飼い慣らされた信者
ゲレブ・ブロディは、最近とても機嫌が良かった。
それというのも娘のリズベットが、有力なボルト子爵家の御曹司と親しくなったからだ。
ゲレブはブロディ男爵家の、次男として生まれた。長男の兄は、取り立てて優秀でも、有能でもない。それにもかかわらず、最初に生まれたというだけの理由で、男爵家を継いだ。ゲレブが、どれだけ両親に、有能であるかをアピールしても無駄だった。
悔しかった。だからゲレブは、娘が生まれた時は嬉しかった。娘のリズベットを貴族家に嫁がせれば、娘を通して、将来の当主の外祖父になれる。ゲレブはリズベットを徹底的に教育した。外見を研くのも、中身に力を入れるのも、父親としては当然の努力だ。
だがゲレブは一般的なことだけではなく、精神面も教育した。ちょっとした言葉で人を操り、仕草で印象を操作する。うわさ話を広く集め、そして利用する。他人をよく観察し、支配する力を育てたのだ。
もちろんこういった教育を、貴族は多かれ少なかれしている。だが中にはそういったことが、不得手な子どもというのはいるものだ。だからゲレブは、様々な場所で身分のある子どもたちをよく観察し、簡単に操れそうな子息を探した。
その一人が、ボルト子爵家のハリスだった。
ハリスは率直に言って愚かだった。勉学は人よりできるにもかかわらず、人の顔色や、その場の空気を読む力に欠けていた。そして自分によくしてくれる人の言うことを、頭から信じてしまうところがあった。
家が子爵家というのも都合が良い。それ以上高い身分だと、ブロディ男爵家に縁があるだけのリズベットには手が届かない。リズベットはハリスにさりげなく近づき、毎日ほめて、お愛想を言った。それだけで彼の信頼を得るのは簡単だった。
たった一つの障害は、ハリスに婚約者がいることだったが、そんなものはどうでもいい。婚約を破棄させれば良いだけだ。おもしろいようにリズベットの言うことを、信じるようになったハリスに、婚約者のフェイラン男爵令嬢アマーリアが、浮気していると囁くだけでことは進んだ。
迂闊なハリスは、リズベットが用意した、人が集まる昼休みのカフェテリアという舞台で、アマーリアの浮気を糾弾し、婚約破棄を宣言した。
「浮気だなんて、そんなことはしていません。信じて下さい」
突然の言いがかりに、アマーリアは顔を真っ青にして訴えた。
「嘘をつくな。この可憐なリズベットに教えてもらった。浮気をしていると」
「……そんな言いがかりをする以上、なにか証拠があるのですか」
最近のハリスの態度から、アマーリアは覚悟をしていたのだろう。意外に冷静だ。少し離れたところから、友人のニトン伯爵家のグイニーが、近づいていく。ハリスはリズベットの肩を抱き寄せ、自信に満ちていた。
「証拠などいるか。リズベットが言ったのだから、本当に決まっている」
「そんなわけないでしょう」
あまりにもひどい言い様に、アマーリアは身を震わせた。
「ええい。うるさい。お前が、シルヴェストと浮気をしているのはわかっているんだ」
「シルヴェスト・ウェズワックス様は仕事相手です。この度、事業提携をするためお会いしているのです」
目に涙を浮かべて、アマーリアは周囲が憐れみを覚えるような声を上げた。
「うるさい。うるさい。とにかく婚約破棄だ。男爵家の癖に逆らうな。これは決定だ。違約金はお前の家が払うんだぞ」
そういうとハリスとリズベットは立ち去った。
取り残されたアマーリアはひどいショックを受け、下を向いて目に涙をにじませている。友人のグイニーが優しく肩を抱き寄せた所に、シルヴェストと、友人のジュリウス、グイニーの夫ケントンがぞろぞろと向かった。人々の注目を集めたシルヴェストは、周囲に誤解を与えないよう、よく通る声で言った。
「フェイラン男爵令嬢、私のせいで誤解されてしまったようで、大変申し訳ありません。昨日、時間がなかったため、ここで打ち合わせをしたのが、まずかったのかもしれません。その場には、グイニー夫人とケントンにもいてもらったのだが……」
「いいえ。ウェズワックス様のせいではありません。まったく話を聞いていただけませんでしたし、ハリス様にとっては、私に落ち度があった方が都合が良いのでしょう。とにかく婚約は解消ですわね。お父様になんとお伝えすればいいか」
大声で恫喝し、人前で女性に恥をかかせるやり口に、アマーリアの友人達が集まり、彼女を慰める光景。まるで芝居のような進行に、このできごとは多くの人々の印象に残った。その場にいた人々は同情的な視線を送り、そして不謹慎だが今後の展開に期待した。
騒動を巡り、ハリスのボルト子爵家と、アマーリアのフェイラン男爵家とで話し合いがもたれた。
ボルト子爵家は謝罪し、なんとしても婚約を継続できないかと懇願した。とくにハリスの母親で子爵夫人のデブラは必死だった。ハリスは少し頼りない所があり、しっかりもののアマーリアと婚約できて、安心していた所だったのだ。
デブラは癒やしの聖母として有名な女性だ。学生時代からまわりに慕われ、今でも人望厚く、彼女を頼る人は後を絶えない。当時、婚約者がいた子爵が、その婚約を解消してまで手に入れた、人から愛され、人を惹きつける女性だった。
そんな彼女の唯一の悩みが、息子の浅慮なハリスだった。
彼女が微笑むだけでまわりの人々は彼女を持ち上げ、なんでもした。高位貴族の中にですら彼女を後押しするものは多い。だからデブラが真剣に頼めば、アマーリアや、フェイラン男爵も動いてくれるはずだった。
「ボルト子爵。子爵夫人。ただそう言っただけならともかく、学院のカフェテリアのような場所で広言されては、私どももどうしようもありません」
デブラ夫人は身を乗り出した。
「今回のことはすべて子爵家で対応します。カフェテリアにいた生徒たちには、一人一人事情を説明します。アマーリア様にはなんの落ち度も無かったと。もちろん賠償金もお支払いします。息子にもよく言って聞かせます」
「そういう問題ではありません」
「なんでも仰って下さい。なんでもします。ですから婚約解消だけは」
「ではこう言いましょう。もう二度と、絶対に、息子さんにこのような騒動は、起こさせないで下さい。それを……そうですね。子爵家の寄親シーオ伯爵家の前で誓えますか」
「……」
痛ましい沈黙が落ちた。どれだけ言い聞かせても、ハリスはまた絶対に、なにか騒動を起こす。両親だからこそよくわかっている。フェイラン男爵家相手なら、どうにでも言い抜けができるが、公に誓うのは無理だった。
癒やしの聖母は、その場で泣き崩れた。
子爵だけでなく、側にいた侍女達も慰めるために取り囲み、フェイラン男爵家の使用人達も気の毒そうな顔で夫人を見た。
時が過ぎる内に、子爵や侍女達は、非難がましい目でアマーリアを見始めた。そしてそれはフェイラン男爵家の使用人達にまで広がる。癒やしの聖母がこんなにまで心を痛めているのだ。少しくらい折れてくれてもいいではないか。アマーリアがちょっと我慢すれば丸く収まるのに。フェイラン男爵家には血も涙もないのかと。
聖母の姿は誰が見ても気の毒で同情を誘う。だが男爵もアマーリアも、人の心がないかのように動かなかった。
「アマーリア。部屋に戻りなさい」
男爵にそう指示されたアマーリアは席を外そうとした。聖母デブラの侍女が、アマーリアの前に立ち塞がった。
「お願いです。なんでもいたしますから、奥様の願いを……婚約を継続して下さい」
「アマーリア。お前は行きなさい」
フェイラン男爵は、無理にアマーリアを部屋から出した。そして子爵や侍女たちに言った。
「先ほど言ったではありませんか。シーオ伯爵家の前で誓ってくれるならいいと」
先ほどまで非難がましい目で見ていた人々は視線をそらした。自分たちが損をする気はないのだ。
◇◇◇◇◇◇
リズベット・ブロディと父親のゲレブは、作戦が大成功を収め祝杯を挙げていた。間抜けなアマーリアから、子爵令息のハリスを奪い取ったのだ。おまけにリズベットの言うことなら、なんでも信じてしまうハリスは、すぐに結婚した方が、今回の騒動を受けた人々の注目が、祝福に変わるだろうと囁いたらその通りにしてくれた。
結婚式の招待状をばらまいたリズベットは、特等席にアマーリアを招待してあげた。もちろん何重にも罠をはって、来ざるを得ないようにする。学院で見るアマーリアの、おもしろいことと言ったら。廊下ですれ違う度に、リズベットとハリスの仲を見せつけてやった。アマーリアは悔しそうに唇を噛み、嫉妬の表情を浮かべたり、時には悲しみに涙したり。リズベットの胸は大いにすいた。
結婚式当日、リズベットと父親のゲレブが、祭壇まで歩いて行くと、前の方の席に、アマーリアとその友人達が座っていた。特等席を用意してあげたのだ。浮気騒動の時に名前が出た、シルヴェスト・ウェズワックスも一緒にいる。アマーリアはつらそうな顔をしながらも、なぜかとても美しかった。
リズベットは内心、苛立ちを感じたが、それを無視して式を続け、最後に婚姻届に署名をした。その途端、式場にいた人々から拍手や歓声があがった。リズベットが得意げに見ると、アマーリアは感極まってシルヴェストと抱き合っていた。横にいる友人達が、二人を祝福している。まるでそこだけを見ると、二人の結婚式のようで、リズベットは忌々しげににらみ付けた。
自分の結婚式にもかかわらず、最初から最後までただずっとアマーリアを見ていたのだ。
披露宴会場で、アマーリアがシルヴェストと、友人のグイニーは夫のケントンと、ジュリウスは妹のシェリーとダンスを踊っていた。体力はジュリウスのほうが、だんぜんあるはずにもかかわらず、ことダンスとなると、シェリーは永遠に踊り続けられるからだ。
ジュリウスは正直、へとへとだった。しかし今日は、女性のパートナーがいないジュリウスのために来てくれたため、黙って付き合っていた。シェリーはご機嫌で、ずっとくるくると回っている。昔からダンスが好きで、一人でくるくると踊っている子どもだった。
腕の中で笑顔を浮かべているのを見ると、「こんなに大きくなって」と感慨深い。なにやら想い出が蘇ったが、そうは言っても兄弟なので、世の父親のように「まだ嫁に行かないでくれ」とは別に思わない。そもそもシェリーは、婿を取る側であるし。
アマーリアとシルヴェストはぴったりと寄り添い、ゆったりと踊っていた。
そこへリズベットとハリスが来た。
「ちょっと、どういうこと? 浮気していたなんて、裏切っていたの?」
「……どういう意味ですか? 始めに浮気だなんだと騒いだのはそちらでしょう」
リズベットはアマーリアに、なにを言いたいのか、自分でもわからなかった。アマーリアには不幸でいて欲しいからだ。だから実はシルヴェストと二人で幸せだと言われると、まるで裏切られたような気持ちになる。だがさすがにそれを、口に出すことはできなかった。
「とにかくリズベット様もハリス様も、おめでとうございます。もうそれでいいではありませんか」
「よくないわよ。いつから?」
「いつからもなにも、シルヴェストとは子どもの頃から、結婚の約束をしておりました」
「どういうこと?」
「ハリス様。私たち……私とシルヴェスト。それとあなたと婚約に至った経緯を、リズベット様に話していないのですか?」
「聞かれなかったから」
ハリスのその答えてに、アマーリアだけでなく、リズベットもうんざりした顔をした。
おそらくリズベットはハリスと付き合うようになって、たいへんな目にあっているのだろう。アマーリアは簡単に説明した。
アマーリアとシルヴェストは幼なじみで、結婚の約束をしていたこと。しかしハリスの母親ボルト子爵夫人がアマーリアに目をつけ、汚い手で強引にハリスとの婚約をねじ込んできたこと。ハリスの軽率さなら、おそらく学院で婚約は解消されるだろうと、ハリスをずっと誘導していたこと。なにがあるかわからないため、リズベットとハリスの結婚式まで、大人しくしていたこと。
リズベットはまったく理解できないようだった。
「ハリスを誘導? どういうこと?」
「ハリスは少し強引な女性に弱いのです。ですから、そういったタイプと、積極的にお見合いをさせました。リズベット様。引っかかって下さってありがとうございます。感謝しております」
「なんですって。それ本当、ハリス」
「あれ、言わなかったっけ」
ハリスは不思議そうにした。リズベットは馬鹿にされたようで、プライドが強く刺激されたが、成果主義のため、そこは事務的に割り切った。ハリスを落とすという目的が、達成できたからいいのだ。それより……。
「ねえ、なんのこと? ハリスのお義母様が汚い手で、アマーリアとの婚約をねじ込んだって」
「その通りの意味です」
「嘘だあ。あんな聖母様みたいな方が」
「……」
アマーリアは黙った。人の本質というものは、直接自分の目で見ないと、信じられないものだ。聖母だと信じている人に、「あなたの姑は悪魔よ」と言っても聞きはしないだろう。
そこへデブラ子爵夫人と、リズベットの父親ゲレブ氏が談笑しつつやってきた。
「リズベットは本当に、天使みたいなお嬢さんですわ。元気だし、それに気が利いて」
「ほらあ。優しいお義母様じゃない」
リズベットは自信満々に言った。
アマーリアは心の中で思った。あれはリズベットが、頭がからっぽで、うるさくて、おしゃべり、そして出しゃばりだと言っているのだ。
子爵夫人は、大勢の友人に囲まれているように見えるリズベットに、笑顔で優しく話しかけた。
「……リズベットさん。おしゃべりに夢中になっていないでご挨拶を……。あなたは未来の子爵夫人なのだから、おいおいしっかりしないとね」
「はい、お義母様」
大役を仰せつかったリズベットは、鼻息荒くアマーリアを見下すように見ると、壇上に向かった。
本当に優しい人は、友人に囲まれている時に、不出来を責めたりしない。席を外させてから、挨拶の話を切り出すだろう。「おいおいしっかりしろ」を直訳すると、「しっかりしていない」だ。アマーリアが夫人の立場だったら、来たばかりの嫁に人前でそんな恥はかかせない。
まあ、あれだ。子爵夫人も、アマーリアに逃げられて学んだのだろう。嫁に本性を出すのが、早すぎたと。ハリスの婚約者になったアマーリアは、地獄の日々だった。夫人の嫌みや皮肉にいたぶられ、それを誰にもわかってもらえない。夫人は癒やしの聖母と呼ばれ、崇め奉られているからだ。
見たところ、あれは習い性でついつい聖人ヅラをやってしまうようだ。しかし誰にでもいい顔をしていたら、ストレスが貯まる。最初は使用人を一人餌食にして、解消していたらしい。そのためどんどん辞めていった。
だがある日、息子の婚約者という、目下で逃げられない獲物を手に入れたのだ。それからの夫人は狂気を感じさせるほどの、暴れっぷりだった。アマーリアはじっと時機を待ち、リズベットという生け贄……新しい婚約者を用意した。
アマーリアに逃げられると恐怖した夫人は、すごかった。自身のあらゆる人脈を使って、婚約の解消を阻止しようとしたのだ。一時はアマーリアも父親のフェイラン男爵も、もう駄目かと思ったものだ。だがリズベットが既成事実を作ろうと、ハリスと派手に社交界を遊び始めたため、子爵夫人を応援する人々の勢いは、尻すぼみになっていった。
シルヴェストが、アマーリアの手を握ってきた。
「大丈夫?」
「怖かったけど……もう大丈夫。シルヴェストが隣にいるもの」
シルヴェストは愛おしそうに、アマーリアを抱きしめた。壇上ではスピーチが始まっている。
輝いているリズベットを、父親のゲレブは誇らしげに見つめていた。子爵夫人のわかりにくい毒は、じわじわときいてくる。最初はぴんとこなくても、その内わかるだろう。そしてアマーリアで学んだため、本性を現すのはもっと後になるはずだ。夫人もわかっている、妊娠・出産にストレスは禁物だと。
つまり子どもを数人産んで、逃げられなくなった後だ。夫人も生け贄で遊ぶのを、数年間我慢する気持ちでいる。だから先ほどのような軽い嫌みで、済ませてくれたわけだ。
人を支配してやろうとする人々の中には、楽観的な者もいる。リズベットやその父親のように、支配するのは自分たちであって、支配されることはないと思い込んでいるのだ。
そしてもっとも見通しが甘いのは、なぜハリスが単純なのかを考えないという点だ。だからまるで天からの授かり物のように、ハリスという存在に飛びついてしまう。
ちょっと観察すれば簡単だ。ハリスは母親によってそう育てられたのだ。永遠に息子でいるように。嫁として子爵家に入ったリズベットは、ハリスを夫として支配しようとするだろう。だがそれは本気を出した子爵夫人が許さない。リズベットの悪い噂を吹き込んで分断を図るだろう。自分たちに支配しやすいということは、他の人にも支配しやすいということだ。ましてや夫人は、ハリスの母親だ。
夫に信じてもらえず、子爵夫人の話をしても世間に信じてもらえず、子どもが生まれたら取り上げられ……、おまけにリズベットの実家は平民だ。貴族家ではないのだから、なんの力もない。そうなったらリズベットは…………。
アマーリアにしか見せなかった、夫人のニヤニヤ笑いを思い出し、気持ちが悪くなった。
「アマーリア」
シルヴェストが握る手に力をこめる。
「同情しないわ。もうこのことは忘れる。決別するためにこの式に出たんだもの」
きらめいているリズベットを横目に見ながら、アマーリア一行は会場を後にした。
◇◇◇◇◇◇
「そういえば、今日は結婚式に出たんだってな」
祖父のゲイアスが、帰ってきて服の手入れをしているジュリウスに尋ねた。
「友人に頼まれて。費用は経費で落としてくれるというので」
「どんな結婚式だったんだ」
「まあ普通の……。シェリーがずっとくるくると踊っていました」
「……」
ゲイアスはなにかを諦めたような顔をして、シェリーのほうを向いた。
「どんな結婚式だったんだ」
「わがままな新婦さんが、きつそうなお姑さんのところへ嫁いだの。あれはすごくなりそうだなって、グイニーさんと話していたわ。だって新郎がみるからにマザコンで、頼りにならなさそうなんだもの」
ゲイアスはまったく興味をそそられなかったが、礼儀として聞いた。
「どうしてそう思ったんだ」
「だってテーブルセットや、花にとてもお金をかけて、ウェディングドレスなんてベタンズの……、まあ、とにかくお金がかかっているの。それもどれも最新流行のものばかりで、伝統にこだわる親族からしてみれば、おもしろくなかっただろうなと思うの」
「私にはどれも見分けがつかないが」
「例えるなら、今流行の、足を大胆に出したドレスで、人前で足を組んでいたら、お爺さまだって驚かれるでしょう」
「なるほど」
ゲイアスはそんなことに無頓着だったが、一応そう口にした。
「そんな新婦さんの夢一杯の式だったから、お姑さんはおもしろくなかったみたい。挨拶をして回る時に、お嫁さんについて『お金の使い方が上手で』とか、『裏表のない子で』って、そりゃもう、ちくちくと嫌みを言って回っていたの」
ゲイアスにも、ジュリウスにも、それのなにが嫌みなのかわからなかった。だがシェリーには、アマーリア嬢とシルヴェストの件は、そこまでくわしく話していない。それなのに多くの情報から隠れた人間関係を読み取っていて、案外、嫁姑問題というのは、傍から見えるものなのだなと感心したジュリウスだった。




