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四話目

拙いですがごゆっくりどうぞ!


 5年経っても変わらないものもあれば、変わるものもある。

 ずっと今が続くことはない。始まったらいつかは必ず終わりが来る。

 そんな当たり前のことを俺はいつも忘れてしまう。



「メイさん」

「あータトル君だ!! やっほー!!」

 相変わらず陽気なメイさん。5年経ってもそれは変わっていない。

「やっぱ春は気持ちいいね、そう思わない?」

「冬眠する亀に対してそれは愚問だろ」

「あ、そっかぁ」

 メイさんみたいな陽気な日差しがポカポカとさす屋根の上は、猫だけではなく最近ではメイさんのたまり場になっていた。もちろん幽霊の体感温度なんてあるようでないようなものなのだが。気分の問題だ。

 気分と言えば、そうそう。たいていは人間の姿で活動しているんだけど、日光浴する時は癖で亀の姿に戻ってしまうんだ。どっちの姿でしても実質意味はないのにな。それでも日光浴は最高だぜ、死後でもな。

 気持ち良さそうにあくびを一つしたメイさんはこちらを見る。

「そう言えば最近カノジョと一緒にいるところ見ないけどどうしたの? フラれちゃった?」


「……………は?」


 いつも突拍子のないことを言うメイさんには大分慣れてきたと思っていたが。これにはまた驚かされた。誰だよそれ?

「ほら、君と同じ亀の女の子だよ」

 そう言われてようやく心当たりがあった。いやそんな関係には心当たりはないんだけど。

「もしそれがメカのことだったら、誤解だからな。なんで俺がアイツなんかと」

「えー可愛いじゃん」

「じゃあメイさんが付き合えばいいだろ」

「それはムリムリ」

 笑って即答された。意外だ。なんでもしたいように生きているような気がしていたのに。厳密には生きてないのだが、ってこのくだりは何回目だ。

「もうフラれてるから」

 なんと。さすがメイさんだ。その一言に尽きる。と言うか、この二人ってそんなに仲が良かったかな。きっと大した関わりがなくてもメイさんが一方的に行ったんだろうね。

「しかもさ。君、なんてフラれたと思う?」

 想像してみた。しかし特に何も思い浮かばなかった。想像力が乏しいのかな。

「死後の恋愛とか意味がない、とか?」

 メカなら言うかもしれないなぁって思いながら答えた。そもそもアイツの思考など俺の分野外だ。


「『同種の亀以外は恋愛対象外なんで』」


 なんと。さすがメカだ。いや、さすがこの死後世界と言うべきか。もしかしてここではこれが常套句なのかもしれない。

「別に犬だっていいじゃないかぁー!!」

 メイさんは叫びながら屋根の上を転がった。

 そうだよな、犬なんだよなメイさん。滅多に犬の姿にならないからたまに忘れるけど。

 今だって人間の姿だ。犬だと言われて見たら、たしかにその薄い茶髪は犬みたいな色をしている。思い出してみたら鼻をひくひくさせる動きも犬そのものだったな。

 もしそんなに関わりがなかったのに犬だって気づいたのだったら、やっぱメカはただ者じゃねぇな。

「ただ単にメイさんが嫌だったんじゃねぇの?」

 からかってみる。実際にそうかもしれないと思いつつ。

「嫌われるようなことをした記憶はないぞぉ」

 じゃあ好かれるようなことはあんのかよ。というツッコミは心の中だけでしておこう。あまりからかい過ぎるのはよくないからな。

 何しろここは屋根の上。冗談半分でも突き落とされるのは幽霊でも嫌だ。怪我をする訳ではなくても恐怖心は健全なんだ。

 ああ嫌なこと思い出した。

「覚えてるか、メイさんが俺を投げ飛ばした時のこと」

 俺は覚えてる。あの高さであんな勢いよく投げられたのは人生ならぬ亀生で初めてだったよ。ってその時は生きてないから亀生じゃないのか?

「ん? そんなことあったっけ………ああ!! アレねアレ!!」

 あ? 今忘れてた? 人を投げ飛ばしといて………。

 でも思い出したようで、爆笑している。俺には笑える話ではないのだが。


 メイさんと初めて出会ったあの日。つまり俺が死んだ日。

「よいしょっとー」

 呆然とした俺を余所にメイさんは帰ろうとした。それを見て俺は慌てた。聞きたいことは山ほどあったんだ。

「おいどこに行くんだよ!!」

 ただ質問したかっただけでそう呼びかけた。そうしたら、突然メイさんは俺を投げた。

 もちろん俺は落っこちる。恐怖で声すら出ない。ただ、本能的に『何か』をした。

 その結果、俺は人間の姿に化したのだ。


 訳分からないだろう。俺にも分からない。だから俺に説明を求められても困る。でもメイさんに聞いたところで困るぞ。

「だからさ、この優しい俺が君に変身方法に気づかしてあげたんだよ。それだけ分かったら十分だよぉ」

 幽霊の世界の常識。

 後悔か恨みがある者が幽霊になること。そして、ある種の姿に化けられること。

 メイさんは後者を教えるために俺を投げたのだ、意味が分からないことに。本能は知ってるはずだから危機を感じたら発動するかなって思ったんだぁ、だってよ。ただ単にさっさと帰りたかっただけだろうが。

「こんなやつ、俺でも断るよ」

「ん、何が?」

「何も」

 首を傾げているメイさんの横で俺は密かにメカの行為を誉めていた。




読んでくださりありがとうございます。


この話を執筆中、バレンタイ前だったのでこんな話になりました(笑)

行き当たりばったりの思いつきで話は進んで行きそうです…。

これからもよろしくお願いします!


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