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旋律の学園  作者: スピア
4/8

武器

あるところ

旋利が紅茶をカップに注ぎ、律亜に渡す。

「・・・さて、今日は誰に協奏曲を奏でるか・・・。」

「・・・本を開こう。」

厚めの本を取り出しパラパラとめくる。

白く静かなこの部屋に、乾いた音が響く。



瑞葵は考えていた。あの人物は誰なのか。

一日中考えたがわからなかった。しまいには、頭を抱えてスピアに心配されてしまった。

こんなに考えたのは人生で初めてかもしれない。

一応今日は、一時間しか授業がないのでBFの部室に行くことにした。考えながら廊下を歩く。

そして、頭を両手で抱える。

横を通って行くクラスメイトが心配そうにこちらを見るが、気にしない。

すると、後ろから声をかけられた。

「やぁ。」

驚いて振り返る。そこにはあの白髪の少年が立っていた。

何か変わっているなと思いよくよく思い出してみると、髪を切った事に気がつく。

そんなことはどうでもいい。

「!!お前は・・・あの時の・・・。」

「僕は旋利。黒崎旋利くろさきせんりだ。いきなりごめんね。」

勝手に自己紹介をされてしまった。頭の中がパニックになる。

落ち着かせ、とりあえず今まで悩んでいた事を口にだす。

「・・・お前は・・・どこからきたんだ。」

「・・・じゃあ、案内するよ。もう一人も着いてる頃だし。」

「もう・・・一人?」

「さぁ、ついてきて。」

わけのわからないまま手を引かれ、図書室の方向へ足をすすめる。



あるところ

「いきなり手を引っ張られたと思ったらまたお前か!!」

フォンドブランク生徒会長、エレクトリック・エレフェントが手首に縄を巻かれ、椅子に座らされていた。

何故この様な状況になってしまったのか、エレクトリック自身もわからない。

「そう騒ぐなよ。」

律亜はにやにやしながら手に持っていた本を机に置いた。そして紅茶を啜る。

その姿をみて少しイラッとした。

「ていうか、お前は誰なんだ!」

「会った時も名前言ったけどな・・・。俺は黒崎律亜。よろしく♪」

ニコッと笑い手を横に振る。

「よろしく。じゃねぇよ!」

「兄貴、連れてきたよ。」

扉を開き、旋利と瑞葵が入ってきた。そして、エレクトリックと瑞葵が同時に驚く。

「ここは・・・。って、エレフェント先輩がなぜここに・・・。」

冷静に状況を分析する瑞葵はすごいと思う、とエレクトリックは心の中で思った。

「俺も分からん・・・。トイレ行ってたらいきなりこいつが現れて・・・。強制的に連れてこられた。まったく・・・。」

「兄貴・・・。強制的に連れてきたのか・・・?」

旋利が鬼のような形相で律亜を見つめる。

この双子もエレクトリックと左季と同じような関係なのだろうか。

「そう怒るなよ旋利~♪」

双子の会話についていけない二人。

そろそろ本題にうつりたいが、二人が事情をしっているのでこちらから話を言い出せない。

「(咳込み)さて、本題だが、お前たちに命令だ。」

「命令・・・?」

二人が疑問に思っているそばで、律亜が本を取り出し机の上に乗せた。

本は不思議なことに、パラパラとページがまくられ、あるページを開いた。

「お前らには働いてもらうぞ。」

律亜が本を手に取り、また話し始める。

「働くってなんだ・・・?」と二人は思い口に出そうとしたが、それは律亜の言葉で遮られてしまった。

「俺はエレクトリックを操る。旋利は瑞葵を操れ。」

「あ、操るって・・・どういうことだよ。」

やっと質問ができた。勝手に話を進められては困るのだ。

「この青実学園は今危機にさらされている。青実学園の崩壊を防ぐためにお前らに働いてもらうことにした。」

青実学園の崩壊・・・?何を言っているんだこいつは。

エレクトリックは顔を少し歪ませた。

「とりあえず、仕事が来たら僕から君たちに心を通して伝えるから。」

旋利がエレクトリックの縄を解き、瑞葵と共に扉の方へ誘導する。

「じゃあ、よろしく。」

「あ、おい!」

図書室に扉のしまる音が響いた。



その後、エレクトリックは廊下を一人歩いていた。

空の色はまだ青く、赤くなる気配はない。

廊下には靴の乾いた音しか聞こえない。

それにしても、あの双子は一体何なのだろうか。青実学園の崩壊とは何なのだろうか。

一度に多くの事を言われ、記憶の整理ができない。

一応、生徒会室に行くことにした。

というか、もうここは生徒会室の前だ。

ガララ・・・と扉の開く音がする。

「会長!!遅いです!!」

「そうだ。遅いぞエレクトリック。」

「すまんすまん。」

改めて紹介をしておこう。

まず、敬語で話している黒髪の少女は土方左季ひじかたさき

戦闘の際は、鬼の姿になることもできる。

二人目は、スカル・スペクター。紺色の髪に青い瞳をもっている、美少年だ。

前髪を真ん中で綺麗にわけている。

イタリア出身で、エレクトリックの幼馴染だ。

エレクトリックにいつも絡まれている。

俗に言ういじられキャラで、生徒会の常識人No2だ。だが、どちらかというとスカルの方が常識人かもれない。

左季もエレクトリックと共にふざけることが多くあるので、それにツッコんでいるのがスカルなのだ。

「ふぅ・・・あ、土方お茶。」

椅子に座り、足を組む。

「嫌です。自分で淹れてください。」

「あ、ドクターペッパーならあるぞ。」

「ドクターペッパーだけは勘弁。」

そう、どうでもいいがエレクトリックはドクターペッパーが嫌いなのだ。あえてヤバそうなものを避けていたが、スカルに無理やり飲まされてしまったのだ。

そのせいで吐いてしまい、トラウマになってしまった。

しばらくたっても誰もお茶を淹れてくれそうにないので、自分で淹れることにした。

今は左季とスカル以外の人がいないので、こき使うことができないのだ。

「・・・はぁ・・・命令・・・ねぇ。」

だるそうにつぶやく。そのつぶやきをスカルは聞き逃していなかった。

「?どうしたんだよ。」

「いや、。なんでもない。」

エレクトリックが珍しく仕事を始めた。

お茶を啜りながらペンを走らせる姿を見て、二人は驚いた。

「・・・今日は槍が降りますね。」

「いや、核爆弾が降るな。」

「お前ら、人を馬鹿にするな!!俺だって仕事くらいするわ!!」



一方、瑞葵はBFの部室にいた。

部室の中にはスピアと千込もいた。

だが、三人はそれぞれ違う事をしている。

スピアは剣を研ぎ、千込は仮面を拭き、瑞葵はホワイトボードに落書きをしている状態だ。

他のメンバーはコンビニへ出かけているらしい。

「・・・あ、そういえば瑞葵はどこいってたの?」

「・・・よくわからない。」

「んだそれ。」

千込が頭にハテナを浮かべている。

説明しようがないのだ。というか、説明できない。

図書室に何故あのような扉があるのか、あの双子は一体誰なのかもわからない。まぁ、名前はわかるのだが。

その前に、命令とは何なのだろうか。

青実学園が危機にさらされている?そんな馬鹿な。

そんなことを思いながら、スピアが淹れてくれた紅茶を一口飲む。

『フォンドブランクの皆さん。戦闘を開始いたしますので、中庭に集合してください。』

アナウンスと共に瑞葵がガタッと立ち上がる。

「スピア!千込!行くぞ!」

「「おうっ!」」

そう返事をし、中庭へ向かった。



「あら?初めまして。ですわね。」

「?貴方は・・・?」

スピアが名前を聞くと、その人はくるりと一周回って、お辞儀をした。

お嬢様のようなオーラを醸し出している。

「私は天海久留夢あまみくるむと申します。今回は、誰と戦闘しましょうか。」

久留夢が言い終わったあとに、フォンドブランクの生徒会が来た。

「あ~めんどくせぇのに何で来なきゃなんねぇのかな。」

「会長。殴りますよ?」

「!」

エレクトリックを見た久留夢が顔を赤らめる。

瑞葵には頬を赤らめた意味がわからなかったが、スピアと千込は理解したようだ。

「んで、何。俺が戦えばいいのか。・・・で、相手は久留夢か。」

「わ、私ではありませんわ!」

久留夢の心の中では「下の名前で呼ばれた・・・!」と連呼している。

いままでは天海あまみと呼ばれていたのだ。

「?違うのか。」

エレクトリックが面倒くさそうに返事をする。

それを見ていたスカルがため息をつく。

「はぁ・・・一応お前達の会長連れてこいよ。会長同士で戦え。」

「会長は日光に当たるとしんでしまいますの。」

「貧弱だな!」

スカルが素早くツッコむ。

そう、シェールは極度のもやしなのだ。日に当たるとすぐに干からびてしまう。

なので、曇っている日と雨の日にしか戦闘に参加しないのだ。

「そのかわりに、紫雨に戦ってもらいますの。」

紫雨が中二的なポーズをしてこちらに向かってくる。

「紫雨か・・・。仕方ねぇ。俺が行く。」

「戦闘の時だけ会長らしくなるよな、お前。」

「やった(小声)・・・では、戦闘を始めましょう。」

久留夢が手を上げ、アナウンス係へ支持を送る。

『戦闘開始!』

「お前は二秒で仕留めてやる。」

紫雨が返事をする前に、エレクトリックが紫雨の短剣を叩き落とす。

「なっ・・・!」

『戦闘終了!』

「ふぅ・・・。」

皆驚いていたが、すぐさまフォンドブランク側から歓声が上がった。

久留夢もなぜか拍手していた。



「たったの二秒か・・・。すごいな。」

たしかに、エレクトリックの大剣と、紫雨の短剣では、どちらが勝つかは明確だった。

それに、エレクトリックの大剣は普通の武器との重量の差がすごいのだ。

ちなみに、大剣は2t。

それを片手で軽々持ち上げるのだから、それほどの筋肉があるだろうと思われるが、エレクトリックは長年病院にいたので、筋肉はあまりついていない。

軽々持ち上げられる理由。それは能力だ。

エレクトリックは『不死』と『力の上限を解放する』能力を持っている。

この『力の上限を解放する』能力の影響だ。

「お、ついに俺を認めたか。」

「認めてねーよ。」

「そこ、イチャイチャしないでください。」

「「イチャイチャしてねーよ!!」」

珍しく、二人が息ピッタリにツッコミをした。



あるところ

「さて、明日からあの二人を操るか。」

「ターゲットは・・・紫雨勝也。炎。」

旋利がパラパラと本をめくり、シエロネーロの人物の名前を呟く。

「どんどん絶望を増やしていこう。」

律亜がにやりと笑い、また紅茶を啜った。



―旋律と共に不幸が訪れる

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