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二話目


 なんかこの頃おかしいとは思ってた。違和感があるような、変なかんじ。だけど、少なくともそのまま死ぬとは思ってなかった。

 そんな5年前。



「掃除だよぉ」

 それまで通りに俺の水槽の掃除をしにきたツキゲ。日が傾くのが早くなった秋の夕暮れに空は綺麗な橙色に染まっていた。心地好さそうな風がツキゲの短い髪を揺らす。

「タトル?」

 冬眠気味だった俺が動かないのは普通だったはず。それでも違和感を感じたのだろうか。不安げな声が俺の名前を呼んだ。

 そっと水道まで運び水槽の中にいる俺にツキゲの手が伸びる。静かに俺を水槽の外にだした。

「タトル、ねえタトルってば」

 いつもみたいに反応しない俺の甲羅をつつく。

「起きてよ、タトル起きて。ねえお願いだから起きて動いて!!」

 泣きそうな顔。震える声が必死に俺の名前を呼ぶ。

「タートールッ!! タトルってばぁ!!」

 俺の名前をひたすら連呼する。そしてとうとう、ツキゲは俺の足をつついた。くつろいだ格好の、だらしなく伸びていた左足を。

「え!?」

 何故かここでツキゲは一瞬固まった。そして走って家に入る。

「パパッ!! タトルが、タトルが、動かないよぉ!!!」

 ここでもまだ死に関する言葉を発しなかった。それは俺の死を信じられない、いや信じたくないからなんだろう。そんなことをドコか冷静に考えていた。


 俺はこの一連の流れを見ていたのだ。


 パパが出てきてツキゲに俺の死を告げたのも。

 ツキゲが「なんで? なんで? なんで?」と繰り返すのも。

 動かない自分を見下ろす二人も。

 俺は見ていた。

 自分でも何が起きたのか分からず、その時にはすでに幽霊となってツキゲの傍に立っていた。

 我にかえってツキゲの傍に駆け寄っても、パパに「ツキゲが泣いてるよ!!」と訴えても、二人とも気づいてくれなかった。それは『もう俺は死んだんだ』と『誰も気づいてくれないんだ』ということを痛感させてきた。

 二人が死んだ俺を綺麗な水槽に戻して部屋に戻っていったが、俺はその場から動くことが出来なかった。



 立ちすくんで、一体どれくらい経ったんだろう。

「どうよ? 死んだ感想は?」

 いきなり話しかけられた。

「ふぇ?」

 驚いて振り返ると、そいつは笑っていた。さっきの間抜けな返事にかと思い、むっとしたが話し相手がいる安堵感が勝った。

 その時、話しかけられた内容よりその行為自体に驚かされていた。何しろ誰にも見つけてもらえないと思っていたんだから。それがそのまま口に出た。

「お前、俺が見えるのか?」

「ふふふっ、あんたって面白いね!!」

「あ? なんだよお前は」

「ごめんごめん、ちょっとあははは!!」

 そいつは笑い上戸なのかひとしきり笑われた。その間俺はそいつを観察した。

 白に近い薄い茶色っぽい髪。長身で細身。そいつは人間の青年の姿をしていた。

「なんで、言葉が通じるんだよ………」

 今さらのような疑問だった。

「今さら聞くのそれ?」

 そいつも同じことを突っ込んできた。

「まあいいや。君も晴れて幽霊になれたね、おめでとう!!」

「はぁ、それってめでたいことなんか?」

 死んだわけだし。

「まあ細かいことは気にしない!! それより、」

 生死の問題をそれよりと片付けてしまわれた。

「最初にもしたんだけど、死んだ感想はどう?」

「どうって………」

 質問の内容に戸惑った。早くもそいつのペースに振り回されていることにも気づいていたから、自分のペースを取り戻すためにもゆっくり考えた。

 感想って言われても、正直何もなかった。

「ああ死んだんだな。それくらいかな………」

 先程のことを振り返っても、ツキゲの泣き顔に胸が痛むだけだった。自分が死んだことには驚くほど冷淡だ。案外そんなものなのかもしれない、と考えた。

「えー、なんかつまんないなぁ。もっと面白いこと期待してたのに」

「期待に応えられなくて悪かったな」

 さっき面白いと言われたばかりの気がするけど。

「ふーん。じゃあ次会う時は期待してるよ、新人さん」

「勝手に期待すんなよ」

「じゃあね!!」

 結局、最後まで向こうに振り回された。一瞬でそいつは視界から消えていった。

「なんだったんだよ………」

 新人さん。そう言われたってことはあいつは幽霊というのを長くしているんだろうか。次、と言うってことはまた会えるんだろうか。

 まあいいか。

 あいつの気楽さで気持ちが落ち着いた。何だか死んだばかりとは思えない。

 振り返るとカーテンの隙間から部屋の光が漏れている。もうそんなに暗くなっていたのか、と気づいた。空には都会でも見える明るい星が輝いていた。

「行ってみるか」

 部屋の中にはツキゲがいる。直感がそこに行けと言う。

 俺は歩きだした。

 その手前にいた死んだ自分の姿は、見なかったことにして。






読んでいただきありがとうございます!


ここまではあっという間に書けたのに…

ここから続きをどうしよう(汗)

一応おおまかな流れは考えてるから、あとはタトルに動いてもらうしかない。

けど、こいつ亀だからな(笑)

人間の常識をどこまで通用させていいのか、作者悩んでます。


またお越しください♪

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