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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

命の判子 ~産まれる前のこと~

作者: ヤスヤナ
掲載日:2025/10/29

判子を押すと命が産まれる。

命は人生の判子なのだから。

「わたしの判子は貴女が押して」

小学生の女児は、笑顔で言った。


そして、翌日。


「産まれるのか、いいなー」

「でしょ? やっと産まれるの、わたしも」

誇らしげに言われる。

自慢する女児、だが残念、中身は私と同じくらいの年齢なのだ。多分。ちなみに、私は高2、一番楽しい高2で事故にあい死んだから、17歳。


椅子に座り、向かい合っている。

間にはテーブル。

それと、大量の判子。


「けど、産まれる前に、わたしは貴女と話がしたいな」

「なに、嫌味でも言うつもり?」

「思い出作り、かな」

「思い出作り」

「貴女は、わたしのことを覚えていないと思うけどね」

また、その言葉。

思い出作り、ね。どうせ、産まれたら、ここのことはすぐ忘れてしまうのに、何でそんなこと。産まれる前のことをずっと覚えている人もいるらしいけど、ほとんどの人はすぐに忘れる。

どこに転移し、何をさせられるか。

「たくさん話、しよ?」

「判子を押させてくれるなら、いくらでも。けど、私はアニメや漫画しか知らないんだけど」

「それでも、いいの。

わたしは、貴女と話がしたいから」

「変わった奴だ」




そして、話をした後。


「楽しかった、貴女と話ができて」

「そう? なら、いいけど。本当にアニメとかの話しかしなかったんだけどな」

「だから、貴女と話がしたかったんだって」

「よくわからん」

この女児と、何かあったのだろうか?

前の、生きていた頃の世界で。


「じゃあ、判子押して」

「わかった。

どの名前がいい?」

わたしは大量の判子を女児に見せる。


その名前で、産まれる家が決まる。

姓だけ、世界に1つだけの姓はないから、そこはランダムになるんだけど。でも、産まれる家の姓は選べる。


「じゃあ、これで。死ぬ前と同じ姓」

「はーい」

私は指された判子を取る。

そして、私は、その姓を、じっと見る。

「どした」

「いや、何でもない」

首を橫に振る。

やっぱり、思い出せない。

幼稚園か、小学校か、何かあったのだろう。何があったのだろう。わからない。


私は朱肉をつけ、紙に判子を押す。


女児の姿が、どんどん薄くなっていく。

笑顔の女児。これから産まれるからだろうか、この世界の仕事は楽だったはずだ、この子の判子は1つだけだったのだから、なぜかその1つをなかなか押さなかったけど。

私は、微笑んで女児の顔を見る。

結局、思い出せなかったけど、この世界では仲が良かったから。


「ありがとう、救ってくれて」

その言葉を残して、産まれていった。


命が1つ、誕生した。




「本当、思い出せなかった」

救った? 私が? アニメや漫画にしか興味がない私が?


まあ、いいや。


「あと92本押さないといけない。

アニメが観たい、漫画読みたい。

まだ8本しか押してないよー、うわーん」

ありがとうございました。

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