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第004話 帰還


 俺は冒険を終え、ギルドに戻ると、受付があるロビーへと向かった。


 ロビーに戻ると、相変わらず、閑散としており、受付はガラガラだった。

 俺は朝倉さんの受付に行こうと思い、朝倉さんの受付を見る。

 すると、朝倉さんがニヤニヤと笑いながら俺のことを見ていた。


 あいつ、確信犯かよ……


 朝倉さんは俺がカバンを持っていないことに気付いていたのだ。

 それですぐに帰ってくると思っていた。

 そして、その通りになって笑っている。


 俺はちょっとイラっとしたが、そのまま朝倉さんのところに向かった。


「おかえりです」


 朝倉さんが満面の笑みで迎えてくれる。


「ただいま」

「早かったですねー」

「今日は確認ぐらいのつもりだったからね。うん、ホント」


 マジマジ。


「相変わらず、バカですねー」


 おい!


「いやね、カバンがないわ」


 俺は正直に言うことにした。


「でしょうね。さすがに手ぶらで来た人は初めてですよ。先輩は自信があるからなんでしょうが、もうちょっと準備をしましょう」

「先に言ってよ」

「今後のこともあるし、反省してもらおうと思って」


 身をもって経験させたのね。

 うーん、こいつ、本当に年下なのだろうか?

 お姉さんっぽい。


「カバンと飲み物がいるわ」

「ですねー。後は地図も買いましょう。今なら1000円で買えます」


 朝倉さんはそう言って、引き出しから地図を取り出した。


「買う買う。コンパスって使える?」

「使えます。あると良いですね」


 使えるんだ……


「それも買うか……ネットでいいや。あ、これ、成果ね」


 俺は持っているナイフとポケットの草を取り出して、受付に提出する。


「スライムとゴブリンですねー。楽勝でした?」

「スライムは真っ二つ。ゴブリンは首を刎ねた」


 両者ともに瞬殺してやった。


「怖いですねー。でも、自称じゃなかったんですね」

「自称だったら痛いわ」

「いや、まあ、うん…………ですね」


 あれー?

 この反応は自称じゃなくても痛そうだ。

 もしくは、酔った時に何かしたな……


「まあいいじゃん。それよか、これって何?」

「薬草とナイフです。500円と800円です。地図代を引いて300円ですね」


 まあ、わかってたことだが、安いな。


「薬草は売らないわ」

「売らないんです? 言っておきますけど、他所で売っても変わんないし、手間を考えると、ここで売った方が良いですよ?」

「いや、ちょっと使ってみたい」

「あー、なるほど。別に構いませんが、先に言っておきます。めっちゃ苦いし、たいして効きませんよ? 加工しないといけません」


 良薬は口に苦しっていうし、草だもんなー。

 苦いんだろう。


「お試しだから」

「わかりました。じゃあ、それは持ち帰りですね。では、200円を支払ってください」

「初冒険は赤字かー」

「そんなもんですよ。色々と用意しないとですしね。防具を買う人もいますし、最初は経費がかかります」


 なるほどねー。

 まあ、何をしようとしても最初は金がかかるもんだ。


「じゃあ、はい、200円」

「まいどです。あ、ステータスカードを提出してください。それと武器もです」


 来たか……


「はい」


 俺は断るのも変だし、どうせ断れないだろうから素直にカードと腰のショートソードを提出する。

 朝倉さんはカードを受け取ると、カードを確認し始めた。


「おー! すごい! 剣術のレベルが5もあります! ガチですごい人だったんですね! 最初からレベルが5もある人を初めて見ましたよ」

「ふふん!」


 鼻高々!


「いやー、すごいですね。じゃあ、これは預かります。次回、冒険する時にお返ししますね」


 朝倉さんはそう言って、カードをしまう。


「ん?」

「はい?」


 俺が錬金術のスキルへの言及がないことを意外に思っていると、朝倉さんが首を傾げる。


「それだけ?」

「それだけって…………す、すごいですね。本当にかっこいいと思います!」


 朝倉さんが顔を引きつらせながら賛辞を送ってくる。


「いや、無理すんな。ごめん、ちょっともう1回、ステータスカードを見せてくれない?」

「ん? いいですよ」


 朝倉さんは本当によくわかっていない様子でカードを出してきた。

 俺はそのカードを確認する。


 いや、確かに錬金術はある。

 でも、朝倉さんは完全にスルーだ。

 おかしい……


「朝倉さん、俺のスキルって剣術だけ?」

「そうですけど…………あ! スキルが1つしかないことがショックなんですかー? 確かに冒険者の中には最初から2つ、3つ持っていらっしゃる方もいます。でも、そんなの少数ですよ。先輩は1つかもしれませんが、レベル5ですよ? 私は聞いたことないです。誇って良いですよ」


 朝倉さんが笑いながらフォローをしてくれている。

 だが、これでわかった。

 朝倉さんには錬金術が見えてない。


 どういうことだ?

 この星マークがあるからだろうか?

 うーん、わからん。


「スキルって、どうすれば増えるの?」

「色んな事をすればいいんですよ。採取ばっかりしている冒険者から採取のスキルが出る事例もあります。しかも、スキルが出ると、技能が上がります。多分、先輩も剣の腕が上がっていると思いますよ」


 へー。

 ブランクが長すぎたのと魔力の恩恵でよくわからん。


「なるほどねー。色々と試してみるか」

「ネットにも情報は落ちていますし、調べてみると良いですよ。デマも多いですけど」


 確かにデマは多そうだな……


「わかった。ありがとうね」

「はい、お役に立てたなら良かったです。頑張ってください」

「ん」

「あ、次はいつ来られます?」


 次か……


「うーん、ちょっと空けると思う。準備するわ」

「なるほどー。来る時は事前に連絡をくれるといいですよ。私が休みの時に来られても困りますし」


 専属ってめんどくせーな……


「専属って俺のメリットがなくね?」

「プライスレスです!」


 朝倉さんはそう言って、満面の笑顔になった。

 うん、かわいい。


「まあいいや。じゃあ、連絡する。連絡先は変わってないだろ?」

「ですね。お待ちしております。なお、別の用事で誘う時はお早めに。有給とかの準備がいりますので」


 俺も金という準備がいる。


「りょうかーい。じゃあ、今日は帰る…………あ! あのさ、ちょっと聞いてもいい?」

「彼氏はいませんよ?」


 メモメモ。


「いや、違くて。素材って、どこで買えるの?」

「素材? 薬草みたいなものですか? ネットでも買えますし、専門店で買えますよ。ここでも売ってます」


 なるほど…………


「ちなみに聞くけど、眠り草って売ってる?」

「眠り草? 売ってますけど、げろマズですよ? しかも、効果は低いです。あれなら市販の睡眠薬の方が良いです」

「1つ売ってくんない?」

「いいですけど、何に使うんです? これは一応、聞かないといけないことです」


 そういうルールがあんのか……


「ちょっと寝不足なんで飲んでみたい。酒で流し込む」

「不健康ですねー。市販の薬を買ってください」

「眠り草っていくら?」

「100円ですけど」


 安っす!


「1つでいいんだよ。試してみたいだけ」

「まあ、先輩は悪用しないでしょうし、いいですけど、マジでげろマズですよ。私も試したことがありますもん」


 あんのかい……


「金がなくてね…………」

「先輩…………やっぱり奢ってあげますよ。チェーン店でいいです?」


 わざわざハンカチを取り出して、目頭を押さえんなや。


「いつか銀座の寿司を奢ってやるよ」

「期待しないで待ってます。ちょっと待ってくださいね」


 朝倉さんは目頭を押さえながら席を立ち、奥へと歩いていった。


 しかし、げろマズかー。

 あそこまで言われると、試してみたくなるわ。

 とはいえ、眠り薬の材料だからやんないけど。


 俺がその場でしばらく待っていると、紙袋を手に持った朝倉さんが戻ってきた。


「はい、どうぞ」


 朝倉さんが席に着かずに眠り草が入っているであろう紙袋を手渡してくる。


「ありがと。あ、100円……」

「いいですよ。ただ、感想を聞かせてください」


 奢ってくれるらしい。

 なんていい子なんだ!


「ありがと。すぐにAランク冒険者になるから…………」


 冒険者にはランクがある。

 A、B、C、D、E、Fだ。

 俺?

 もちろんF!


「頑張ってください……」


 あんなに楽しかった朝倉さんとの会話だったのに最後は無駄にへこんでしまった。

 俺は頑張ろうと思いながら手を振ってくれる朝倉さんに手を振り返しながらギルドをあとにした。

 そして、スーパーに立ち寄り、色々と買い物をした後に帰宅した。


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[気になる点] ここで秘密にするんですか。 結構大事だと思いますけど。 たとえば洗脳みたいなヤバいスキルを持つ人がいたりして、そのスキルをギルドが認識できないことが非常に危険ではないでしょうか。 そ…
[一言] 本人だけが見えるシークレットスキルですか。 それとリュックやザックではなくかばんですか・・ なんかイメージがががががが、
[気になる点] 危険がある場所に準備不足を指摘せず行かせるって何のための受付だよ 今すぐクビにしろ
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