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プロローグ 人のいない世界
ここは人のいない世界。文字どおり、この世界には人がいない。この世界を創った、彼を除いては。
あれからどれくらい経っただろうか。もう一年は過ぎただろうか。そんなことを考えながら、彼は白い神殿――絶望の地へと足を踏み入れる。
この神殿を建てた、彼の唯一の話し相手が、神殿の中央で待っていた。とうとう始まるのだ。彼の告別の旅が。決して断ち切ることのできない絆と、彼は再び向き合うのだ。
彼はもう立ち止まらない――否、立ち止まれない。立ち止まる彼は存在し得ない。過去を変えることなど、できないのだから。
そして彼は、人のいる世界に帰る。