第一話 引きこもりゲーム廃人、人生の幕を閉じる
スナイパーライフル、それは本来遠距離から狙撃するための銃である。しかしFPSゲームではしばし近距離戦で使われることがある、通称「凸砂」。キャラクターを前後左右にコントロール(以下キャラコンと省略します)し被弾を防ぎながらスナイプするその行為は難しく、キルレート(以下キルレと省略します)、即ち倒した数/死亡数の比率が1を下回りやすい。これをデスレという言い回しをしたりするのだが、この行為にはかっこよさやロマンが詰まっています。
「キルレ12.4、まあまあかな」
時刻は23時、今日もひたすらにFPSをし一日が終わろうとしている。まあニートなので時間はいくらでもあるから問題ないのだが。
今思えばこの領域に到達するまでかなりの時間がかかってしまった。
ニート歴はもうすぐ5年か
スナイパーライフルを持ち前線に突撃し、ひたすらデスレを繰り返し続けた結果、今ではプロゲーマーにも負けないほどの実力を持っている。
高校2年までは学校でバスケをしていたが、俺の中のエゴイストが制御できず1人でドリブルをこねながら凸っていたのを監督に怒られた。「無駄なドリブルが多すぎる」「1人で突っ走るな」とか言われてたっけ。大会には負け、チームメイトからは厨二病の烙印を押されクラスからは孤立し程なくして部活を辞め、3年生になることはなく学校は退学した。
そんな中俺が熱中したのが凸砂。
昼夜逆転の生活が当たり前になり、机の上には空のエナジードリンクの缶がずらりと並んでいた。最初こそうるさかったものの今では親は何も言ってこない。
「エナドリそろそろなくなってきたな、コンビニ行くか」
立ち上がり時計を見ると時刻は午前零時。玄関のドアを開けると冷たい風が頬を撫でる。郊外なのでコンビニまでは少し距離がある、俺はヘッドホンを装備し夜道を歩き始めた。
「うぅ……寒い……」
辺鄙な町なので街灯も少なく道もあるきずらい。
15分ほど経っただろうか、数少ない信号機が見えてきた。しかし夜中なので信号は機能していない。「信号もニートか、俺と一緒で笑える」
と内心笑えない会話を信号機と交わした
その時──
キキーッッ!!
後方からクラクションとブレーキのけたたましい音が聞こえ振り返るとトラックが数メートル先のところまで迫っていた。音楽に夢中で気づくのが遅れ、もうこれは避けれないと悟った。──これが走馬灯か。
あたりがスローモーションのように見え、その瞬間存在しないようなけど確かに経験し知っているような記憶が脳裏を駆け巡った。別の世界線で生きた自分の記憶なのだろうか、それは
高校を卒業し大学に進学する世界線の俺。
ゲーマーになり配信をする世界線の俺。
バスケを続け引退後も公園で遊ぶ世界線の俺。
バイト先でできたゲーム友達とゲーム通話する俺。
そして────
先の戦争で命を落とす俺。