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subsistence  作者: 街尾 起
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第一章

「そこにいるのはわかってるんだ。出て来い」

俺は銃を構えた。暗がりに隠れて敵が2、3人いるのが”視える”。

「3秒以内に姿を見せないとこのデザートイーグルが火を噴くぜ」

俺は視える敵に近づきながら・・・

「動くな」

逆に後ろをとられてしまった。

「なにっ・・・」

「ふっ・・・甘いな青年。戦場で勘なぞあてにしていては、いつかこのような目に遭うのだよ。」

音がパタリと止んだところをみるとどうやら囮だったようだな。くそっ、どうすればいい。四方を壁に囲まれている。後ろをとられてはいるが左右に回避することは可能だ。そしてそのまま前方の両扉から脱出さえできれば・・・

「ではしばらく眠っていてもらおうか青年。君に生きていられては困るのでな。今のうちに辞世の句でも考えておきたまえ」

そしてゆっくりと引鉄が引かれる。

「ん・・・?誰だ。」

敵が外にいた人物に気をとられた。・・・今だ!

俺は一瞬の間に横に逃げる動作と扉から外に出る動作を実行した。

「なにっ・・・!?」

へっ、ざまあみろ。ひとまず近くの自陣地まで逃げるとするか。

そういやなんでこんなことしてるんだろうな俺達は。確かHRホームルームの最中だったんじゃないか。奴らがここに来たのは・・・


―まだ暑さの余韻が残る秋。真夏に比べ日照時間が少なくなったのか以前より夕方になるのが早い。そして今は学園祭に向けたHRの真っ最中・・・

「ほら、そこ台詞忘れてるわよ!!」

と叫んだのは我らが学級委員長。俺のクラスは満場一致で映画を撮ることになったのだ。それも戦争映画を。勿論、学生の撮る奴だから派手な爆発シーンがあったりはしないし、使用するものも百均で買ったモデルガンといったものだ。爆竹などを使うという案もあったが、火気厳禁なのでその辺も全てCG処理だ。幸いクラスにはコンピュータ研究部とアニメ研究会の精鋭がいる。

「もう仕方ないわね。テイク2いくわよ。」

委員長がカメラを構えなおす。俺の台詞からのやり直しだ。


「そこにいるのはわかっているんだ。出て来い」

俺は銃を構えた。2、3歩歩くと後ろから銃を突きつけられる・・・はずなのだが。歩けど歩けど後ろから人のやってくる気配がない。

「カットカット!・・・もう郡山君!何やってんの!」

郡山というのは俺の後ろから銃を突きつける役の男だ。クラスでも目立つほうで自ら悪役を買ってでてくれた有り難い奴だ。教室の陰で待機しているはずなのだが。

「いないな。俺トイレ見てくるよ。」

「早く呼んできてよね。もう、公開まで迫ってるのよ。」

学園祭まで残り10日だ。なのに脚本の三分の一も進んでなかったりする。その理由は単純。クラスのまとまりがないからだ。学園内の問題クラスでもある俺のクラスは、ことあるごとに問題を起こしては注意を受ける。もはや近隣地域で俺たちの顔を知らないものはいない。郡山を含め俺なんかも聞き分けはいいほうなんだがな。

「ほら、ぶつぶつ言ってないで早く。その間に他のシーンの撮影しておくわね」

わかったようるせえな。2階の男子トイレまで直線距離にして10メートル。2秒もあれば走っていける。だがいなかった。多分職員トイレ使っているのだろう。保健委員が適当だから紙の補充をよく忘れるんだよな。1階に降りるか。


階段の手すりに手をかけたとき、激しい音とともに学校が揺れた。おい、あいつらどんな爆竹使ってるんだよ。下手な火薬作ったんじゃねえだろうな。生徒指導部が黙ってないぞ。


職員トイレにもいなかった。仕方ない。戻るか。


・・・はぁ。俺は今夢でも見ているのだろうか。階段を上って教室まで戻ってきたのだが。

教室がない。代わりにこの目に飛び込んできたのは立ち上る煙と真っ黒に焦げた空間と青空だった。誰か俺の頬を抓ってくれ。っていっても誰もいないんだよな。自分でやるとするか。

「痛ッ・・・」

ということは、これは夢ではないかやけにリアルな夢を俺は見ているということになるな。是非とも後者であってほしい。

「ん、誰だっ!?」

今俺が立っているのはさっき俺がいた教室の隣の教室だ。中に誰かいる気配がする。音はしないが・・・―


それで中に入ると後ろから誰かにモデルガンだろうをつきつけられたんだよな。まったく、なんだって俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ・・・

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