第7章 倭面上国の陰謀
邪馬台国が建国されたが、倭面上国の存在があり、運営がうまくいかなかった。
第1節
奴国の新しい大王が即位して、今までの奴国連合が邪馬台国に変貌した情報が、倭面上国にも伝わった。その情報は、奴国の犬である蘇我兎羅賀瑪命が倭面上国の官、兎莉薙に伝えた話でした。
倭面上国は、以前後漢の光武帝に倭国の王として見てもらうために使者を送った帥升の国で、邪馬台国が誕生した時の倭面上国の王は、帥升の孫の帥慈でした。
「ウチナ、邪馬台国が誕生したことは、先程の報告でわかった 我が国として、邪馬台国に対応すればいいか」
「まずは、大王のお考えをお聞かせください」
「私の父もそうであったが、漢の国に、我が国が倭国の代表であることを承諾してもらうために、今まで、統一国家にする目的で70年間、奴国連合と戦ってきた それでも決着が付かない」
「確かに、ですが、奴国連合は別として、船塚の里や女山の里(じやまのさと:福岡県みやま市瀬高町山門)当たりも支配下においています」
「奴国連合は、結束が硬い おまけに、今回、邪馬台国なるものを建国しよった」
「邪馬台国と今まで通り、戦いますか」
「どうだろうか」
「それとも、和平に応じますか」
「和平はしたくない」
「では、どうされます」
「出来れば、邪馬台国を乗っ取りたい」
「乗っ取りですか戦ってですか」
「戦いはもうしたくない まずは、邪馬台国に間者を送り込もうとおもう」
「間者ですか」
兎莉薙は、頭に浮かび上がったのは、蘇我兎羅賀瑪命であった。
「大王、ひとりいます」
「誰だ」
「奴国の犬です」
「そんなものに間者が務まるか」
「何とか、間者として仕付けて見ます」
兎莉薙は、女山の里に聡明で15歳になる祈祷師、卑弥呼の存在を知っていた。その卑弥呼を奴国の大王の養女にする事を企んだのです。それには、蘇我兎羅賀瑪命を味方に付ける必要があった。
邪馬台国の建国当時には男子の国王であったが、どのような理由で男子の国王が卑弥呼の女王に代わり、国家の運営がスムーズになったかは、はっきりと分からない。これが、倭面上国が絡んでいたとしてもおかしくない話です。
第2節
女山の里は弥生時代前期後半には有明海に面し、漢の国から渡ってきた人々が稲作と鉄器の精錬技術を持って住み着いた。弥生時代中期には、吉野ヶ里と同じぐらいの環濠を持つ大規模な集落として発展し、女王が住む山として、いつ頃か分からないが、女山を女王山と言われるようになった。そのような土地で、卑弥呼は170年に生まれた。倭面上国は、奴国が末盧国経由で鉄鉱石の流通経路を絶ったため、女山の里から鉄器を仕入れていた。
兎莉薙は、女山の里にいる卑弥呼に目を付けた。そして、蘇我兎羅賀瑪命に声を掛けた。
「ウラガメさん、奴国に鉄鉱石を止められて、倭面上国は困っています それが、鉄器を融通してくれるところが出来ました 一度、一緒にそこへ行ってみませんか 奴国に取っても、良いことだと思います」
「ウチナさん、何か企んでいるのでは」
「そんなことないですよ この女山の里には若い祈祷師がいて、その女性に邪馬台国について占って貰いませんか」
「そんな女性がいるのですか」
「卑弥呼と言います」
「では、お供するか」
兎莉薙と蘇我兎羅賀瑪命は、女山の里に着いた。兎莉薙は、女山の集落に入り、女山の首長に面会した。
「ウチナさま、遠方からよく来られた」
「首長さんには、鉄器を融通して頂いて、倭面上国を代表して感謝致します」
「そちらの方は」
「奴国から来ました蘇我兎羅賀瑪と言います 兎莉薙さまとは、懇意にさせて頂いています」
「奴国からですか それは珍しい 敵対関係にあるのでは」
「確かに今までは敵対関係でした しかし、奴国も新しい大王に代わり、奴国連合も邪馬台国に替わり、新しい体制になったことで、倭面上国との関係を見直そうとしています」
「なるほど それで」
「ウチナさまの誘いで、首長さんに挨拶がてら、女山の里に」
「それは、それは 黄覚師と言います よろしくお願いします」
「今回は、ウラガメさんに鉄の精錬技術と卑弥呼さんに会わせようと思います」
「では、手下に案内させましょう」
兎莉薙と蘇我兎羅賀瑪命は、鉄の精錬場に案内された。そこには、出来上がった鉄器もあった。
「ウチナさん、これらの鉄器、よく出来ていますね 壱岐から仕入れている鉄器よりも優れています 奴国もこの鉄器を仕入れたいものです」
「今はダメです 倭面上国と奴国で、友好の取り決めをなされてないから」
邪馬台国が卑弥呼の時代になって、女山の里も領域内になります。また、蘇我氏は物品の取引で頭角を表します。
「奴国に帰ったら、大王に倭面上国との友好を踏まえて、女山の里の鉄器についてお話します」
「いい方向に進めば良いですね」
「もし、倭面上国との友好については、ウチナさまにもお力沿いをお願いするかもしれなせん そのときはよろしくお願いします」
「分かりました」
兎莉薙は心の中で、今回の陰謀が上手く進んでいる事に微笑んだ。
第3節
黄覚師の手下は、卑弥呼の祈祷場に案内した。
「ここは、卑弥呼の許可が要ります この場所でお待ちください」
卑弥呼が邪馬台国の女王になっても、独りで祈祷場に篭っていたようです。執事は周りの人々が行い、中心人物は、歴史上には出てこない。邪馬台国の最終決定は、卑弥呼が行っていた。
「ウチナさまとウラガメさん、卑弥呼さんがお会いするそうです」
卑弥呼は、両者が座ると同時に。
「奴国から来られた人ですね 邪馬台国が設立して、その行く末が気がかりで、私のところに来られた」
「そうです どうしてそのようなことが、分かります」
「神のお告げがありました」
「それで、今後、どのようになりますか」
「今後、支配を拡大して、倭面上国とも組むことになります しかし、南の国が勢力を伸ばし、戦うことになると、神のお告げがありました」
「そこまで分かるのですか」
蘇我兎羅賀瑪命は、卑弥呼が神がかりなのには感心した。そして、兎莉薙と共に卑弥呼の祈祷場を出た。
「ウチナさん、女山の里に連れて来てくれてありがとう」
「奴国の大王に報告しますか」
「あの卑弥呼やらを奴国に連れて行きたいものです」
「もし、それを望まれるなら、私の裁量で」
「力添えしてくれるのですか」
「いいですよ」
兎莉薙と蘇我兎羅賀瑪命は、女山の里を出た。そして、蘇我兎羅賀瑪命は、奴国の大王の所に向かった。一方、兎莉薙は今回も事を倭面上国の大王に報告するため、大王がいる居館に。
「大王、蘇我兎羅賀瑪をたらし込むことが出来ました」
「そうか それで」
「ウラガメを卑弥呼に会わしたのです すると、もの凄く、卑弥呼を気に入り、奴国に連れて行きたいと言って、帰りました」
「他に、ウラガメにエサを与えて、抱き込んだのか」
「はい、女山の里の鉄器の利権を」
「そうだろうな もし、奴国の大王が、卑弥呼を引き取りたいと言ったら、私が女山の里の黄覚師に話を持って行くか」
「そうされたら良いと思います」
「卑弥呼を自由に操れるように」
倭面上国の陰謀が見え隠れしていた。
第4節
蘇我兎羅賀瑪命は、奴国に帰ってきた。奴国の居館の門には、物部伊那部が立っていた。
「ウラガメさん、倭面上国の状況はどうですか」
「イナべも、奴国の警備に携わっているのだな 今から大王と会って、倭面上国の状況を話ところだ」
「邪馬台国になって、大王を訪ねて来られる人が多くなりました」
「邪馬台国は、これからだからね イナべも、しっかり警備をするのだよ」
「はい」
蘇我兎羅賀瑪命は、上機嫌で伊那部と会話した。そして、大王と対面する。
「ウラガメ、倭面上国の報告に来たのか」
「まずは、大王にお成りになられて、一段とご立派になられました わか、ではなく大王」
「もう、わかは、やめて欲しい」
「そうですね 邪馬台国の大王になられたのですね」
「それで、倭面上国はどうだ」
「倭面上国の官、兎莉薙を情報源にさせて頂き、私の思う道理にさせます」
「こちらから、和平の話を持ち出すことはしなくていいな」
「はい、私に任してください」
蘇我兎羅賀瑪命は、大王の前で大見得をかいた。どの時代でも、山線海線でした。
「ウチナが女山の里に行こうと誘われたのですが、そこでいい掘り出し物を見つけました」
「それは、何の物だ」
「物ではありません 少女です」
「少女が掘り出し物なのか」
「それが、祈祷師なのです 私が出会った瞬間、邪馬台国の今後を神のお告げだと言って、述べました」
「神のお告げ」
「邪馬台国は、領土を拡大すると そして、倭面上国と和解すると」
「そんなことを述べたのか」
「どうですか その少女、卑弥呼と言いうのですが、この須玖の里に連れて来てもいいですか」
「ウラガメに任す」
「承知いたしました」
これが、倭面上国の陰謀だとは知らず。蘇我兎羅賀瑪命は、ことを図った。卑弥呼は、少し経ったから須玖の里に連れて来られた。須玖の里では、卑弥呼のために祈祷場を設け、卑弥呼を隔離する事になった。その時は、卑弥呼が後に邪馬台国の女王となることは、誰しも予想してなかった。その当時の邪馬台国は、奴国連合の延長線であり、奴国の大王が主導権を握っていた。
ここで、卑弥呼が女王として登場する。