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テスト版  作者: 虎司
2/2

疾走


『俺が捨てたんだ』と、

男はみずからに言い聞かせている。


男は新東名高速道路を走っていた。

CBR1100XXが走っていた。



そこは、あまり好きではなく、

新しくない東名の方を選んで走っていて、

男がここを走る事は滅多になかった。

男が音楽を聴きながら走る事は、

今は無い、滅多にまず無くなっていた。


男は引っ張り出して物理メディアを見ていた。

あいつが(誕生日に)()れたCD。

男は奥にしまいこんでいたメモリプレーヤーを掻き回す。

プラスチックでできたおもちゃの様なプレイヤーを引っ張り出す。

もう一つ探し出す。これも小さい。

この小さいプレイヤーの中身を入れ替える。

おそらくはその頃聞いていた音楽、

今、聞きたい、音楽に入れ替えた。

(うたうたいはかわらない)


男は男の背中を真似てベストを作った。

男が背中に背負った入れ墨を真似て。

(あお)いデニムのベストに刺し入れた。

男を真似て、ベストに背負い走っていた。



ハンドルに貼り付けたスマートフォンは

表示は消している。

男の耳にはイヤホンが、/

/ヘルメットの中のスピーカーは、

有線で小さなプレイヤーに伸びている。

音は出ていない。

男は(息を切らせる様に)パーキングへと逃げ込んで行く。


バラバラと大型車が停まっていた。

エンジンがあちこちで大きく唸っていた。

バイクを停めて歩いて行く。


男は駐車場から離れていく、

昼には人も居るのか、

奥へ奥へと歩いて行く。

今、ここに人は居ない。

ここに(ひかり)は少なく遠くばかりが明るい。


イヤホンジャックに改めて繋いでいる。

小さなプレイヤーに改めて電源を入れた。

ボリューム『△』を押し続けている。

イヤホンは、音を漏らしながら、

男を音に包んでいく

『中島みゆき』が叫んでいる

『人生の素人』を叫んでいる。

大き過ぎる音が遮断して

(空に向けた顔は、星を捕まえず、)

男がひとり、そこにいる。


それは終わる。


男は駐車場へ、

『はじめまして』と叫んでいた。

バイクに跨がった。

『▽』を押している。



バイクは動き出し、

バイクが俺を運んで行く。

「まだまだ走る、」

「こいつはまだまだ走れる。」

俺は体を低くして夜を切り裂く。

再び、

『はじめまして』が流れてきた。

俺は音を薄くして走っている。

俺は男を探している。

あいつを振り切りながら走っている。


『あいつを』


俺は問(())いている。

『まだいけるか?』

『もっといくか?』


小さなプレイヤーの中には、

残した歌が2曲、新たに4曲の歌。

4曲はCDラストツアー「結果オーライ」から


静かに流れている。


答えては、、ない。/

/『どこへいくんだ』

 『まだまだいってやるよ』

黒い革のタグを揺らしながら言っている。



バイクに乗る人はいますか?

夜、バイクを走らせる人はいますか?

何かを聴きながら走りますか?

バイクの鼓動だけで走りますか?


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