第一話 入学式
必ず主人公が幸せになります
昼 駅前広場
リンゼとタクミは事件に巻き込まれてる。
犯人達はヒーローを呼べと言っている。
「なぜ、わざわざヒーローを呼ぶ」
ヒーローそれは対異能制圧官の俗称だ。
この世界に『異能』と呼ばれるものがある。
一九四九年突如として『異能』に目覚める者が世界に現れ始めた。
各国はこの謎の現象に色々な憶測が飛び交ったが
政府の迅速な発表により落ち着きを取り戻していった。
各国や世界の企業が『異能』についての研究を始めた。
だが起きてしまう日本で世界で初めての『異能』による殺人事件が
それを機に異能による強盗、誘拐などの事件、いじめ、迫害などの差別に
世間が目を逸らしてきたことに目を向け法整備が進み
今の『異能』の考え方「生活の一部に」が出来ていった。
それに伴い異能犯罪にどう対処するかの政府の答えは
公務員のように雇うのではなく対異能制圧官になるための免許を作り
その免許を持つ者に仕事を斡旋する形にした。
研究により異能には相性があること、発現条件がまだ不明であることから
このようにしたと発表した。
二〇一四年四月八日
鳥の囀りが聞こえ、カーテンから陽光が漏れ出す。
タクミはナイトテーブルに置いてある懐中時計を手探りで取り
日差しに照らされた文字盤を見て体を起こしベットに座り
「フゥゥ、朝か」
起きる。今日は中学の入学式、登校の用意をする。
タクミは自分達の朝食の準備をしていると養母が起きてきたので
養父母の分を作り始めることにした。
養父母の朝食を作り終えると
「俺はトレーニングしてくるから仕事行ってらっしゃい」
養母が元気よく
「行ってきま〜す。」
と言うと普段あまり喋らない養父が
「学校、気をつけるんだぞ」
リビングを出ようとしていた足を止め
「もちろん」
自信に満ち満ちた顔で手を振り、リビングを出て木刀を取りに行き庭に出た。
懐中時計を見て
「そんなにできないかな」
素振りを始める。タクミはこれにより集中力を上げる。
斬撃を飛ばせないかとやってみたり
抜刀術モドキをやっいると玄関の方で扉の開く音がして
「もうそんな時間か」
と懐中時計を見て、木刀を自室に戻し汗を流すために風呂に入った。
シャワーを浴びている間に庭でのことを思い返す。
タクミは異能が発現しておらず一緒に暮らす義兄弟のリンゼがいて
『火を出す』異能が発現している。リンゼは学校での成績はトップで
一度見聞きしたことは他人を凌駕する速度で上達し
これらのことは運動も同じでタクミが三歳の時に始めた剣道で
一年間やったタクミを一日でボコボコにして
タクミが剣道を辞める原因を作るほど
その後も柔道や合気道にも手をでしたが
リンゼに連勝できることは何一つもなっかた。
こんなだが今は妬んでの憎んでもいない。
タクミはリンゼと暮らしてきて
地図が読めないことから誰にでも欠点があるということ
初戦は勝てることから相手の土俵で戦うのではなく勝てる土俵で戦うことを
学んだ。そしてリンゼに追いつけないことを認め
リンゼを幸せにすると思っている。
だがいつかリンゼに連勝するために毎朝やっている。
『正面から戦ってもリンゼには勝てない。
近づこうとすると火玉を撃ち込まれる。
なら火玉をどうにかするしかない。
壊すか避けるかいなすか。
壊すために斬っても炸裂する。
避け続けても近づくにつれ密度が上がり避けきれなくなる。
いなすにしてもまだ一度も炸裂せずに軌道を変えれたことがない。
唯一可能性があるのがリンゼが手も足も出なかった抜刀しか。
理想はリンゼの攻撃を全ていなすしながら接近し
リンゼよりも早く一発を叩き込むことなんだよな。
毎回この結論に辿り着くんだよなぁ。
体力一防御力一だからリンゼとのルールで
「一撃先に入れた方が勝ち」にしたのに』
汗を流し風呂を出る。
「リンゼ起きたかぁ」
体を拭きながら聴くが。
「起きてぇ、ないなこれ」
懐中時計を確認し流石にリンゼを起こさなければならない時間
タクミは自分の隣のリンゼの部屋に行き
起こし朝食を食べるように言いリビングに戻る。
自分たちの朝食を作りテレビを見ながら食べていると
ニュースで政治の見直しと題しての署名活動の話題になった。
「リンゼ、この話どう思う」
「どうって、」
リンゼがテレビを見ながらタクミの話を聞く
「俺はすごいと思うよ。
俺たちに出来ないことを、人を先導しようとしてるんだから。
だけどその人の評価は絶対評価でいいと思うけど
人を選ぶ行為は相対評価で行わなければならないと
俺は思うよ。それとコイツらって中学生だろ
権力者相手に正面から喧嘩売ってコイツら大丈夫か。
トップかケツモチがデカいなら問題ないんだが
学生だったら就職や進学に影響出るだろ」
「そういうもんなの?」
「いや、これは偏見自分語り野郎の戯言だから気にするな」
「おう」
「コイツらが俺たちの前に立ち塞がらないことを願うだけよ」
ニュースを見て雑談をしていると
「そいやぁさ、今日さぁ帰り寄り道しねぇ」
顔をタクミに向け
「良いけど、どこいくの?」
「対異能救命士資格取りに行きたいから」
「り」
二人は朝食を食べ終え中学校に行く準備を済ませ家を出た。
交差点で青信号を待ってるとタクミが質問する。
「俺達が通う学校ってどのレベルなん」
リンゼは少しの沈黙の後
「学園都市で中の上ぐらいかな。」
「で俺たちの通う学部っていうかクラスは」
「中の下。」
真剣な表情でタクミはリンゼに訊く
「何で俺に付いてきた
お前ほどの学力なら特進選抜なんかの上のクラス余裕だろ」
「俺はあの学校に俺以上が何人いるか知りたっかだけだし、
それに課題の提出めんどいし。」
リンゼはタクミに本心を話し、それにタクミが笑う
「ちげぇねぇ」
「でも、」
信号が青に変わった。リンゼが続けて話そうとした瞬間
青信号で交差点に進入していた乗用車に
信号無視をしたトラックとの接触事故が起きた。
リアに接触された乗用車は滑るように一回転して
ガードレールにぶつかり止まった。
トラックは追突後右のガードレールぶつかり車線を塞ぐように止まった。
「リンゼ、救急車や」
「お、おう」
リンゼは焦りつつも携帯を取り出し電話する。
タクミは白衣から発煙筒を二本その場に落とし
さらに発煙筒を焚き横断歩道の真ん中に投げ
トラックの前に回り込みながら前方に同様に投げる。
タクミは助手席の扉を開けようとしたが開かないため
タイヤに足をかけて中を見る。
『気絶してるか、好都合。鍵は、かかってる。割るしかないか』
タクミはタイヤから降り歩道に出てリンゼを呼び
「この窓ガラス吹き飛ばして」
「え!」
リンゼは驚いたが
「大丈夫、粉々になるだけだから」
リンゼは訳もわからないまま
窓ガラスに手をドーム状にして指先だけをつけ異能を放つ。
リンゼは異能の爆発で窓ガラスを破壊した。
リンゼを下がらせドアロックを解除し車内に乗り込み
運転手の容体を確認し引き摺り出し道端に寝かせて
乗用車の方に向かうと発煙筒が焚かれており
「焚いてくれたんか」
「発煙筒置いてったからな。」
「ナイス」
そう言い運転席側の窓ガラスをノックする。
「大丈夫ですか」
運転手は意識が朦朧としているのか頭を重そうにしている中
手を上げて反応する。
タクミはドアを開けようとするがロックがかかっており
「ドアロック外せますか」
するとゆっくり手を動かしドアロックを解除した。
すぐにドアを開けシートベルトを外し車から下ろし
道端に座らせようとリンゼと一緒に肩を貸してると
「中に息子が、」
運転手の父親は言うとタクミは息を呑んだ。
「リンゼ任せたぞ」
タクミは車に戻り運転席から後部座席を見ると
そこには確かに中学生に見える男子がぐったりとしていた。
後部座席のドアをすぐさま開け男子の容体を確認し運び出す。
リンゼにブレザーを脱がすように言いそれを枕がわりにし寝かせる。
「リンゼ、シャツのボタン全部外してくれ」
リンゼがボタンを外している間にタクミは白衣からAEDを。取り出し
パッドを貼り付けるその間もリンゼは胸骨圧迫をしていると
「リンゼ、このリズムでやれ」
タクミはスマホでメトロノームを出す。
そうしてるとAEDが電気ショックが必要と判断し
リンゼに離れるように言い電気を流し胸骨圧迫を続けていると
救急車が到着し引き継ぎした後
「行くぜ、リンゼ」
学校に遅刻しないように急いで走り出した。
リンゼ達の後ろ姿に父親は
「あの人達は、リンゼって人ともう一人、息子の学校と同じ制服だったな、」
とボソっと言い救急車に乗った。
走るタクミとリンゼ
「このままじゃ間に合わんぜ」
と言うタクミを見ていたリンゼは別のことを思った。
咄嗟に動ける力、人を助けれる優しさ、俺の知らない知識に無い技術
付いて行きたくなるだろ。
「あAED忘れてきた」
学校のある通りに出て間に合うことがわかると歩き始めた。
帽子とサングラス、白衣を脱ぎブレザーを着る。
「こういう日の出てる日に帽子外したく無いんだがなぁ」
タクミはアルビノで白髪な為日光を嫌っている。
歩いていると校門に人だかりができているのが見えた。
「あれなんだと思う?」
「さぁ」
タクミは車を見つつ耳を傾ける。
「人だかりで見えない。」
「誰かを取り囲んでいるみたいだな」
車はカスタムされていて周りの人は
口々に誰かの名前を口ずさむように聞こえる。
リンゼ達は人だかりの端を通り校門を抜ける。
「よっぽどの金持ちか別嬪さんなんじゃねぇの」
校内に入りクラスを確認し三階の教室に向かう。
歩きながらタクミが
「知ってるかリンゼ。この学校、席順ランダムらしいぜ」
「ナニイ!!!」
リンゼは期待に胸を膨れませ入室し
黒板に貼ってある座席表を見て真っ先に左下を見ると
そこにはリンゼと書かれており喜ぶリンゼ。
横から座席を確認したタクミは
「行くぜ、リンゼ」
喜びを噛み締めながら席に着き鞄を下ろす。
「タクミはどこよ?」
前の席に腰をかけ
「ここよ」
その後続々と人が入って来る中
窓の外を二人で見ていると
先ほどの人だかりが動いているのが見えた。
しかし先ほどとは違い先生数人が一人の少女を囲み
その後ろに生徒がいる状況になっていた。
少女が校舎に入り先生達が見えなくなり生徒が詰まっていると
つばの広い帽子を被った生徒が校門を通るのが見えタクミの目に止まる。
「あの子、帽子被ってるね。」
リンゼもその生徒に目が止まっていた。
その生徒が校舎に向かって歩いていると数人のヤンチャな生徒が絡む。
タクミは声が聞こえたため聞いていると
「何で帽子被ってっんだ。」
一人の男子生徒が話しかけ
「校則違反だよなぁ」
周りのヤンチャな生徒に言うと帽子を叩く。
帽子は風に舞い落ちた。
するとそこには髪型が少し崩れた銀髪の少女が現れた。
それを見ていたリンゼは
「ひどい。」
「あぁそうだな」
タクミは窓から飛び降りようとしており
「おい、まて、」
「止めてくれるな。同族が絡まれて見てられるほどできて無いんだ」
そう言いロープを使い飛び降りたタクミ。その頃彼女は
「白い髪、脱色してんじゃねかよ」
男達は笑い馬鹿にしてるようだった。
それに対し彼女は静かに睨んだ。
睨んだ目を見て男は
「何だその赤い目は気持ち悪い。こっち見んな」
握り拳を天高く上げたがその腕を掴まれ振り返る。
そこには自分の右腕を掴み、右手に先ほど叩いた帽子を持っていた。
男は掴まれた右腕を振り解こうとしたがびくともしない。
「おい、何だよ!」
男はタクミの顔を見ながら言葉を発した。
「坊や。この帽子はなぁ、色素が薄い人には必需品なんだわ」
そう言い左手を離し右手に持った帽子を彼女に被せた。
「彼女の髪は別に脱色した訳じゃなく色素が薄いだけさ
それに美しいと思うぜこの銀髪に紅い目」
タクミは彼女を連れて校舎に向かう。
「おぉ言い忘れてた。その上げた拳の落とす所が無いなら
私が相手になろう。だが一回きりだ好きなタイミングで相手になってやろう
タクミ。ヒカリ・タクミだ。覚えといて損はないぜ」
聞いていた男の拳は鉄のように硬くなっており
「この俺!海運念徹を舐めるな
この場でお前にこの拳落としてくれるわ」
念徹はタクミに向かって走り出し
タクミは彼女を校舎の日陰まで誘導し
「行きな」
振り返り、向かってくる念徹の方を向き
「いい名前じゃないか」
拳を躱し足を絡ませて後方へ転倒させる。
地面に後頭部が当たる瞬間に
ブレザーの胸元を掴み減速させ地面に倒れさせる。
「世の中知らないことが多いと『無知の恥』になるぜ。さっきみたいにだ
これで俺がオメェに付き合う理由は無くなったな
勝ちたいなら強くなれ。そして相手の土俵で戦うな自分の土俵で戦え」
振り返ったら彼女はもう居なくなっていた。安心し教室に戻った。
念徹に友人が近寄る。
「悔しい、俺はもの凄く悔しい、そして恥ずかしい」
そう友人に言った。
タクミが教室の前まで来ると人だかりが出来ており、どうするかと
考えていると帽子を持った彼女を見てけた。オロオロしており
近寄りこのクラスかと訊くと頷き。
「付いて来て」
人だかりを掻き分け教室に入れた。黒板に座席表があることを教え
リンゼの所へ戻ろうと振り返るとそこには先ほど校門で人だかりを作り
今まさにこの教室に人だかりを作ってる元凶がリンゼの席の隣に座っていた。
タクミは頭を抱えたが自分には関係ないとリンゼの所に向かった。
リンゼの席の机に腰を掛けようとしたが
隣の席の周りに人だかりが出来ていたため机を軽く叩き
窓を指し窓辺で話そうぜと伝え移動し、辺りを見て話し始めようとすると
彼女がタクミの席あたりで立ち止まっていた。
タクミは手を軽く振り彼女の注意を向け
「帽子の掛かってる席使っていいぜ」
そう言いリンゼと雑談を始めた。
先生が入ってきて入学式を始めると言い皆が席に着く。
彼女も本来の席に着き隣のタクミの席から荷物を移す。
放送が流れ体育館に移動し入学式を終え教室に戻って来て
ホームルームが始まり一人一人自己紹介が始まった。
人だかりを作っていた少女は
黒部檀と言い
彼女は零零漆シュピオンと言った。
ホームルームは諸注意と明日からの事を伝え解散した。
リンゼ達は学校を出て駅に向かい電車で最寄駅に向かった。
駅を出て駅前広場に出た。
大きな駅のためバスターミナルや公園が近くにあり
何時も人の往来があり賑やかだ。
交差点に向かいながら昼飯を何にするかと話していると
賑やかさの中、異質な音に気を引かれる。
チラリと見た時、広場に轟音が響いた。
タクミは見た。轟音の方に拳銃を持っている人がいることを
賑やかだった駅前は悲鳴の渦に呑みこまれた。
「走れ、リンゼ。あのベンチまで」
タクミは円形の中央が盛り土され木の生えたベンチを指し走り隠れた。
タクミはスマホを取り出し警察に連絡した。
その間も銃声は続いた。
電話し終わる頃には先程まで賑やかだった広場は
風の音が聞こえるほど静かになっていた。
タクミが銃声がした方をバレないように見るとそこには
三人組が立っており落ち着いてるとも焦ってるとも取れる
よくわからない状態だった。
それに周りには足を撃たれて動けない人が数人いた。
その中には零零漆シュピオンがいた。
タクミは酷く動揺したがここで自分が出しゃばっても
変わらないと自分を落ち着かせ息を潜めた。
静寂の中遠くからサイレンの音が一つ二つと聞こえてきた。
パトカーが到着し警官が降りてくる
「銃をおろせ」
犯人達をなだめる。
すると犯人の一人が喋り出す。
「ヒーローを連れて来い」
「なぜ、わざわざヒーローを呼ぶ」
タクミは不思議に思った。
どんなヒーローを指定してないなら相性負けする可能性があるのに加え
犯人達は異能を使ったようには見えなし対抗策があるのかと。
警官は無線で報告した後、ジリジリと犯人との距離近づけよう進むと
「それ以上近づくな」
犯人が発砲するが弾丸はハズレて警官には当たらなかった。
警官達は距離をつめるのを一旦やめパトカーまで下がった。
そんな膠着状態が続きながらも続々とパトカーが集まる。
ある警官が犯人達に話し始めた。
「もうすぐヒーローが到着する。これ以外の要求はないのか」
犯人達は何も発しない。
少ししてヒーローが到着した。
この場にいる誰しもがこれで解決すると思っていた。
このヒーローは自分の周りの摩擦を自在に操る能力
異能で銃弾は空中で止まる誰しもが思う。
ヒーローは堂々と犯人達に近づいていく
犯人の一人がヒーローに発砲すると
当たる。驚く者やパフォーマンスと思う者が居たが二発目でわかる
怯んだヒーローに立て続けに発砲しヒーローは倒れる。
どよめきが生まれる。
タクミは『決意』する。
ここにいる全員を生かすには自分が動くしかないと。
リンゼの方を向き
「リンゼ、俺はこれからあの三人を制圧しようと思う
そこでだお前の異能で煙幕モドキを張って
犯人達の近くの柱に移動したい
お前はここで待っててもらって構わない」
リンゼが口を挟む。
「俺もやる。一人でやるより成功率は上がるだろ。」
リンゼの肩を揺さぶり
「バカが死ぬかもしれないんだぞ」
「それをやろうとしてるんだろ。旅は道連れ、世は情けだろ。」
「リンゼ風情がイキリやがって」
リンゼの肩を叩き苦笑いした。タクミとリンゼはタイミングを計る。
死と隣り合わせの緊張感の中、作戦を始める。
初めにリンゼの異能により煙を左右発生させそれに隠れて柱まで走った。
それと同時にタクミが右回りに走り出す。
犯人達はタクミを狙うもすぐに見えなくなり煙に向かって乱射する。
リンゼは左回りに走る。
しかし煙は柱まで完全には届かずどうしても見えてしまう部分ができていた。
煙から出たところでタクミは左ふくらはぎに被弾し転んでしまうが
柱に滑り込むことが出来た。
反対側のリンゼは撃たれずに柱に辿り着けたが気付かれ
犯人が一人向かいタクミの方に二人来る事になった。
『クソ、痛え』
タクミは柱に背中を当てながらなんとか立ち
耳を澄まし犯人達の動きを探る。
どうやら犯人は柱を両側から挟み込もうと動いていて、焦る。
『負傷状態で二人相手は厳しい。どちらかを先にやるしか』
考えてる内に犯人達は近づいてくる。
タクミは息を吐き切り体を落ち着かせ
右側から来る犯人を先に無力化しようと決め
柱から飛び出し全力で犯人を押し倒す。
すぐさま後ろから来るもう一人に撃たれないよう柱に隠れるが
『思った以上に痛え。でも後一人やるしかない』
そう思い顔を上げるとリンゼが見えリンゼの方は善戦してる。
『やるじゃねぇかぁ、リンゼぇ』
タクミは最後の力で立つ。もう瞬発力は残っていない。
しかしこの時のタクミはリンゼとの模擬戦で抜刀した時と同じほど集中していた。
犯人が柱から出てきた。それに合わせ綺麗な弧を描くように投げる。
犯人が地面に落ちた音を最後に静寂がはしった。
少ししてリンゼが走って来た。
「大丈夫か!」
タクミはリンゼの肩を掴み
「肩、貸してくれや」
柱を指差しもたれかかった。
周りを見ると警察も動いはじめ安心した。
白衣から錠剤の入ったケースを取り出し
「リンゼ、飲み物持って無いか」
リュックから水筒を取り出し渡すがリンゼが不思議そうな目で薬を見る。
「これか、これは鎮痛剤、抗菌剤、止血剤だ」
「いやそれもそうだが、なんでそんな持ってるんだ?」
「小学校の時、林間学校で崖、山から落ちただろそん時に骨折や出血したから
次同じようなことがあった時のために持ち歩いてる」
そう言い薬を飲み止血作業にはいる。
ナイフを取り出し左膝下のズボンを切り落とし
封のしてある袋から包帯を取り出し巻いていく。
「質問なんだが、」
「なんだリンゼ」
「どうして封がしてるんだ?」
「汚れんためだよ
傷から菌が侵入しないためもある包帯に菌が居たらダメやろ
そういうこった」。
止血が終わり立ちかがるとタクミは撃たれた人達の元に歩き出した。
向かっていると他とは服装が違う警官が
「何ですか?」
「トリアージしに来ただけだ」
そう言い警官をどけるが
「不用意に人を近づけられません」
「じゃぁ俺も患者だ。問題ないだろ」
そう言い足の包帯を強調する。
言い淀む警官を無視し患者を診る。
患者を見ていき零零漆の番。
「また会いましたね。零零漆さん」
患部を探すが射創が見当たらない。
髪の毛の一部が短いことと膝の擦り傷から
「貴女、転びましたね」
恥ずかしそうに軽く頷く。
「運が良かったんだ。これなら絆創膏貼っとけば治るよ」
そう言い去ろうとした時
「ありがとう」
零零漆が感謝を伝えた。
「こちらこそ」
その後続々と救急車が来て
タクミの番が来た。
救急隊員が降りてきて
「患者は?」
タクミは手を上げ
「俺だぁ」
タクミは救急隊の顔を見て
「お子さん元気ですか」
リンゼが訊く
「どうした?」
救急隊員の顔が驚きの表情に変わる。
「あなたですか!」
タクミはリンゼの質問に答える。
「今朝助けた親子いたやろよその時の父親」
「その節はありがとうございます」
「いえいえそれより乗せてくれないか」
「状態は?」
タクミは足を見せる。
「早く乗ってください、なんでそんなだべってられるんですか」
タクミは救急車に乗り込み
「じゃあな。」
「お前も来いよ」
「え?」
初めて長編を書こうと思っています
応援されるとめっちゃ嬉しいので応援して