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何もしない



 暗い部屋の中、テレビの光が強烈に眩しく感じる。


(眠い……眩しい……)


 リモコンに手を伸ばすのも億劫で、このまま寝入ろうと目を瞑る。

 幸い音量は低く、睡眠導入BGMとして最適だ。


 ……あ、やっぱり眠れないかも。

 付けたままのテレビは、瞼の裏にちかちかと赤、白、黒……と様々な色の光を齎す。

 寝返りを打つのも億劫で、その体勢のままどうにか寝ようと努める。

 眩しい。だけどテレビを消す為に起き上がりたくない。それは負けを認めたことになる。何に対しての敗北なのかは分からない。


 このまま寝落ちるか、諦めて起きるか……。


 ………。

 ……………。


(羊が一匹……羊が二匹……)


 なかなか眠れず、古典的な方法を試してみる。

 そう言えばいつだったか聞いたことがあるけど、この暗示は英語の「Sheep」と「Sleep」の発音が似てるからであって、日本語では意味がないらしい。本当かは知らないけど。


(One sheep...two sheep...)


 心の中で唱えながら、柵を越える羊を想像する。


(Three sheep...four sheep...)


 あれ、羊って毛がモコモコの方だっけ、毛がない方だっけ。

 ……あ、ない方は山羊か。…って、毛がない訳ではないか。


(Five sheep...)


 それにしても眩しいな…。

 諦めて起き上がってテレビ消す方がいいかな。

 ここで目を開けるのは負けたことになるんだった。何に対してかは分からないけど。

 所謂自分自身との戦い。

 眠気は充分。あとは意識を手放すだけ……。




 ………。

 ……………。


 やっぱり眩しいな。だけど動きたくない。

 寝返りを打って壁側を向けば眩しさも幾分かましになるだろうけど、動くのも負けだ。

 何もしないと決めたからには何もしない。

 うだうだと思考を巡らせて眠気はどんどん覚めてくる。


 こうして昼夜逆転生活から抜け出せず、自堕落なまま過ごしていくのだ。



 ……嗚呼、何もせず生きれるならどんなに楽だろう。







(何もしないからって、何も考えてないわけじゃない。)

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