。昔の話だからな、ていうか6人って話にしていたのか。
「5年くらい前に魔王が現れた話をしっているな?」
「えぇ、あの時は今でも恐ろしく記憶に残っていますわ。」
「それでは、魔王がどうやって倒されたのか知っているか?」
ザイはものすごく真剣な顔でエミリーに話を聞かせていた。
「た、確か、一人の魔法使いが魔王と共に消え去ったと・・・。」
「その通りだ。そしてその魔法使いがそこにいるシンキだ。」
今更、そんなことを持ち出されても俺が困るんだが・・・。
エミリーが口をパクパクさせてるし、これはこれで面白いな。
「それでお前が言っていたなぜ円卓の騎士が6人になってしまったのかそのわけを話すとしよう。お前も円卓の騎士の一人だからな。」
「それは俺が話すよ。」
突然に始まってしまった昔話。俺が円卓の騎士でいたころの話だ。
なぜ俺が商人になってしまったのかを話すとしよう。
あれは5年ぐらい前の話だ。
今も魔物やらはうようよといるが当時、魔王がいた時代はこのときよりももっとひどい世界だった。
円卓の騎士って言っても最初のころはそんなものはなかった。
「5年前は国がたくさんあったのは知っているよな?」
「当たり前ですわ。・・・ですが、魔王に滅ぼされてしまった。」
「その通りだ。」
そう、魔王に滅ぼされる前は13もの国があって、一つ一つの国に必ず王や姫を護衛する聖騎士が一人はいたんだ。
「そして私の国の聖騎士だったのが、シンキさんでした。」
「まぁ、結構疎まれていたがな・・・。」
魔物に知性はなく、今で言う騎士の称号を持っているものならば容易く駆逐することはできた。
だが、魔物を統制するものが現れた。それが魔王。
最初はどの国のやつらも信じてはいなかった。魔物を操るやつがいるなんてな。
「そんなに信じれないものでしたの?」
「あぁ、俺やシンキ、そのほかのやつらも誰も信じていなかった。村や街が滅ぼされるまではな。」
こちらが勝手にそう思っていただけ、だからかなりの犠牲が出てしまった。
多くの騎士、魔法使いを派遣しても後退させられる一方。
だから結成することにしたんだ、国同士助け合うように。
そして代表の騎士が集まりできたのが、国を守る円卓の騎士というわけだ。
「それじゃ、最初は13人もいらしたんですわよね。」
「そうだよ。13もの国があったから13人になったの。」
ケイの言うとおりだ。もし国が少なかったら少ない人数だったかもしれないな。
円卓の騎士が出来上がったとしても統制出来ていたわけではない。
知らない国のやつからあれこれ命令されても、「はい、わかりました。」ってならないからな。
今、称号なんてものが出来たのはこのときなんだよ。
位的には『騎士』その上が『大騎士』、『聖騎士』、『円卓の騎士』だったかな。
「そうでしたのね、勉強になりますわ。」
「これは最初のほうだからね。あとは魔王と戦うまではいろんな場所で戦闘があったから大変だったよ。」
ナナミの言うとおりだな。各国の円卓の騎士が指揮官となって、いろんな街、村、都市を守ったものだ。
だけど、すべてがすべて成功したわけでもない。この出来事を知った魔王自らが攻めてきた。
急なことだったから対応ができなく、すぐにいくつかの国が滅ぼされた。
このままだとまずいからこちらから攻めようとするも情報がないので結局は後手に回るしかなかった。
「城なんてものはなかったのですの?」
「あるにはあった・・・が、この国だけが残ったときだったんだ・・・。見つけたときが。」
もうすでに円卓の騎士のメンバーも7人、守護するはずだった国も滅ぼされてもうだめだって時に見つけたんだ。魔王がいる城を。
俺以外のやつらはもう仇として倒すことだけを考えていた。
「なぜあなたは仲間も殺されたのに恨まなかったのですの?」
「それは俺にもわからなかった。なぜだったのか。忘れてしまったよ。」
俺は少し陰のある笑いになっているだろな・・・。
魔王の城に行くのに精一杯の魔法使いを軍隊のような数で攻めた。
幹部らしい魔物やら普通の魔物も大量に出てきたりもした。
なんとか魔王と対峙するときは俺たち円卓の騎士だけだ。ほかはまだ魔物と戦っていたがな。
魔王を見たときは驚いた。
「どうしてですの?」
「「「「だって女の人だったし。」」」」
まさか全員ではもるとは・・・。
「魔王なのに人?おかしくありませんの?魔物を操っていたのに・・・。」
「そうなんだよ。俺たちにもわからないんだよなぁ・・・。なぁシンキ。」
「ん?あ、あぁ。そうだな・・・。」
確かに驚きはしたが、結局は魔王なんだ。
俺たちは魔王と戦闘を始めたが、圧倒的に強かった。
まず、人の身をしていてるのに身体能力、魔力、そういったものが桁外れに違う。
力を合わせないと絶対に勝てない敵だった。
なんとか致命傷を与えることが出来たんだが、こちらもかなりぼろぼろの状態。
「それじゃ、どうやって魔王と一緒に消えたんですの?」
「魔力を失ってもいいから、最大の魔法を使った。みんなの力も借りてな。」
「確か、致命傷を受けた魔王が雲の上へと逃げていったが、そこまで追いかけてそのまま消えた。
俺たちはそうとしか見えなかったんだ。」
「それであなたは消えたはずなのにどうして帰ってこれたんですの?」
まぁ、それは聞きたいことだよな・・・。皆もそのわけを知らないんだし・・・。
「俺はただ、光を追いかけたら帰ってこれたんだ。魔力を失ってな。」
「俺たちも驚いたもんだぜ、もう1年くらいはいなかったからな・・・。だからこの情報を消した。
シンキという円卓の騎士の存在を。」
「帰ってきたことに本当に喜びました。もう一度円卓の騎士に戻ってきてくれるんだと・・・。」
だけど俺は、その申し出をずっと断ってきた。
ある人物との契約のため、このことを皆に言うわけにはいかない。
だからこれは俺の胸の中にある、真実はさっき昔話とは違う。
確かに魔王は雲の上まで逃げたが、追いかけたら、待っていた。
俺は警戒したが、相手が戦う気がなかったみたいで話をしてきたんだ。
「我は世界をこんな風にしたいわけではないのだ・・・。」
「何を言ってやがる、たくさんの仲間や人が死んでいったんだぞ。」
「本当にすまないと思っている。だが、これは世界を平等にしたかったからなのだ。」
平等・・・。こいつは一体何を言っている・・・?
「我は元々人間だったのだ。それも機械だらけの国、知っておるな?」
「あ、あぁ、隣の大陸だったな・・・。そういえばなぜ、この大陸だけを襲った?」
「世界の力の関係を平等にしたかったのだ、そうでなければいずれ、魔法の国によって奪われる恐れがあったからだ。」
世界制服みたいなものか・・・。確かにその話は聞いたことがあったが。
まさかそのためだけにあらわれたというのか・・・。
「その通りだ、青年よ。だが、我の体力も限界に近い、だからこの役目をお主に引き継ごうと思って、お主に話しかけた。どうじゃ、わしの予想じゃとこの数年で機械の国が発展し、魔法の国が危機に陥る。
だが、この体力だといつ復活できるのかわからぬゆえ・・・。お主に託したいのじゃ。頼む。世界を救ってくれぬか!」
どの時代やどの世界にも魔王は世界を滅ぼすものだと思っていた。
だが、この世界にいる魔王はどうやら正義のヒーローみたいな仕事をしやがる。
人を殺した罪は消えないが、俺にも守りたいものがあるんだ。
だから、俺は・・・!
「わかった。」
ただ一言、魔王に向けやさしく手を差し出した。
「ありがとう。」
その一言で俺は魔王と共にこの世界から姿を消した。
消えた後なんだが、なんて言えばいいのか・・・。
夢の中のイメージかな?そんなところに移動したんだが、そこでは世界が見えた。
魔王が説明をしてくれてな、ほんとにイメージと違う。
「これは全大陸を写すものだ。これを見てバランスをとってほしいのじゃが・・・どうしたのじゃ?」
「いや、そういえば名前を聞いていなかったと思ってな。」
「なんじゃ、そんなことか。確かに教えないといけないの。わしの名前はエクレ。」
エクレ・・・。魔王らしくない名前だな・・・。これもイメージだが。
「今からおぬしと契約をしたいのじゃが、大丈夫かえ?」
「どんなことをするんだ・・・?」
「友達の証みたいなものじゃ、手を貸してくれぬか?」
「ん?あ、あぁ・・・。」
手を差し出すと、俺の手のひらに触れて、一つまじないみたいなのをかけてきた。
ぼんやりと手が光、うっすらと紋章みたいなのが浮かび上がった。
「この紋章は?」
「わしとの契約のしるしじゃ、これでおぬしは今日から魔王じゃな。」
・・・え?うそ? ・・・・・・いやいやいや!おかしい。
なんでこれだけで魔王に・・・!?
「もうわしは限界じゃ・・・説明はまたあとでする。ほんとに申し訳ない・・・。
それと、これを渡しておく。これはわし自身が今からこの中に入る。省エネってやつじゃな。」
何を言っているのかさっぱりだが、小さくなるって事なのか・・・?
こんな指輪の中に・・・、どうやって・・・。
エクレが聞いたことのない呪文を唱えると、光のたまになり、指輪の中に入っていった。
「うぉ、すげ・・・。こんなのみたことない・・・。」
(あ、あー。聞こえているかえ?)
指輪の中にいるはずのエクレから声が聞こえてきた。
「ど、どうなっているんだ!?」
(聞こえているようじゃな、これはおぬしにしか聞こえないようにしておるから頭に思い浮かべれば話すことはできるからの。)
(こ、こういうことか?)
(そうじゃ、なにかあればこういう風にするからの。では、起きたときに説明しよう。)
(待て!ここからトどうやってでるんだ?しかもなんか魔力が吸い取られているような・・・。)
指輪の中にエクレが入ってからなんだが、どうも魔力がなくなってきている感覚があるんだよな。
さっきまでかなり使っていたからわかりやすかったが。
(おぉ、肝心なことを忘れておった。奥にある光に触れると外に出て行ける。
そして、魔力なんじゃが、おぬしの魔力はなくなる。わしと契約をしてしまったからの。)
(は?おい待て、どういうことだ。なくなるなんて聞いていないぞ!)
(起きたら必ず説明する、だからもう少し待っておくれ。・・・頼む・・・!)
そこまで真剣に言われたら、おれは言い返す言葉がないわけで、むしろ何かわけがあるとしか思えないし、こればっかりはどうしようもなかった。
何も反応がなくなったエクレ、俺はどうしようもなくただ光に触れ、現実の世界に戻ってきた。
帰ってきたのはいいことなんだが、もう魔法が使えないんだよな・・・。少しだけ魔力は残っているが・・・。魔法が使えないもんだしな。
ということは、あの場所にはもう戻れないな・・・。申し訳ない、姫さん。
今の俺の状態のことも秘密にしといたほうがいいのかもしれないな、魔王だなんて信じられないしな。
エクレが起きるまでの辛抱だ、がんばるか。
それにしても・・・だ。
魔物たちが暴れていたはずなんだが、どう見ても辺りがきれいすぎる。
まるで時間がかなり進んでいるような感覚だ。
「このあたりで馬鹿でかい魔力を感じたはずなんだが・・・。ん?あ、あいつは!?」
俺は周りを気にしていたためか、後ろから来る人物にまったく気づかなかった。
「シ、シンキじゃねぇか!おまえ、一体どこにいっていたんだ!!」
「ん?ザイじゃねぇか、何言ってんだ?まだ一日くらいしかたってないぞ?」
「お前こそ何を言ってるんだ?もう一年たってるぞ。」
なんだって!?俺は数時間しかあそこにいた記憶がないぞ・・・。
一年もあんな場所には・・・。・・・異次元って事なのか?
これも後で聞いてみるしかないか。
「一年か・・・。」
「何、たそがれているんだ?とりあえず城に戻るぞ。お前のミクシア姫が帰りを待っているぞ。」
そうだよな・・・。だけど俺はもう帰ることが出来ない。これからはお前たちがこの国を守っていくしかないからな。
「・・・いや。俺はもう帰ることが出来ない。このまま旅をするよ。そう言っておいてくれ。」
「何言ってやがんだ!ふざけているのか?」
「ふざけてなんかいない。俺はもうあの国を守る力がないからな。」
俺はザイに背を向け、歩き始めた。
「・・・ふざけんなよ、シンキ・・・。気絶させてでも連れて行くぜ!」
ザイが得意の土系統の魔法を放つ。当然、魔力のない俺はもろにダメージを受け、吹っ飛んでいった。
「シ、シンキ。何で障壁を出さないんだよ・・・。」
「ぐ、は、はぁ・・・。だ、だから言っただろ・・・。力がないってな・・・。」
「ま、まさか、魔力がなくなったのか?」
「そうみたいだな。魔王との戦いのあとに気づいた・・・。」
本当は違う、だけどこう言っておかないと連れて行かれて、質問攻めにあう。
「いつか必ず、ミクシアに会いに行く。だから・・・。さよならだ。また会うときまでな。」
俺はそういって、ほんの少ししかない魔力でどこかへと飛んだ。
「おい!シンキ!! ・・・魔法使ってるじゃねぇか。」
遠くからザイの呼ぶ声が聞こえたが、じきに聞こえなくなった。
俺は何をしているんだろうな。事情を話せばきっと何とかしてくれるはずなのに・・・。
魔力が失う前に何とか村を見つけて、あの街にたどり着いた。リーンガード街に。
このときに初めてマスターと知り合い、あの物件を貸してくれたんだよな。
俺が生きてこれたのはマスターのおかげだ。
それから何もすることがなく何日か過ぎ去り、エクレが起きるのをずっと待っていた。
たびたび街に出て、作った医療薬を売って過ごしていたんだっけな。
そして、ある事件が起こったことによって、エクレが起き、ナナミとの再会があった。
その事件は魔物が数十体、リーンガード街に襲ってきた事だ。
そのときは街が出来たばかりというのもあり、魔法を扱える人が十分にいなかった。
かく言う俺も魔力は残りわずか・・・。恩人がいる街、守るのはあたりまえだ。
だから、おれは前線に出てがんばっていたが、数体倒すだけでどうしようもなかった。
が、応援を聞きつけて来たんだろう。一人の魔法使いが到着した、それがナナミだったのだ。
「シ、シンキ!?何で帰ってこなかったの!?」
「今はそれどころじゃねぇだろ!俺は援護をするから前に出てくれ!」
「こんな魔物なら簡単にいけるはずでしょ?」
「・・・そうは行かないんだよ。聞いているはずだろ、ザイから。」
「それじゃ・・・本当に・・・。」
それだけ言うと、ナナミは次々に魔物を屠ってくれた。
まったく、俺は情けない。何やってんだよ・・・。
「キャーーーー!!」
考え事をしていたため悲鳴が聞こえてようやく気づいた。
どうやら知恵を持っている魔物がいたのか、前線にいたやつらが囮で街の周りから攻めてきていたようだ。
っち!俺のせいで・・・!
急いで街の人たちを助けに急いだ。それも罠とは知らずに・・・。
「だめ、シンキ!今のは・・・!」
ナナミが何か言っていた気がしたのだが、気づかずに走った。
「この辺りから声が聞こえたはずなんだが・・・。ん、この気配は・・・。」
囲まれている・・・?だが、わずかに人の気配もする、なんだ?
グルルルルゥゥゥ・・・。
徐々に輪が縮まり、魔物が現れたのだが、少し様子がおかしい。
頭に鉄の何かがはめ込まれていたのだ。
「っち!なんだこいつらは!」
あまり魔法は使いたくないが、使わないと命が・・・!
「はぁぁぁぁ!」
地面にコブシを振り下ろし、魔物が立っている場所に泥を作り、ただ動けないようにした。
「ほぉ!こんなちんけな村にも魔法が使えるやつがいたのか。」
「何者だ・・・?」
森の中から俺と同じくらいのやつが現れた。
見たことのない風貌で腰には剣が収められていた。
・・・俺たちの国にはいないやつのようだが、何者なんだ?
「今から死ぬやつに知る必要ないだろうがぁ!」
「何!?」
やつがいきなり剣を抜くと一息で俺の懐に入り込み切り上げてきた。
「あ、ぶねぇ!」
「っち!今の避けるなんて・・・。魔法使いは近距離に弱いと聞いていたんだがな。」
なんださっきのは、魔力が感じなかったのにあの速さか・・・。
これは逃げたほうがよさそうだが、逃げれるのか・・・?
「まぁ、いいか。次に当てる・・・!」
まずい・・・!このままでは!死ぬ!
何も手がない・・・!くそ!一体、どうすれば・・・!
「じゃ、死ね。」
さっきと同じ速さで剣を振り上げていた。
何もかもがスローに見える、これが死ぬ前に起こるといわれているやつなのか・・・?
しかし、これは避けれそうにないな・・・。すまないな皆、もう一度お前たちに会いたかったよ・・・。
もうすでに剣は頭の上に到達していて、このまま縦に切られるところだった・・・。
「おやおや?我と戦っていたときとはずいぶんと差が激しいではないか。
それに友を失うわけにはいかないのでな。・・・・・・吹き飛べ。」
どこからか懐かしい声が現れ、先ほどまで剣を振りかぶっていたやつは吹き飛び、木にぶつかる衝撃でどこかやられたのか剣を杖代わりにして立っていた。
「ぐ、ぐ、ぐ・・・。な、なんだ今のは・・・!この俺が見えなかっただと・・・?」
さっきのは・・・。それに今の声、まさか・・・。
俺は自分の指輪をまじまじと見ていたら、
「な、なんじゃ!そんなにじろじろ見られたら照れるではないか。」
なんか中にいるやつが照れていた・・・。なんだこいつ。
・・・にしても久しぶりに出てきやがった、聞きたかったことはたくさんあるんだすぐにでもあいつから逃げないと・・・!
「くそが!てめぇ・・・、何したのかわからねぇが殺す!」
やべぇ、殺気がびんびん伝わってくる・・・。このままでは・・・!
「っち!ほんとに死んでしまうな・・・!何とかできねぇのか!?」
「・・・ふむ。お主、何があっても他言無用だぞ?」
「その代わり、あとで説明しろよ!」
「あい、わかった。」
エクレとの会話を終えると、不思議となくなったはずの魔力が全回復で元に戻っていた。
(これは一体・・・。しかも普通の魔力の感じがしないのはなぜだ?)
だが、これならあいつを撃退するくらいは!
「こっから俺のターンだぜ。避けれるかな・・・!」
俺はよく使っていた風の魔法を唱え、やつに当てようとしたのだが、プスンという音だけで、何も出てこなかった。
「は?何が俺のターンだ。何も出てこねぇじゃねぇか。笑わせんな。」
やっべぇ・・・。超恥ずかしい・・・。
「どういうことなんだよ、エクレ!」
「おぬしはいつもの魔法が使えるわけなかろう。無属性魔法しかできない体なんじゃから。」
は?無属性魔法だと?今じゃ使えるやつはいないはずだが。
「魔王じゃからなんでもありじゃな。というわけで少し体を借りるぞ。」
「あ、ちょっと待て!あーもう、あとで教えろよ!」
「そういっておるじゃろ。」
わけもわからず体を乗っ取られて・・・変な気分だが。
「おらぁ!」
いつの間にか後ろに周っていたのか背後から切りかかってきた。
「ふん、甘いものじゃ。」
「な、なに!?」
腕に付与魔法かなにかしたのか剣の攻撃を防いでいた。
「魔法って言うのはデタラメだなおい!これは不利だな引くか・・・!」
「待ちやがれ!てめぇ、何者なんだ。」
「ふん、いずれまた会うかも知れないからな、そのときでも教えてやるよ。」
すばやく踵を返すと森の中に消えていった。
いまのやつの正体がすこしでもわかれば・・・!
「シンキー!大丈夫~!」
忘れていたこいつのことを。
「勝手に言ったらだめだよ最近魔物が人間の声を真似てくるんだから・・・。
って、どうしたのその目は!?」
「いや、なんでもない、元に戻る。」
「そ、そう?ならいいけど。」
あいつが操っていた中にそんなことができるのがいたのか・・・。でも、悲鳴を聞いたらどうしても助けないといけないのに・・・。
(おぬしは甘いの・・・。)
(なんかいったか?)
(何も、言っておらんぞ。)
エクレもなんか言いたそうな感じがしたんだけどな気のせいか。
「というより、シンキ。最近どうやら帝国軍を名乗っているやつらが現れたの。
気をつけてね。私はあっちに行くから。」
「おう、わかった。」
ナナミはまだ余裕があるのか疲れも知らない動きをしていた。
それにしてもっだ。
「エクレ、聞いたか。その帝国軍のことだな。前に言ってたのは。」
「そうじゃ、ようやく動き出しおったな。」
「それじゃ、そのことについてと俺の状態について教えてくれ。」
「わかったのじゃ、とりあえずおぬしの家に参ろう。」
リーンガード街はなんとか滅ぼされずにすんで、まだ危険があるかもしれないので騎士団はこの付近で残っていてくれているようだ。
このことを一応、マスターに報告しといて、何かあればすぐに呼んでもらえるよう手配しておいた。
「さて、一体どういうことなのか説明してもらおうか、元魔王さんよ。」
「ふむ、教えてやろう、現魔王さんよ。」
妙な始まりから一転、こればかりはふざけて聞き流すわけにもいかないわけで・・・、
「おぬしは今まで通りに魔法は使えぬ、じゃからあとで魔法薬。ようするに魔法を一時的に使えるようになるレシピを教えてやろう。」
「まぁ、それはありがたいんだが、無属性魔法しか使えないのはなぜだ。昔の俺ならもっと使えたはずなんだが・・・。」
「我のせいでもあるんじゃが、契約して魔力を失ったことに関係があるんじゃ。
聞いたことは魔力を失ったものだけが習得できる秘術やらなんやら・・・。」
全然詳しく知ってねぇぇぇ!
なんだ!?実験か?!俺は実験台か!?
「あとで調べておくから興奮するんじゃない。」
こ、こいつ・・・!いますぐ殴りてぇ・・・。
まぁ、実際このあとちゃんと調べてくれてたみたいで詳しいことはわかったんだが。
どうやらこのときから今までの間に何度も帝国軍と名乗る輩が攻めてきたんだ。
これが、俺の始まり。
魔王が目覚め、帝国軍が現れ、歯車が動き出した。
今更な話になるんだが、皆が思う魔法使いのイメージとは一体どういうものなのか。
杖を使っている、札を使っている、ただ呪文だけで魔法を使っている・・・。
さまざまな使い方があるものなんだが、俺たちの国では何か媒体となる『物』がなければ魔法を発動することができない。言葉だけでできるのか試してみたんだができなかったからだ。
つまり、魔法を使うのなら魔力を溜めておけるものとか、媒体となる『物』を持っておかなければならない。
「・・・キ。シ・・・キ!シンキ!」
「あ?」
「あ?じゃないよ。あ?じゃ。」
「一体どうしたんだよ。」
「話、聞いてたの?うわの空みたいだったけど。」
あぁ~。どうやら昔のことを思い出していたからかボーっとしていたのか・・・。
それにしても・・・。円卓の騎士か・・・。あんなにもいたのに少なくなったよな・・・。
帝国軍なんて名乗り出す輩も増えているって言うのに・・・。まぁ・・・、俺には関係のないことか。
「それでは、シンキさんとナナミさんのお二人には向かってほしいのですがよろしいですよね?」
姫さんが主語もなくいうなんてめずらしいなぁ・・・。なんてのんきに考えていたことがまずかった・・・。
なぜなら・・・!
「いいですよ~。調査のために学校にいくんですよね?」
・・・ん?今、なんて。
「はい。学長はあなた方の知っている方ですし、こちらからも連絡させて頂きますので。」
いやいやいや。待て待て待て。
「・・・待ってくれ。」
落ち着け、俺。今の話はなんだ?
俺がこいつと調査のために学校へいく?なぜだ、俺は何も聞いていないぞ。
・・・いや、待てよ。さっきこいつはなんていっていた・・・。
うわの空みたいなことをいっていたが・・・。まさか、昔話に花を咲かせていた俺が悪かったのでは・・・?
「なんで商人の俺が学校へ行かなければならない・・・。」
精一杯の返し・・・。俺はなんと情けないことか。泣けてきた。
「やっぱり話聞いていなかったね。シンキがボーっとしている間にほら、こんな風に決まっちゃっていて。」
そこには一枚の紙があり、何人かのペアで仕事が割り振られていたみたいだ。
だからなんで俺が。
「俺はしょ・・・!」
「俺は商人だからできないって言いたいかもしれないけど。
まだ国から認められてないし、ばれたときどうするの?いまはこっちで手を打ってる状態なのに恩を返さないの~・・・?」
「ぐっ・・・!」
た、確かに!?だが、だけども~!
「・・・わかりました。やらせていただきます。」
こうして俺は一度も行った事がない学校とやらに潜入することとなった。
だが、これから起ころうとしている問題はあいつの力を借りないとできないみたいで・・・。
ったく、こいつについて来たことがそもそもの間違いだったんだよなぁ
俺たちは後日城に集まるということで解散になったわけなんだが・・・。
「はぁ~・・・。なんでこんなことになってしまったんだろうな。確かに恩を返さないといけないとは常々思っていたことなんだが、まさかこんな形で返すなんてな・・・。」
俺は家に帰ったあと何度目かのため息をついていた。
「なんじゃ、鬱陶しいのう・・・。黙っておればうじうじと、ばしっと決めたらどうじゃ。」
「まぁ、そうなんだけどな。あ、そうそう、どうやら俺の知ってる魔法学校みたいなんだが、少し魔法薬を作っておきたいんだがいいか?」
「よかろう。じゃが、素材はあるのかえ?」
「多少だけどな。まぁなんとかなるだろ。」
さっそく作業に取り掛かるために奥の部屋から素材と道具を用意し、ごりごりと薬草を練っていた。
それにしても魔法学校か、魔法使いは今じゃまだ残っている魔物退治や国や街を守るくらいだ。
くらいって言い方は失礼なんだが、騎士ランクでも勝てない魔物もいるわけだから人数不足でもある。
商人の俺は関係ないことなんだが、俺が学校に潜入するくらいのこととなると裏がありそうで怖いんだよな。
今じゃ、帝国軍が現れ、こちらの大陸に攻めてきているからスパイやら出てきそうだ。
まさかそのために俺が・・・!?
・・・なんてな。考えすぎだ。っとそろそろ完成するな。
「お~い、エクレ。最後は頼む。」
「んむ?出来たのかえ。では・・・。」
ボンっと煙が出てきたと思えば、エクレが指輪の中から人間の姿で出てきた。
「う~ん、久々じゃのう。こうしておぬしとこの姿で会うのは三度目じゃな。」
硬くなった体をほぐすように体操しながら話しかけてきた。
だってお前、なかなか出てこないじゃねぇか。毎回声ばかりで誰だかわからなくなるよ。
「どれどれ・・・ふむ。なかなかうまく出来ておるな。おぬしの腕も上がっておるな。・・・ほれ。出来たえ。」
簡単そうに見えて難しいことをやってのけるなぁ、こいつは・・・。
一対一だと負けてるよ・・・。とにかくだ。
「話は大体聞いていると思うが、なんか仕事が来た。」
「ふむ、生徒として学校へ侵入するんじゃろ?」
「おう、そのことなんだが、いつでも魔法が使える状態にしてくれないか?
『もし』の場合が出てくるかもしれない。」
「よかろう。ただし、滅多なことでは使わぬこと、付与されている魔法薬で出来るだけ対処することじゃぞ。」
「わかってる、ありがとな。」
「では、わしは眠るとするかの。」
また、指輪の中に入っていく。久々に見たが、なれないものだな・・・。
数日が過ぎ、また城に召集された・・・。畜生・・・。
いつもどおりにナナミに拉致られ、あれこれと話が進められ・・・。
・・・あれ?いつの間に学校に?っていうくらいどんどん話が進められていった