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subsistence  作者: 街尾 起
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第五章

事の発端は三日前にさかのぼる。俺の世界でクラスの担任だった、神谷先生(この世界では第4分隊の分隊長らしい)が俺達に放ったこの一言から始まった。

「ちょうど新規さんもいることだし、あなたたちまとめて実地試験に出てもらうわ。」

その時俺は、昔ゲームでやった罠を解除しながらエリアを進んで旗を取ってくるとかいった状況を想像していた。こういうのはお手の物だ、なんて考えていたら、神谷先生のお達しは、

「富士山麓に”アヌビス”の前哨基地があることが判明したの。途中で樹海があると思うけど、無事に突破して基地を爆破してきてね。作戦期間は十日間よ。勿論、死者ゼロで遂行してね。」

というものだった。思わず心で呟いたね。そんな無茶な。

富士の樹海と言えば、自殺スポットとしてあまりにも有名だ。この世界じゃどうなのかは知らないが。自殺スポットとして選ばれるのは、入ったら最後、出られる確証がないからだ。自殺するつもりはなくとも、迷い込んでしまい餓死してしまうという人も何人もいただろう。

そこに入れというのだ。勿論、この世界にはグローバル・ポジショニング・システムなんてものは存在しない。せめて磁石くらい渡してもらえるだろうと思いきや、方角は太陽と北辰で確認せよとのことだ。樹海からどうやって空を確認しろと。

「森の一つや二つ焼いたって誰も咎めやしないわよ。」

はぁ、そうですか。焼く道具も渡してもらってないんですが。

「あのね。戦場じゃ現地調達が基本なのよ?石ころでも虫一匹でもあるものは何でも使いなさい。」

なるほど。運任せの任務ということなのかな。

「ねぇ、ちゃんと帰ってくるのよ?帰ったら、ご褒美にイイコトしてあ・げ・る」

うん、やはりこの世界の先生もキャラクターが違う。

「あぁ〜ん、無視しないでよ〜」

知りませんよ。こうして烏丸率いる第33分隊は樹海へと向かった。ちなみに33だと知ったのは出発前のブリーフィングの時だ。せめて配属する時に教えてくれよ、春日先生。



一日目は迷うことなく進軍した。九時間ほど歩いただけで、早くも基地を発見してしまったのだ。しかも都合よく中は空同然であった。”アヌビス”がこちらに気付き応戦するも、量的には圧倒的にこちらが勝っていた。すぐさま制圧すると、C4爆弾で跡形もなくそこにいた”アヌビス”ごと基地を吹き飛ばした。任務完了。わずかに爆破地点から白煙が立ち上っているのが気になるが。

これで済めば良かったのだ。だが俺は、こんなあっさり終わっていいものかと愚考してしまった。

その刹那、第33分隊は謎の空爆を受けたのだ。もともと五人で構成されていた部隊ではあったが、またしても烏丸と俺だけが生き残ってしまった。

「はぁ〜、また不合格か・・・もう戦場に立てなくならないかな・・・」

「そんなこと言ってる場合か?とにかく、基地へ帰らないことには・・・」

「・・・無理よ。」

無理だって?それはなにゆえ?

「だって、方角わからないもの。」

方角がわからないだって?そんなことあるわけが、と空を見上げたら、なるほど、雲がかかってて太陽がどこなのかわからなかった。

「とにかく、今日は野営するか。まだ九日余裕あるんだし。」

「・・・えぇ、そうするしか今はないわね。」



というのが二日前。それから、俺達はひたすら迷っていた。いつまで経っても雲が晴れないのだ。

「流石に、二日も雲が晴れないなんて、おかしく、ないですか」

「・・・そうかもね・・・」

二人とも息も絶え絶えな状態だ。持参していた水筒は一日目の時点で空になっていた。川は流れているものの、毒を流されている危険があるので、動物が飲んでいる池などを見つけてはおこぼれに預かっている状況だ。とはいえそう簡単に池など見つかるわけもなく、こうして水を求めながら基地があるだろう方角へ迷走中である。

「もしかしたら・・・あのときの爆弾に雲を発生させる何かがあったのかも」

あのときの爆弾とは俺が仕掛けたC4だろうか、それとも空爆時の爆弾だろうか。

「両方かも・・・」

まさか。わざわざ味方を帰還不能にさせるはずがない。少しでも戦力が欲しいときにそんなことをするであろうか。

いや、待てよ。良く思い出すんだ。確かに爆破できたかどうか確認したとき、爆破地点から白煙が立ち込めるのを見た。もし、それが空爆の衝撃を火種に拡散したとしたら。その可能性は大いにあるのではなかろうか。

「とすれば、この雲も試験のうちかしら?」

そうだと思うぞ、多分な。と考えているうちに日が暮れてきた。今日もこのあたりで野営だな。ろくな食事もしてないから寝る気分もしないが。熊の一頭でも出てきてくれたらありがたいのだが・・・・全く気配がしない。まあ寝てるうちに”アヌビス”に襲われるなんてことも有り得るから、今日は寝ずに番でもするか。



その晩。寝ずの番をしたことは正解だった。


何かの気配がする。この世界に来てからというもの、落ち着いていられる状況など無かったため、研ぎ澄まされた神経が先ほどからビンビン非常警報を発していた。

「烏丸、起きろ」

声を潜めながら肩を揺さぶってみるが起きる気配がない。熟睡しているようだ。こんなご時世に良く寝ていられるな。疲れているからかもしれないが。

「ちょっと起きろってば」

もういちど肩を揺さぶってみた。全く起きようとしない。それどころか寝言で何かを呟いている。ダメだこりゃ。どうすれば起きるか―ってえぇ?

烏丸がいきなり俺を抱き寄せた。目は閉じられているから多分夢でも見てるんだろ、って冷静に分析している場合か、おい。

寝ているからって気付かないのかよ・・・俺の顔は今烏丸の胸に押し付けられる―俺が全力で抵抗しているから―ギリギリである。降伏してしまえばその途端俺の思考は楽園へまっしぐらだ。だが気付いた烏丸によって因果地平の彼方へ飛ばされるのがオチであろう。それだけは避けねばならない。

っておい。今度は烏丸の胸ではなく顔が真正面にある。しかもお互いの鼻息がかかるほどの至近距離だ。

マズイ。非常にマズイぜマイク。俺の理性は後一歩で崩壊寸前だ。

「・・・・・・・・」

相変わらず本人は何か寝言を言っている。よく聞こえんが・・・

「・・・・いち・・・」

えっ、俺の名前呼んだか?―と気を緩めたその時だった。

「!!!!!!!!!」

俺の唇に柔らかいものが当たっていた。全力で身体を引き剥がす。これ以上は理性がもたん。

嗚呼、こんな形でファーストキスをしてしまうとは・・・いや、これはノーカウントだジョニー。事故だよ、事故。俺のファーストキスはもっと情熱的なんだ。そう決めたんだ。だから、今のは無し。


にはできねえか。・・・くそ、帰ったら飯奢らせてやる。


なんてことがあったその時。俺の第六感がすぐ近くに別な人物の影を捕らえた。やはり神はラブコメで終わらせてくれないのか。

銃の撃鉄を起こす。本当はグロッグタイプの拳銃なのだが、改造して見た目だけデザートイーグルだ。うん、やはり見た目がいいと構え甲斐があるというものだ。

こういうときにETFがあればいいのだが。まああれば迷うこともないが。

近づいてくる足音。木陰に身を潜め、相手の行動をじっくりとうかがった。足音が止まる。相手が向こうを向いた隙を捉え―

「動くな」

後ろに銃を突きつけた。なるほど、こいつが”アヌビス”であったとしても、人間と容姿はほぼ変わらない。しかしこいつが発した言葉は意外なものだった。

「ま、待て、俺だ」

そいつが振り向くと、なんてことだろうね、先の空爆で死んだと思っていた仲間の一人、レオンであった。


「いや、あの後しばらく気絶しちまってたみたいでな」

「そのようだな」

「気がついたら茂みにいたんだ。俺をベアーが舐めていたよ」

「なに?熊がいたのか?」

「本物なのかはわからねえけどよ、犬よか大きかったぜ、あれはベアーって奴だな。間違いねえよ」

この世界じゃ自然動物は少ない。俺は小さい頃に動物園にも行ったし本物の熊は何度か見たことがある。だがこの世界での俺の同年代は動物園など行ったことがあるはずもなく、よって知ってる動物と言えば軍用犬ぐらいなものなのである。

「それにしても、派手にやってくれたもんだな、あのクソアマめ」

「ん?どういうことだ?」

「あれだよ、あの爆弾は間違いなくヒロリンお手製のクラスターボムだ」

レオンは神谷先生の事をヒロリンと呼ぶ。まあ下の名前が浩子だからなのだが。ということは。

「やっぱりあの空爆も試験の一環なのか?」

「間違いねえだろうな。C4で”アヌビス”の基地爆破したときに出た白煙にゃお前も気付いてただろう?」

やはりそうか。俺の疑惑は杞憂ではなかったのだな。

「ところで、その熊は・・・」

「ああ、俺が食おうと思って銃を構えたら逃げちまってよ。追いかけたんだが、そこで変なモン見ちまってよ。慌てて逃げてきちまった。」

き、貴重な食料を・・・こっちは餓死寸前なんだぞ。ところで、何を見たって?

「あ、ああ。それがな・・・こんな所にあるはずのないETFを、な」

「それは誰か乗っていたのか?」

「んなもん、わかるか。まあでも無人ぽかったかな」

ふむ。無人のETFがおいてあったのか。まあこれも試験の一環なのではあるだろう。おそらく神谷先生の仕掛けた罠だろうな。だが、今はこれに乗るしかない。餓死寸前の状況で、贅沢は言っていられないのだ。

「案内してくれるか、そこまで」

「ん?・・・あ、あぁ。いいぜ」

そうして烏丸を背負ってETFがあったという所に向かった。



「これは・・・」

見たことの無いタイプである。だが、人型であるということ、自衛軍であるというエンブレムがあしらってあるのを見ると、ETFなのだろう。

「操縦できるかもな・・・」

そういってレオンが搭乗しようとする。

「待てよ、大丈夫なのか?」

「へへ、何いってやが・・・・っ・・・・・・、うぅ・・・」

ほら見ろ。傷が開くぞ。俺が変わりに乗ってみるさ。

「し、新人に任せるのは癪だが、頼むぜ」

「なんとでも言え」

コックピットに這い上がる。中を覗くと・・・・・・無人だった。だが爆薬が仕掛けてある様子もない。えーと、これは一人乗りか。


シートに腰掛け、ETFを動かす。えーと、基本システムは以前乗ったそれと変わらないようだな。

<は〜い、誰か乗ったのね?>

「うおっ!?」

突然の声に素っ頓狂な声を上げてしまった。誰も聞いてなくてよかった・・・声の主は録音声のようだ。

<これを見つけたってことはおそらく爆撃を受けたあとなのね。>

「やはりあれは仕組んだことか!」

思わず怒声を出していたが、勿論返事はない。

<ごめんね、もっと手柔らかにしたいんだけど、いかなる状況においても生き抜けるソルジャーをつくるんだって上が煩くてね>

「ああ、そうですか・・・」

<ま、やっちゃったことは仕方ないし。それはさておき、これに乗ったあなたに新たな任務です。これには試作型支援人工知能が搭載してあります。登録名は”エクスカリバー”よ。それに命令を入力してその樹海を燃やしちゃって♪>

・・・・・・誰も聞いちゃいないが言わせてくれ。


アホか。


燃やすのは構わない。なんだか腸が煮えくり返りそうだからな。だが、燃やせばさんざん迷った俺の苦労が徒労に帰すではないか。

・・・なんてことは言わない。思うだけである。脱力感より先に怒りが俺を行動に移した。

「バーナー、放射開始」

足元の二人に火が及ばないように注意を払いつつ近くの木々から火をつけていく。火は瞬く間に広がっていき、数秒後には巨大な焚き火ができあがっていた。

「第4駐屯地が見えた。帰るぞ」

もう何がなんだか。久しぶりに飯が食えるというのにもうがっつく気力もないみたいだ。

<えっ、帰るって?>

レオンが尋ねてくる。周囲は焼いていないから状況がつかめていないようだな。

<どういうこったよ?>

「だったら上ってみろ?」

レオンを促し、手の上に載せる。

<あ〜、あらまぁ・・・>

「そういうことだ、帰るぞ・・・早くまともな食事がしたいんでな・・・」



「ご苦労様♪これにて試験終了〜」

戻るやいなや気の抜ける声が出迎えた。

「あ、あんたなぁ〜〜〜!」

「あ、暴力反対」

俺をなだめようとするレオン。どうやら無意識に右手を振りかざしていたようだ。

「え〜い!一発殴らせてくれ!」

その時、首に何かの違和感を感じた・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!

気がつくと天井を眺めていた。

「まったく、少し落ち着きなさいよ」

「・・・・春日主任。」

「どう?気分は?」

・・・・・・・・・・・・・最低です。はい。

「いきなり暴れだすから仕方なくモルヒネ打ったの。まだ眠いんじゃない?」

ええ、そうですとも。

「まあごめんね。また危険な目にあったって思うでしょうけど、この世界じゃ当たり前のことなのよ。いかなる状況にも適宜対応できないと生きていけないのよ。」

そういうと彼女は回想するかのように虚空を見つめた。

「・・・・そう、この世界じゃね・・・・」

「主任?」

「・・・・え?・・・ど、どうしたの?」

「ぼーっとしていましたよ。」

「そ、そう。寝てなくてね。あなたたちが帰還するまで監督してなきゃならなかったから。」

なるほど、目元には見事な”クマ”が浮かんでいた。顔色も心なしか蒼白に見える。俺達が遭難していたのは五日ほどだったと思うが、ずっと寝ていなかったのか。

「ん、そうそう。・・・ちょっとコーヒーでも淹れようかしら」

と言うと、おぼつかない足取りでテントを出ようとする。そういや聞きたいことがあるんだった。

「ん?どうかした?」

「いえ、そんな大したことじゃないんですが・・・」

一度は遠慮したが、主任が催促するままに俺は疑問をぶつけてみることにした。

「この世界で戦争が始まったのはおよそ四十年前なんですよね?」

「ん、そうだけど・・・それが何か?」

「いえ、四十年前に攻撃されて主要都市を失ったのなら、その時点で科学技術の進歩は停滞したんじゃないかなって思って・・・・」

主任は押し黙った。そしてインスタントラーメンができるくらいの時間が経過してから、

「・・・・・・・・・・・そうかもね。」

とうつむきがちに答えた。

「・・・・・・でもこの世界にはETFなんて最新技術が存在する。この際だから言っちゃいますけど、僕の世界じゃ人型のメカなんてせいぜい六十センチメートルが精一杯なんですよ。こんな、十メートルを超える技術はないんです。」

そうなのだ。一年後にどれだけ技術が進歩しているかは知らないが、現時点では一メートルに満たないのが関の山だ。それなのにこの世界での春日主任は二十メートルはあろうしかも人型の機械を何十体と製造しているのだ。まあ一万歩くらい譲って鉄は製鉄所で作ってるのだとしよう。だが、この世界ではETFはオーバーテクノロジーじゃないのか?

俺は感じていたことをそのままぶつけてみた。

「―と思うのですが・・・・・・主任?」

「ええ、そうでしょうね。そうよ。この世界じゃ完全にオーバーテクノロジーよ。」

「・・・どういうことなのでしょうか?」

主任は重々しく口を開いた。

「・・・・・・あれは五年程前だったかしら。私は対人殲滅兵器の研究員として、ETFをテストしていたの。その頃の私は極度の差別主義者だったわ。黒い色した人なんかこの世の物じゃないなんて思ってたわ。こんな全ての人々が一致団結した世界なんて想像もしなかった。だから人殺しの機械を作ることになんのためらいも感じていなかったのね。それである日、いつものように演習場で動作確認テストをしていたら、いきなり凄まじい音がして大地が揺れてね。気がついたら見たことの無い場所にいたわ。見たことの無い奇怪な生物もいたわね。襲い掛かってきたから応戦はした。でも全く効果がなかったわ。とりあえず自爆させて事なきを得はしたけど、そこが何処なのか皆目見当がつかなかった。その時に拾われたのよ。ここの人たちにね。」

いきなり何を言っているのかすぐにはわからなかったが―

「そ。私も異世界人なのよ。まあもうこの世界について知らないことはほとんどないけどね。・・・だから私の造ったETFはこの世には存在するはずのないもの、ブラックテクノロジーなのよ。まあそんなものにもすがらないと勝てない戦争してるからね。この世界にきた当初は材料の問題で開発できなかったのだけど、最近急に資材が手に入ってね。それで製造が可能になったの。・・・・・・多分、あなたがこの世界に来たときに紛れ込んだのね―」

連射銃のように喋りきると、神妙な面持ちでこの場を去っていった。以前、この世界で初めて主任とあったとき―その頃はまだこの世界のなんたるかが全然わかっていなかったな―かなり面喰らった顔をしていた。もしかしたら自分と同じ境遇かもなんて考えていたのかもしれんな。五年ぶりに自分の世界の人に遇えたのかも、と。



それから一週間。元の世界での街の喧騒や人の笑顔を忘れかけた頃、それは唐突にやってきた。

<・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・>

けたたましく鳴く蝉。鳥の囀り。

うるさい。うるさすぎる。目前は以前として闇に包まれたままだが、今日はやけに騒がしい。”アヌビス”に見つかるぞ・・・

意識が明確になってきたとき、初めて音が室内からしていることに気付いた。

「え・・・・・・」

見慣れぬ天井・・・・・・いや、以前どこかで見たことがある。そう、ここは・・・

「俺の、部屋、か?」

机上のデスクトップPC。本棚に陳列したアメコミと少年誌の数々。そしてケージにうずくまるボタンインコ。それらはこの空間が俺の部屋であることを示している。

なんだ?・・・・・・・今までのは全部夢か?それとも今夢を見ているのか。

頬を抓るが、そこから伝わる感覚はこれが夢ではないことを示していた。

「いや、そうか・・・・・・」

足には巻かれたままの包帯、全身には日々の訓練で受けた傷。

「戻ってきたんだな・・・・・・いるべき場所へ」

時計に目をやる。学校へ行く時間をさしていた。俺は服を着替えようとクローゼットに手をやるが―そういやあの世界に行ったとき制服着てたよな―掴んだのは虚空だった。


居間に向かう。両親共働きだから、この時間には誰もいない。ソファーに座り、テレビをつけた。今が何時であるかを確認するためだ。

<九月二十八日、本日のトップニュースは―>

”向こう”で過ごした時間と同じだけ日にちが経過している。

<―本日未明、天王星付近を通過していたボイジャー2号からの通信が途絶えるという事故が発生しました―>

途端、全身から力が抜けていくような感覚が襲った。そのニュース映像には―


<―これが通信断絶の十秒前にボイジャーが撮影した映像です―>

俺が仕留めたあの物体が映っていた・・・

subsistenceとは「生存」という意味です。

最終話ではありますが、別のタイトルで話は繋げていきます。

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