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旋律の学園  作者: スピア
3/8

闇と光の戦い

府箕県(くらみけん) 青実学園(あじつがくえん)

「スーピアッ!」

「わっ!」

一時限が終わった後、レイアはスピアに抱きついた。いきなりだったので、スピアは肩を大きく揺らしてしまった。

「ど、どしたの?」

「ん~?別に~・・・。」

「じゃあ離れて・・・。暑い・・・。」

府箕県の春の温度は一ヶ月の平均が27度だ。だが、まだ冬服の期間なので夏服を着ることはできない。青実学園の生徒は期間をちゃんと守っているのだ。

そこだけはえらい、とスピアは思う。

「しかたねぇなー。」

レイアがスピアから名残惜しそうに離れる。

今日は、テスト前なので授業は一時限しかない。やはり、青実学園の偏差値は大丈夫かと心配になる。

スピアは鞄に教科書、ノートをしまった。この後はBFの部室に行く予定だ。

「あ、そういえば部活作ったんだってな。」

レイアが鞄を肩にかけ、スピアの行動を見ながら呟く。「そうだよ」と返事をしスピアも鞄を肩にかける。

「そういえば、レイアはBFに入る?」

「んー?入る入る。」

じゃあ行こうか、とスピアは笑いながら言った。



あるところ

「兄貴、昨日僕と同じ存在の子に会ってきたよ。名前は・・・えーと・・・。」

白髪の少年はパラパラと本をめくる。白い空間にその静かな音は大きく感じた。赤髪の少年はその様子を見ながら紅茶を啜った。

「あった。『霧島瑞葵』さんだね。」

「ほう・・・。ちなみに、俺と同じ存在は?」

また本をめくる。

「えっと。『エレクトリック・エレフェント』さん。」

名前を聞いた途端に「光か・・・」と白髪の少年にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。白髪の少年はそんな少年を見つめる。

「・・・わかった。」

赤髪の少年は立ち上がると、部屋と同様の色の扉に手をかけた。そしてドアノブをつかむ。

「いってらっしゃい。」

部屋に、扉の開く音が響く。



「仕事めんどくせぇ・・・。」

スピアの兄、エレクトリック・エレフェントは椅子に座り項垂れていた。

高級なものだと思われる万年筆を机に放り投げ、足を組んで背もたれにより掛っている。会長とは思えない姿だ。

「早く仕事してください。」

フォンドブランク生徒会戦闘部門副会長、土方左季は腕を組み仁王立ちをする。エレクトリックは仕事をサボるのに定評のある人だ。サボるたびに左季が連れ戻しに来るので、皆からは『生徒会のおかん』と呼ばれている。エレクトリックのミスも、いつも左季が尻拭いをしている。

「早く仕事しないと、妹さんにサボっていることをバラしますよ。まぁ、もう気づいていると思いますが。」

生徒会会員が怯えるほどの鬼の形相でエレクトリックを脅す。

そう、エレクトリックのミスをスピアに言えば、家に帰ってスピアに怒られるだろう。これでも20歳の大の大人だ。それが高校生の妹に叱られているのだ。その姿を誰かが見てしまったら、会長としての威厳を保つ事ができない。

「この鬼め。」

少し睨み、左季を見つめる。それにひるむことなく左季は即答した。

「鬼ですから。」

そう、左季は能力によって目覚めてしまった鬼である。なので、今は鬼の血が流れている。

そのため本気を出すと死者が出てしまうだろう。なので戦闘に出る事はあまりない。だが一般生徒はあまり知らないが、左季はフォンドブランク生徒会の中で2番目に強い戦闘力を持っている。

「とりあえず、早くやってください。」

「それなら生徒会長にも言えよ。」

生徒会室のソファに寝転がりゲームをしている津島快斗を指差す。その姿は、仕事をしている者から見ればイラッとする。

「生徒会長は別です。」

差別だ、と呟いて万年筆を手に持つ。

青実学園には二つの生徒会がある。

一つ目は『フォンドブランク生徒会』フォンドブランクの代表が仕切っている。

二つ目は『シエロネーロ生徒会』こちらも同じである。

そして、二つの生徒会の上に立つのが生徒会長『津島快斗』。

快斗はいつもフォンドブランク生徒会室にいる。なぜかというと、居心地がいいからだ。流石に口うるさい左季も生徒会長である快斗に口出しはできないで何も言ってこないのだ。だが、シエロネーロ生徒会室に行くと「仕事しろ」と怒られてしまう。

今日の左季は快斗に矛先を向けたようだ。

「生徒会長も仕事をしてください。」

「嫌だ。」

即答である。

「生徒会長、やれよ。」

エレクトリックも文字を書きながら言う。怒りゲージがMAXに達している声だ。

「いーやーだー。」

「子供か!」

エレクトリックが素早くツッコむ。

快斗はいつも仕事をしようとはしない。なので、いつも二人がやる羽目になる。

「つーか、なんでいつもここにいるんだよ。」

「お前が好きだから。」

ウィンクをする快斗にエレクトリックは鳥肌がたった。冗談だろうが、なぜか本気に聞こえる。

「キメェ。」

「冗談だよ。」

正直、男二人がこんな会話をしているのは気持ちが悪い。だが、二人は残念なイケメンだ。仕方がない。そう左季は思う事にした。

「私は、刀の練習をしなければいけないので、先に失礼させていただきます。」

時計を見ながら鞄を持つ。

「「おう。」」

左季は一礼し、出て行ってしまった。あぁ、唯一の常識人が・・・と皆は思っていた。

今、部屋にはむさ苦しい男二人と熱心に仕事をする生徒会役員しかいない。



「おい、瑞葵。」

「・・・なんだ、千込か。」

廊下を歩いていると、仮面をつけた少年、千込裕子が瑞葵を呼び止めた。

髪は茶髪。短髪でいかにもかっこいいですよ、というオーラを醸し出している。

裕子、といっても男だ。女みたいな名前、といわれるのは本人は嫌いらしい。

仮面を付けている理由。それは瑞葵とスピアとマリアしか知らない。

「BFに入りたいんだが。」

「!!勿論大歓迎だ!」

「お、おう。」

手を握られ少しパニックになったが、すぐに落ち着かせた。瑞葵の笑顔を見るのは久しぶりであった。相当嬉しいのだろう。

すると、隣に二つの影があることに気が付いた。

「俺らも入るであり〼!」

「あぁ。」

『~〼』が口癖のケルビムと、何故か頭に耳が生えている青猫だ。二人も青実学園に入ってから出来た友人である。

ケルビムはフィンランドから来た少年だ。昔軍隊に入っていたと言っている、自称(と思われる)機械だ。顔の右側のみに仮面を付けている。付けている理由は瑞葵でも謎。

青猫はイタリア人らしい。猫の耳と尻尾が生えている『ハッカー』だ。常に鞄の中にパソコンを入れている。暇があればパソコンを開き、オンラインゲームなどをしている所を瑞葵はよく見かける。髪は青。襟足が少しながく、目は黄色。猫のような目をしている。


BFメンバーは一気に八人となった。



生徒会室を抜け出し、エレクトリックはトイレにいた。

「ふぅ・・・。まったく・・・あの鬼・・・。」

文句を言いながら手を洗う。

すると、ふと背後に気配を感じた。

「ここにいたのか。」

「!!」

振り向くと、そこには赤髪の少年が立っていた。

「・・・誰だ。」

真紅の瞳がギラリと光る。その様子を見て赤髪の少年は「怪しい奴じゃないぞ」と笑った。

その笑いを見て、少し警戒心を解いてしまった。

「俺は黒崎律亜(くろさきりつあ)。お前と同じ存在だ。」

「同じ存在・・・?」

エレクトリックがまた怪しい奴だと思い、武器を出す構えをする。

すると、律亜はポケットからチェスの駒を出した。

「お前は・・・ナイトだ。」

ナイトの駒を投げた瞬間、どこかへ消えてしまった。ただ一言、謎の言葉を残して。

「・・・なんなんだ・・・?」



あるところ

「ただいま。」

「おかえり。」

律亜が扉を閉めると椅子に座った。

「どうだった?『運命』の人は。」

「フツーだった。そういう旋利はどうなんだ?」

旋利(せんり)』と呼ばれた少年は紅茶を飲むのをやめた。

「けっこう可愛かったよ。オッドアイの子だった。」

「へぇ。」

「だけど、僕と同じ存在とは思えない。」

「本の書いてある通りにすればいい。俺たちに出来ることは、ただそれだけだ。」

そう言い、本をパラパラとめくる。



「あ、会長。どこに行っていたのですか?」

生徒会室の扉をあけると、帰ったはずの左季がいた。

少し驚きながら扉をしめる。

「・・・つーか、なんでお前がいるわけ?帰ったんじゃねぇのか。」

壁に寄りかかり問う。

「いえ、忘れ物をしたことを玄関で思い出しまして。」

そう言うと、左季は机の上の本を鞄にいれた。それは分厚い本だった。

「では、お疲れ様です。」

一礼すると部屋を出て行ってしまった。

エレクトリックは椅子に座ると、お茶を啜る。左季の淹れたお茶はとてもおいしい。

「・・・そういえば、トイレで変な奴見たんだが。」

「うちの生徒は皆変だぞ。」

「そうじゃなくて、赤毛の・・・」

「アンか。」

「殴るぞ。」

まったく話を聞かないので話すのをやめることにした。

ふと外を見てみるとすでに空は赤く色付いていた。もう夜になるのか、と思いながらボーっと眺める。

すると、突然校内放送が鳴った。

『フォンドブランクの皆さん。中庭で戦闘をするので急いで集まってください。』

「チッ、シエロネーロめ・・・。エレクトリック!!いくぞ!!」

快斗がゲームを机に置き立ち上がると窓を開けた。

「おう。」

生徒会室の窓から飛び降り、中庭へ向かった。今回は誰が相手になるのだろうか。



「エレクトリック。よく来てくれたな。」

白髪の少年がこちらを睨んできた。青い目がギラリと光る。

彼の名はシェール・ブランク。

シエロネーロ生徒会戦闘部門会長だ。敵となるが、エレクトリックの竹馬の友であった人物だ。普段は日を嫌い、生徒会室のテレビから戦闘の様子を見ている。

「・・・今日はどうしたんだ。」

歩きながら大剣を出す。自分の身長と近い大きさの大剣で薙ぎ払う。

同時にひときわ光る模様が右頬に浮かび上がる。

「もちろん戦闘するんだよ。久しぶりに戦おうじゃないか。」

すると、手から細剣レイピアを出した。

シェールの頬にシエロネーロの模様が浮かび上がる。

「エレクトリック!!勝ったら今日ヨーグルトおごってやる!」

エレクトリックの眉がぴくっと動く。これは負けるわけにはいかない。

「まかせろ。」

両者が前にでる。

『戦闘開始ッ!』

両者が空へ飛び上がる。皆には見えないほど、速かった。

剣と剣がぶつかりあう音だけが響く。

「エレクトリック。やるじゃないか。」

シェールが余裕そうに笑う。それを見たエレクトリックもにやりと笑った。

「まだ本気を出してないぞ。」

そういうと大きく大剣を横へ振り払った。それをよけ、シェールが後ろに倒れそうになるが、一度手をついて体制を整える。シェールの額に汗が流れているのが見えた。

そして、二人同時にぶつかりあう。

すると―

パキンッ

―両者の剣が折れた。

『引き分け!』

エレクトリックが折れた剣をしまう。

同じく、シェールもしまった。二人とも腑に落ちないような顔をしている。

「あ~あ。やっちまったな~。」

快斗がエレクトリックに近づき励ます。

「折れた・・・。」

「まぁ、シュンとすんなよ。直してやるから。」

快斗にポンポンと頭を撫でられるエレクトリックはまるで犬だ。子供のような扱いをするな、とでも言いたそうに快斗を見つめる。

「・・・まぁ、ヨーグルトはおごってやるよ。」

「まじか。」

いっきにパァッとなる。

エレクトリックは物につられやすい、とつくづく思う。

その様子を見ていたシェールは連れて来ていた紫雨をに「帰るぞ」といい、静かに帰って行った。

「よし、生徒会室に帰るか。」

快斗が振り返りそのまま歩きだす。それに続いてエレクトリックも歩く。

シェールの事が少し気になり振り返ってみるが、もうそこにシェールの姿はなかった。

「・・・次こそは決着をつける。」

そう呟き、前を向く。

きがつけば、空の色は黒くなり、あたりは暗くなっていた。





あるところ

「今日は何もなかったね、兄貴。」

「んー?あぁ。」

律亜が紅茶を一気に飲む。

そして、机に置いてある本を手に取りパラパラとめくった。

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