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あの通信教材 中学講座

作者: 木こる
掲載日:2023/11/25

俺、斜向井(はすむかい) 弐澄(にすむ)!

中学一年生!


「くそ〜、70点かぁ〜!

 平均点まであと1点だったのになぁ〜!」


ここ最近、定期テストの成績が芳(かんば)しくなくて絶賛落ち込み中!


「よっ、お前は何点だった?

 ……って、ゲゲ〜っ!嘘だろ〜!

 平均点超えてんじゃん!」


そいつの点数は72点。

小学生の頃はいつも同じ成績だったのに、

最近はなぜかこいつに抜かされてばかりだ。


「あんま落ち込むなよ、ニスム!

 そんな変わんねーって!

 それより早く部活行こうぜ!」


こいつは主人(ぬしと) 公太郎(こうたろう)。

最近成績が上がったばかりか、サッカー部での活躍もめざましく、

同じ一年生でありながらレギュラーになりそうな勢いの新進気鋭だ。


兄弟も同然に育った仲なのに、

俺は最近こいつに負けっぱなしだ。

いつからだろう、こんなに差がついたのは……。


「なぁ、コータロー

 お前最近何かやってるだろ?

 俺にも教えろよ〜!」


俺はこいつと対等な存在でありたい。

抜け駆けなんて許さない。

そんな嫉妬心に駆られ、恥を捨てて直接聴取を執り行った。


「うーん、あんまり教えたくなかったんだけどな……

 実は俺……あの通信教材に手を出したんだ」


「えっ……!?

 あの通信教材を……!?」


それは中学生なら誰もが目にしたことがある、

勧誘漫画が有名な通信教材のことを指していた。


「1日30分で予習・復習ができるから、

 サッカーの練習時間も増えて一石二鳥なんだぜ!」


うお〜、漫画のセリフそのまんま!

あれって本当に効果あったんだ……。



***



「ねぇ、母さん

 俺さ……あの通信教材やってみたくなってさ……」


「はあぁ!?

 何言ってんのアンタ!!

 小学生の時やらせてみたけど、

 付録目当てで全然勉強しなかったじゃない!!

 月謝だってタダじゃないんだからね!!」


……だよなあ〜。



***



それから俺は燻(くすぶ)り続け、コータローとの差は開いていくばかりだった。


「よう、斜向井

 最近元気ないな

 何か悩みでもあるのか?」


話しかけてきたのは数学の道引(みちびき)先生だ。

数学の先生なのに筋骨隆々でジャージを愛用しており、

知らない人が見たら体育の先生だと思うだろう。


「どうもこうも……

 テストは毎回赤点ギリギリだし、

 部活でも活躍できないわで、もうどうしたらいいか……」


先生と話すのはこれが初めてだった。

ちょっと苦手なタイプだなぁとは思ってたけど、

この時はなぜか心中を吐露してもいい相手だと思えたのだ。


「はっはっは!そんなことか!

 部活をやめてしまえばいい!

 斜向井はサッカー好きじゃないんだろ?

 お前が楽しそうにプレーしてるとこなんて、

 先生は一度も見たことがないぞ!」


「えっ……!?」


考えたことがなかった。

そうか、俺べつにサッカーに思い入れなんてなかったんだ。

あいつが、コータローがやってるから俺もやってただけなんだ。



***



それからというもの、俺はサッカー部を辞めて学業に専念した。

放課後は道引先生が顧問を務める文芸部に出入りし、

そこで3人の女子と仲良くなり、たまに刺されたりもした。


そしてとうとうやってきた定期テストの日。

部活を辞めてまで勉強に集中したんだ。

きっといい結果が待っている……!


(あっ、この問題…………授業でやったやつだ!!)


……そう、学校のテストってのは習った範囲までしか出題しないんだ!



***



テスト返却の日。

ドキドキしたけど、思い通りの結果が出せて満足している。


「よし……100点だ!

 コータローは何点だった?」


「え?

 俺はべつに……いいよ…………」


最近、コータローの様子がおかしい。

きっと以前の俺のように燻っているのだろう。

でも俺はそれを乗り越える方法を教えてもらったんだ。

いつかあいつが助けを求めてきたら、こう言ってやるつもりだ。



『まじめに授業を受けよう』

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