あの通信教材 中学講座
俺、斜向井 弐澄!
中学一年生!
「くそ〜、70点かぁ〜!
平均点まであと1点だったのになぁ〜!」
ここ最近、定期テストの成績が芳しくなくて絶賛落ち込み中!
「よっ、お前は何点だった?
……って、ゲゲ〜っ!嘘だろ〜!
平均点超えてんじゃん!」
そいつの点数は72点。
小学生の頃はいつも同じ成績だったのに、
最近はなぜかこいつに抜かされてばかりだ。
「あんま落ち込むなよ、ニスム!
そんな変わんねーって!
それより早く部活行こうぜ!」
こいつは主人 公太郎。
最近成績が上がったばかりか、サッカー部での活躍もめざましく、
同じ一年生でありながらレギュラーになりそうな勢いの新進気鋭だ。
兄弟も同然に育った仲なのに、
俺は最近こいつに負けっぱなしだ。
いつからだろう、こんなに差がついたのは……。
「なぁ、コータロー
お前最近何かやってるだろ?
俺にも教えろよ〜!」
俺はこいつと対等な存在でありたい。
抜け駆けなんて許さない。
そんな嫉妬心に駆られ、恥を捨てて直接聴取を執り行った。
「うーん、あんまり教えたくなかったんだけどな……
実は俺……あの通信教材に手を出したんだ」
「えっ……!?
あの通信教材を……!?」
それは中学生なら誰もが目にしたことがある、
勧誘漫画が有名な通信教材のことを指していた。
「1日30分で予習・復習ができるから、
サッカーの練習時間も増えて一石二鳥なんだぜ!」
うお〜、漫画のセリフそのまんま!
あれって本当に効果あったんだ……。
***
「ねぇ、母さん
俺さ……あの通信教材やってみたくなってさ……」
「はあぁ!?
何言ってんのアンタ!!
小学生の時やらせてみたけど、
付録目当てで全然勉強しなかったじゃない!!
月謝だってタダじゃないんだからね!!」
……だよなあ〜。
***
それから俺は燻り続け、コータローとの差は開いていくばかりだった。
「よう、斜向井
最近元気ないな
何か悩みでもあるのか?」
話しかけてきたのは数学の道引先生だ。
数学の先生なのに筋骨隆々でジャージを愛用しており、
知らない人が見たら体育の先生だと思うだろう。
「どうもこうも……
テストは毎回赤点ギリギリだし、
部活でも活躍できないわで、もうどうしたらいいか……」
先生と話すのはこれが初めてだった。
ちょっと苦手なタイプだなぁとは思ってたけど、
この時はなぜか心中を吐露してもいい相手だと思えたのだ。
「はっはっは!そんなことか!
部活をやめてしまえばいい!
斜向井はサッカー好きじゃないんだろ?
お前が楽しそうにプレーしてるとこなんて、
先生は一度も見たことがないぞ!」
「えっ……!?」
考えたことがなかった。
そうか、俺べつにサッカーに思い入れなんてなかったんだ。
あいつが、コータローがやってるから俺もやってただけなんだ。
***
それからというもの、俺はサッカー部を辞めて学業に専念した。
放課後は道引先生が顧問を務める文芸部に出入りし、
そこで3人の女子と仲良くなり、たまに刺されたりもした。
そしてとうとうやってきた定期テストの日。
部活を辞めてまで勉強に集中したんだ。
きっといい結果が待っている……!
(あっ、この問題…………授業でやったやつだ!!)
……そう、学校のテストってのは習った範囲までしか出題しないんだ!
***
テスト返却の日。
ドキドキしたけど、思い通りの結果が出せて満足している。
「よし……100点だ!
コータローは何点だった?」
「え?
俺はべつに……いいよ…………」
最近、コータローの様子がおかしい。
きっと以前の俺のように燻っているのだろう。
でも俺はそれを乗り越える方法を教えてもらったんだ。
いつかあいつが助けを求めてきたら、こう言ってやるつもりだ。
『まじめに授業を受けよう』




