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EP?????? 「月に捧げる物語」

真っ暗闇の部屋に一つの光が灯っている。

やけに壮大な音楽が流れており、時偶カタカタとボタンを押し込む音と少女の悲鳴の様な声が響いている。

画面の中ではボロ布の様な物を纏った異形の化物と銃や杖を構えた男が対峙している。

僕はコントローラーのボタンをタイミング良く押し込み、時に最適なタイミングで敵の攻撃を弾き、時に被弾をしながらも着実に敵を追い詰めていく。

後もう少し...!今までの雪辱を晴らしてやる、20回目の正直だ。

なんて考えていたんだが...


タタタタっ...


少女が木造の床を蹴ってこちらに駆け寄ってくる音が聞こえ、反射的に身構えてしまう。

どれだけ歳を重ねようが子供の相手は疲れる、多分これはどんな人間だろうと一度は考えた事もあるだろう。

どれだけ自分を特別な人間だと思い込んでも結局僕はその例に漏れず普通の人間で、ガキは嫌いだ。

でも、別に嫌悪感丸出しにして相手をするほど子供ではない。だから普通に相手をして、普通に帰ってもらう。今日もそうする事にしよう、うん、それが良い。

そんな事を考えながら少し胡座を崩し、持っていたコントローラーから手を離し音のした方向に視線を向ける。

画面に映るはgameoverの文字。

疾うに興味を失ったそれから完全に目を離し音のした方に目を向ければ、丁度(くだん)の少女が障子を勢いよく開き僕に向かって頭突きをしてくる様子が見てとれた。


「ウッ......や、やぁ...元気が、いい...ね....」


全力で突撃してきた少女の頭突きを敢えて受ける。元気が良すぎて泣きたくなってくるよ...

僕なんてゲームして昼寝をしてお菓子をつまむだけで体力が切れるのに...

見上げれば馬乗りになりつつも僕を見下ろす巫女装束の少女が見えた。


「当たり前じゃないですか!今日はおば様が話を聞かせてくれるって言うから早起きしたんですよ!ピーマンだって食べました。ふふん。」


「へえ、そっか。そういや今日だったね。」


...分かったような振りをしているが嘘だ。何をする予定だったか覚えてない。

話って何の事だろう...

キラキラと擬音が出そうな程に目を輝かせている少女との約束を忘れてしまっていた事についてちょっとした罪悪感を覚えつつ、大人の特権である『理解はしているが念の為に確認を取る』という手札を切らせてもらおう。


「あー、一応念の為に君の口からも確認しておきたいんだけどさ。今日は何の予定だったかな?ほら、さっきまでゲームで忙しかったからさ、一応ね。」


「...忘れてるんですね?」


「ハイ、オッシャルトオリデゴザイマス、ゴメンナサイ...」


バレてら...

ジトーっとした目で見られると申し訳なくなる。やめてほしい。

少女を抱き上げ、対面に座らせた後に僕も正座になって彼女を見つめていれば渋々。

いや、かなり嫌そうな表情で教えてくれる。

...申し訳ないとは思っているんだ、だからその呆れた様な、見放す様な冷たい目線で見つめてくるのはやめてもらえないだろうか...悲しくなってくる。


「今日はおば様が冒険譚を聞かせてくれるって言ってましたよ。」


その一言で、ああそう言えばそんな事も言っていたかも。そう思い出して悩んだ。

確実にその時の僕は酒が入っていたんだ。じゃなきゃ黒歴史にもなりそうな...

そう、自分の過去の話なんかできそうにない。

でも約束は約束だし、それに今断ったら涙を流され巫女である彼女の母親からの説教が待っているのは間違いない。

暫く3時のおやつやゲーム、昼寝と言った娯楽が禁止されてしまうのは間違いない。

確実に。

困ったものだ。欲とは人間を構成する大事な要素であり、それを満たす事が出来ない状況は生物的に敬遠するべきだという認識をしている。

ならばどうするか...僕は一時の恥と引き換えに生活の充実を買う。

...そう思い込む事にした。


「うんうん、分かった。良いよ。語ってあげよう。でも困ったな。どこから聞きたい?」


まあ多分短い、最期だけ聞かせてやればきっと満足するだ「全部!最初から聞きたいです!」


嘘でしょ...

確実に長くなる。

時に山を斬り、海を断ち、空をも割って学問の基礎を組み立てて、時に笑いあり涙あり...友情アリの僕の冒険譚は書籍数百ページに及ぶんだぞ?

きっと第一版は高値で転売され「ここまで素晴らしい作品は読んだ事がない!」「ま、まさかこんな結末だったなんてー!!」「彼女はきっと味方だと思っていたのに...」なんて感想で埋め尽くされ...

いやないな...そもそも本の中の人物に共感とか出来ないだろ...

どれだけ同じ経験したとしても所詮他人だ。...だって、実際にそうだったんだから。

..............




「おばさま?」


「えっ!?ああ、いや、いやいや、ごめんよ。少し考え事をしていてね。どこから語ろうか迷っていた所なんだ。許してくれよ。...あー、それと、僕は語るのが少し苦手でね。

かなり長くなってしまうな、数日に分けて語っていこう。それで良いかい?」


「うん」


もうすっかり話を聞く姿勢で綺麗な星座の体勢の彼女を見やり、瞳の奥に見え隠れする期待と不安の入り混じった感情をほぐす為に頭を少し撫でてやれば気持ち良さそうに目を細める様子が可愛らしい。

ふふっ、さっきは子供の相手は苦手と言ったが僕も子供っぽい所は変わらないかもしれないな。

やろうと思うと急にやる気が湧いてくる。他人に自分の事を知ってもらう事が好き。

自分の理解できない事は否定しかできないし知ろうともしない。

今から語ろうとしている物語だって僕の主観と脚色で溢れている。

自分の都合の良いように改変し、事情があったかもしれない相手の話を聞かずに打ち取り、喧嘩別れして和解する事もなく消えていった友人の話だってある。

それを僕はさも偉業のように誇らしげに語るんだろう。

例えば犯罪者が檻の中で経歴を自慢し合いマウントを取り合うように、学生が無免許運転をしただの、誰かからカツアゲをしただの、そんな幼稚で稚拙で、汚い話を。

...でも、それで良いじゃないか。

皆の見えてる世界は違う、僕はこれで良い。

そう言ってくれたのは君だから。


タイトルはどうしようか。物語には、長く読み上げるのがダレてしまう様な内容を語り過ぎず、しかして話に華を添え読者に理解させる為の表題が必要だ。

ならば、これは僕と”君”の話はこう名付けるのが良いだろう。


狼が吠え、それを優しく見下ろす君のながいながいお話。





月に捧げる物語

...なんてね。

お久しぶりです、初めましての方は初めまして。水花です。

相変わらず何もかも不規則で不安定なので不定期公開です。毎日とか隔日投稿してる先輩方凄いですよね。(小並感)

拙作ですが頑張って完結まで投稿し続けるので是非ブックマークと評価ポイント付けて頂けると作者が狂った様に喜びます、体調も良くなります。

また、プロットを練っている間にいつの間にか受験の年が訪れてしまいまして...

本格的な投稿は一年後になりそうです。


余談ですが、物語冒頭の獣はなんだか血に渇いてそうですよね...これがちいかわ...

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