老いた調査官の始末(前編)
ジュリウスは激しい雨の中、馬を走らせていた。
フードを通して首元に落ちるしずくが不快で、家に帰ったら雨具をきちんと繕わねばならないと考えながら、帰路に就いていた。
ジュリウスを乗せたブラック号は、懸命に足を動かしているが、冷たい雨と泥はねにくじけそうになっており、少しでも手綱を緩めれば、止まってしまいそうだった。元々、繊細な所があり、雨の日には向いていないのだ。今日は早朝から、ほうぼうを動き回っており、くたくたになっているブラック号を、ジュリウスは早く休ませてやりたかった。
雨に白く煙っている、古いレンガ造りの老朽化した平屋の館が見えてくる。そこがジュリウスの自宅、ラムレイ男爵家だった。勢いのまま厩舎に飛び込むと、ブラック号はジュリウスを乗せたまま、がっぽがっぽと音を立てて水桶から水を飲もうとし、あわてて止める羽目になった。
ジュリウスが下馬すると、その勢いでたまった雨がシャワーのように足元に降り注いだ。
「お帰りなさいませ。坊ちゃま」
迎えに出た下人に手綱を渡し、ジュリウスは脱いだコートをかけると、空いた手で水を飲んでいるブラック号の頭の装備をはずしてやった。ブラック号はやっと落ち着いたようで、いつものようにおしとやかに水を飲み始めた。ジュリウスは鞍もはずし、下人に渡すと、そのままブラック号の体を丁寧にふいてやり、最後まで世話をしたのだ。
「戻りました」
居間に顔を出すと、暖炉の近くに祖母が座り、手の感触を頼りに縫い物をしていた。ジュリウスがブラック号の世話をしている間に日は落ち、窓の外は真っ暗だ。暗い部屋に暖炉の火が熾火のように燃えていた。薪を足すか迷う量だが、余裕がないのでぎりぎりまで持たせたかった。
ジュリウスの声を聞いて、祖母が返事をし、遅れて祖父が二階からゆっくりと降りてきたようだった。
「戻ったか。ジュリウス。すまなかったな。こんな日に使いに行ってもらって」
「いいえ、お爺さま」
「それでどうだった?」
「ボウエン伯爵閣下から、体調が戻ったのなら、近日中に面会に上がるよう仰せです。なんでも相談したいことがあるそうで。使いを寄越すそうです」
「そうか。それなら準備しておこう」
そう言うと、祖父のゲイアスはあっさりと自室に戻っていった。
◇◇◇◇◇◇
ジュリウスの家、ラムレイ男爵家は税収も俸給も少なく、主君であるボウエン伯爵家の末席に連なる、取るに足りない家である。だが不思議なことに、伯爵閣下から、重用されている気配がするのである。本来ならお声をかけて頂くような、近しい関係ではないにもかかわらず、ジュリウスの祖父ゲイアスは、伯爵から何度も『相談』を受けていた。それだけならゲイアスが重用されているのかと思われるが、ジュリウスもお声をかけて頂いたことがあるのだ。
それは一年前、王立学院にジュリウスが入学した時、娘のローズに付き添った伯爵が、直接話しかけてきたのだ。ジュリウスは儀式などで遠くから拝見する伯爵が、まるで気さくな親戚のように振る舞うのを見て、返って緊張した。
「そちがジュリウス・ラムレイか。聞いておるぞ。祖父のゲイアスそっくりだと」
「ありがたきお言葉。光栄にぞんじます」
「将来が楽しみだ。励めよ」
「は」
たまたま臣下の子息に、声をかけるということはあるだろう。だが祖父だけでなく、孫のジュリウスも覚えめでたいということが周囲に伝わると、なにをするにも円滑に行くのだ。ラムレイ男爵家のように小さな家にとって、それだけで余計な労力がかからず、節約になった。
ゲイアスは一月前に腰をやって、しばらく寝込んでいた。寒い季節のことであるし、年のこともあるので大事をとっていたのだ。そのため今でも通っている武術道場や、近所の寄り合いなどを休んでいたら、どういうわけか重病説が出たのだ。
そして今日、ゲイアスのかわりにジュリウスが出仕し、その病状を説明したのだ。伯爵はゲイアスのことを心配していて、そしていつの間にか、ラムレイ男爵家そのものについてまで、聞かれ答えたのだ。伯爵のまわりには、重鎮と呼ばれる人々や、将来の側近候補とされる少年などもいて、ジュリウスはまるで、なにかの試験を受けているような気になった。
伯爵との緊張する対面のことで、頭が一杯だったジュリウスは、翌日、学院で教室から廊下に出ようとした時、同級生のサーヴィアスに、わざと体をぶつけられた。彼からの敵意には気がついていたジュリウスは、いつも近寄らないように気をつけているのだが、今日はうっかりしたのだ。
「ごますり野郎が」
サーヴィアスは低い声であざけった。
彼は、同じくボウエン伯爵家門下で、コーネリアス子爵の三男だ。ゲイアスが『贔屓』されているだけでなく、ジュリウスも入学式に目をかけられていたことがわかり、早い内から憎しみの視線で見てきた。最初の頃は、ただ嫌な野郎だと思われていただけだった。それがはっきりとした攻撃に変わったのは、ジュリウスの縁談が決まってからだ。
◇◇◇◇◇◇
ジュリウスはラムレイ男爵家の長男だが、裕福なラッセル伯爵家への婿入りが決まっている。これは長男のジュリウスがとても優秀で、その妹のシェリーは堅実というタイプで、裕福で実直な幼なじみの恋人がいるからだ。そのため家内で話合った結果、シェリーが跡を継いだ方が、経済的に楽になるだろうと考えたのだ。ジュリウスはいくらでも婿入り先があるだろうと、評価されていた。
これは名誉や世間体を重んじる一家には、取れない手段だが、ラムレイ男爵家の人々は、「まずは先立つものがなければ」という価値観だったので、取れた選択肢だった。貧乏男爵家の辛いところだ。
ジュリウスが縁談市場に流れると、争奪戦が始まり、一人娘を溺愛するラッセル伯爵が獲得したのだ。争奪される以上、ジュリウスは人気があった。だがしょせんは貧乏男爵家の出身だ。
一方ラッセル伯爵家のルシア嬢は、裕福で、伝統ある家の一人娘で、高嶺の花だった。
ジュリウスを憎むサーヴィアスは、同じく裕福で由緒ある、コーネリアス子爵家の出身だが、三男である以上、いずれは婿に出なくてはならない。由緒ある家系として、そして女性に人気のある華やかな外見で、さんざんプライドを肥大化させられ、それなのに花嫁を得るには、ぺこぺこと頭を下げねばならない。
この矛盾にぶつかったサーヴィアスは、もっと悪い条件のジュリウスを見下すことで、精神の均衡を保っていた。そのジュリウスが高嶺の花を手に入れたのだ。今のサーヴィアスからは、殺意まで感じるほど、ジュリウスは憎まれていた。
◇◇◇◇◇◇
「お兄様。今日のお菓子はこちらよ」
ジュリウスは、妹のシェリーに用意してもらった菓子折を持って、婚約者のルシアに会いに行こうとしていた。菓子折にめざとく気がついたブラック号は、鼻面をよせて匂いを嗅ごうとする。
「駄目だ。こら。こら」
ブラック号は、「そうは言っても見せて下さるでしょう?」とばかりに、耳をぴるぴるとふるわせた。しかし反応の悪いジュリウスに、諦め、今度はジュリウスのポケットに鼻先を入れようとした。
「まったく仕方がないやつだ。今日の用事が終わったら、上げようと思っていたのに」
ジュリウスはしぶしぶとポケットから、貴重な黒糖を取り出し、ブラック号に与えた。ブラック号はご機嫌になり、ジュリウスを乗せて風のように走り出そうとしたが、菓子折を持っていたジュリウスは、なんとか落ち着かせて、並足で歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
婚約者のルシアを一言で表現するなら、良くも悪くも『浮ついている』だろうか。
ラッセル伯爵は一人娘を溺愛し、なんでも買い与えてやった。そのせいか我慢を知らないし、不満を隠すこともしない、思ったことをなんでも口に出すのだ。伯爵は、伯爵家の後継者にすることは考えてなく、婿養子のジュリウスに将来を託していた。ルシアの良い点は、大事に育てられた箱入り娘のせいか、とても善良で、悪意がなく、純粋という点だった。貴族子女としては、そこまでめずらしいタイプでもなかった。ラッセル伯爵も、ジュリウスも、きっと結婚したら落ち着くだろうと考えていたのだ。
ジュリウスは平々凡々な見た目のため、初対面の時、ルシアは『がっかりした』という表情を隠そうともしなかったが、同時にそんな風に思ってはいけないという感情ももれており、ジュリウスは「悪い人ではないんだな」と思ったものだ。
如才ない会話を、ジュリウスがルシアとしていると、またしてもラッセル伯爵が飛び込んできた。
「ジュリウス君。助けてくれないか」
「もうお父様。いつもそればっかり。ジュリウス様は私とお話しにいらしてるのに」
ラッセル伯爵も最初は軽い気持ちで、ジュリウスに仕事の相談をしたのだ。それは相談というよりおしゃべりに近いものだった。だがその時、なぜか気に入られてしまったらしく、しょっちゅう聞きに来るようになったのだ。
格上で将来の舅になる以上、ジュリウスには相談を断る選択肢はなかった。また伯爵も結局の所、婿になるのだから、早い内に仕事に慣れた方がいいだろうと考えたのだ。だから伯爵もジュリウスも、妻になるルシアとは結婚してから、交流を深めてもいいだろうと、どこかで考えてしまっていた。
◇◇◇◇◇◇
そんなある日、ジュリウスの教室に、一歳年上のダイアー伯爵令息のリックがやってきて、話しかけてきたのだ。
「ジュリウス君。急で申し訳ないんだが、明日空いてないかな。手伝って欲しいことがあって」
ダイアー伯爵家は、主君であるボウエン伯爵家の側近中の側近で、ダイアー伯爵本人は、ボウエン伯爵閣下の右腕だ。その子息であるリックも当然お側に仕えている。雲の上の人物に気軽に教室に来られて、ジュリウスはただ、はいと答えた。視界の隅ではサーヴィアスが、驚きつつ睨んでいるのがわかった。
「無理しなくていいよ。予定があるなら言って、って言っても、無理かあ」
リックは陽気な人柄のようで、一人で笑い出した。
「でも本当に言ってね」
ジュリウスはただ、大丈夫ですと答え、翌日指定された場所に行ったのだ。
リックは質素なたたずまいで、丘の上に立ち、草原を滑っていく雲を眺めていた。
ここは王都のかなりはずれで、地平線までつづきそうなほど長い水道橋が見える。
リックは気さくな人柄のようで、ジュリウスにいろいろと話しかけてきた。ジュリウスはあれこれと無難な返事をしながら、気持ちを落ち着けようとした。ジュリウスが緊張しているのがわかるのか、ブラック号が心配そうに耳を動かしている。
二人で人里離れたところを歩いていると、とつぜん道ばたに、山菜を採るカゴを持った老婦人が、変な姿勢で座っていたのだ。
「もし、ご老体。どこかお怪我でも……」
リックが馬を下りて話しかけると、老婦人は苦しそうにただうなずいた。話すのが億劫のようだ。リックは老婦人をブラック号に乗せ、ジュリウスは後ろから体を支えた。そして家に送ってやろうと道を進むと、ほがらかだったリックの眉間にしわが寄り始めたのだ。
「もしや、デフォ男爵の縁者……」
老婦人は苦しそうにまたうなずいた。
リックの様子から、今日の訪問先はデフォ男爵家のようだ。
デフォ男爵の名は、ジュリウスも聞いたことがあった。
名調査官として知られ、門下で起きた事件の捜査から、組織の再編のための報告書作りまで、ボウエン伯爵家の懐刀として働いていた。何度も、昇進の話が出たが、判断や立場に偏りがあってはいけないと、頑なに辞退したと聞く。終いには昇進させたら、辞職するとまで言いだし、前伯爵が匙を投げたというのだから、よほどの頑固者なのだろう。確か十年ほど前に引退したと聞くが、こんな辺鄙な所に住んでいるとは。
リックとジュリウス、老婦人と二頭の馬は、鬱蒼とした森の中にある、古い洋館にたどり着いた。凶暴なツタが全面をおおい、家を破壊しようと牙をむいている。家の手入れをするものがいないのだ。物音を聞いて中から出てきた使用人が、驚いて声を出した。
「まあ、奥様。どうなさったのですか」
「するとあなたはデフォ男爵夫人?」
リックもジュリウスも、男爵夫人自らが山菜採りに出かけていたことに驚いた。二人は馬留に馬を止めると、男爵夫人を運び込んだのだ。
その後、使用人にいろいろ話を聞くと、デフォ男爵家は困窮しており、今では年老いた男爵夫人自ら食材を採りに行くことがあるらしい。使用人も下働きの女性と、下男の二人だけとのことだ。
「おかしいな。デフォ男爵には年金が出ているはずだが」
リックが一人言のようにつぶやいた。騒ぎを聞きつけ、奥から杖をついた老齢の男性がゆっくりと出てきた。不自由な手に刃物を持っており、今でも通る響く声で誰何したのだ。
「誰だ。お前たちは。勝手に家に入るな」
リックはそれを見ると、さっとしゃがんで、最大級の礼を執った。ジュリウスはいまだになにが起こっているのかまったくわからないが、同じようにした。
「私は、ダイアー伯爵家のリックと申します。こちらはラムレイ男爵家のジュリウス。本日はデフォ男爵にご挨拶に伺いました」
警戒心あらわなデフォ男爵だったが、口の中で何度も「ダイアー伯爵」「ラムレイ男爵」とつぶやくと、ジュリウスの方を向いて、用心深く尋ねた。
「お前さん、ゲイアスの……」
祖父の名前を出され、ジュリウスは礼を執ったまま答えた。
「ゲイアスは私の祖父です。デフォ卿」
「祖父?」
それを聞いたデフォ男爵は先ほどまでの、厳めしい顔つきを放り出して、げらげらと笑い出した。
「あのゲイアスの坊ちゃんが、孫持ちとな。俺も年を取ったもんだ。いや、むしろ長生きしたものだと言うべきか」
そして急に好々爺の顔つきになり、机を叩いた。
「おい、酒持ってこい。ゲイアスの孫よ。今日は飲み明かすぞ」
ジュリウスは酔っ払いの扱いには慣れているので、さっそく支度を始めた。わけがわからないままだったが、リックがなにも説明しないということは、なにか理由があるのだろう。
「それであんた様は、ダイアー伯爵家の御曹司なのかい。ふうん。ところで今、ご当主様はどなたがおなりだ?」
デフォ男爵は次にリックに質問しだした。リックは精一杯眉根をひそめないよう、無表情にしていたが、難しい顔になるのは避けられなかった。
「…………ジェイムズ様です。現ボウエン伯爵閣下はジェイムズ様です」
「ふうん」
デフォ男爵は関心があるのか、ないのか、わからない返事をした。
その晩ジュリウスはとても忙しかった。デフォ男爵に付き合わされ、長々と昔のつまらない話に付き合わされ、酒を飲まされ、くだを巻かれ、つまみを作らされ、洗い物もし、デフォ男爵とリックのお世話もしたのだ。リックはその間、時々席を外し、静養している男爵夫人に話を聞いたり、使用人と話したりしていた。
デフォ男爵の話は、行きつ戻りつ、彼の七十年近い人生を駆け巡った。ジュリウスのことを、何度もゲイアスと呼び、ジュリウスもそれを訂正せず、相づちを打った。そしてデフォ男爵は心底楽しそうに眠りに落ちたのだ。
翌日、リックもジュリウスもまあ、疲れてはいるが、務めを終えた気持ちで帰路に就いていた。
「デフォ男爵は、名調査官として知られていてね。知っていると思うが」
身を切るような朝の冷たい風が、昇ってきた太陽にぬくめられ、ブラック号との散歩が心地よいものに変わってきた頃、リックが穏やかに話し始めた。
「男爵は、ボウエン伯爵家に長く務め、現当主の御大父君であらせられる、前々当主の代から仕えてきた。決して出世しようとしなかったから、地位は低いが、彼の頭脳には伯爵家の秘事がぎっしりとつまっている、重要人物だ」
ジュリウスは黙って聞いていた。
「その男爵がぼけたらしい。重大なことを誰彼構わずもらしてしまって、危険だと。彼の処遇を進言する者がいるのだ」
ジュリウスは落ち着いた性質で、寡黙な質だ。だからつねに用心深く黙っているが、さすがに黙っていられなかった。
「まさか」
リックはゆるゆると、ジュリウスのほうを向いて微笑んだ。
「まあ、確かに眠ってもらうのが、手っ取り早いな」
ジュリウスは、リックがなにを言いたいのか、その真意を探ろうと見つめた。
だが年季が違い、たった一歳年上なだけのリックの表情を、読み取ることができなかった。ジュリウスはその場で、必死に頭を巡らせた。昨晩のデフォ男爵の、嬉しそうな赤ら顔が蘇った。
初対面だが同じ家に務める、仲間として、先達として、ジュリウスを歓待してくれたのだ。ジュリウスはかさついた唇をなめた。
「それは……、どうにかなりませんか?」
「どうにかとは?」
リックはすかさず聞いてきた。
「物忘れがどこまで進んでいるかわかりません。それを確認してからでもいいですし、また謹慎させ見張りをつけてもいい。なんなら…………。そう。なんなら私が見張りをします」
「君には知らない人の問題ではないか。どうしてそんなに肩入れするんだい」
不思議そうに聞くリックに、ジュリウスは胸が締め付けられそうに感じた。
『どうして』だと?
人が七十年も、誠意をもって主君に仕えたのに、老いておかしくなったら、ゴミのように切り捨てるなど、そんなの、……そんなの悲しすぎるではないか。
上司の前でなにも言えず、黙り込んでしまったジュリウスを、リックはじっと見つめていた。
「デフォ男爵の衰えは、どう感じた」
リックは話題を変えた。
「あの年にしてはしっかりしているなと感じました。確かに主君のことすら忘れているようですが、自分の身の回りのことはできているし、受け答えも明確で、判断力があります」
ジュリウスはまわりに老人が多いので、老いとはどんなものかよくわかっていた。元気な人間がある日突然衰える訳ではない。当たり前だが徐々に衰えていくのだ。できていたことができなくなり、おかしなことを言い出したりもする。だが逆に言うと、なにかができなくなっていっても、別の何かはまだできたりするのだ。
リックは満足そうにうなずくと、ジュリウスに頼み事をした。
「来週、ボウエン伯爵邸に来てくれ。デフォ男爵の年金の受け渡し係を頼む」
ジュリウスはもちろんうなずいた。なんでもいいからデフォ男爵の、手助けをしたかった。だがリックの楽しそうに、にやつきながら言った言葉に後悔した。
「しっかり武装して来てもらおう。君のお爺さまのゲイアス殿仕込みの、武術を見せてくれたまえ」
「……あの、相手は何人ですか?」
「私は一人と見ている。だが金が絡むとわからないものだ。まあ三人くらいと予想してくれ」
「助っ人は……」
「難しいな。事が起こらないと真相はわからない。私たちが駆けつけるのは、終わった後だろうな」
ジュリウスは急いで帰り、準備をしたのだった。




