表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旋律の学園  作者: スピア
6/8

新しい同胞 前篇

「はぁ・・・疲れましたね。」

「そうだな。」

戦闘が引き分けとなり、2人は生徒会室に戻っていた。シェールが部屋の暑さで限界の為、水分を2人でとらせている。

窓の外を眺めると、大きな入道雲が空に蔓延っていた。『もう夏か・・・。』と思いながら、シェールは水を喉に流した。

「会長。大丈夫ですか?」

「無理しないでくださいね。私、もっと水を持ってきますわ。」

「いや、大丈夫だ。うん、大丈夫。」

シェールは心配してくれた二人に「ありがとう」と呟き生徒会室の外へ出て行く。その姿を見て、2人は顔を見つめあい、首を傾げた。



シェールは一つ気になっていたことがあった。生徒会室に設置されているモニターから戦闘の風景を見ていて気になった事だ。

それは、エレクトリックの目線である。

どこを見つめているわけでもなく、まるで天からの声を聞いているような・・・。モニターで何度も拡大して確認したが、そんな感じだった。

ここは、エレクトリックに問い詰めるしかない。

「おい!エレクトリック!」

「んあ?シェールか。入れ。」

ガチャリと扉をあける。

「珍しいな。お前がくるなんて。」

扉をあけると、そこにはエレクトリックしかいなかった。机に靴を脱いで足をのせているという、だらしない格好をしていた。周りを見渡しながらエレクトリックに近づく。来客用のテーブルに茶菓子がたくさん置いてあり、何個か食べた痕跡を発見し、ため息をついた。

「お前、来客用の茶菓子食ってどうすんだよ・・・。」

「腹減ってたから食った。」

興味がない様に返答をする。

「はぁ・・・。まぁ、そのことはいい。ちょっと聞きたい事があるんだが・・・。」

シェールがエレクトリックの机に両手を置き、話す体制になった。エレクトリックは足をおろし、話しを聞くことにした。

「お前・・・戦闘の時何を聞いてたんだ?」

「・・・何も。ボーっとしてただけだ。」

「いや、お前が、お前の大好きな妹の戦闘を見ないわけないじゃないか。見ないなんで・・・よっぽどの事がなきゃないだろ?」

俺は何を口走っているのだろうと疑問に思った。まぁ、たしかにシェールの言っていることはあっている。

エレクトリックはため息をつくと話し始めた。

「・・・誰にもいわないよな?」

「それはお前が一番知っていることだろう。」

「・・・そうだな。」

昔から一緒にいる仲。お互いに知らない事などないのだ。

エレクトリックはシェールに「もっと近づけ」と言った。そうすると、エレクトリックはシェールのネクタイをつかみ、思い切り自分の方へ引っ張った。あぶないな、と思いながら話に耳を傾ける。

「これは絶対に他人に話してはいけない事だ。いいか。」

「あぁ。」

「俺を操っている奴がいる。図書室に。」

「・・・は?」

やっとネクタイを離してもらい付いた皺をまっすぐに直す。

図書室・・・?

「図書室にいけばわかるのか?」

さらに気になって問う。

「図書室のどこにあるんだ?」

「・・・案内してやろうか。あいつなら許してくれるだろうしな。」



エレクトリックの話によると、その『同じ存在』は図書室の奥の部屋にいるらしい。図書室の奥の部屋なんてないだろう、と聞くと、どうやらその部屋に続く部屋は『認められた者』のみ見えるらしい。その『認められた者』と一緒にいるだけでも見えるらしいが、触れないらしい。よくわからない。

だが、長年一緒に生きてきた親友が言う事だ。ありえないことでもエレクトリックの言う事は全てあっている。

少し、信じてみよう。



「ここだ。」

エレクトリックが指差したのは本棚と壁に挟まれた何もない壁だった。

「なんだ。見えないじゃないか。」

「よくみてみろ。」

目を凝らして見てみる。そうすると、白いドアが見えてきた。

驚愕。まさか本当にあるとは。

「どんな仕掛けなんだ?」

「仕掛けなんてないぞ。」

エレクトリックがドアノブに手をかけた。

そして、それをまわす。

すると、扉はキィィィ・・・という音を出しながらエレクトリック達を歓迎した。



そのころの瑞葵はスピアの剣を他のBFメンバーと直していた。

青猫とマリアの知識を使い、プログラムの武器を直す方法を発見したのだ。

なので、だいたいの人は、武器が壊れるとBFに運び込んでくる。

まぁ、戦闘専門の部活だから仕方がない。

「なおったよ~!」

マリアが青猫のパソコンから自分の生徒手帳へ、その直した武器データをさらにスピアに転送した。

「最新モデルにしといたよ!お兄様とおそろいにしといたからね~。」

「え!?本当!?私これ欲しかったんだ~って、これって修理っていうのかな・・・。」

「うん!スピアの元の双剣を元にしてモデルを作ったからね!」

「そうなの?ありがとう!」

スピアは大事に生徒手帳の『武器庫』に双剣を入れた。

一方、瑞葵はその様子を見ながら旋利の話を聞いていた。

『瑞葵さん。ちょっと来てくれないかな?』

『?何故?』

『君も知ってる人が来ているんだ。その人にも同じ存在がいるんだ。』

『・・・わかった。』

瑞葵は静かに立ち上がった。

「?瑞葵。どうしたの?」

「ちょっと、図書室にいってくる。」

「う、うん・・・。」

扉を開け、そそくさと出て行く。

その様子をスピアは心配そうな目で見ていた。

「瑞葵って、ずっと前から図書室に通ってるよね~。怪しい!」

マリアも気になっていた様だ。



あるところ

「律亜。俺の親友を連れてきた。」

慣れている様子のエレクトリックと裏腹にシェールはとても驚いていた。広い白い空間の中にただ一つ、テーブルとイスしかないのだから、驚くのは当たり前だろう。

そして、目の前にはそのイスに座った赤髪の少年。こちらをみてにやにやと笑っている。

「あぁ、お前の存在はもう知ってるぞ?シェール・ブランク。」

「!?何故俺の名前を・・・!」

赤髪の少年は分厚い本をパラパラとめくり、あるページを開き、シェールに差し出す。

それを受け取り、読んでみると、そこにはシェールの生い立ちがびっしりとかかれていた。

その瞬間、恐怖を感じ、その本を思わずほおり投げてしまった。

「なんで俺の情報が・・・!」

「そりゃあ、お前が生まれたその前からこの本はあるからな。『同じ存在』を持つ奴だけがこの本に記されるんだ。」

「おい、俺そのこと聞いてないぞ。」

エレクトリックが聞いていなかった事を、初めて訪れたシェールに話すのは『同じ存在』を持つ人物だからだ。

そう、シェールにも同じ存在がいる。

そのことをシェールは一瞬にして理解した。

「お前の同じ存在は・・・おっと・・・『白鷺』か・・・。」

「白鷺・・・?鳥か・・・?」

「あー、ちがう。白鷺は名字だ。あ、そういえば俺の名前いってなかったよな?」

「あ、あぁ。」

シェールは少し戸惑いながらも話に耳を傾けた。

「俺は黒崎律亜。今はいないが、弟がいる。弟は旋利ってんだ。」

「よ、よろしく・・・。」

あいさつをしたとたん、扉がまた音をあげて開いた。

そこにいたのは旋利と瑞葵であった。

「!霧島!?」

シェールが先に声をあげた。

まさか、BFの企画長の霧島瑞葵もこの空間の存在を知っていたとは、思いもしなかった。

先程紹介された『旋利』という人物も傍についており、律儀に礼をした。

それにつられてこちらも礼をする。

「貴方が、シェールさんですか?」

丁寧な口調で喋る声質は兄の律亜とは真反対にとても穏やかなものだったが、顔は無表情だったため少し違和感を覚えた。

「そ、そうだ。」

「ちょっと、今『黒霊』を呼ぶので・・・待っていて下さい。」

旋利はスッと歩き出すとそのまま奥の扉を抜け、暗闇の中に消えて行った。どうやら黒崎家と白鷺家の生活する(?)場所は別々らしい。

先程の律亜の反応を見るからに、仲が少し悪い様子だった。

「シェール先輩。」

旋利の様子を見ていると一人残されていた瑞葵が話しかけてきた。

「なんだ?」

「シェール先輩も、同じ存在がいるんですか?」

「そのようだな。なんだ?お前達はもうとっくにわかっていたのか?」

「俺の場合はいきなり目の前に現れた。」

エレクトリックはもう一つのイスに腰掛けると、律亜を見つめた。

「あの時はびっくりした。今も、この空間が不思議でならないが、最初来た時は警戒心を解けなかったな。今も解いてないけどな。」

「なんだそれ・・・。俺は怪しい奴じゃねーよ!」

面倒くさそうに目を律亜からそむける。

そうか、エレクトリックもやはり警戒心を解いてないのかと思いながら、もう一度辺りを見回した。

それにしても、本当に不思議な空間だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ