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旋律の学園  作者: スピア
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「今日は戦闘するんですか?」

紫雨がピンを直しながら、シエロネーロ会長シェール・ブランクに問う。

「そうだな・・・あと2時間後にしようか・・・。」

そう言いながら、シェールは紅茶を啜った。


青実学園の成績は『戦闘』という『プログラム』によって付けられる。

戦闘に勝てば成績が上がり、戦闘に負ければ成績が下がる。

この学校は『政府の為に戦う兵士を育成する』というのが名目だ。府箕県の『言い伝え』を政府は利用しようとしているのだ。

その戦闘を仕向けるのが第三の生徒会『シエロネーロ』。通称闇である。

フォンドブランクから戦闘を仕向ける事はなく、いつもシエロネーロが仕向けているのだ。

「会長!そろそろ2時間経ちますよ!!」

今、シェールの肩を揉みながら大声を出しているのはシエロネーロ生徒会副会長の、紫雨勝也だ。

二つピンを右にとめている。身長は瑞葵より高めだ。

「耳元で騒ぐな・・・。そうだな。そろそろするか・・・。」

「今日は誰が戦いますか?」

「紫雨。頼む。」

シェールは極度のもやしなので、戦闘はあまりしないのだ。

「わかりました!!」

「では、放送しに行ってきますわ。」

お姫様のような口調の少女はシエロネーロ生徒会の副会長、天海久留夢あまみくるむだ。

ポニーテールで前髪のサイドをカールさせている、いかにもお嬢様というオーラを醸し出している。天海グループは世界的にも有名な会社。その名門令嬢なのだ。

そして、敵であるエレクトリックに想いを寄せている乙女だ。

「じゃあ、俺もいってきますね!」

「がんばれよ。」

ふっ、とシェールは笑った。



「あーめんでー。」

その頃、フォンドブランク生徒会ではエレクトリックがだらけていた。

高いと思われる万年筆を床にほおりなげ、机に足をのせている状態だ。

「会長。だらしないですよ。」

「へーへー、きっちりしますよっと。」

万年筆をひろい、姿勢を正す。

その時、とつぜん放送が流れた。

『フォンドブランクの皆さん。戦闘を開始いたしますわ。中庭に集まって下さい。』

エレクトリックがいきなりの放送でビックリし、肩を揺らす。

「・・・ビビった・・・。今日はスカルに行ってほしかったが、休んでるしな・・・。とりあえず行って、誰かに頼むか。」

「そうですね。」

そういって、二人は中庭へ向かった。



「あー賑わってんなー。」

「あ!兄さん!」

「おースピア。」

女子がエレクトリックに向かって黄色い声をあげる中、スピアはエレクトリックを呼び止めた。

「今日は誰が戦うの?」

スピアがエレクトリックを見上げて問う。

スピアが入っている部活『BF』は戦闘と雑用専門の部活となっているので、戦闘は基本フォンドブランク生徒会かBFが行うのだ。

今はBFのリーダーである瑞葵がいないため、指揮官が居ない事となる。なので、フォンドブランク生徒会会長であるエレクトリックに指示してもらう他無いのだ。

「んー、俺今日だるいし、スピアがやってくれ。」

「え!?私勝てるかなぁ・・・。」

スピアが上目遣いのまま困った顔をする。エレクトリックはそれをみて内心『かわいい』と、くだらない事を考えていた。

どうでもいい話だが、エレクトリックはシスコンなのだ。本当にどうでもいい。

「じゃあ・・・私がんばってみるね!」

「おう。がんばれ。」

手を振って見送る。

「会長。鼻血でてますよ。真顔のまま鼻血出さないでください気持ち悪い。」

左季が毒を吐きながらハンカチで鼻血をぬぐう。

「おう。」

左季とエレクトリックが話し終わった後、相手が出てきた。

「今日の相手はスピアか・・・。」

「なんだ・・・紫さ・・・。」

スピアの動きがぴたりと止まる。そして、とっさに首を手で覆う。

皆の頭に『?』マークが浮かぶ。

「こ、今回は首しめないでよ!?いたかったんだから!」

「あぁー・・・。」

エレクトリックがこの前の戦闘の事を思い出し、納得した。

紫雨は一度、戦闘の規則をスピアの首を絞めたことで破ってしまったのだ。

「だ、大丈夫だ!もうやらない!!」

「またやったら殴るから!!」

「おーい。痴話喧嘩やめて早く戦闘しろー。」

「「痴話喧嘩じゃねぇ!!」」

一人の男子の声でその会話は終了となり、戦闘が開始した。

その時―

『おい、エレクトリック。』

「!!」

突然エレクトリックの脳内に声が聞こえた。

『律亜・・・か?』

心の中で返事をする。そう、この声は律亜だ。

『そうだ。いまからお前に確かめてほしい事があるんだ。』

『なんだ?』

『紫雨勝也の武器、能力を見るんだ。』

『・・・わかった。』

律亜との話がおわり、戦闘の方へ目を向ける。

戦闘はあと30秒となっていた。

スピアが紫雨の投げたナイフを双剣で防いだ。

「くらえ!!」

「!!」

紫雨が手をスピアへ向けると手から炎が出た。

それをスピアがかわす。

『・・・律亜。紫雨の武器はナイフ、能力は炎だ。手をかざしただけで炎を出せる。』

『おぉ、ありがとう。』

こんな事を聞いて何をするつもりだと思いながら、戦闘の行方を見守った。



戦闘は結局引き分けとなった。

紫雨とスピアのナイフと剣がおれたからだ。

エレクトリックは左季と共に生徒会室に戻っていた。生徒会室に帰っても、仕事は一通り終わってしまったので、後は下校時間まで待つだけだ。

「会長。戦闘の記録はちゃんとつけましたか?」

「あぁ。」

フォンドブランク生徒会は『戦闘を監視してその結果を付ける』生徒会なので、会長は学生帳に記録しなければならないのだ。

もし、戦闘の結果を記録していなかったら会長をおろされてしまう。

そんな時に役に立つのが副会長だ。

副会長も記録をとっておき、会長が記録を忘れたときに代わりに出すのだ。

不真面目な会長でも副会長がしっかりしていれば仕事をちゃんとした事になる。

生徒の間では、「会長に任命されるより、副会長に任命される方がすごいのではないか」といわれている。

「私がいるとはいえ、ちゃんと記録してもらわないと。昨日忘れてましたし。」

「おぉ、すまんすまん。お前が居て良かったよ。お前が居なかったら俺会長おろされてたわ。」

エレクトリックが微笑む。それと同時に左季が赤くなった。

「なっ・・・告白ですか。」

「ちげーよ。俺女には興味ねーし。」

「じゃあ男に興味あるんですか。」

「男にも興味ねーよ。あ、俺ちょっと図書室いってきてもいいか?」

律亜に会いに行っていろいろ聞きたい事があるのだ。

「あぁ、いいですよ。すぐ帰ってきて下さい。」

左季が懐中時計を取りだして時間を確認すると許可を出した。



あるところ

「あー。やっぱりか。攻撃方法はナイフに炎をまとわせるか、炎で相手を焼くか。だな。」

「そうだね。」

黒崎兄弟は、先程のエレクトリックの報告を頼りに攻撃方法を考え、本に書き込んでいた。書き込むとその文字が印刷された文字に変わった。変わった所で、本を閉じる。

「紫雨勝也は炎・・・いつ頃絶望を与えるか・・・。」

律亜が悩みながら紅茶を啜る。

すると、突然扉が開いた。

「よう。」

「あぁ、エレクトリックか。」

「こんにちは。」

エレクトリックが扉をしめる。

それと同時に律亜がパチンと指を鳴らし、椅子をだした。

「どうした。今日のお前の仕事は終わった。仕事に戻っていいんだぞ。」

律亜が問うと同時にエレクトリックが座る。

そして、足を組み律亜の顔を見つめた。

「いろいろ聞きたい事があってな。」

「ほぅ・・・なんだ。言ってみろ。」

律亜がパタンと本を閉じ、エレクトリックと向き合った。

「お前は、なんで今日あいつの能力と武器を聞いたんだ。」

この事を聞かれるのはもうすでに予測していた。あんな事を聞かれたら、誰でも気になってしまうだろう。

「それは、俺達だけの秘密だ。ある事をしたくてな。」

「ある事・・・?」

「あぁ、だけどそれはまだ秘密だ。」

そう、その秘密はまだ言うべきではない。律亜は笑いながら「後々わかるだろ」と付け足した。

「・・・そうか。」

素直に問い詰めるのをやめる。

エレクトリックは『秘密』という言葉に弱い事を律亜は知っていたのだ。

『秘密だ』と言われると体がその秘密を聞く事を拒んでしまう。

「それだけか?」

「・・・あぁ。その秘密をいつ話してくれるのか、楽しみにしてる。」

「あぁ。」

エレクトリックが不満そうな顔をしながら、この空間を出て行った。


紫雨勝也の過去を話そう。

勝也は父親に虐待されていた。

母と共に暴行を受け、母とその家をでた後に

最愛の母が交通事故で亡くなった。

その時は笑う事を忘れ、途方にくれていた。

当時、勝也は5才だった。

裏道を歩いて暮らす生活が続いた。そのあと、倒れていた勝也を孤児院の院長が発見し、孤児院で暮らすことになった。

その後、笑顔を取り戻し、虐待の記憶も薄れてきた10才の時。

孤児院が何者かによって爆弾を仕掛けられた。その時勝也は爆発の火の届かないところにいたので、なんとか生き残る事ができた。

だが、勝也以外の子供は皆しんでしまった。目の前には真っ赤な炎。肉の焼ける臭い。そこに転がっている友人だったもの。紫雨は吐きながら外にでた。

だが、何者かに捕まえられ、腹を燃やされた。

『熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い痛い』

そんなことを思いながら叫んでいた。

犯人がどこかへ去り、紫雨は小さな体で人がいる所へ向かおうとした。

そこで―

「おい、エレクトリック!消防車と救急車を!!」

「わかった!」

誰かの声がした。



―協奏曲はすぐそこに

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