EP0-4「邂逅と再誕」
目を見開くと、眩い程の白、白、白。
そこには真っ白で、それでいて果てのない程広く感じられる奇妙な空間が広がっていた。
そこにただ倒れ込むようにして僕は寝転がっていた。
「もしかして、天国?」
先程まで居た研究所や厳しい自然の中から急に移動したなんてある訳がない、肩や足だって治ってる...これって死んで天国に行っ「残念ながら半分正解で半分間違いだよ。」
「うわあっ!」
唐突に耳元に囁くような声が聞こえて驚きながらも振り向けばそこには...そこに...顔が見えない巫女服を見に纏う謎の人物が居た。
輪郭すら曖昧でぼやけて服装すら見ることも叶わない、そこに存在するだけで思わず赦しを請わなければならない。
そう思ってしまう程の存在感を持つ何かがこちらを見ていた。
「え、と...ここは?そもそも僕はどうなってるの?」
「ふーむ...まあ当然の質問だ。そこから順に説明していこうか。」
話し合いには応じる気が...あるらしい。
「さーて、じゃあまず先程の半分間違いで半分正解の話からしていこうか。まずまずもって君はもう死んでいる。これは自覚があるだろう。そして次にここは天国か、答えは『否』だ。なんなら君はこれから地獄に言った方がマシだったと思う事になる。」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ!君が何者でどうなるのかの説明くらいしてくれないと...何がなんだか...」
「まあ困惑も当然だ、でも本当に説明が難しいんだよ。...あ〜、もうちょっと黙って聞いててくれ、多分それで大体わかるから。」
「...」
「よろしい、では語ろう。」
それは、気が遠くなる程長い話だった気がする、どうやらこの人は説明が苦手らしい。
まず自分が神である事、そして地球がある時空とは別の世界の管理をしている事を明かしてきた。
その世界には不思議な力がありどうやらその力を発展させた結果、方向性は違えどこちらの時空とあまり変わらない豊かさになっているらしい。
それの何が問題かと言うとどうやらその不思議な力、『魔力』はどんな世界にも存在しているらしいがそれは有限で時空毎に総量が決まっておりそのまま魔力に依存していればいつかエネルギーが枯渇した時に生物が死滅してしまう。それを神様は憂いているらしい。
「わかった、話が読めてきたよ。つまり僕にはこちら側の時空の知識を伝えて欲しいんだね?」
「いや違うけど。」
えっ。
「というか、もうやったんだよ、それ。君よりも優れた人間なんてごまんといる。もう頼んで僕の望んだ通りその人間は役目を果たし延命は成された。」
「なら、何が言いたい訳?」
「その時空で言う、丁度1000年前に送り込んだ人間がまだ生きて、僕の管理する世界を破壊しようとしている。」
険しい顔で告げられたその言葉に僕は驚愕を隠せなかった。
人間が1000年生きてる?そっちの世界ではもしかして人間の寿命が伸びてるのか?そもそも動機は?
「まあその疑問は尤もだ。そこも多少は説明しよう。僕の世界でも寿命やら大まかな事は変わらない、だが何故か生きている、それがいちばんの問題だ。僕たち神は秩序の為に人間に手出しする事が禁じられている。そう簡単に手は下せない。」
今心読まれた...というか、なんか段々話が変な方に、さっきも断ろうとしたけど今すぐに断らないと間に合わない気がする、ちょ、ちょっと、僕は!
「ああ、ごめん、拒否権とか無いんだよね実は。君に光るモノ感じたからさ。大丈夫、格闘家とかボクシングの世界チャンピョンとか呼んでも駄目だったけど君なら出来るから。信じてるよ。...必ずそいつを殺してくれ。」
待てい!待って、江戸っ子みたいな喋り方になっちゃうから!無理に決まってるでしょ、無力な子供なんだよ僕は、また死んだあの子と会いたいだけなの!もう休ませてよ。
「残念ながら、それを許す事は出来ない。僕の不始末の尻拭いを任せて本当に申し訳ないと思っている。謝罪しよう。」
なら
「...僕としても、子供を戦わせるなんてしたくないんだよ。でも、子供一人より僕は僕の世界の方が大事だ。これでも僕は神の中では強い方でね、もしかしたら最強かも。だから好きなだけ好きな人間をこの世界に招く事ができる。君が断ればいつか鉢は君の好いている彼女に届くかもしれない。...だからどうか、君で終わらせてくれないか。僕の多大なる過ちを。勿論、依頼を達成してくれたのならば報酬だって用意しよう。...どうだろうか。」
それを言われて、断れる訳ないじゃないか。遠回しに、僕が、僕の次が、成し遂げられなければ彼女も、僕と似たような人間だって無限に送り込むんだろう!?
...それがわかっていて、自分だけ逃げるのは...彼女に顔向けできない気がする。
「...良い心掛けだね。すまない、出来るだけの支援は僕だってしよう、君の肉体もあの世界用に改造してしまおうか。大丈夫、君の才能を最も引き出せる器に調整しておくよ。準備はすぐ済むから君は覚悟をしておきなさい。」
また、会いたい。今度は笑顔で。絶対に生きる、君に誇らしい顔で会える自分になりたい。
必ず、帰ってくる
「よし、準備できたから行ってらっしゃい。」
その言葉に疑問符を浮かべる前に足元に穴が開いた。
穴から見える景色は青空。いや、違うもう落ちているんだ!
下、下は!?
そこには、見渡しても端が見えない大森林が広がっていた。
高速で空から落下している途中に、神の声が聞こえた気がした。
「あ、この世界での戸籍とかは用意してないから。それやるとなると記憶弄ったり設備や資料の改竄にと忙しいんだよ。だから着の身着のままで頑張ってね?ああ、そうそう、多少君の感情やら心を操って僕の依頼を受ける様に誘導したけど、まあそれも許してくれるよね。だって合意したのは君だからさ。」
...こ、この...
「このクソ神ィーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
そんな声が大森林に響いて
...この世界に、空に、白銀の軌跡が形作られまた消えていった。
■■■
「さーて、彼女は上手くやってくれるかなぁ...」
白しか存在しない寂しい空間に声が響く。
それはやがて塗り潰されるように、穢されるようにして黒色が天井から伸び支配していく。
その空間で神はただ嗤うのだ。
捻じ曲げられた自分の意思で地獄へと進み始めた操り人形の愚かな少女を。
安息などない彼女の運命をただ見守り娯楽として消化する。
彼、或いは彼女は神である。しかし、それは正しくはない。
人間の基準で見たら身勝手で傲慢、不幸を振り撒く...邪神であろう。
「精々、僕を楽しませてくれよ。462番。ははは、アハッ!アハハハハハ!!!!!」
神は暗闇にて嗤い、狼が天に吠え、月は優しく見守る御話。
さて、きみはだあれ?
少し短いですが今回はこれで終わりです。
第0幕はこれにて完結となります。
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もう既にしているよ、という読者様はこれからも【一匹狼は月を識る】をよろしくお願いします。




